平和外交研究所

2013 - 平和外交研究所 - Page 14

2013.11.08

中国の海外逃避者、失踪者の数

幹部の失踪、海外逃避、自殺などの数字に関し、11月2日付の多維新聞は、中央紀律検査委員会の統計数字が中国内のインターネットに出回っていると報道している。真偽のほどは確かではなく、また、説明が必要な数字もあるが、今後の中国ウォッチのために多維新聞の報道のまま記録として残しておこう。

「最近、統計資料がネットに出回っている。失踪者6528人、海外逃避者8371人、自殺者1252人である。
これに先立って、「央行網」サイトは、90年代中期以来、党政の幹部、公安、司法の幹部、国営企業の幹部などのうち、海外へ逃避した者、失踪者は1万6千人から1万8千人にのぼり、持ち逃げした資金は8千億人民元に上ると報道していた。
「裸官(海外に家族を先に出し、後でそこへ逃避する者)」による持ち逃げについては4千億元という数字もある。また、その人数は1995年から2005年の間で118万人に上ると言われている。
海外へ逃避する者が再び増え始めたのは現政権が腐敗撲滅に力を入れているからであろう。中国民航の消息筋によれば、2012年、北京空港から出国した逃避者は354人であった。」

以上が多維新聞の報道であるが、海外逃避が118万人に上ることは他の文献でもよく引用される(『21世紀の中国 政治・社会篇』203頁など)。

2013.11.07

無人機による民間人犠牲者に関するパキスタン政府の発表

無人機の問題については、その非人道性(多数の市民が犠牲になりやすいことなど)のゆえに規制を加えなければならないという国際世論が高まりつつあるかにも見えたが、ちょっと冷水がかけられる格好になった。
2007年から2011年の間、パキスタン政府は米国から無人機攻撃に関して時折ブリーフィングを受け、しかもそれを了承していたという趣旨の記事を10月24日付のワシントンポスト紙が掲載したのである。
これが事実ならば大問題であり、同紙の記者は翌日、当時の首相であったギラニ氏に確かめたところ、同氏はパキスタン政府が無人機攻撃に同意していたことはきっぱりと否定しながらも、関係者同士の間でそのようなことが起こっていた可能性までは否定しなかったそうである。
パキスタン政府はさらに、2008年以来の米無人機による攻撃により死亡したのは全体の内3%であったと発表した。これまでNGOなどから発表されてきた推計数字よりはるかに低い数字である。この発表はパキスタン国防省が議会上院の質問に対して書面で回答した中に記されたもので、2008年以来これまで317回の攻撃によって2,160人のイスラム武装兵士が殺害された。民間人の死亡は67人で、その内訳は、2008年21人、2009年9人、2010年2人、2011年35人だった。2012年は民間人死亡者はなく、2013年も今のところ死亡者はいないとされている(30日付同紙)。
パキスタン政府の発表に批判の声が上がっており、また、国連の調査を担当したエマーソン特別報告者はパキスタン政府に数字の違いについて説明を求めたいと述べたそうである。

2013.11.05

朱建栄に関する大公報の記事

中国へ行ったまま数ヶ月間消息を絶っている朱建栄教授に関して、11月5日の『大公網』(香港の中国系新聞『大公報』のネット版)は、前日の「共同通信社電」を引用した「BBC中国網」をさらに引用する形で、近日中に同教授が囚われの身から釈放される可能性があると報道している。
中国で起こっていることであり、中国政府の行動に関する出来事であるにもかかわらず、自らの取材結果に基づき報道するのでなく、共同通信、さらにはBBCによりながら伝えていること自体、他の国ではまずありえないが、『大公報』としては、この問題があまりにもデリケートなので2重の保険をかけざるをえなかったのであろう。中国ウォッチャーの間では常識である。
さらに、なぜ朱教授が拘束されたのかについて、共同電では、ある中国人が、朱教授は学術研究目的で中国に来て調査活動を行なっており、中国軍の関係者に面会し、軍事情報に関わることを聞こうとしたので当局から情報収集について疑いをかけられたのであろうと語ったことを報道しているが、これとは異なる可能性があるとして、遠藤誉東京福祉大学教授(幼少時に中国から引き揚げてきた。中国に関する著書多数)の次の談話(これも共同電であり、後に雑誌『Will』に掲載された)を紹介している。
「朱教授が拘束されたのはスパイ行為を疑われたためではない。容疑は50年間公表が禁止されている公文書を社会科学院の研究者から入手し、定期的に送ってもらっている『参考消息』と一緒に郵送し、公開したことである」。
大公報は以上の記事を次のように締めくくっている。これは大公報自身の言葉であり、朱教授に対し、慎重に対処するよう求めた警告かもしれない。
「朱教授が日本へ戻ると、事件の真相について各方面から説明を求められるだろうが、朱教授自身にとっても何が起こったのか謎かもしれない。中国および中国人に対する不信に満ちている日本で、この謎のため、朱は日本での工作と生活環境について永遠に疑いをかけられるかもしれない。」

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