平和外交研究所

2016 - 平和外交研究所 - Page 24

2016.08.01

(短評)台湾国民党による領土問題アピール運動

 香港紙『明報』8月1日付は次のように伝えている。
台湾・屏東地区の漁民から構成されている「護主権(日本語ならさしずめ「護国」)」船隊がスプラトリー諸島のItu Aba Island(中国名は太平島)への12日間、往復3200キロの航海を終え、同島でとれた21樽の水、椰子などを持って7月31日に帰還した。
 台湾の漁業署は、漁民が太平島に上陸したことは尊重するが、法令違反があれば厳正に処理する、と表明している。出漁期間外の魚類運搬規制、漁船の乗り組み規則などの違反がありうるそうだ。
 船隊の到着現場には一、二時間前から五六百人の人が出迎え、「英雄、英雄」「勇士の帰還を歓迎する」「太平島は岩礁でなく、島だ」「沖ノ島(これは中央社の報道で、「沖ノ鳥島」の誤記だろう)は岩礁で島でない」などと大書した横断幕を掲げた。
 「護主権」運動の発起人である鄭春忠は、「一人の漁民として自国の国土に関心を持つ気持ちを伝えたかった。今回の航海については、最初から圧力を受けてきた。政府は関心を示さない」などと述べている。
 先般の総統選挙で一時期蔡英文と争った洪秀柱国民党主席も駆けつけ、「漁民は自腹を切って政府がなすべきことを行った。罰金を科せられても恐れることはない。蔡英文総統や林全行政院長がこの現場にいないのは遺憾だ」と発言した。

 太平島が台湾の領土であるとアピールすることは国民党の馬英九前総統が力を入れてきたことだ。その目的は、蔡英文新政権にも同じ姿勢を取らせ、中国との関係増進に巻き込むことにある。
 しかし、馬英九のとった方法では米国との関係で矛盾が生じる恐れがある。とくに、先般の国際仲裁裁判の判断にかんがみると、新政権として馬英九のように領土拡張的態度を取ることは危険だ。台湾人の支持を失う恐れもある。太平島問題は危険な爆弾だ。
2016.07.29

(短評)英国の核兵器更新

 英国議会は、7月18日、英国の保有する核兵器を更新することを承認した。
 英国の核戦力は、核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)トライデントⅡ(D-5)と運搬用のヴァンガード級原子力潜水艦 4 隻で構成されており、スコットランド・エジンバラ西北のファスレーン海軍基地に置かれている。
 英国の核兵器は冷戦の終了後段階的に削減され、残っているのはこの1システムだけである。他の国では、大陸間弾道ミサイルや長距離爆撃機で運搬するものなど複数のシステムがあるのと比べると、英国が保持している1システムが戦力としてどれほどの意義があるか疑問視する声があり、英国はいっそこれも破棄して核軍縮の先頭に立つのがよいという意見もある。
 また、地元のスコットランドからは、英国からの分離を求める政治情勢とも絡んでファスレーン基地に核兵器を配備していることに強い反対が起こっていた。

 このような事情にかかわらず、英下院で賛成472、反対117という圧倒的多数で更新が承認されたのだが、コスト高は今後も英国政府を苦しめることになりそうだ。更新に要する経費は310億ポンド(約4兆3千億円)であり、さらにコスト上昇に備えるため予備費として100億ポンド(約1兆3,900億円)が計上されているが、これは承認を得るために国防省が作った数字なのであまり信用できないという見方もある。
 また、新型原潜を設計・開発して配備するまでには20年かかり、その間に原潜を無力化しようという能力は格段に進歩するだろう。人工知能と高度のロボット技術を備えた小型無人潜水艇が多数投入されると原潜は機能を発揮できなくなるとも指摘されている。
 さらに、「英国にとって北朝鮮などは脅威ではなく、テロ・サイバー攻撃・疫病こそがその真の脅威だ。下院が更新を支持した核戦力は何の役にも立たず、その管理は何をするか分からないトランプ大統領に委ねられるかもしれない。英国が保有し続ける核兵器こそが人類の脅威だ」という批判もある(”The National”, Kevin McKenna ‘Trident is a threat to the whole of humanity’)。
 これは興味深い指摘だが、そういうことであれば、米国でトランプ氏が大統領になったら世界はいったいどうなるのか心配だ。

 ともかく、今回の決定はメイ新首相にとって一種のテストと見られていたが、メイ首相はなんのよどみもなく、必要なら核のボタンを押すと言明した。
May responded: “Yes. And I have to say to the honourable gentleman the whole point of a deterrent is that our enemies need to know that we would be prepared to use it, unlike some suggestions that we could have a deterrent but not actually be willing to use it, which seem to come from the Labour party frontbench.”
 
2016.07.28

中国の環境規制と日本企業

 日中環境協力支援センター有限会社(大野木昇司取締役は北京大野木環境コンサルティング有限公司の社長を兼任)の「中国環境・化学品・エネルギーレポート」は中国理解に大変参考になるので大野木氏のご了解のもとに転載します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』は2005年より始まり、10年以上
続いている中国環境市場及び中国環境/化学物質法令レポートです。最近話
題となっている改正環境保護法の下位法令、大気汚染防止、土壌汚染対策、
CO2規制・排出権取引制度もフォローしており、貴社の中国環境/化学物質
コンプライアンスや中国環境ビジネスの強い味方となります(既購読の
方、重複ご了解願います)。

本サービス詳細・価格・申込方法は以下サイト参照
http://jcesc.com/enw.html
■中国環境コンプライアンスは大丈夫ですか
▲毎週10~30もの環境・化学物質分野の法令・通達・標準情報を網羅
▲2日に1回配信する中国環境・化学物質法令速報
▲環境規制で重要なのは下位法令・地方法令・標準類

 ご存知でしょうか。中国ではなんと毎週10~30もの環境・CO2・省エネ・
化学物質分野の法令・通達・標準(環境製品規格、汚染排出基準、環境測定
方法等)が策定されています。しかもこの数は日系企業の生産・販売・輸出
入と密接な関連ある法令標準だけです。

 例えば環境保護法改正、PM2.5や土壌汚染の報道を受けて、中央のみなら
ず地方の環境規制は大幅に強化されました。処罰された日系企業も増えて
います。日系工場でも、環境管理担当者のレベルを把握している工場は少
なく、何をどこまで対応すればよいのか、どんな環境規制・通達があるの
か現場側でも管理側でもよくわかっていないのが実情です。周辺住民、環
境NGOやメディアからの環境違法行為告発も増えており、もはや「知らな
かった」では済まされません。

 中国では環境保護法や大気汚染防止法などの法律にばかり注目が集まって
いますが、これら法律は方針しか書かれておらず、実際には下位法令や地方
法令、標準類、通達類により規定しています。中国での環境管理実務では、
むしろこちらの情報を収集し対応する方が重要です。

 しかしこれを各社が独自に収集・フォローするのは至難の業です。工業団
地管理委員会などが情報提供するケースもありますが、情報漏れ・解説不能
・地方保護主義政策リスクなどもあり、全面的に頼れるわけではありません。
本『レポート』ではこれらの情報をしっかりフォローしているほか、2日に
1度の「中国環境法令・化学物質法令速報サービス」で、策定機関・法令名
・原文URLを会員に送信しています。

 なお環境保護省等が策定する国家環境標準(GBやHJ)だけで2011年~2015
年に約800件が制定・改定される計画です。このほか工業・情報化省、建設
省、国家エネルギー局が策定・改定する環境関連標準や、地方政府が定める
地方環境標準を入れるとその数倍の数になります。

※環境・化学物質関連標準には、環境製品規格、工場等の汚染排出基準、環
境測定方法のほか、環境ラベル製品基準、ISO14001国内基準、中国版RoHS基
準、危険化学品GHS・DSD基準などがあります。標準・規格の正規販売につい
ては、以下のウェブページをご参照下さい。
http://jcesc.com/standard.html
 これら全ての環境法令・通達や環境関連標準の情報を網羅しているのは本
『レポート』のみです。社内共有も可能です。

※個別企業向けの環境法令・規制・標準の解説業務も承っております。個別
相談下さい。

▲策定前段階の情報もフォロー

 中国の環境政策・法令・通達・標準で最も悩ましい問題は、「知らないう
ちに出来る」というものです。しかし完璧ではないものの事前に知る方法が
あります。計画段階、パブコメ段階で公開されるほか、行政事業方案でも方
針が盛り込まれ、関係者がメディア・シンポジウムで話すことがあります。
これらの事前情報をフォローしているのも本『レポート』のみです。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.