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2013.12.29
靖国神社参拝には日本の戦争指導者を顕彰する意味合いがあるからである。安倍首相は26日の参拝後記者団に対して、「靖国神社参拝はいわゆる戦犯を崇拝する行為だという誤解に基づく批判がある」と語ったと伝えられている。しかし、この説明で世界は納得しないだろう。戦犯を祭っている神社を参拝しておきながら戦犯を崇拝しないと主張することはまったくの矛盾であり、そのような主張が受け入れられるはずはない。
慰安婦、強制徴用などを取り上げない欧米諸国が靖国参拝について安倍首相を批判するのは、参拝の背後にある日本の政治的傾向に懸念を抱いているからである。表面的には、「日本と近隣諸国との関係を悪化させる」と言っているが、中国や韓国に味方することが目的ではない。
欧米諸国がなぜそのように考えるのか。2つの視点から見る必要があると思う。1つは、これら諸国は、戦後日本が変化し、平和を愛好する国家になったことを認めつつも、心のどこかに「日本は危険な脅威になりうる」という気持ちをぬぐいきれないでいることである。日本はいつか核武装するかもしれないという懸念はその最たる例である。日本と欧米諸国の間ではかなりの温度差があり、日本ではいかにして自信を取り戻すかということに国民的関心が向いているのでそのようなことは気が付きにくいが、欧米諸国にはそのような気持があるのである。
もっとも、欧米諸国は、日本の首相が靖国神社に参拝するたびに今回のような批判を行なっているわけではいない。なぜ今回は違っているかと言えば、安倍首相の政治姿勢(の一部)に懸念を抱いているからである。これが第2の視点である。要するに、日本が脅威になりうるという気持ちが払しょくできないところに安倍首相の姿勢が重なって、欧米諸国は靖国神社参拝批判に踏み切ったということである。
さる10月の2+2会議に出席のため来日した米国の国務・国防両長官は千鳥ヶ淵戦没者墓苑を参拝した。米国は「無名戦士の墓地に参拝する。靖国神社には行かない」という姿勢を明確に示したのであるが、その意図するところは、「米国は日本軍人の戦没者の慰霊はさせてもらうが、戦争指導者には敬意を表しない」ということであり、その背景には日本との戦争の記憶が残っている。このことを察知しないのはよほどの怠慢であると言わざるをえない。
しかし、安倍首相は靖国神社参拝を強行した。米国としては、重要な同盟国の首相は米国の意見を無視し、日米の同盟関係に過去の敵対関係の影響が及んでくる恐れを顧みずあくまで自己の主張を通そうとしたと「失望」したのではないか。
大事なことは、戦争指導者を顕彰することなく、戦争で命を落とした軍人の霊を敬意をもって慰めることである。安倍首相は一刻も早く問題の深刻さを認識し、真の戦没軍人の慰霊ができる環境を整えるべきである。
(さらに…)
安倍首相の靖国参拝と国際的孤立
安倍首相の靖国神社参拝について中韓両国のみならず米国、ロシア、EU(以下「欧米諸国」)も批判的な反応を示した。具体的な言葉は、米国が「失望した」、ロシアは「遺憾の念」、EUは「慎重な外交を求める」とさまざまであるが、いずれも安倍首相に批判的である。日本にとって由々しき事態である。靖国神社参拝には日本の戦争指導者を顕彰する意味合いがあるからである。安倍首相は26日の参拝後記者団に対して、「靖国神社参拝はいわゆる戦犯を崇拝する行為だという誤解に基づく批判がある」と語ったと伝えられている。しかし、この説明で世界は納得しないだろう。戦犯を祭っている神社を参拝しておきながら戦犯を崇拝しないと主張することはまったくの矛盾であり、そのような主張が受け入れられるはずはない。
慰安婦、強制徴用などを取り上げない欧米諸国が靖国参拝について安倍首相を批判するのは、参拝の背後にある日本の政治的傾向に懸念を抱いているからである。表面的には、「日本と近隣諸国との関係を悪化させる」と言っているが、中国や韓国に味方することが目的ではない。
欧米諸国がなぜそのように考えるのか。2つの視点から見る必要があると思う。1つは、これら諸国は、戦後日本が変化し、平和を愛好する国家になったことを認めつつも、心のどこかに「日本は危険な脅威になりうる」という気持ちをぬぐいきれないでいることである。日本はいつか核武装するかもしれないという懸念はその最たる例である。日本と欧米諸国の間ではかなりの温度差があり、日本ではいかにして自信を取り戻すかということに国民的関心が向いているのでそのようなことは気が付きにくいが、欧米諸国にはそのような気持があるのである。
もっとも、欧米諸国は、日本の首相が靖国神社に参拝するたびに今回のような批判を行なっているわけではいない。なぜ今回は違っているかと言えば、安倍首相の政治姿勢(の一部)に懸念を抱いているからである。これが第2の視点である。要するに、日本が脅威になりうるという気持ちが払しょくできないところに安倍首相の姿勢が重なって、欧米諸国は靖国神社参拝批判に踏み切ったということである。
さる10月の2+2会議に出席のため来日した米国の国務・国防両長官は千鳥ヶ淵戦没者墓苑を参拝した。米国は「無名戦士の墓地に参拝する。靖国神社には行かない」という姿勢を明確に示したのであるが、その意図するところは、「米国は日本軍人の戦没者の慰霊はさせてもらうが、戦争指導者には敬意を表しない」ということであり、その背景には日本との戦争の記憶が残っている。このことを察知しないのはよほどの怠慢であると言わざるをえない。
しかし、安倍首相は靖国神社参拝を強行した。米国としては、重要な同盟国の首相は米国の意見を無視し、日米の同盟関係に過去の敵対関係の影響が及んでくる恐れを顧みずあくまで自己の主張を通そうとしたと「失望」したのではないか。
大事なことは、戦争指導者を顕彰することなく、戦争で命を落とした軍人の霊を敬意をもって慰めることである。安倍首相は一刻も早く問題の深刻さを認識し、真の戦没軍人の慰霊ができる環境を整えるべきである。
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2013.12.27
「戦争で命を落とした軍人の霊を慰めるのは非常に重要なことである。今回の参拝についてもその目的としてそのようなことが掲げられており、その限りにおいて評価しうる。
しかし、戦争を指導した人を顕彰すべきでなく、いわゆるA級戦犯を祭っている靖国神社に日本政府の指導者が参拝すべきでない。宗教法人である靖国神社がA級戦犯を祭ることは神社が決めることであるが、戦争の指導者を祭ることはどうしても戦争を指導したことを顕彰する意味合いが出てくる。だから参拝すべきでない。これが私の基本的な考えである。
中国や韓国が反発するから参拝すべきでないというのではない。多数の犠牲者を出した国の感情に配慮するのは当然であるが、それよりも日本自らの問題として考えなければならない。
米国政府は東アジアの現状に憂慮し、なんとか緊張が緩和するよう要望しており、先のバイデン副大統領の3国歴訪もその表れであった。また、日本の現政権の歴史問題に関する姿勢について疑念を抱いており、米国の新聞は批判したこともある。このような状況にあって、今回の安倍首相による靖国神社訪問を遺憾に思うのは米国として自然なことであろう。日本は今後戦争の犠牲になった近隣諸国によく配慮していく必要がある。」
戦没者の慰霊についての私の考えは、2013年6月23日の「オピニオン」に掲載した一文に詳しく説明しています。18年前に読売新聞に寄稿したものです。
(さらに…)
安倍首相の靖国神社参拝
12月26日、安倍首相が靖国神社を参拝したことに関して、複数のプレスからコメントを求められた。私の語ったことの要点は次の通りである。「戦争で命を落とした軍人の霊を慰めるのは非常に重要なことである。今回の参拝についてもその目的としてそのようなことが掲げられており、その限りにおいて評価しうる。
しかし、戦争を指導した人を顕彰すべきでなく、いわゆるA級戦犯を祭っている靖国神社に日本政府の指導者が参拝すべきでない。宗教法人である靖国神社がA級戦犯を祭ることは神社が決めることであるが、戦争の指導者を祭ることはどうしても戦争を指導したことを顕彰する意味合いが出てくる。だから参拝すべきでない。これが私の基本的な考えである。
中国や韓国が反発するから参拝すべきでないというのではない。多数の犠牲者を出した国の感情に配慮するのは当然であるが、それよりも日本自らの問題として考えなければならない。
米国政府は東アジアの現状に憂慮し、なんとか緊張が緩和するよう要望しており、先のバイデン副大統領の3国歴訪もその表れであった。また、日本の現政権の歴史問題に関する姿勢について疑念を抱いており、米国の新聞は批判したこともある。このような状況にあって、今回の安倍首相による靖国神社訪問を遺憾に思うのは米国として自然なことであろう。日本は今後戦争の犠牲になった近隣諸国によく配慮していく必要がある。」
戦没者の慰霊についての私の考えは、2013年6月23日の「オピニオン」に掲載した一文に詳しく説明しています。18年前に読売新聞に寄稿したものです。
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2013.12.24
日中関係は複雑化しているが、日本人が中国に滞在している状況は両国を観察する興味ある窓口である。
在中国の日本人の数は2003年から2007年にかけ急速に增加し、2008年に対前年比で1977人減少しただけで、2010年前後から再び増加が始まっている。低レベルに落ち込んでいるのではない。
2012年10月から2013年10月の間に、15.03万人の日本人が、台湾を除く中国領土で居住している。
一方、この一年、日本には约45万人の中国人が滞在しており、これは在日外国人のなかで第1位である。2011年の日本の総務省の数字である。
世界で日本人が多い都市50のうち10は中国である。
第1位はロスアンゼルスの7.14万人で、次が上海の5.74万人であり、ニューヨークの5.33万人、バンコクの3.99万人、ロンドンの3.83万人と続いている。
香港在留の日本人は2.31万人(世界で第9位)、北京は1.15万人(第17位)、蘇州1.07万人、台北8028人、広州7010人、深圳5164人、大連4905人、天津3157人となっている。
中国の政治の中心である北京では、過去3年日本人の数は10103人、10355人、11596人と増加傾向にある。
(さらに…)
中国在留の日本人は減少していない
日本人が中国から離れる傾向があるというのは少なくとも数字から見る限り事実でない、と中国の雑誌『瞭望東方周刊』第522期掲載の記事が言っている。同雑誌は新華社が発行している。主な内容は次のとおりである。日中関係は複雑化しているが、日本人が中国に滞在している状況は両国を観察する興味ある窓口である。
在中国の日本人の数は2003年から2007年にかけ急速に增加し、2008年に対前年比で1977人減少しただけで、2010年前後から再び増加が始まっている。低レベルに落ち込んでいるのではない。
2012年10月から2013年10月の間に、15.03万人の日本人が、台湾を除く中国領土で居住している。
一方、この一年、日本には约45万人の中国人が滞在しており、これは在日外国人のなかで第1位である。2011年の日本の総務省の数字である。
世界で日本人が多い都市50のうち10は中国である。
第1位はロスアンゼルスの7.14万人で、次が上海の5.74万人であり、ニューヨークの5.33万人、バンコクの3.99万人、ロンドンの3.83万人と続いている。
香港在留の日本人は2.31万人(世界で第9位)、北京は1.15万人(第17位)、蘇州1.07万人、台北8028人、広州7010人、深圳5164人、大連4905人、天津3157人となっている。
中国の政治の中心である北京では、過去3年日本人の数は10103人、10355人、11596人と増加傾向にある。
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