平和外交研究所

2013 - 平和外交研究所 - Page 58

2013.05.01

尖閣諸島を日本領と決定したこと

中国の駐米大使に起用されることが決まっている崔天凱外務次官は、尖閣諸島について「米国には歴史的な責任がある」「米国は中日が釣魚島問題で直接衝突することは望んでいないが、中日が仲良くすることも望んでいない。米国は正確な選択をすべきだ」などと述べ、また、小野寺防衛相がヘーゲル米防衛長官と会談し、「いかなる力による一方的な行為に反対する」と声明した(4月29日)ことについて、「一方的で脅迫的行動を取ったのは日本側だ」と反発した。
「歴史的な責任」については、1972年の沖縄返還に際し、米国が、尖閣の領有権については関与しないとしつつも、尖閣に対する日本の施政権を認めていることなどを批判したと報道されている。
しかし、尖閣諸島が日本領であることを決定づけたのは、サンフランシスコ平和条約体制の下で、米国が沖縄を統治し(同条約第3条)、尖閣諸島を沖縄の一部であると米国が確認したことであった。これにより、尖閣諸島が台湾の一部でなく、沖縄の一部であることが確認された。台湾の一部であるならば、米国による尖閣諸島の統治は違法であったことになる。返還の問題はその結果であった。

2013.04.29

侵略を否定すべきでない

安倍総理は4月23日の参議院予算委員会で、「村山談話」について、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と発言。
麻生財務相も、2月25日の朴槿恵大統領就任式直後の会見で「米国の南北戦争を引き合いに「北部では市民戦争というが、南部では『北部の侵略と教える』。同じ国でも歴史認識は違う。まして異なる国ではなおさらのこと…」と語ったと韓国紙(中央日報)によって報道された。
両者の発言には、「侵略」か否かは国によって違って見える可能性があるとする点で共通しており、現内閣の首脳に一致した考えであるようだ。その意味は、「日本が中国や韓国に対して行なった行動は侵略でなかったと日本は思っている」というように響くが、日本国民はそのような考えなのか疑問である。私は強く否定したいし、このような発言は国益を損なうと考える。

2013.04.26

核の非人道性声明に賛同してほしい

核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議に向けたジュネーブでの第2回準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える共同声明が行なわれた。昨年来スイス、南アフリカやノルウェーなどを中心に進められてきた運動であり、賛同する国は会議を重ねるごとに増加してきた。今回は、昨年秋の国連第一委員会の倍以上の74ヵ国が参加した。
核兵器はその巨大な破壊力のため、空間的・時間的にあまりにも広範囲に甚大な被害を惹起し、国際人道法において違法性を判断する無差別性、不必要性、慎重性、過度の損害や不必要な苦痛を与える性質などすべての要件を備えている。
1996年、国際司法裁判所は、核兵器が原則違法であるという判断を「勧告的意見」として下しているが、これには法的拘束力がないので、さらにそれを強め、核兵器は違法であることを法的に確立しようとする運動である。
日本は声明内容を修正して賛成できるよう各国と交渉したが、「いかなる状況でも核兵器が二度と使われないことが人類存続の利益になる」という文言は最後まで除去できず、結局声明に参加しなかった。
 なぜこのようなことになるのか。それは日本が米国の核の抑止力に依存しながら、その使用を禁止したり、違法とするわけにはいかない、使用を禁止されていれば、それに抑止力は期待できなくなる、というのが基本的な理由であろう。
 しかし、今回の声明は単純に使用を禁止しているのではないし、核兵器は違法だと断定しているのではなく、「いかなる状況でも核兵器が二度と使われないことが人類存続の利益になる」と述べているだけである。核兵器が使用されれば人類の存続が危機にひんする。したがって、それが使用されないことが人類存続の利益であるということは厳然たる真実ではないか。しかも、今回の声明がここまで現実的な表現にできたことについては、交渉当事者が非常な努力をしたことが窺われる。日本政府には今回の声明に賛同してもらいたかった。声明の文言では核の抑止力になにがしかの影を落とすことになるとしても、それはすべての国に当てはまることであり、日本の手だけが縛られるのではない。日本政府は、それとも核兵器の使用についてフリーハンドを持ちたいのであろうか。共同声明に賛成できなかったのは不可解である。

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