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2013.07.17

ミサイルなど輸送中の北朝鮮貨物船の拘束

先週(7月8日の週)、パナマ政府は、ミサイルやミグ戦闘機の部品をキューバから北朝鮮に輸送中の北朝鮮貨物船Chong Chon Gang号をパナマ運河で拘束したことを発表した。この船はかなり抵抗したらしく、船長はのどを掻き切って自殺を図ったということも報道されている。これに先立って、7月1日に北朝鮮のハイレベル軍事代表団がキューバを訪問していた。これらの物品が輸送されたのは修理のためだと報道されているが、国連決議違反である疑いが強い。米国は当然のことながら、パナマの措置を称賛している。
キューバ外務省は7月16日、「1万トンの砂糖と240トンの古くなった武器を積んでいる」と発表した。
以上は基本的には事実関係の羅列であるが、中国の新華社電も17日、「パナマが拘束した北朝鮮の船舶には対空ミサイルとミグ戦闘機が搭積載されている」とキューバ外務省声明を引用する形で短く報道した。最小限の報道であるが、中国はこのようなことをこれまで報道してきたか。最近の中国の北朝鮮に対する態度硬化の一環なのか、気になる。

以下、米国の報道などから関連の諸情報を追加しておく。
パナマでは大統領自らが捜索を指揮していることがテレビで報道されており、北朝鮮の船舶を追跡している米国との間で緊密な連携があったことがうかがわれる。
一方、北朝鮮は何の目的でキューバから旧式のミサイルなどを運ぼうとしたのか。北朝鮮政府が沈黙しているのは驚くに値しないが、キューバについては、かつてのように米国と激しく対立することを改め、最近は態度を和らげようとする気配があっただけに、なぜ北朝鮮にそこまで協力したのか、と疑問を抱かれている。
パナマ当局の捜査はまだ進行中であり、今後新しい発見が出てくる可能性もある。
今回の事件は、米国の偵察衛星を使った情報収集活動にもあらためて関心が向けられる結果になった。米国は北朝鮮船舶の行動を監視しているが、百パーセント把握できているわけではなく、一定期間追跡が途切れることもあるそうだ。シリアが北朝鮮の協力で原子炉を建設していたことを、2007年にイスラエルに指摘されるまで把握できていなかったのもその一例である。
北朝鮮のチョン・チョン・ガン号は最近4年間西側へは航行していないことになっているが、通常の航行において使われる位置測定装置をオフにすると偵察衛星でも把握しにくくなる。そうするのは船の航行に危険であるが、危険な物資を積載している場合にはそういうこともありうる。パナマ当局の臨検に対して乗員が激しく抵抗したことを見ると、そのようなことがないとは言えない、というのが専門家の見方である。

2013.07.11

防衛白書に関する中国外交部報道官の論評

中国外交部の華春瑩報道官が7月10日、記者会見で日本の防衛白書2013年版について論評した中で、「日本は中国内部の事情に口を出す権利は持っていない」と「中国側は日本との関係を非常に重視しており、中日間4つの政治文書に基づき、歴史を鏡にする精神で中日関係を発展させていきたい」と述べた点だけが興味がある。それ以外は中国語で言う「罵人語(人をののしる言葉)」だと思う。
後者は重要なコメントである。前者については、日本の防衛白書がなぜ中国の内部事情に口出したことになるのか、わかりにくい。中国軍のことを論ずれば、それは中国内部のことに言及することになるかもしれないが、「中国内部の事情」というのは少しニュアンスが違うのではないか。翻訳の問題か、それとも微妙な含意があるのか、もう少し様子を見る必要がある。

2013.07.09

防衛白書2013

2013年版の防衛白書が発表された。
今年の白書は中国の行動について、「高圧的対応」「不測の事態を招きかねない。極めて遺憾」「中国は(射撃用)レーダー使用を否定するなど事実に反する説明をしている」「軍事に関する意思決定や行動に懸念」など率直な表現で防衛省としての見解を示している。これらの言及はほぼ正確なのであろう。防衛省として重大視していることが明確に示されているとは思う。
ただし、一党独裁で、言論の自由を許さず、歴史的に日本に対し複雑な感情を抱き、中国内部で種々の矛盾を抱える中国の政府と軍に対して、このように率直に物を言うことが適切か、疑問の余地はある。
中国の反応を注意深く見守る必要があろうし、日本は第三国の理解を得なければならないということもある。
今回の白書がよかったとか、問題であるとか、日中関係にとって有益か否か、など即断せずに、じっくりと見ていく必要がある。

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