平和外交研究所

2016 - 平和外交研究所 - Page 50

2016.03.14

北朝鮮制裁決議の成立

 北朝鮮に対する厳しい制裁決議が成立した。それを実行することが大事だと指摘されている。その通りだが、実行すれば何が達成できるかは、実は問題なのだ。
 実行すれば、北朝鮮は核兵器とミサイルを放棄するのか。それとも実験を止めるのか。
 国連安保理の決議にはこれらすべてが記載されているが、実現するかどうかは別問題である。
 制裁決議だけでは足りず、北朝鮮との平和条約交渉が必要ではないか。
 この問題に関して日本が果たすべき役割がある。

 3月13日、東洋経済オンラインに「北朝鮮制裁、米中の主張がかみ合わない理由
平和協定交渉は、必要なのか不要なのか」を寄稿した。
2016.03.10

(短文)習近平の株式市場に関する指示

 ブルームバーグ3月8日付の次の記事は中国ウォッチの観点からも注目される。

「個人投資家の利益を確実に保護するように。それが習近平国家主席の手書きメッセージの内容だった。急落した中国株式相場の回復措置策定を担当する当局者に、中国指導部はこう指示した。
  事情に詳しい関係者によると、習主席の指示は空売りなどを手掛ける「悪意ある」トレーダーの調査報告書に走り書きされており、 監督当局と法執行当局が昨年7月に開いた会議で示された。関係者は同会議が非公開だったことを理由に匿名で語った。その後の数カ月、中国当局は株価下支えを目的とした前例のない対応をエスカレートさせ、相場下落を増幅させたと当局が非難する投機家を処分することになった。
  結果は習主席が頭に描いていたものとは違ってしまったと言ってよいだろう。中国株式市場から昨年7月以来、時価総額7280億ドル(約82兆円)が失われただけでなく、相場急落への中国当局の対処はグローバルな運用者および当局が保護しようとした個人投資家双方の信頼を損ねた。中国当局による介入は、習主席のポピュリズムが市場本意の経済構築という主席自身が掲げる方針といかに矛盾するかを示す。これはまた、国有企業改革から人民元取引の一段の自由化容認まで習主席が幅広い課題に取り組む中で、今後もこうした政策上の失敗が起きるリス クがあることを示唆する。
  中国株急落を正確に予想したラボバンク・グループの金融市 場調査責任者マイケル・エブリー氏(香港在勤)は「株式市場への対処 が適切にできないなら、扱いがより難しい国有企業改革に中国当局はどう取り組むのだろうか。当局の試みは完全な失敗だった。それが投資家 の信頼感の大幅低下を招いている」と述べた。
原題:Xi’s Handwriting Betrays a Paradox at the Core of Chinese Policy(抜粋)」
2016.03.09

(短評)辺野古の工事が中断された

 3月4日、日本政府と沖縄県は、普天間基地の辺野古移設のための工事に関し福岡高裁沖縄支部が提示した和解案を受け入れ、工事はひとまず中断された。
 政府と県が鋭く対立し、きわめて危険な状態が回避されたことは喜ばしい。政府は「辺野古への移転が唯一の選択肢である」という立場を変えたのではないと言っているが、いかなる解決が可能か、今後の話し合いに期待したい。

 以前から言っていることだが、普天間飛行場の辺野古への移設問題については複雑な経緯があり、歴代の政府、防衛省や外務省、米軍が智慧を絞って出した結論について軽々に物を言うべきでないのはもちろんだが、辺野古への移設に関してすべてのことを知っていなければ発言できないということでもないはずだ。
 
 あくまで辺野古での飛行場建設を強行するならば流血の事態が発生する恐れもある。政府として、時には強硬手段もやむをえない場合があることは承知しているが、日本人の大多数が基本的には豊かで安全な生活を送っている今日、米軍が使う飛行場を建設するために流血の犠牲を払ってでも強行しなければならないとはどうしても思えない。国際約束であっても、そんなことをすれば末代まで悔いが残るだろう

 最善の策は、沖縄以外で米軍基地を受け入れることができる地方を探求することだ。政府と米国は辺野古移設しか解決の方法はないと言うが、他の場所を真剣に検討したのか、どうしても疑問が残る。全国どこにも米軍基地を受け入れるところがないとは思えない。

 しかし、沖縄以外で引き受ける地方がどうしてもでてこない場合のことも考えておかなければならない。その場合は、辺野古に新しい飛行場を作るのではなく、普天間飛行場は残し、周囲の危険な場所に住んでいる人たちの移住により解決を図るほうがダメージは少ないと思う。
 この住民移転案はすでに出ているようであるが、なぜかあまり広がっていない。辺野古案と住民移転案の費用比較、沖縄への政府からの補助への影響、運動を推進している政党の考えなどさまざまな事情が絡んでいるのだろうが、細かい損得勘定はともかくとして、飛行場移設より住民移転のほうが痛みは少ない。政治的立場の違いを超えて合意を形成できる案だと考える。
 米国は日本政府と同様「辺野古しかない」という立場を表明しているが、普天間に残ることになる案は受け入れ可能だと思う。

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