オピニオン
2016.09.19
米国には、他国と比べミャンマーへの企業進出が遅れているという認識があるようだが、今後は米国資本が自由に進出できるようになる。ミャンマーの経済発展に貢献するだろう。
スー・チー最高顧問は訪米の途中英国にも立ち寄り、メイ首相から1億ドル以上の援助約束を得たと報道されている。
スー・チー国家顧問は訪米の前に(8月)中国を訪問した。最初の外国訪問が中国となったので一部の報道で注目されたが、米国はとくに意に介さなかったようだ。大人の態度であった。
ミャンマーにとって中国との関係は重要だ。とくに一部の少数民族との関係が深いからだ。ミャンマー政府は関係がよくない部族を抑えるのに中国の力を必要としている。
8月31日にミャンマーで「21世紀のパンロン会議」が開催された。スー・チー氏が重視する諸民族の大同団結会議だ。ミャンマーでは諸民族の和解が進まないと軍の特権を維持せざるをえない状況にあり、そうすると民主化も進まなくなる(当研究所HP8月22日付「ミャンマー・中国関係‐アウン・サン・スー・チー国家顧問の訪中」)。
期待が高まる中で開催されたパンロン会議であったが、ワ州連合軍(UWSA)の代表が中途退場するなど、一部の部族はパンロン会議に協力することをためらっており、きびしい門出となった。もちろんこれで諸民族の和解が失敗したと見るべきでない。70年間解決しなかった問題でありそう簡単にはいかないとしても不思議でない。パンロン会議は今後も半年に1回の頻度で開催されることになっており、その推移を見守る必要がある。
スー・チー最高顧問が率いる新政権は民主化の推進に熱心であるが、少数民族問題が解決しない限り民主化推進派、軍、少数民族の三つどもえ的な関係は変わらない。米国の制裁撤廃については、民主派の軍に対するテコをなくすることになるとして反対する声もあるが、ミャンマーのこのような現状を見ればそうも言えないのではないか。
また、少数民族の中には、バングラデシュと国境を接するラカイン州のロヒンギャの問題もある。2015年春に数千人のロヒンギャ難民がどの国からも拒否され海上をさまよった事件で有名になった。オバマ大統領はスー・チー氏に対し少数民族問題の解決を望んでいると表明するとともに、この問題をミャンマー政府が善処することを促した。
一方、ミャンマー政府はロヒンギャをミャンマー国内の少数民族と認めておらず、バングラデシュからの難民と位置付けており、国籍も付与せず、「(不法移民の)ベンガル人」という呼称を用い続けているので、スー・チー最高顧問は「ラカイン州の問題の解決を政府として重視している」と応じるにとどまった。この問題解決の道のりはまだ遠そうだ。
(短評)ミャンマー新政権の滑り出しは順調か
アウン・サン・スー・チー国家顧問が訪米し、9月14日、オバマ大統領と会談した。オバマ大統領はミャンマーに対する制裁を解除することとしたと伝え、スー・チー国家顧問が率いる民主的政権を支持する姿勢を鮮明にした。同氏の訪米は実り多いものとなったと見てよいだろう。米国には、他国と比べミャンマーへの企業進出が遅れているという認識があるようだが、今後は米国資本が自由に進出できるようになる。ミャンマーの経済発展に貢献するだろう。
スー・チー最高顧問は訪米の途中英国にも立ち寄り、メイ首相から1億ドル以上の援助約束を得たと報道されている。
スー・チー国家顧問は訪米の前に(8月)中国を訪問した。最初の外国訪問が中国となったので一部の報道で注目されたが、米国はとくに意に介さなかったようだ。大人の態度であった。
ミャンマーにとって中国との関係は重要だ。とくに一部の少数民族との関係が深いからだ。ミャンマー政府は関係がよくない部族を抑えるのに中国の力を必要としている。
8月31日にミャンマーで「21世紀のパンロン会議」が開催された。スー・チー氏が重視する諸民族の大同団結会議だ。ミャンマーでは諸民族の和解が進まないと軍の特権を維持せざるをえない状況にあり、そうすると民主化も進まなくなる(当研究所HP8月22日付「ミャンマー・中国関係‐アウン・サン・スー・チー国家顧問の訪中」)。
期待が高まる中で開催されたパンロン会議であったが、ワ州連合軍(UWSA)の代表が中途退場するなど、一部の部族はパンロン会議に協力することをためらっており、きびしい門出となった。もちろんこれで諸民族の和解が失敗したと見るべきでない。70年間解決しなかった問題でありそう簡単にはいかないとしても不思議でない。パンロン会議は今後も半年に1回の頻度で開催されることになっており、その推移を見守る必要がある。
スー・チー最高顧問が率いる新政権は民主化の推進に熱心であるが、少数民族問題が解決しない限り民主化推進派、軍、少数民族の三つどもえ的な関係は変わらない。米国の制裁撤廃については、民主派の軍に対するテコをなくすることになるとして反対する声もあるが、ミャンマーのこのような現状を見ればそうも言えないのではないか。
また、少数民族の中には、バングラデシュと国境を接するラカイン州のロヒンギャの問題もある。2015年春に数千人のロヒンギャ難民がどの国からも拒否され海上をさまよった事件で有名になった。オバマ大統領はスー・チー氏に対し少数民族問題の解決を望んでいると表明するとともに、この問題をミャンマー政府が善処することを促した。
一方、ミャンマー政府はロヒンギャをミャンマー国内の少数民族と認めておらず、バングラデシュからの難民と位置付けており、国籍も付与せず、「(不法移民の)ベンガル人」という呼称を用い続けているので、スー・チー最高顧問は「ラカイン州の問題の解決を政府として重視している」と応じるにとどまった。この問題解決の道のりはまだ遠そうだ。
2016.09.12
北朝鮮のこのような行動は日本など周辺の国にとって危険きわまりない。日本の排他的経済水域へ落下したミサイルもあるらしい。かつて、日本の上空を飛び越して太平洋に向かっていったミサイルもあった。
今回の核実験に対し、各国は国連決議で追加制裁を科し、また日米などは独自の制裁措置を実施することを検討中だ。
また、制裁の実効性のカギを握っている中国に決議の忠実な履行を求めていく姿勢だ。いずれも当然のことだ。
しかし、これらの措置だけでは北朝鮮問題の核心に迫ることができないだろう。
北朝鮮には国家の安全を確保しなければならないという究極の問題がある。そんな国は他にはまずない。各国から見れば北朝鮮が各国に脅威を与えているのであり、まるで正反対の状況に見えるだろうが、北朝鮮が安全を確保できていないのは事実だ。
しかるに、この問題を解決できるのは米国だけである。中国はすでに北朝鮮という国を承認している。
米国はグローバルパワーとして世界各地で大変な犠牲と負担を強いられており、そのことを各国は十分理解し協力する必要があるのは当然だが、米国と北朝鮮の問題は他のどの国にも解決できない。米国は中国がまじめに決議を実行すれば北朝鮮の核・ミサイル問題を解決できるはずだとの立場であるが、中国が米国に代わって北朝鮮を認めることはできない。当たり前のことだ。中国はそのことも言っているが、北朝鮮問題に関しては、中国は決議を履行していないという各国の声が大きいためか、あまり注意されない。
北朝鮮の核・ミサイルはいかなる場合も、いかなる理由でも認められないが、核兵器を放棄させるには北朝鮮の安全問題の解決が不可欠だ。核とミサイルの実験を止めさせることと核兵器を放棄させることは大きな違いがある。前者については、国連決議は内容いかんで効き目を持ちうるが、後者の核の放棄は国連決議だけでは実現しない。
去る3月に成立し、「史上最強」と言われた決議はその後の北朝鮮の執拗な挑戦的姿勢によって影が薄くなってしまった感もあるが、前述したように中国が忠実に実行しないからであり、今後新たな決議が成立すれば北朝鮮としても考慮せざるをえなくなる可能性はある。
しかし、どのような内容の決議が成立しても、あるいは米国が最強の措置を取ってもそれだけで核兵器を放棄させることはできないだろう。
米国は嫌がるだろうが、真の解決には米国が北朝鮮と平和条約交渉をし、核兵器を放棄させるしかないことを日本は説得するべきだと思う。
北朝鮮の核実験
北朝鮮がまた核実験を行った。今年になって2回目だ。ミサイルは今年だけですでに20発ばかり発射している。いずれも国連決議に違反する重大な行為だが、今後さらに第6回目の核実験を行う可能性もあると言われている。北朝鮮のこのような行動は日本など周辺の国にとって危険きわまりない。日本の排他的経済水域へ落下したミサイルもあるらしい。かつて、日本の上空を飛び越して太平洋に向かっていったミサイルもあった。
今回の核実験に対し、各国は国連決議で追加制裁を科し、また日米などは独自の制裁措置を実施することを検討中だ。
また、制裁の実効性のカギを握っている中国に決議の忠実な履行を求めていく姿勢だ。いずれも当然のことだ。
しかし、これらの措置だけでは北朝鮮問題の核心に迫ることができないだろう。
北朝鮮には国家の安全を確保しなければならないという究極の問題がある。そんな国は他にはまずない。各国から見れば北朝鮮が各国に脅威を与えているのであり、まるで正反対の状況に見えるだろうが、北朝鮮が安全を確保できていないのは事実だ。
しかるに、この問題を解決できるのは米国だけである。中国はすでに北朝鮮という国を承認している。
米国はグローバルパワーとして世界各地で大変な犠牲と負担を強いられており、そのことを各国は十分理解し協力する必要があるのは当然だが、米国と北朝鮮の問題は他のどの国にも解決できない。米国は中国がまじめに決議を実行すれば北朝鮮の核・ミサイル問題を解決できるはずだとの立場であるが、中国が米国に代わって北朝鮮を認めることはできない。当たり前のことだ。中国はそのことも言っているが、北朝鮮問題に関しては、中国は決議を履行していないという各国の声が大きいためか、あまり注意されない。
北朝鮮の核・ミサイルはいかなる場合も、いかなる理由でも認められないが、核兵器を放棄させるには北朝鮮の安全問題の解決が不可欠だ。核とミサイルの実験を止めさせることと核兵器を放棄させることは大きな違いがある。前者については、国連決議は内容いかんで効き目を持ちうるが、後者の核の放棄は国連決議だけでは実現しない。
去る3月に成立し、「史上最強」と言われた決議はその後の北朝鮮の執拗な挑戦的姿勢によって影が薄くなってしまった感もあるが、前述したように中国が忠実に実行しないからであり、今後新たな決議が成立すれば北朝鮮としても考慮せざるをえなくなる可能性はある。
しかし、どのような内容の決議が成立しても、あるいは米国が最強の措置を取ってもそれだけで核兵器を放棄させることはできないだろう。
米国は嫌がるだろうが、真の解決には米国が北朝鮮と平和条約交渉をし、核兵器を放棄させるしかないことを日本は説得するべきだと思う。
2016.09.06
中国は国家の威信にかけ盛大なイベントに仕立て上げた。立派な会議場を新築したのもその表れだが、とくに開会式は素晴らしいものとした。杭州は昔から有名な景勝の地であり、開会式の舞台としてうってつけであるが、きれいなところばかりでない。大気汚染は深刻だし、周辺にはみすぼらしい民家もある。そこで、中国政府は付近の工場の操業を一時的に停止させ、大気をきれいにした。北京で国際会議が開催される場合に行われている対処方法だ。また、みすぼらしい住宅は強制的に撤去した。西湖を舞台にした開会式を演出したのは、北京オリンピックの演出で有名な映画監督、張芸謀であり、中国は世界の賓客にその力を見せつけるのに成功したようだ。
もともと、G20は1999年、財務大臣・中央銀行総裁会議から始まった。1997年にアジアの金融危機が起こり、各国が共同して対処する必要があったためだ。2008年にはリーマンショックがきっかけとなり、G20の首脳会議が開催されるようになり、以後毎年開かれている。1年に2回開催されたこともある。今回の杭州サミットは第11回目だった。
日本はサミットも財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがない。なぜそうなったか。詳しい事情をすべて承知しているわけではないが、日本はG7などの一員であることが影響しているかもしれない。
実は、2008年、日本はG7(当時はG8)の議長国であり、それと関連付けてG20サミットを開催しようと試みたが、これは成立せず、結局米国が第1回のサミットを開催した。
当時、もう一つの注目すべき状況があった。G20サミットは実務的に開催するのがよい、大々的な歓迎式典は必要でないと思われていたのだ。麻生首相(当時)は成田空港で開催すればよいという考えであったと後に国会で答弁している。
この時の雰囲気と比べると、中国の杭州サミットは実に派手な演出となり、国家の威信にかけて開催するという性格が強くなった。G20サミットは今後どうなるか。杭州サミット式に盛大な演出をするのか、それとももっと実務的なものに戻すのか。ホスト国の考え次第だが、中国以上に派手なサミットはどの国もできないのではないかと思う。
日本がこれまでサミットも、財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがないのは経緯のあることで、問題だと考える必要はないが、G7のメンバー国でG20サミットを開催したことがない国は、日本のほかドイツとイタリアしかいない。しかし、ドイツは2017年のG20サミットをホストすることとなった(その次はアルゼンチン)ので、残るはイタリアと日本だけとなる。
会議でどのような議論が行われるか、各国は世界的な問題についてどのような貢献をするか、などは会議のホストとは関係ないことだが、今後日本として検討すべきことの一つだろう。
(短評)G20杭州サミット
9月4~5日、中国の杭州市でG20首脳会議が開催された。参加国の数は多い。また、この会議の前後に、あるいは並行して2国間の会議が開かれるので全体の状況はかなり複雑だが、一つ印象に残ったことを記しておく。中国は国家の威信にかけ盛大なイベントに仕立て上げた。立派な会議場を新築したのもその表れだが、とくに開会式は素晴らしいものとした。杭州は昔から有名な景勝の地であり、開会式の舞台としてうってつけであるが、きれいなところばかりでない。大気汚染は深刻だし、周辺にはみすぼらしい民家もある。そこで、中国政府は付近の工場の操業を一時的に停止させ、大気をきれいにした。北京で国際会議が開催される場合に行われている対処方法だ。また、みすぼらしい住宅は強制的に撤去した。西湖を舞台にした開会式を演出したのは、北京オリンピックの演出で有名な映画監督、張芸謀であり、中国は世界の賓客にその力を見せつけるのに成功したようだ。
もともと、G20は1999年、財務大臣・中央銀行総裁会議から始まった。1997年にアジアの金融危機が起こり、各国が共同して対処する必要があったためだ。2008年にはリーマンショックがきっかけとなり、G20の首脳会議が開催されるようになり、以後毎年開かれている。1年に2回開催されたこともある。今回の杭州サミットは第11回目だった。
日本はサミットも財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがない。なぜそうなったか。詳しい事情をすべて承知しているわけではないが、日本はG7などの一員であることが影響しているかもしれない。
実は、2008年、日本はG7(当時はG8)の議長国であり、それと関連付けてG20サミットを開催しようと試みたが、これは成立せず、結局米国が第1回のサミットを開催した。
当時、もう一つの注目すべき状況があった。G20サミットは実務的に開催するのがよい、大々的な歓迎式典は必要でないと思われていたのだ。麻生首相(当時)は成田空港で開催すればよいという考えであったと後に国会で答弁している。
この時の雰囲気と比べると、中国の杭州サミットは実に派手な演出となり、国家の威信にかけて開催するという性格が強くなった。G20サミットは今後どうなるか。杭州サミット式に盛大な演出をするのか、それとももっと実務的なものに戻すのか。ホスト国の考え次第だが、中国以上に派手なサミットはどの国もできないのではないかと思う。
日本がこれまでサミットも、財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがないのは経緯のあることで、問題だと考える必要はないが、G7のメンバー国でG20サミットを開催したことがない国は、日本のほかドイツとイタリアしかいない。しかし、ドイツは2017年のG20サミットをホストすることとなった(その次はアルゼンチン)ので、残るはイタリアと日本だけとなる。
会議でどのような議論が行われるか、各国は世界的な問題についてどのような貢献をするか、などは会議のホストとは関係ないことだが、今後日本として検討すべきことの一つだろう。
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