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2014.01.01

金正恩第1書記の「新年の辞」

金正恩第1書記の「新年の辞」をどう見るか。
「(朝鮮労働)党内にはびこっていた分派の汚物を除去した」というのは明らかに昨年12月の張成沢国防委員会副委員長などの粛清のことであり、相変わらずの激しく憎悪に満ちた敵意の表明であるが、問題は、粛清がこれからも継続するかである。外部では延々と続くという見方もあるが、山は越えた感がある。
「党内の唯一指導体系を徹底して樹立しなければならない」と述べたのは金正恩自らに対する絶対的な忠誠を訴えたものである。なお、金正恩は軍の操り人形になっているという見方もあるが、そうは思わない。
経済強国の建設や人民生活の向上を強調していること、韓国との関係について「今年は祖国統一問題で新たな前進がなければならない」「北と南は、関係改善のための雰囲気をつくり出さなければならない」などと呼びかけていることも注目される。しかし、この言葉が金正恩の新しい決意を示していると見るべきか、即断できない。金正恩は昨年1月の「新年の辞」でも南北の「対決状態の解消」を訴えたが、翌月に3度目の核実験を強行した。今年も米韓で合同軍事演習が行われるであろう。そうすると北朝鮮は再び反発するだろうが、問題は2013年の春の状況をどう見るかであり、その頃は金正恩が指導者としての権威を確立するのに決定的な時であったとすれば、今年は同じことが繰り返されないと見ることもできる。その意味でも今年前半の展開が注目される。
なお、「新年の辞」は一方で、米国や韓国を警戒するための「防衛力の強化、近代化」を強調している。これには新しい要素が含まれているか。どちらかと言えば、従来からの方針を繰り返したに過ぎないのではないか。

2013.12.27

安倍首相の靖国神社参拝

12月26日、安倍首相が靖国神社を参拝したことに関して、複数のプレスからコメントを求められた。私の語ったことの要点は次の通りである。

「戦争で命を落とした軍人の霊を慰めるのは非常に重要なことである。今回の参拝についてもその目的としてそのようなことが掲げられており、その限りにおいて評価しうる。
しかし、戦争を指導した人を顕彰すべきでなく、いわゆるA級戦犯を祭っている靖国神社に日本政府の指導者が参拝すべきでない。宗教法人である靖国神社がA級戦犯を祭ることは神社が決めることであるが、戦争の指導者を祭ることはどうしても戦争を指導したことを顕彰する意味合いが出てくる。だから参拝すべきでない。これが私の基本的な考えである。

中国や韓国が反発するから参拝すべきでないというのではない。多数の犠牲者を出した国の感情に配慮するのは当然であるが、それよりも日本自らの問題として考えなければならない。

米国政府は東アジアの現状に憂慮し、なんとか緊張が緩和するよう要望しており、先のバイデン副大統領の3国歴訪もその表れであった。また、日本の現政権の歴史問題に関する姿勢について疑念を抱いており、米国の新聞は批判したこともある。このような状況にあって、今回の安倍首相による靖国神社訪問を遺憾に思うのは米国として自然なことであろう。日本は今後戦争の犠牲になった近隣諸国によく配慮していく必要がある。」

戦没者の慰霊についての私の考えは、2013年6月23日の「オピニオン」に掲載した一文に詳しく説明しています。18年前に読売新聞に寄稿したものです。

2013.12.19

米中両艦艇の接近

12月5日、米国のミサイル巡洋艦Cowpensが南シナ海で中国の航空母艦「遼寧」号の付近を航行中に、中国海軍の別の艦艇によって航路を遮られたと報道されたことに関し、米中双方が見解を発表した。米国防省は、このような船舶の接近は異常なことでなく、大事なことは危険が生じた際に当該船舶が国際ルールに従って行動することであると強調するなど、今回の事件を大げさに扱いたくないという態度を示した。また、国務省側は、この事件を重視し、中国側とハイレベルで話し合っていると説明した。これは米中両艦の司令官同士の話し合いであったらしい。
中国側も本件を早く鎮静化させたい意向を示し、中国の船舶は国際ルールを守っていることを強調しつつも、米中双方が友好里に話し合い問題を解決したと説明している。

この事件は米中双方とも大きな問題にしないという姿勢を取ってきたので鎮静化するかに見えたが、19日ヘーゲル国防長官は記者会見で、「中国の艦船が突然Cowpens号の前方100ヤードのところに割り込んできたのは無責任な行為である。アジア太平洋においてこのような事件が起こった場合に対処するために中国と何らかのメカニズムを構築する必要がある」と述べたので、収まりかけていた事件が再燃しそうになった。中国の一部新聞はこのことを報道しているが、ヘーゲル長官は記者会見での質問に答えて発言したものであり、また、重点は危機管理体制の構築の必要性にあったので、さらに問題が大きくなるとは思われない。

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