平和外交研究所

2015 - 平和外交研究所 - Page 24

2015.09.01

(短文)ジブチの米軍基地が中国の進出のあおりを受けて危ない

 ジブチにあるLemonnier基地は米国がアフリカに置いている最大の基地で、アルカイダや過激派組織ISに関する情報収集の一大拠点であり、同時に、イエメンやソマリアに飛ばしている無人機の基地である。約4500人の米軍兵士が常駐し、現在、14億ドルで改修工事中だ。
 この基地は契約上今後10年近く使用可能であるが、ジブチ政府は中国のジブチ進出を歓迎する一方、米国にはつれなくしており、米軍基地の機能が維持できるか危ぶまれる状況になっている。ジブチにおける米中の確執は南シナ海よりも激しい面がある。
 本稿は、本HP8月1日の「アフリカにおける米中の角逐」の続きであるが、内容は英紙『ザ・テレグラフ』7月21日付の評論に依拠している。今や本件は、欧米では広く報道されており、また、『多維新聞』8月24日付も同趣旨の報道を行なっている。

 ジブチのOmar Guelleh大統領は中国と1.85億ドルに上る経済協力協定を結んだ。同大統領が中国の接近を許した背景には、米議会で同大統領の専制政治に対する批判が強くなったことがある。Guelleh大統領は中国に傾倒し、米軍の別の基地Obock military baseを米軍から取り上げ、中国に使わせる意向だとも言われている。
 それだけではない。港湾を運営する業者は世界最大のDP Worldであったが、Guelleh大統領は同社との契約を今年初めに解除し、4億ドルで港湾設備の改善をオファーした中国の業者と新たな契約を結んだ。ジブチの米国からの独立性を高めるためである。これも米軍にとって厄介な問題となり、デリケートな作業を継続するためにはジブチ以外の他の場所を探すことが必要になっている。
 先月のジブチの独立記念日パレードでは中国製の対戦車ミサイルが登場した。同大統領は中国を「新しい友人」と呼び大事にしなければならないと強調している。

 Lemonnier基地は契約が最近更新されたばかりであり、あと10年は維持できるが、中国の基地が完成すると、米軍基地での情報収集が妨げられると米軍は憂慮している。Guelleh大統領は米軍の基地利用についても、兵員の出入りや基地からの攻撃部隊の出撃に制限を課す恐れが出てきた。そうなるとアルカイダやISに関する情報収集にますます大きな支障が出る。米国だけの問題でなく、西側諸国全体にとって影響は大きい。
 
 来年にはジブチの大統領選が予定されている。Guellehは1999年以来大統領職にあり、 法的には出馬できないはずであるが、どうなるか注目されている。米国の大使館は出馬阻止に努めている。
2015.08.28

(短文)朝鮮通信使関連遺産を韓国とともに世界遺産登録!

 8月26日から瀬戸内海を旅している。鞆(広島県)で、江戸時代に行われた朝鮮通信使の遺産を世界遺産に登録する希望があることを知った。
 これは素晴らしいアイデアだ。韓国側にも関連の遺産があるので、日韓共同で登録を申請するのがよい。
 通信使の行列をえがいた絵は日本各地に残っている。通信使(正使)はじめ随員が日本人との交流で残した詩文は鞆など通信使が立ち寄った地に残っている。彼らの中には文化水準が非常に高かった人が含まれており、当時の日本の文化人は通信使一向との交流に熱心であった。
通信使一行が残した手記や旅行記が韓国に現存しているそうだ。彼らの目で見た日本人の生活は興味深い。
 朝鮮通信使を幕府がどのように扱ったについては、とくに政治的な面で議論があるらしいが、それはともかく、朝鮮通信使一行を一般の日本人は興味深く見守り、また、一行の文化水準に敬意を払っていた。いいことだけでなく、ケンカしたことなどもあったらしいが、それを含めて朝鮮通信使の受け入れ、接遇から日韓の文化交流の実態が浮かんでくる。世界中の人も興味を持つだろう。
2015.08.25

(短文)韓国と北朝鮮の関係緊張‐北京では

 韓国と北朝鮮の緊張が高まっていることに関し、『多維新聞(米国に本拠)』8月22日付は、北朝鮮は、韓国との関係もさることながら、中国との関係を強く考慮しながら行動していると指摘している。韓国と北朝鮮の緊張は中国との三者間の関係のなかで見ていく必要がありそうだ。

 非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発したのは8月4日、韓国国防部は10日に北朝鮮が仕掛けた地雷だと発表した。
 南北高官会談が22日から板門店で行なわれ、25日未明に合意に達した。北朝鮮は韓国が要求していた通り、地雷を仕掛けた件について謝罪(中国の新聞では「遺憾」)した。今回の事件において、韓国側は北朝鮮が仕掛けたことを示す明確な根拠を持っていたようで、かつて北朝鮮から砲撃を受けたり、艦艇が撃沈されたりした時と比べると強く出ていた。北朝鮮による謝罪の要求と並行して、大音声の宣伝放送を再開したのもその表れだった。

 以上は前置きで、『多維新聞』の指摘は以下のことについてである。
 21日、北朝鮮の池在龍在中国大使は緊急の記者会見を開き、韓国が48時間以内に宣伝放送をやめないと軍事行動を起こす、北朝鮮軍は準戦時状態に入ったと表明した。南北関係が緊張しているときに北京で記者会見を開き、そのように重大な発表をするのは異例である(注 北朝鮮は通常通り朝鮮中央通信を通して発表できた)。
 しかも、この記者会見は外国記者だけに案内されたので、中国の記者は誰も出席しなかった。
 中国記者だけでなく、北朝鮮は中国政府に対してもこの発表について事前に通報しなかったらしい。ロシアには明らかに事前通報していた。中国政府はつんぼ桟敷に置かれたのだ。当然中国政府は怒った。21日に中国政府が出したコメントの言葉の強さが中国の気持ちを表していた。
 今回の南北間の緊張に際して、北朝鮮は中国を強く意識して振る舞っていた。北京で韓国との関係に関する重要発表を行なう前日(20日)の午後、金正恩第1書記が政府の要人を集め協議(指示?)し、韓国に向け砲撃したのは、その日の午前中に、朴槿恵大統領が9月3日の抗日戦争勝利記念行事に参列することを韓国が発表したからである。金正恩は韓国と中国の関係進展を不快視して、中国には横を向きながら怒鳴ったのだ。
 北朝鮮は中国に対し、中国は北朝鮮を冷淡に扱おうとしても結局巻き込まれることになる、現在中国は北朝鮮を軽視しているが、北朝鮮だって中国を無視できると言いたかったのだろう。

 北朝鮮は地雷を仕掛けたこともそうだが、南北会談を持ちかけたり、「南韓」といつもの言い方と違って「大韓民国」と正式名で韓国を呼んだが、次の機会にはまた元の呼称に戻ったり、「異例の(奇妙な?)」記者会見をしたりしており、一貫した方針がうかがわれない。

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