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2018.01.09
南北朝鮮間では、9日、ハイレベルの対話が行われ、平昌オリンピックへの北朝鮮の参加問題などが話し合われる。一般には非核化問題にも好影響を与えるかもしれないといった期待感が、どのくらい大きいかはともかく、広く持たれているようだが、南北対話から非核化問題が進むことはありえない。「南北対話」と「北朝鮮の非核化」は別の土俵で起こっていることであり、明確に区別して見ていく必要がある。したがって、また、米国の一部高官のように心配したり、韓国に警告したりする必要もない。
トランプ大統領の発言は非核化に直接かかわってくる。しかも、日本の外交にとって深刻な問題になりうる。
トランプ氏が、北朝鮮との対話について前向きの姿勢を大統領として語ったのは、今回で3回目である。最初は昨年4月末のCBSとのインタビューで、2回目はアジア歴訪中の11月、ベトナムでの記者会見であった。
要するに、トランプ氏は安倍首相に対しては「日本の立場を100%支持する」と言いつつ、他の場所では「対話」について前向きの姿勢を示しているのだ。しかも、今回は「対話は良いことだといつも思っている」と述べ、同氏の発言はその場限りのことでないことを明言した。
一方、安倍首相は「圧力」一本やりであり、「対話は時期尚早」である。しかもこの立場は一貫している。
トランプ氏のように発言がコロコロ変わるのは決して褒められることでないが、外交のためには幅のあるほうが有利だ。状況に応じて臨機応変に動けるからだ。
ともかく、トランプ氏は今後も北朝鮮の非核化問題に関する「対話」について発言するだろう。日米の立場は、日本政府の説明と違って、大事なところで違ってきつつあるのではないか。
トランプ大統領の「対話」発言ーその3
トランプ米大統領は1月6日、北朝鮮の金正恩委員長と直接対話をすることについて、「私は対話は良いことだといつも思っており、全く問題ない」と発言した。南北朝鮮間では、9日、ハイレベルの対話が行われ、平昌オリンピックへの北朝鮮の参加問題などが話し合われる。一般には非核化問題にも好影響を与えるかもしれないといった期待感が、どのくらい大きいかはともかく、広く持たれているようだが、南北対話から非核化問題が進むことはありえない。「南北対話」と「北朝鮮の非核化」は別の土俵で起こっていることであり、明確に区別して見ていく必要がある。したがって、また、米国の一部高官のように心配したり、韓国に警告したりする必要もない。
トランプ大統領の発言は非核化に直接かかわってくる。しかも、日本の外交にとって深刻な問題になりうる。
トランプ氏が、北朝鮮との対話について前向きの姿勢を大統領として語ったのは、今回で3回目である。最初は昨年4月末のCBSとのインタビューで、2回目はアジア歴訪中の11月、ベトナムでの記者会見であった。
要するに、トランプ氏は安倍首相に対しては「日本の立場を100%支持する」と言いつつ、他の場所では「対話」について前向きの姿勢を示しているのだ。しかも、今回は「対話は良いことだといつも思っている」と述べ、同氏の発言はその場限りのことでないことを明言した。
一方、安倍首相は「圧力」一本やりであり、「対話は時期尚早」である。しかもこの立場は一貫している。
トランプ氏のように発言がコロコロ変わるのは決して褒められることでないが、外交のためには幅のあるほうが有利だ。状況に応じて臨機応変に動けるからだ。
ともかく、トランプ氏は今後も北朝鮮の非核化問題に関する「対話」について発言するだろう。日米の立場は、日本政府の説明と違って、大事なところで違ってきつつあるのではないか。
2018.01.04
新しいことは何もない。金正恩委員長は北朝鮮の核戦力が完成したとの考えであり、そのことを米国にできるだけ大きく、また強く見せつけようとしている。それにトランプ大統領が独特の反知性的スタイルで反応しているに過ぎない。ばかばかしいやり取りであり、アニメにでもすればよいだろう。今年もこのような低俗な口げんかに付き合わされるのかと思うと憂鬱だ。
一方、南北朝鮮間では緊張緩和の機運が高まっている。これも金正恩委員長が同じ新年の辞で平昌オリンピックに言及して、「大会が成功裏に開催されることを心から願っている。われわれは代表団の派遣を含めて必要な措置を講じる用意があり、そのために北と南の当局が至急会うこともできる」と述べたことから始まった。韓国側では以前から北朝鮮のオリンピック参加の可能性を模索していたので、最初の働きかけは韓国から行われたのであろうが、ともかく金正恩委員長の発言から物事が動き始め、翌2日、文在寅大統領が金正恩委員長の発言を支持する意思を表明した。
両国は南北会談を開く準備にかかり、停止されていたホットラインを復活させた。北朝鮮は韓国批判を一切中止した。
最大の問題は、例年2月末から3月初めに開始される米韓合同演習をどうするかである。オリンピックは2月9~25日、パラリンピックは3月9~18日開催されるので、例年通りであればオリンピックの開催中に米韓の演習が開始されることになる。この演習は北朝鮮が仮想の相手であり、北朝鮮はかねてよりこれを嫌悪し、また、米韓両国を非難する際に「北朝鮮に対する敵対行為だ」と繰り返してきたことなので、実際にそのような事態になれば、南北間の緊張緩和はいっぺんに吹き飛んでしまうかもしれない。
米韓両国はこの重要な演習を延期すべきか、すでに検討を始めている。マティス米国防長官は12月29日、「計画変更は常に両国と軍次第だ。(検討結果は)米韓両政府から発表があるだろう」と語っていた。この話しぶりからすれば、演習が延期されることになる可能性は大きいように思われる。
米韓合同演習が首尾よく延期されれば、われわれは2か月間、平穏な毎日を過ごせることとなる。昨年は金正恩委員長が新年の辞で「大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の準備が最終段階に入った」と述べ、2月初めの安倍首相とトランプ大統領の会談の際にミサイルの発射実験を行い、その後もミサイル実験を繰り返したのと大違いになる。
平昌オリンピックまでの2か月間、北朝鮮をめぐる状況が平穏に保たれれば、その後も積極的な方向に進むきっかけになりうる。長年こじれてきた問題なので安易に楽観的になれないが、関係国はその方向で努力するのは当然である。
今月16日に、北朝鮮問題に関する閣僚級会議がカナダ・バンクーバーで開催される。北朝鮮の脅威に対して各国が意見交換することはもちろん必要だが、現在ほんのりと浮かび上がってきた緊張緩和の兆しにもうまく対応してもらいたいものである。
新年も米朝両首脳の激しい口合戦で始まったが、、、
金正恩委員長が新年の辞で、「執務机の上に核のボタンが置いてある」と言ったのに対し、トランプ米大統領は2日、自分はそれより「ずっと大きく強力な」核ボタンを保有しているとツイートした。新しいことは何もない。金正恩委員長は北朝鮮の核戦力が完成したとの考えであり、そのことを米国にできるだけ大きく、また強く見せつけようとしている。それにトランプ大統領が独特の反知性的スタイルで反応しているに過ぎない。ばかばかしいやり取りであり、アニメにでもすればよいだろう。今年もこのような低俗な口げんかに付き合わされるのかと思うと憂鬱だ。
一方、南北朝鮮間では緊張緩和の機運が高まっている。これも金正恩委員長が同じ新年の辞で平昌オリンピックに言及して、「大会が成功裏に開催されることを心から願っている。われわれは代表団の派遣を含めて必要な措置を講じる用意があり、そのために北と南の当局が至急会うこともできる」と述べたことから始まった。韓国側では以前から北朝鮮のオリンピック参加の可能性を模索していたので、最初の働きかけは韓国から行われたのであろうが、ともかく金正恩委員長の発言から物事が動き始め、翌2日、文在寅大統領が金正恩委員長の発言を支持する意思を表明した。
両国は南北会談を開く準備にかかり、停止されていたホットラインを復活させた。北朝鮮は韓国批判を一切中止した。
最大の問題は、例年2月末から3月初めに開始される米韓合同演習をどうするかである。オリンピックは2月9~25日、パラリンピックは3月9~18日開催されるので、例年通りであればオリンピックの開催中に米韓の演習が開始されることになる。この演習は北朝鮮が仮想の相手であり、北朝鮮はかねてよりこれを嫌悪し、また、米韓両国を非難する際に「北朝鮮に対する敵対行為だ」と繰り返してきたことなので、実際にそのような事態になれば、南北間の緊張緩和はいっぺんに吹き飛んでしまうかもしれない。
米韓両国はこの重要な演習を延期すべきか、すでに検討を始めている。マティス米国防長官は12月29日、「計画変更は常に両国と軍次第だ。(検討結果は)米韓両政府から発表があるだろう」と語っていた。この話しぶりからすれば、演習が延期されることになる可能性は大きいように思われる。
米韓合同演習が首尾よく延期されれば、われわれは2か月間、平穏な毎日を過ごせることとなる。昨年は金正恩委員長が新年の辞で「大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の準備が最終段階に入った」と述べ、2月初めの安倍首相とトランプ大統領の会談の際にミサイルの発射実験を行い、その後もミサイル実験を繰り返したのと大違いになる。
平昌オリンピックまでの2か月間、北朝鮮をめぐる状況が平穏に保たれれば、その後も積極的な方向に進むきっかけになりうる。長年こじれてきた問題なので安易に楽観的になれないが、関係国はその方向で努力するのは当然である。
今月16日に、北朝鮮問題に関する閣僚級会議がカナダ・バンクーバーで開催される。北朝鮮の脅威に対して各国が意見交換することはもちろん必要だが、現在ほんのりと浮かび上がってきた緊張緩和の兆しにもうまく対応してもらいたいものである。
2017.12.31
西欧諸国は経済規模で中国に圧倒されつつも、中国経済は西欧諸国にも恩恵をもたらすことを学んだ。2011年12月21日付の英国エコノミスト紙が、「中国のWTO加盟10周年を記念しよう。中国の加盟により、世界はより豊かになった」とする記事を掲載したのは象徴的であった。
西欧諸国の経済は近年、低成長を続け、時にはマイナス成長となるなど厳しい状況にあり、しかも最近は難民対策などの負担が増大している。
一方、中国との間では、米国や日本と違って政治的問題は少なく、中国との経済関係を強めることにブレーキとなる要因はほとんどない。雪崩現象にもたとえられる中国への殺到はある意味、自然である。
中国傾斜の先頭を切ったのは英国であり、2015年の3月、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加した。米国から慎重に対応するよう、あらかじめくぎを刺されていたが、それには構わなかったという。
国際金融に豊かな経験とノウハウを持つ英国がなぜそのような行動に出たか不可解であったが、英国としては英国経済の活性化を図るためやむをえない決断だったのだろう。
その半年後、英国は訪英した習近平主席を大歓迎し、中国メディアが「最上級の待遇」と異例の報道をするくらい喜ばせた。しかも、中国製原発の輸入とそれに伴う中国資本の受け入れに同意したことはAIIBへの参加以上に驚きであった。ブラッドウェルの原発には中国広核集団(CGN)が66・5%を出資する。これだけの出資比率になると、発言力は極めて大きくなり、英側は中国の言いなりにならざるをえない。日本では考えられないことであった。
ドイツの経済もやはり厳しい状況にあり、低成長かマイナス成長である。しかし、EUの最強のリーダーとして重い財政負担を強いられている。また、中近東・アフリカからの難民は大多数がドイツを目指してくる。したがって、急速に拡大を続ける中国経済は大きな魅力であり、中国との貿易・投資関係は顕著に増大している。
ドイツの中国経済への強い関心を代表しているのがメルケル首相であり、2016年6月までに9回訪中した。メルケル氏は中国に人権の尊重や法の支配も訴えているが、中国側はそれらの問題は独中関係のごく一部であるとしてまともに取り合おうとしない。これに対し、ドイツ側もしつこく追及はしていない。
しかし、西欧諸国は完全にエコノミック・アニマルになったのではないことをしめす出来事が起こった。
12月13日、中国が南京事件80年記念の行事を行った日であったが、ドイツとフランスの在中国大使は連名で、英フィナンシャル・タイムズ紙中国語版に独仏の和解の経験を語る一文を投稿した。その中には、「犯罪を犯した者は自らの罪を認め、被害者は許さなければならない」との趣旨の言及があった。
中国としては、「日本は罪を認めなければならない」というのはよいが、「中国は日本を許さなければならない」というのは癇に障ったのであろう。人民日報系の環球時報12月28日付が掲載した評論は、両大使の寄稿は「中国内政に対する粗暴な干渉」「中国人に対する無礼なお説教である」と述べるなど、不愉快極まりないという感情があふれていた。
ドイツやフランスはかねてより、彼らの和解の経験を東アジアでも参考にしてほしいということがよくあった。また、中国も日本に対し、ドイツの姿勢を学んでほしいと何回も求めたことがあった。
しかるに、両大使の寄稿文は中国にも努力を求めている。しかも南京事件を記念する日にその文章を発表しているので、日本に対するよりもむしろ中国に対する注文が多いと感じたのであろう。
両大使は、中国のことをよく知っており、そのような中国側の反応を予測したうえでの寄稿だったと思われる。経済面では中国との関係を最大限重視しつつも、政治的には冷めているところがあることを思い起こさせる一事であった。
なお、最近、ドイツの中国に対する見かたは変化しつつあるというドイツ人も出てきているそうである。
西欧諸国の中国に対する姿勢
西欧諸国が中国の経済成長に関心を向けるようになったのは1990年代中葉からである。中国は2001年、WTOに加盟して高度成長期に入り、数年後、そのGDPはイタリア、フランス、イギリス、ドイツを次々に追い抜き、2010年には日本を追い越した。西欧諸国は経済規模で中国に圧倒されつつも、中国経済は西欧諸国にも恩恵をもたらすことを学んだ。2011年12月21日付の英国エコノミスト紙が、「中国のWTO加盟10周年を記念しよう。中国の加盟により、世界はより豊かになった」とする記事を掲載したのは象徴的であった。
西欧諸国の経済は近年、低成長を続け、時にはマイナス成長となるなど厳しい状況にあり、しかも最近は難民対策などの負担が増大している。
一方、中国との間では、米国や日本と違って政治的問題は少なく、中国との経済関係を強めることにブレーキとなる要因はほとんどない。雪崩現象にもたとえられる中国への殺到はある意味、自然である。
中国傾斜の先頭を切ったのは英国であり、2015年の3月、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加した。米国から慎重に対応するよう、あらかじめくぎを刺されていたが、それには構わなかったという。
国際金融に豊かな経験とノウハウを持つ英国がなぜそのような行動に出たか不可解であったが、英国としては英国経済の活性化を図るためやむをえない決断だったのだろう。
その半年後、英国は訪英した習近平主席を大歓迎し、中国メディアが「最上級の待遇」と異例の報道をするくらい喜ばせた。しかも、中国製原発の輸入とそれに伴う中国資本の受け入れに同意したことはAIIBへの参加以上に驚きであった。ブラッドウェルの原発には中国広核集団(CGN)が66・5%を出資する。これだけの出資比率になると、発言力は極めて大きくなり、英側は中国の言いなりにならざるをえない。日本では考えられないことであった。
ドイツの経済もやはり厳しい状況にあり、低成長かマイナス成長である。しかし、EUの最強のリーダーとして重い財政負担を強いられている。また、中近東・アフリカからの難民は大多数がドイツを目指してくる。したがって、急速に拡大を続ける中国経済は大きな魅力であり、中国との貿易・投資関係は顕著に増大している。
ドイツの中国経済への強い関心を代表しているのがメルケル首相であり、2016年6月までに9回訪中した。メルケル氏は中国に人権の尊重や法の支配も訴えているが、中国側はそれらの問題は独中関係のごく一部であるとしてまともに取り合おうとしない。これに対し、ドイツ側もしつこく追及はしていない。
しかし、西欧諸国は完全にエコノミック・アニマルになったのではないことをしめす出来事が起こった。
12月13日、中国が南京事件80年記念の行事を行った日であったが、ドイツとフランスの在中国大使は連名で、英フィナンシャル・タイムズ紙中国語版に独仏の和解の経験を語る一文を投稿した。その中には、「犯罪を犯した者は自らの罪を認め、被害者は許さなければならない」との趣旨の言及があった。
中国としては、「日本は罪を認めなければならない」というのはよいが、「中国は日本を許さなければならない」というのは癇に障ったのであろう。人民日報系の環球時報12月28日付が掲載した評論は、両大使の寄稿は「中国内政に対する粗暴な干渉」「中国人に対する無礼なお説教である」と述べるなど、不愉快極まりないという感情があふれていた。
ドイツやフランスはかねてより、彼らの和解の経験を東アジアでも参考にしてほしいということがよくあった。また、中国も日本に対し、ドイツの姿勢を学んでほしいと何回も求めたことがあった。
しかるに、両大使の寄稿文は中国にも努力を求めている。しかも南京事件を記念する日にその文章を発表しているので、日本に対するよりもむしろ中国に対する注文が多いと感じたのであろう。
両大使は、中国のことをよく知っており、そのような中国側の反応を予測したうえでの寄稿だったと思われる。経済面では中国との関係を最大限重視しつつも、政治的には冷めているところがあることを思い起こさせる一事であった。
なお、最近、ドイツの中国に対する見かたは変化しつつあるというドイツ人も出てきているそうである。
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