平和外交研究所

中国

2016.04.01

(短文)米国は蔡英文次期総統に対し南シナ海関係資料の公開を要求

 台湾の『旺報』4月1日付によれば、米国は蔡英文次期総統に対し、総統就任(5月20日)後、中華民国のいわゆる「十一段線(中国の「九段線」」に関する中華民国所有の歴史資料と証拠を公開するよう求めている。
 興味深い報道だ。新政権にとって、南シナ海にたいする国民党の「十一段線」主張は避けて通れない問題になりつつあり、処理を誤ると中国との関係を悪化する恐れがあるが、重要なことは主張に根拠があるか否かである。それを示さないで、ただ主張するのは認められない。そこで米国は関係資料の公表を求めたのだろう。これは当たり前のことのようだが、今まで行われていない。賢明な対処方法と思われる。
 ちなみに、米国の南シナ海に対する見解は、当研究所HP 2014.12.14 付「南シナ海に対する中国の主張に対する米国政府の法的的見解」に詳しく説明したが、一言でいえば、「九段線」であれ、「十一段線」であれ、主張に根拠はないというものだ。
2016.03.30

(短文)習近平に対する第2の辞任要求

 香港紙『明報』3月30日付は、習近平主席に対する辞任要求問題に関し、2つの記事を掲載している。

 その1つは、3月29日、海外に拠点がある『明鏡網』サイトが掲載した、習近平主席に対し辞任を要求する第2の公開状だ。同サイトからすぐに消去された。
 第2の公開状は、「習近平同志のその共産党内外の一切の職務を直ちに罷免することについて全党、全軍、全国人民に告げる書」と題するもので、「党政軍の各機関に所属する171人の中国共産党の忠実な党員」が発出したとし、習近平の犯した問題として、次のことを挙げている。
① 習近平は党規約に違反し、個人崇拝を許し、また支持し、人が習近平を「大大(非常に大きいという意味か)」とみなすのを放置した。インターネット上で習近平に対するおべっかの歌を流させ、今年は中央テレビ局で彭麗媛夫人の妹である彭麗娟に番組の制作を担当させた。
② 自ら法治に背き、個人独裁を敷いた。中央に各種の指導小組を設置し、自らその主任となった。李国強国務院総理を含む同志の合法的職権に影響と制約を与えた。
③ 国内を顧みず外国を大々的に援助した。
④ 軍にも災いを及ぼし、みずから長城(注 これまでの秩序という意味か)を壊した。みだりに軍の改革を行い、軍(人)の心を弱め、軍内の同志にいくつもの矛盾を惹起させた。
⑤ 習近平の生活は香港の書店が出版した『習近平と6人の女』が示す通り糜爛している。しかも習近平は公安を使って書店主と店員を拉致し、国際世論に火をつけた。

 公開状は以上を指摘した上で、「明年の第19回党大会で8千万余の党員全員に総書記(注 現在習近平)、党中央、党代表を選出させることを要求する。直接選挙によらない党中央は認めない」と宣言している。

 明報の第2の記事は概要次のとおりである。
 第1の公開状に関与したと疑われた長平(本名「張平」)は、同業者の賈葭(注 当研究所HP3月28日「習近平主席に対して辞職を求める公開状の調査」参照)に対する扱いが公平さを欠いていると評する記事を書いたため、長平の父と2人の弟は四川省の公安当局の調査を受けた。公安は、3月26日、彼らが先祖を供養する際に失火で山火事を起こしたことを責めているが、長平は、それはお門違いだ、としてフェースブックで公安当局に対して次の通り述べている。

「もしそれを本当に疑っているのなら、失火について調査すればよい。なぜあなた方は、わたくしの家族にわたくしと連絡を取るよう要求するのか。なぜ、わたくしが書いた文章を取り消すよう要求するのか。失火の1週間前から調査を開始するとは何事か。わたくしが評論を書いたことと家族は関係がない。取引にならない。」




2016.03.28

(短文)習近平主席に対して辞職を求める公開状の調査

 習近平主席に対して辞職を求める公開状(本研究所HP3月7日「習近平主席への公開状(抜粋)」に関し中国当局は引き続き調査を行っている。

 いわゆる「維権(権利擁護)」活動家の溫雲超(インターネットでは「北風」)は現在海外(米国らしい)に逃れているが、公開状の件で父母と弟が公安当局によって連行された。場所は溫雲超の故郷である廣東省揭陽。公安は3人に対し、溫雲超が公開状に関与していることを認めるよう迫っているそうだ。溫雲超は、自分はまったく関係ない、ただツイッターでこの公開状のことに触れただけだと言っていた(香港紙『明報』3月26日)。

 別のサイト「世界之声」は、「当局はすでに公開状の関係で20人余りを連行している。溫雲超に連絡してきたのは弟の妻であり、再度溫雲超から連絡を取ろうとしても通じなくなっている。また、溫雲超は、当局は溫雲超が公開状を書いたのでないことを知っているが、インターネットで広めたと思っている。だから作者を知っていると見て家族に圧力を加えている。認めさせて上司に報告したいのだ。今回の事件と中共が直面している二つの危機は関連がある。その一つは、習近平が権力を固める上での危機であり、もう一つは統治の上での危機と恐怖であり、だから当局は法を無視して非人道的なことも辞さないのだ」と溫雲超が述べたと報道している。

 この他、ジャーナリストの賈葭も取り調べを受けたとBBCが報道した。同放送の記者に対して、賈葭は、「無事であるが、どこにいるかは言えない。取り調べの状況についても今言えない」と答えたそうだ。

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