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2014.11.27

北朝鮮のイカ釣り漁船急増

日本の排他的経済水域の境界線付近で操業する北朝鮮のイカ釣り漁船が急増している。2011年には15隻であったが、12年には80隻、13年には110隻、14年は11月までにすでに400隻(すべて概数)が確認されている。2014年に激増したのは金正恩第1書記が新年の辞で水産業の強化に力を入れるよう指示したためかもしれない。また漁船の数の増加に伴い日本のEEZ内に侵入するケースも増えている。
北朝鮮では漁船の需要増に対し木造船を作って対応している。そうするほかないのであろう。長さ10メートル、幅2メートルの小型船であり、簡単なエンジンを取り付けただけで、無線機などを装備しておらず、この程度の船で日本とのEEZの境界線付近まで出かけるのは非常に危険だそうだ。
漁船は清津や元山を母港としており、多くは軍が保有している。清津には約3000隻の漁船がある。以前は個人所有であったものも軍に編入されているという。しかし漁業を行なうのは軍人ではなく漁民であり、軍に雇われる形になっている。彼らは毎年120万ウォン(闇レートで4万5千円程度)の上納金を納めればあとは自由に漁獲物を処分できる。各部屋にテレビがあるマンションタイプの住居にすんでいるというからかなりの実入りになるのであろう。
漁業は元々、軍が会社を作ってウニやカニを日本に売るなど外貨稼ぎの手段だったが、経済制裁のため収入がなくなり、そこへ張成沢が付け込んで利権を拡大した。その粛清後軍は利権を取り戻しているとも説明されている。
漁船が公海へ出ていくのをコントロールしているのは、軍傘下の「国境警備総局」である。
(11月27日付の朝日新聞記事を基に作成した)

2014.11.24

北朝鮮の核施設の再稼働

ジョンズ・ホプキンス大学のSAIS(高等国際関係大学院)の北朝鮮関係サイト「38 NORTH」は11月19日、北朝鮮のヨンビョン(寧辺)黒鉛炉は停止しているが、再処理施設は稼働していることに関する分析を発表して注目されている。
同施設は核燃料(ウラン燃料)を製造する施設で、年間約100トンのウラン燃料製造能力がある。核兵器製造に使われる可能性があるため、6者協議と米国との交渉により、2007年に運転が中止されたが、その後北朝鮮は再稼働していたと見られていた。今回の「38 NORTH」の発表は次のような内容であるが、北朝鮮による再稼働を確認する意味もある。

ヨンビョンの黒鉛炉の運転は10週間停止しているが、再処理施設は稼働し続けている。黒鉛炉の運転停止は通常の点検としては長すぎる。冷却塔から蒸気が上がっていること、トラックの動きが激しいこと、灰色の物質が積み上げられていることなどから、可能性としては、冷却システムに問題が発生した、あるいは燃料棒を何らかの理由で一部取り出した、あるいは炉心を入れ替えたことなどが考えられる。
また、原子炉の冷却塔から川に続いていたパイプラインに替わって他の場所に続くパイプラインが建設されており、今までのように温排水をモニターして操業状況を察知するのがむずかしくなるかもしれない。

2014.11.22

北朝鮮とロシアの関係が活発化

金正恩第1書記の腹心の部下の一人であるチェ・リョンヘ(崔竜海 労働党中央書記)が金正恩の特使としてロシアを訪問した。そのことを朝鮮中央通信が報道したが、訪問の日時は発表されなかった。

かねてから北朝鮮関係の問題をよく扱っている香港の『大公報』紙(11月14日付)は、次の諸点を報じている。
○金正恩はロシアとの関係改善に意欲的であり、部分的にはすでに金日成や金正日時代よりも進んでいる。
○朝露間でハイレベルの相互訪問が進んでいる。中国との間ではまさにそのことが欠けている。
○ロシアの副首相兼在極東連邦管区大統領代表のトルトネフが4月に訪朝し、以前はチャン・ソンテク(張成沢)派と目されていた対外貿易担当の副首相と会談した。これに先立つ2013年9月、ロシアの鉄道部門の責任者が訪朝し、ロシアの国境都市ハサンから北朝鮮側の羅津にいたる54キロの路線開通のテープカットをした(注 この路線は2011年秋にはほぼ完成していた)。
○2014年9月にはリ・スヨン(李洙墉)外相が訪ロ。11日間もかけてロシア各地を視察した。
○チェ・リョンヘ特使は金正恩第1書記の親書あるいは口頭のメッセージをロシア側に伝えた。2013年、北朝鮮が中国の漁船を拿捕し、中国が不満を唱えた際もチェ・リョンヘは特使として中国へ赴き、習近平に会って金正恩が中朝関係を進展させることを希望していると伝え、中朝関係はいったん緩和した経緯がある。
○北朝鮮が受けている援助の大部分は中国からであり、最近のロシアへの接近は援助の多角化を図るものであろう。

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