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2014.11.09
○この合意により、約3年ぶりとなる日中首脳会談開催の道をつけた意義は大きい。
○中国はこれまで日本政府による尖閣諸島の国有化を目の敵のように攻撃してきたが、国有化問題に触れない内容で合意した。尖閣諸島を日本政府が所有しているという状態は今後も変わらない。
○尖閣諸島に関し「領有権問題は存在しない」という日本政府の立場について合意は何も言っていない。領有権問題について意見の相違があるとも言っていない。「日中両国は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し」と言っているだけである。日本政府は今後も「領有権問題は存在しない」という立場を維持していくであろう。
○8日付の中国共産党機関紙・人民日報は「中日双方は初めて釣魚島問題について、文字として明確な合意に達した」と指摘した。これは事実上中国政府の公式見解である。「釣魚島問題について明確な合意に達した」と言うが、その合意がどのような内容かが問題であり、それについて合意文書は「両国は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避すること」が合意内容だと言っている。それ以上のことではない。
○さらに人民日報は、「文字として合意した」と述べている。「文字として」は特に問題視する必要はない。結局重要なことは合意したことの内容である。
○合意文書は、尖閣諸島等東シナ海での緊張状態について、国際法に従って解決を図るべきであるという日本側のかねてからの主張に何も触れていない。双方は「対話と協議」および「危機管理メカニズム」により情勢の悪化を防ぐと言っているが、これに加えて「国際法に従って」と言う一言を挿入したほうがよかったのではないか。もっとも、中国側がそれに触れたくないのは明らかであり、日本側がこれにこだわると合意達成は困難だったかもしれない。実際に日本側からこの点を主張したかどうか知らないが。
○靖国神社参拝については、合意第2項の「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」をどのように解釈するか。合意文書の中で「若干の認識の一致をみた」と言うのはめずらしいどころか、稀有なことである。「若干の認識の一致をみた」とは一致しなかったことがあることを意味している。そうすると、この2項はいわゆるagree to disagreeの一例か。ともかく、靖国神社参拝については、中国は今後も抗議の声を上げ続けるであろう。日本側がそれを完全に無視すると両国関係は再び落ち込むであろう。つまり、歴史問題については明確な合意に至らなかったが、日本側としても一定の配慮が必要である。
(さらに…)
日中11・7合意を再度論ず
7日に達成された日中合意について両国内部で批判する声も上がっているが、客観的にどのように評価すべきか。どちらが多く譲歩したか。比べる必要もないし、そうすべきでないが、留意しておくべきことがいくつかある。○この合意により、約3年ぶりとなる日中首脳会談開催の道をつけた意義は大きい。
○中国はこれまで日本政府による尖閣諸島の国有化を目の敵のように攻撃してきたが、国有化問題に触れない内容で合意した。尖閣諸島を日本政府が所有しているという状態は今後も変わらない。
○尖閣諸島に関し「領有権問題は存在しない」という日本政府の立場について合意は何も言っていない。領有権問題について意見の相違があるとも言っていない。「日中両国は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し」と言っているだけである。日本政府は今後も「領有権問題は存在しない」という立場を維持していくであろう。
○8日付の中国共産党機関紙・人民日報は「中日双方は初めて釣魚島問題について、文字として明確な合意に達した」と指摘した。これは事実上中国政府の公式見解である。「釣魚島問題について明確な合意に達した」と言うが、その合意がどのような内容かが問題であり、それについて合意文書は「両国は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避すること」が合意内容だと言っている。それ以上のことではない。
○さらに人民日報は、「文字として合意した」と述べている。「文字として」は特に問題視する必要はない。結局重要なことは合意したことの内容である。
○合意文書は、尖閣諸島等東シナ海での緊張状態について、国際法に従って解決を図るべきであるという日本側のかねてからの主張に何も触れていない。双方は「対話と協議」および「危機管理メカニズム」により情勢の悪化を防ぐと言っているが、これに加えて「国際法に従って」と言う一言を挿入したほうがよかったのではないか。もっとも、中国側がそれに触れたくないのは明らかであり、日本側がこれにこだわると合意達成は困難だったかもしれない。実際に日本側からこの点を主張したかどうか知らないが。
○靖国神社参拝については、合意第2項の「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」をどのように解釈するか。合意文書の中で「若干の認識の一致をみた」と言うのはめずらしいどころか、稀有なことである。「若干の認識の一致をみた」とは一致しなかったことがあることを意味している。そうすると、この2項はいわゆるagree to disagreeの一例か。ともかく、靖国神社参拝については、中国は今後も抗議の声を上げ続けるであろう。日本側がそれを完全に無視すると両国関係は再び落ち込むであろう。つまり、歴史問題については明確な合意に至らなかったが、日本側としても一定の配慮が必要である。
(さらに…)
2014.11.08
(日本側)
「日中関係の改善に向けた話し合いについて
2014年11月7日
日中関係の改善に向け、これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが、今般、以下の諸点につき意見の一致をみた。
1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守(じゅんしゅ)し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。」
この合意に関し、日中両国でそれぞれ反応が出始めている。日本では、尖閣諸島に関し日本政府が従来一貫して維持してきた「領土紛争はない」とする立場を変え、譲歩したとする批判や、中国では、この合意では日本側は尖閣諸島について従来からの立場をなんら変えていない、したがって習近平主席が安倍首相に会うのは賢明でないという意見である(7日付の『多維新聞』が紹介している)。
これについてとりあえず気が付く点は次のとおりである。
○この合意により日中首脳会談開催の地ならしが行われたと見てよいが、首脳会談開催を確定したものではなく、予定されている外相会談でもその確定のために協議が行われる。そして実現することが望ましい。
○尖閣諸島に関し「領土問題は存在しない」という日本の立場は変わっていない。そのことは中国側でも明確に認識しているであろう。今後対話と協議が行われるが、「情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避する」ためである。領土問題を話し合うためでない。
○日中間で意見が異なることについては国際法に従って解決を図ることを双方で確認できておれば、今回の合意はよりいっそう良いものとなったであろう。
○全体として、中国側は一定程度譲歩しているとみてよい。
(さらに…)
谷内国家安全保障局長と楊潔篪国務委員との合意
谷内(やち)正太郎国家安全保障局長が6日に訪中し、首脳会談の実現に向けて楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と調整した結果、合意に達し、日中両国はそれぞれ次の合意文書を発表した。(日本側)
「日中関係の改善に向けた話し合いについて
2014年11月7日
日中関係の改善に向け、これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが、今般、以下の諸点につき意見の一致をみた。
1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守(じゅんしゅ)し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。」
この合意に関し、日中両国でそれぞれ反応が出始めている。日本では、尖閣諸島に関し日本政府が従来一貫して維持してきた「領土紛争はない」とする立場を変え、譲歩したとする批判や、中国では、この合意では日本側は尖閣諸島について従来からの立場をなんら変えていない、したがって習近平主席が安倍首相に会うのは賢明でないという意見である(7日付の『多維新聞』が紹介している)。
これについてとりあえず気が付く点は次のとおりである。
○この合意により日中首脳会談開催の地ならしが行われたと見てよいが、首脳会談開催を確定したものではなく、予定されている外相会談でもその確定のために協議が行われる。そして実現することが望ましい。
○尖閣諸島に関し「領土問題は存在しない」という日本の立場は変わっていない。そのことは中国側でも明確に認識しているであろう。今後対話と協議が行われるが、「情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避する」ためである。領土問題を話し合うためでない。
○日中間で意見が異なることについては国際法に従って解決を図ることを双方で確認できておれば、今回の合意はよりいっそう良いものとなったであろう。
○全体として、中国側は一定程度譲歩しているとみてよい。
(さらに…)
2014.11.07
さらに」、この記事は、日本の防衛省のスポークスマンが「日本が機雷除去に参加するか否かはその時の状況による」とコメントしたことを続けて報道している。Thomas 司令官のような受け止め方は日本では必ずしも共有されていない、両者間にはギャップがあることを指摘しているのであり、公平な報道である。
この記事を見るにつけ、日本での閣議決定はなかなか米欧などに理解されず、日本の姿勢に疑問を抱かれる危険があるように思えてならない。つまり、一方で集団的自衛権の行使ができると言い、また、機雷の除去作業に自衛隊が参加できると具体的に示しながら、実際には参加するかも、あるいはしないかもしれないというのは米欧には分かりにくいことなのではないか。
さらに付言すれば、機雷の除去に参加するか否かの決定は従来通り諸般の状況を考慮して慎重に行なうということで日本として問題ないのである。日本はすでにこの問題で人的貢献を行なっており、そのことは国際的に評価されている。つまり、集団的自衛権を行使できないことを理由に機雷の除去を拒否していないのである。現在の方針に加えて」、さらに「集団的自衛権の行使ができるようになった」と言うのは、いたずらに期待感を高めるだけではないかと思われる。
(さらに…)
機雷除去について誤解が生じつつある
10月27日付のJAPANTODAY(ロイターもキャリー)は、「これまで日本の自衛隊は純粋に防御的姿勢しかとらなかったが、先般の閣議決定により日本は平和憲法の解釈を変え、攻撃されている同盟国を救助できることになった」という解説を加えた後、第7艦隊司令官のRobert Thomas中将が、北朝鮮との戦争が始まった場合、とくに紛争の初期の機雷戦争で日本の海上自衛隊は「決定的な力(a critical asset)」となりうる、と語ったことを報道している。この報道は日本の閣議に含まれている集団的自衛権行使の厳しい要件に立ち入っていない点で問題であるが、閣議決定についての欧米での普通の見方を反映している。さらに」、この記事は、日本の防衛省のスポークスマンが「日本が機雷除去に参加するか否かはその時の状況による」とコメントしたことを続けて報道している。Thomas 司令官のような受け止め方は日本では必ずしも共有されていない、両者間にはギャップがあることを指摘しているのであり、公平な報道である。
この記事を見るにつけ、日本での閣議決定はなかなか米欧などに理解されず、日本の姿勢に疑問を抱かれる危険があるように思えてならない。つまり、一方で集団的自衛権の行使ができると言い、また、機雷の除去作業に自衛隊が参加できると具体的に示しながら、実際には参加するかも、あるいはしないかもしれないというのは米欧には分かりにくいことなのではないか。
さらに付言すれば、機雷の除去に参加するか否かの決定は従来通り諸般の状況を考慮して慎重に行なうということで日本として問題ないのである。日本はすでにこの問題で人的貢献を行なっており、そのことは国際的に評価されている。つまり、集団的自衛権を行使できないことを理由に機雷の除去を拒否していないのである。現在の方針に加えて」、さらに「集団的自衛権の行使ができるようになった」と言うのは、いたずらに期待感を高めるだけではないかと思われる。
(さらに…)
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