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2014.10.19

北朝鮮はいつでも説明すると言っている

日本政府は伊原外務省アジア太平洋局長を10月中にも平壌に派遣する方針を韓国政府に伝えたと報道されている。10月19日付の朝日新聞は、その記事の中で次の解説を加えている。
「北朝鮮は9月中旬、「調査はまだ初期段階」として初回報告の先送りを日本に通告した。同月末の中国・瀋陽での政府間協議で日本側が現状説明を求めたところ、北朝鮮の宋日昊(ソンイルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使が日本政府担当者の訪朝を提案した。日本側は「調査委と直接やりとりすることで真剣さが判断できる」(外務省幹部)として、北朝鮮側の提案を受ける方針だ。」

宋日昊大使は10月9日、日本からの学術訪朝団(私も参加)に対し次の通り説明した。日本で報道されていることと大きく食い違っている。
○北朝鮮は、調査結果について説明できると伝えたのに対し、日本側はそれに応じることを拒否した。
○日本側には現在の調査状況をあるがままに伝える用意があるが、日本側は拉致問題について期待した結果が得られないのであれば、調査結果を聴取できないと言われた。
○我々は調査結果をあるがままに日本側に伝える用意がある。

なぜこのような食い違いが生じたのか、考えるべきことはいくつかあるが、日本政府と北朝鮮政府の両方に敬意を払って、ここでは大きな食い違いがあることだけを指摘しておく。

2014.10.18

北朝鮮のサッカーはなぜ強いのか

ミャンマーのネピドーで開かれたサッカーの19歳以下(U19)アジア選手権の準々決勝で、日本チームはPK戦ではあったが、北朝鮮チームに敗れた。先のインチョンでのアジア大会で日本の女子チームが北朝鮮に苦杯を喫したのに続く敗北である。

先ごろ平壌を訪問して、なぜ北朝鮮のサッカーが強いのか、少しわかりかけた気がしたことを10月16日のブログに書いたが、比較的長い文章の末尾であったのであらためて記しておく。

要するに北朝鮮は国家政策としてスポーツ振興に力を入れており、サッカーチームが強くなったのも、またその他の種目でも満足できる結果が出ているのも、その効果ではないかと言うことである。
ピョンヤンの中心部から西南方向にある、金日成の故郷である万景台に向かう一帯にスポーツ施設が建設されている。サッカー、ハンドボール、卓球、射撃、バレーボール、重量挙げ、バドミントン、テコンドー、水泳など各種目ごとの独立施設であり、すぐ隣にはゴルフもある。「体育科学研究所」もある。
国民意識高揚に役立つという政治的目的もあろうが、一流の競技選手の強化だけでなく、全国民がスポーツを奨励されており、各単位で卓球台を増やし、駐車場をテニスコートにしたりしている。単位間、地域対抗などのスポーツ大会まで開催されており、北朝鮮側の説明を聞いていると、ほんらいスポーツとは関係ない単位でもスポーツをしない人は肩身が狭い思いをしているのではないかと思われるくらいであった。
アジア大会での北朝鮮チームの成績は満足できるものであり、その閉幕に際して北朝鮮はナンバー2の黄炳瑞党総政治局長、崔竜海体育指導委員会委員長および金養建党統一戦線部長をインチョンへ送り込み、韓国の首相などとも会談した。これに先立って、崔竜海は総政治局長から閑職に移されたという見方が外部では強かったが、そうでもないようである。総政治局長がナンバーツーの地位であることに変わりはないが、体育指導委員会委員長は決して閑職ではないし、崔竜海は今後も注目すべき人物の一人である。

2014.10.17

朝鮮の統一国家樹立構想

10月10日、北朝鮮は韓国に向けて連邦制の統一国家樹立を呼びかけた。この統一国家構想は1980年に金日成主席が「高麗民主連邦共和国」という名称で発表したものであり、今回はその再発表である。この連邦国家は「一つの民族、一つの国家、二つの制度、二つの政府」として出発するそうであり、中国の統一国家構想と似ているのでやはり「一国二制度」と呼ばれている。
北朝鮮は最近外交活動を活発化させており、外相を国連総会に出席させ、また、外交の重鎮である姜錫柱をヨーロッパへ送り、またアジア大会の閉幕に際してナンバー2以下の高官3名を派遣し、韓国の首相とも会談させた。このような動きは金正恩第1書記の采配によるものであろう。
我々の今回の訪朝(10月7~13日)の際にも、Ma Tong Hui軍縮平和研究所長は、朝鮮半島の統一は連邦制から始め徐々に一体性を高めていくのがよいと力説していた。同行者の一人から、かりに連邦制が成立した場合、国連の席は一つになるのかとただしたが、それに対する答えはなかった。
北朝鮮の狙いは、朝鮮半島の統一とともに同国の地位の安定を図ることにあるのであろう。また、韓国の朴槿恵大統領は今年の初めから統一問題と北朝鮮との対話に積極的な姿勢を何回か示しており、北朝鮮としては向こうを張って金日成構想を再提案したものと思われる。

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