オピニオン
2014.02.23
この中台関係シリーズでは、「中華人民共和国」は「中国」と区別するため、便宜的にPRCと呼ぶこととする。「PRC」と「台湾」と「中国」の3つをどのように区別するか、これは難問である。「台湾」も「中華民国」と現地では呼んでいるが、ここでは「台湾」とする。
現在、PRCと台湾が別々の国家であることは明らかである。「国家」という言葉が適当でなければ「領域」を使って、別々の領域である。PRCではこの2つを一つの国家にすることを目標としており、またかつては台湾でも同様の目標を立てていた。その場合目標とされているのは、PRCが台湾を併合することか、それともPRCと台湾が一つの国家となることか明確でない。現在台湾では、PRCによって台湾が併合されたくないと、前者を否定的に想定する人が多いが、かつては台湾が中国大陸を回復することを目指していた。現在の感覚では、ウサギがクジラを呑みこむくらい非現実的と思われているが、そのように考えるようになったのは最近のことである。
PRCと台湾が「平等な立場で交渉」するというのは、どういうことか。PRCが台湾を併合するという可能性も、逆に台湾がPRCを併合するという可能性も、どちらも排除しないで交渉するという意味か。それともPRCと台湾が1つの国家になるという意味か。どちらの解釈も可能なようであるが、いずれにしても政治的意味合いは非常に大きいので、新華社電がその言葉を取り除いて報道したということはありうる。
中台関係②
「PRCと台湾が「平等な立場で交渉」するというのは、どういうことか」この中台関係シリーズでは、「中華人民共和国」は「中国」と区別するため、便宜的にPRCと呼ぶこととする。「PRC」と「台湾」と「中国」の3つをどのように区別するか、これは難問である。「台湾」も「中華民国」と現地では呼んでいるが、ここでは「台湾」とする。
現在、PRCと台湾が別々の国家であることは明らかである。「国家」という言葉が適当でなければ「領域」を使って、別々の領域である。PRCではこの2つを一つの国家にすることを目標としており、またかつては台湾でも同様の目標を立てていた。その場合目標とされているのは、PRCが台湾を併合することか、それともPRCと台湾が一つの国家となることか明確でない。現在台湾では、PRCによって台湾が併合されたくないと、前者を否定的に想定する人が多いが、かつては台湾が中国大陸を回復することを目指していた。現在の感覚では、ウサギがクジラを呑みこむくらい非現実的と思われているが、そのように考えるようになったのは最近のことである。
PRCと台湾が「平等な立場で交渉」するというのは、どういうことか。PRCが台湾を併合するという可能性も、逆に台湾がPRCを併合するという可能性も、どちらも排除しないで交渉するという意味か。それともPRCと台湾が1つの国家になるという意味か。どちらの解釈も可能なようであるが、いずれにしても政治的意味合いは非常に大きいので、新華社電がその言葉を取り除いて報道したということはありうる。
2014.02.22
「密接な関係がある国」とは米国を想定しているのであろうが、この表現では米国に限られない。今は考えられないかもしれないが、状況が変われば韓国と日本が「密接な関係がある国」になりうる。歴史、価値観、米国との同盟関係などを考慮すればそのような状況になりうるはずである。では、集団的自衛権はそのような状況の下では韓国との関係でも行使することを想定しているのか。想定という言葉が強すぎれば、行使することがありうると考えているのか。つまり、「密接な関係」が不明確なのではないかということである。
「放置すれば日本の安全に大きな影響があること」については、自衛権行使の要件として安易に過ぎるのではないか。日本が安全を脅かされた場合に自衛権を行使することが認められる条件として、急迫性、すなわち時間的に他の方法を取る余裕がないことが必要である。しかるに、「放置すれば日本の安全に大きな影響があること」だけではそのような条件を満たしていない。そのように考えると、集団的自衛権行使の場合は個別的自衛権行使の場合よりも要件を緩和してよいと懇談会は考えているのか。
また、他国を守るために日本が軍事力を行使することについては、あいまいな条件で行使できたり、できなかったりしてはならない。どのような場合、どの程度まで、などを明確に定める条約が必要である。具体的な例として、尖閣諸島に第三国が攻撃を加えてきた場合、日本として頼りにすべきは日米安保条約であり、米国が日本の防衛のために行使する集団的自衛権ではない。そのようなことを考えている人は皆無に近いのではないか。日本は米国が集団的自衛権を行使してくれるから安心なのではなく、条約できっちりと決まっているから安心できるのである。
安保法制懇の集団的自衛権についての考え
集団的自衛権について検討している首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の北岡伸一座長代理が2月21日、日本記者クラブで記者会見し、4月に提出する予定の同懇談会の報告書に盛り込む考えを説明した。集団的自衛権の行使が認められる条件として、5つの条件が満たされることが必要としていうようであるが、そのなかでは、「密接な関係にある国が攻撃されること」「放置すれば日本の安全に大きな影響があること」の2条件が問題になりうる。「密接な関係がある国」とは米国を想定しているのであろうが、この表現では米国に限られない。今は考えられないかもしれないが、状況が変われば韓国と日本が「密接な関係がある国」になりうる。歴史、価値観、米国との同盟関係などを考慮すればそのような状況になりうるはずである。では、集団的自衛権はそのような状況の下では韓国との関係でも行使することを想定しているのか。想定という言葉が強すぎれば、行使することがありうると考えているのか。つまり、「密接な関係」が不明確なのではないかということである。
「放置すれば日本の安全に大きな影響があること」については、自衛権行使の要件として安易に過ぎるのではないか。日本が安全を脅かされた場合に自衛権を行使することが認められる条件として、急迫性、すなわち時間的に他の方法を取る余裕がないことが必要である。しかるに、「放置すれば日本の安全に大きな影響があること」だけではそのような条件を満たしていない。そのように考えると、集団的自衛権行使の場合は個別的自衛権行使の場合よりも要件を緩和してよいと懇談会は考えているのか。
また、他国を守るために日本が軍事力を行使することについては、あいまいな条件で行使できたり、できなかったりしてはならない。どのような場合、どの程度まで、などを明確に定める条約が必要である。具体的な例として、尖閣諸島に第三国が攻撃を加えてきた場合、日本として頼りにすべきは日米安保条約であり、米国が日本の防衛のために行使する集団的自衛権ではない。そのようなことを考えている人は皆無に近いのではないか。日本は米国が集団的自衛権を行使してくれるから安心なのではなく、条約できっちりと決まっているから安心できるのである。
2014.02.21
「初めての閣僚級合意の内容」
2014年2月11日、南京で、中国政府で対台湾政策を担当する張志軍・国務院台湾事務弁公室主任と、台湾で対中政策を担当する王郁琦・行政院大陸委員会主任委員が会談した。1949年に中国が分断後初めての閣僚級会談である。これまでは、台湾側は「海峡交流基金会(海基会)」、中国側は「海峡両岸関係協会(海協会)」という民間の窓口を設けて接触・意見交換してきた。
今回の会談では両国の当局間に直接対話の枠組みを作ることに合意したので、今後は民間レベルの対話から政府レベルの対話に格上げされることになる。以前の海基会と海協会との接触もそれぞれの政府の意向を受けて行なわれていたであろうが、直接の政府間接触が実現したことは、中台関係前進の象徴であるのみならず、実質的な意味も大きい。
18日には、台湾の連戦・国民党名誉主席と習近平主席との会談が北京で実現した。「中国メディアによると、習氏は(中略)「両岸関係の全面的な発展に積極的な意義あった」と評価。「(今後も)政治的な問題について平等に協議し、情理に合った取り決めをしていきたい」と述べた」と『朝日新聞』が報道した(2月19日)。『産経新聞』は同日、「習氏は「一つの中国枠組みの中で、台湾と対等な立場で交渉したい」と述べ」たと報道している。その他の邦字紙は簡単な報道だけで、習氏の発言内容はよく分からない。
一方、新華社(2月19日)によると、「その際、習近平総書記は次ぎのように強調した。両岸双方は「両岸は家族のように親しい」の理念をもって、時勢に順応し心を一つにして両岸関係の平和な発展を推進し、両岸の人々に幸せをもたらし、中華民族の偉大な復興の中国の夢を共に実現することを期待している。習総書記はまた次のように指摘した。歴史と現実の原因で両岸関係には簡単に解決できない問題が存在する。しかし、両岸同胞は一つの家族であり、共通の血筋、共通の文化、共通の願いを持っている。これこそが互いに理解しあい、心を一つにして協力し、共に前進する重要な力だ。」と報道している。
この記事は黒地に白ぬきで書かれており、コピーを取れない。将来、内容が変更することがありうるので、ここに書き写した。
新華社電には、習近平氏が「平等に協議」も「対等な立場で交渉」も発言した記載がない。この点は大きな違いである。産経新聞は「「台湾と対等な立場で交渉する」とは、かつての最高実力者、鄧小平が1970年代末に台湾に呼びかけた言葉である。しかし、近年の中国の国力増強に伴い、中国の最高指導者からはあまり聞かれなくなった」と解説している。
このような言葉があるかないかは重要な違いである。
中台関係①
中国と台湾の関係が最近一歩前進したことについて、何回かに分けて考察してみる。「初めての閣僚級合意の内容」
2014年2月11日、南京で、中国政府で対台湾政策を担当する張志軍・国務院台湾事務弁公室主任と、台湾で対中政策を担当する王郁琦・行政院大陸委員会主任委員が会談した。1949年に中国が分断後初めての閣僚級会談である。これまでは、台湾側は「海峡交流基金会(海基会)」、中国側は「海峡両岸関係協会(海協会)」という民間の窓口を設けて接触・意見交換してきた。
今回の会談では両国の当局間に直接対話の枠組みを作ることに合意したので、今後は民間レベルの対話から政府レベルの対話に格上げされることになる。以前の海基会と海協会との接触もそれぞれの政府の意向を受けて行なわれていたであろうが、直接の政府間接触が実現したことは、中台関係前進の象徴であるのみならず、実質的な意味も大きい。
18日には、台湾の連戦・国民党名誉主席と習近平主席との会談が北京で実現した。「中国メディアによると、習氏は(中略)「両岸関係の全面的な発展に積極的な意義あった」と評価。「(今後も)政治的な問題について平等に協議し、情理に合った取り決めをしていきたい」と述べた」と『朝日新聞』が報道した(2月19日)。『産経新聞』は同日、「習氏は「一つの中国枠組みの中で、台湾と対等な立場で交渉したい」と述べ」たと報道している。その他の邦字紙は簡単な報道だけで、習氏の発言内容はよく分からない。
一方、新華社(2月19日)によると、「その際、習近平総書記は次ぎのように強調した。両岸双方は「両岸は家族のように親しい」の理念をもって、時勢に順応し心を一つにして両岸関係の平和な発展を推進し、両岸の人々に幸せをもたらし、中華民族の偉大な復興の中国の夢を共に実現することを期待している。習総書記はまた次のように指摘した。歴史と現実の原因で両岸関係には簡単に解決できない問題が存在する。しかし、両岸同胞は一つの家族であり、共通の血筋、共通の文化、共通の願いを持っている。これこそが互いに理解しあい、心を一つにして協力し、共に前進する重要な力だ。」と報道している。
この記事は黒地に白ぬきで書かれており、コピーを取れない。将来、内容が変更することがありうるので、ここに書き写した。
新華社電には、習近平氏が「平等に協議」も「対等な立場で交渉」も発言した記載がない。この点は大きな違いである。産経新聞は「「台湾と対等な立場で交渉する」とは、かつての最高実力者、鄧小平が1970年代末に台湾に呼びかけた言葉である。しかし、近年の中国の国力増強に伴い、中国の最高指導者からはあまり聞かれなくなった」と解説している。
このような言葉があるかないかは重要な違いである。
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