平和外交研究所

中国

2016.02.18

(短文)在米中国大使館前の広場が「Liu Xiao-bo」と命名される

 2月12日、在米中国大使館前の広場を「Liu Xiao-bo」と命名する法案が米上院で承認された。ノーベル平和賞を受賞した劉曉波のことであり、同人は現在中国で監禁中だ。
 この法案を提出したのは大統領選の共和党候補の一人であるテッド・クルーズ。
 中国大使館は報道官名のメールで、「これは中国に対する挑発だ。よくない効果をもたらす。我々は米側にこの種の行動を止めるよう強く要求する」と抗議した。
(台湾中央社の12日報道)
2016.02.16

(短評)ミュンヘン安全保障会議での尖閣諸島および北朝鮮・中国・米国関係についての議論

 毎年この季節にドイツのミュンヘンで「安全保障会議」(MSC)という民間主催の国際シンポジウムが開かれる。各国の閣僚級が出席することが多いが首相の場合もある。経済問題が主のスイス・ダボス会議のほうがより有名だが、MSCは安全保障に関する最高の意見交換の場である。かつては欧米とロシアの関係に関心が集まっていたが、最近は中国が注目されており、今年は「中国と国際秩序」について特別セッションが設けられた。中国からは全国人民代表大会(国会に相当する)外事委員会の傅瑩主任委員(元外務次官)が出席した。

 今年のMSC(第52回 2月13~14日)で特に注目されたのは次の3つの議論だ。
 第1は、南シナ海での中国の行動に関し、日本から出席した黄川田外務大臣政務官と傅瑩元外務次官との応酬である。報道では、黄川田政務官が「中国は口では平和を重視すると言いながら、南シナ海では軍事施設を違法に建設するなど、一方的に現状を変更している」との趣旨を述べ、これに対し、傅瑩元外務次官が「日本こそ尖閣諸島を国有化するなど一方的に現状を変更した。尖閣諸島は中国の領土であり、中国が苦境にあるときに盗み取られた」などと黄川田政務官に反撃し、黄川田政務官は「尖閣諸島は日本の固有の領土だ。解決すべき領有権の問題は存在しない。中国側が歴史の修正を試みていると考える」などと反論したと伝えられている。
 第2に、ロシアのメドベージェフ首相がロシアと西側は冷戦時代さながらの対立状況になっていると、シリア問題についての米欧の対応を批判し、これに対しケリー米国務長官が反論した。この議論はMSCとして伝統的な東西対立の議論であった。
 第3に、北朝鮮に対する中国の働きかけについて、コーカー米上院外交委員長は「中国は何の役割も果たしていない」などと中国を厳しく非難したのに対し、傅瑩元外務次官はそれは事実でないと反論した。

 以上3つの議論は、言葉の激しさはともかく、内容的には特に目新しいものではないが、今後のMSCについては注意すべきことがある。
 第1に、中国は今後も大きな話題となるだろう。日本からどのような議論を展開するか予めよく検討しておかなければならない。
 今年の黄川田政務官の発言は事前の準備をうかがわせる面もあったが、今後は、国際司法裁判所での解決を中国は拒否しているが、日本は受けて立つ用意があることを主張すべきだ。これは各国に理解されやすい議論だ。中国が今後も繰り返し主張するであろう「尖閣諸島は日清戦争中に日本が盗取した」との議論は誤りだが、各国からすれば分かりやすい。
 第2に、北朝鮮問題についての傅瑩元外務次官の、「米国は自国の対北朝鮮政策を中国に押し付けている。われわれは米国の役割を演じることはできない。北朝鮮の要求は明らかだ。なぜ米国は北朝鮮に対し、彼らを侵略することはないと言えないのか。米国と北朝鮮が朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換する必要がある。中国は喜んで交渉を手助けする」という趣旨の説明は、分かりやすく、明快に問題の本質を論じている。今後の対北朝鮮政策において米国が考慮すべきことだ。

2016.02.05

(短文)中国の台湾工作会議

 2月2日、中国で台湾工作会議が開かれた。台湾での総統・立法院選挙で国民党が大敗した後初めて開かれた台湾関係の大会議である。
 中国が今後、台湾政策をどのように展開していくか、強い関心が持たれている。最大の問題点は、「中国との良好な関係」が選挙において国民党に有利に働いたかということであるが、有利に働かなかったという印象が強い。とくに、「中国人とは思わない。台湾人だ」という意識が強くなっている台湾人には、国民党によるそのようなアピールは効き目がなかった。
 これは中国にとって深刻な事態なはずだ。今まで中国は、中国との関係が重要であることを台湾に対してアピールし、国民党もそのことを強調して民進党と戦い、成果を上げてきた。2008年に民進党から政権を取り戻したときはまさにそうだったのだが、今回の総統・立法院選挙ではそのようなアピールがきかなかった。
 では中国として今後どうするのか。もし、国民党が再び勢力を回復するという予想に立てれば、これまでの国民党にすり寄る方針を変える必要はない。しかし、もしそういう予想に立てないのであれば、中国は今後台湾の何を頼りに台湾政策を展開していくか、想像もつかない。

 背景説明が長くなってしまったが、北京で開かれた台湾工作会議で、「中共中央對台領導小組副組長(共産党中央の台湾指導小組の副組長)」の俞正聲政治局常務委員は従来の台湾政策を繰り返し、肝心の、今後の国民党との関係については、「両岸は一つの中国であることを認める台湾のすべての政党と政治団体との交流を強化し、両岸の同胞と一緒に両岸の共同の政治基礎を擁護していく」と述べただけであった。国民党とは言わなかったが、この発言に合う政党は国民党しかいない。したがって、俞正聲は国民党との関係を含め、従来通りの方針を繰り返したに過ぎなかった。
 中国としては当面このように言うほかないだろうが、台湾問題の去就は中国の政治を揺るがしかねない大事になりつつある。中国は台湾の約60倍の人口を持つ巨大国家であり、これまでは台湾に強い影響を及ぼしてきたが、今後、台湾の状況が中国に影響することが強まるのではないかと思われる。

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