中国
2015.05.04
1. 中国がミドル・インカム・トラップ(中所得国の罠。中所得には比較的早くなれるが、先進国になるのは困難である)に陥る危険は50%強である。カギとなる課題は、6.5-7%の成長を実現し、「全面的小康状態」を実現し、人口老齢化が加速するまでに、つまり5-7年の間に「全方位改革」を進め、市場機能のひずみを解消することである。具体的には以下のことが必要である。
2. 農業改革。食糧に対する「全方位」補助を減少し、農産品の輸入を奨励する。中国が食糧の輸入に頼ると、外国は食糧供給を断つかもしれないなどと考えるべきでない。輸入増加により、農村の労働力を移転し、労働力が不足している製造業とサービス業に回すことができる。また、賃金の上昇を生産性の上昇より低く抑えられる。
3. 戸籍制度の改革。戸籍移転の障害を除去する。各地において、住居の賃借を可能にする。住宅税は徴収する。借料と売却価格の調整が必要。教育、医療も与える。農村から移動してきた人たちが安心して都会に住めるようにする。中国西部では省都で、東部では都市地域でそのような改革が必要である。産業地域を形成させ、サービス業を発展させる。
4. 労使関係。欧米のように、一定の地域、業種ごとの労働組合を許し、雇用主と実力交渉させてはならない。個別の企業と労働者に決定させる。労使関係の柔軟性を増大させる。
5. 土地改革。農村建設用地に一定の金を出してやれば、都市の土地と同様に流動性が出てくる。しかし、農民に土地提供の条件を自由に交渉させなければならない。先に土地を取り上げ、その後で売却価格、再就職条件、社会保険条件を交渉してはならない。
6. 社会保障。97年以前に保険料の不払いから生じた欠損を国の予算で補てん・解決する(中国では1997年以降、年金、労災などに関し社会保障制度が相ついで制定された)。保険料を下げ、真の「多交多得(多くの人が保険料を支払い、多くの保険金をもらう)」システムにしなければならない。これに関連するいくつかの料率も下げ、公平にする。各地でうまく運営して初めて国家は全体を動かすことができる。社会保険は一種の保険であり、貯蓄ではない。個人はこのことを聞かされていない。彼らは、いつまで生きれば、いくらもらえるという頭だ。
7. その他。起業の奨励。就職の柔軟性。人口計画の改正など。
中国がミドル・インカム・トラップに陥る危険?
4月24日、中国の楼継偉財政部長は、清華大学での講演で現下の中国経済、とくに労働力関係の主要問題を語った。29日に360図書館(中国の民間情報サイト)がその速記録と以下の概要を流している。細かい問題の内容はこれでは分からないが、大きく見るには参考になる。とくに第1の点は中国内で広く注目され、しきりに再報道、転送された。1. 中国がミドル・インカム・トラップ(中所得国の罠。中所得には比較的早くなれるが、先進国になるのは困難である)に陥る危険は50%強である。カギとなる課題は、6.5-7%の成長を実現し、「全面的小康状態」を実現し、人口老齢化が加速するまでに、つまり5-7年の間に「全方位改革」を進め、市場機能のひずみを解消することである。具体的には以下のことが必要である。
2. 農業改革。食糧に対する「全方位」補助を減少し、農産品の輸入を奨励する。中国が食糧の輸入に頼ると、外国は食糧供給を断つかもしれないなどと考えるべきでない。輸入増加により、農村の労働力を移転し、労働力が不足している製造業とサービス業に回すことができる。また、賃金の上昇を生産性の上昇より低く抑えられる。
3. 戸籍制度の改革。戸籍移転の障害を除去する。各地において、住居の賃借を可能にする。住宅税は徴収する。借料と売却価格の調整が必要。教育、医療も与える。農村から移動してきた人たちが安心して都会に住めるようにする。中国西部では省都で、東部では都市地域でそのような改革が必要である。産業地域を形成させ、サービス業を発展させる。
4. 労使関係。欧米のように、一定の地域、業種ごとの労働組合を許し、雇用主と実力交渉させてはならない。個別の企業と労働者に決定させる。労使関係の柔軟性を増大させる。
5. 土地改革。農村建設用地に一定の金を出してやれば、都市の土地と同様に流動性が出てくる。しかし、農民に土地提供の条件を自由に交渉させなければならない。先に土地を取り上げ、その後で売却価格、再就職条件、社会保険条件を交渉してはならない。
6. 社会保障。97年以前に保険料の不払いから生じた欠損を国の予算で補てん・解決する(中国では1997年以降、年金、労災などに関し社会保障制度が相ついで制定された)。保険料を下げ、真の「多交多得(多くの人が保険料を支払い、多くの保険金をもらう)」システムにしなければならない。これに関連するいくつかの料率も下げ、公平にする。各地でうまく運営して初めて国家は全体を動かすことができる。社会保険は一種の保険であり、貯蓄ではない。個人はこのことを聞かされていない。彼らは、いつまで生きれば、いくらもらえるという頭だ。
7. その他。起業の奨励。就職の柔軟性。人口計画の改正など。
2015.05.01
この会議では、中国による埋め立て工事に関し激しい議論があったことが報道からうかがわれる。最初の議長声明案ではこの問題にまったく触れられていなかったが、フィリピンやベトナムなどが強い懸念を表明し、議長声明に書き込むことを主張した結果このような文言となった。中国との関係は国によって違っており、このような議論があったのは当然である。
また、議長声明は埋め立て工事の中止を要求するに至らなかったのも、理解できることである。このようなASEAN内部の立場の不一致にもかかわらず今回の議長声明がこのような表明をしたことは注目すべきことであった。
ASEANの10カ国はすべてアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立準備に参加している。IIBとペアで進められている「一帯一路」とくに「一路」は中国から地中海にまで伸びる海上交通ラインであり、南シナ海はその重要な一部である。中国はその建設を提唱し各国にそれに対する支持を呼びかけながら、その「一路」上で東南アジア諸国と紛争を起こしているのであり、それは、少なくとも東南アジア諸国の立場からすれば「一路」建設を阻害する行為と映るであろう。
一方、中国はあくまで自己の主張を貫き、東南アジア諸国の懸念に耳を傾けない姿勢である。ASEAN首脳会議の議長声明に対して、中国外交部の報道官は「中国の主権の範囲内のことである」と突っぱねた。中国は今後もそのような主張を変えないだろう。要するに、中国の考えではそのような主張は「一路」建設と矛盾しないのである。
このように見てくれば、中国の提唱する「一帯一路」構想は各国と共通の言葉で語られていないという実態が浮かび上がってくる。そうであれば、中国が「一帯一路」構想と言っていることの意味は中国の立場で理解する必要がある。それは中国の国益に従うことを含んでいる。つまり、「一帯一路」は中国の国益に従うという前提に立っているのである。
(短文)ASEAN首脳会議で露呈された「一帯一路」構想の矛盾
4月27日、クアラルンプールで開かれた首脳会議の結果発表された議長(マレーシア)声明は、南沙諸島のファイアリー・クロス礁などにおける中国の埋め立て工事に対し、「深刻な懸念を表明する」「このような工事は信頼を損なった(eroded)」「南シナ海における平和、安全、安定を揺るがす(undermine)恐れがある」などとかなり強い言葉でASEAN諸国の見解を表明した。この会議では、中国による埋め立て工事に関し激しい議論があったことが報道からうかがわれる。最初の議長声明案ではこの問題にまったく触れられていなかったが、フィリピンやベトナムなどが強い懸念を表明し、議長声明に書き込むことを主張した結果このような文言となった。中国との関係は国によって違っており、このような議論があったのは当然である。
また、議長声明は埋め立て工事の中止を要求するに至らなかったのも、理解できることである。このようなASEAN内部の立場の不一致にもかかわらず今回の議長声明がこのような表明をしたことは注目すべきことであった。
ASEANの10カ国はすべてアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立準備に参加している。IIBとペアで進められている「一帯一路」とくに「一路」は中国から地中海にまで伸びる海上交通ラインであり、南シナ海はその重要な一部である。中国はその建設を提唱し各国にそれに対する支持を呼びかけながら、その「一路」上で東南アジア諸国と紛争を起こしているのであり、それは、少なくとも東南アジア諸国の立場からすれば「一路」建設を阻害する行為と映るであろう。
一方、中国はあくまで自己の主張を貫き、東南アジア諸国の懸念に耳を傾けない姿勢である。ASEAN首脳会議の議長声明に対して、中国外交部の報道官は「中国の主権の範囲内のことである」と突っぱねた。中国は今後もそのような主張を変えないだろう。要するに、中国の考えではそのような主張は「一路」建設と矛盾しないのである。
このように見てくれば、中国の提唱する「一帯一路」構想は各国と共通の言葉で語られていないという実態が浮かび上がってくる。そうであれば、中国が「一帯一路」構想と言っていることの意味は中国の立場で理解する必要がある。それは中国の国益に従うことを含んでいる。つまり、「一帯一路」は中国の国益に従うという前提に立っているのである。
2015.04.29
江沢民は、鄧小平に認められ、上海市長から共産党のトップに抜擢された人物であり有能であったのはもちろんである。この経歴にも暗示されていたのであるが、実際的な人物であり、その点では鄧小平と似ていたのであろう。鄧小平の晩年、天安門事件のトラウマから脱して大胆に改革開放を進めなければならない状況の中で、鄧小平の後を継ぐ最適の人物だった。
江沢民の政治傾向を示すものが「三つの代表」、すなわち、生産力の向上、文化の高揚、広範な人民の利益を重視するという理論である。優先順位に従って並べられているわけではないが、「生産力の向上」をトップにしていたことは意味があったらしい。
江沢民はまさに経済発展を重視していたからこそ共産党の総書記になれたのであるが、それを苦々しく思っている人たちもあった。
2001年7月、江沢民が「七一講話」で「三つの代表」を発表してまもなく、鄧力群ら17人が「江沢民の七一講話はきわめて重大な誤りである」と題する建白書を党中央に提出していたことが最近判明した。同書は「三つの代表」というが、だれを代表しているのか問題だ、「三つの代表」は共産党規約に違反していると批判し、私営企業家の入党を認めたことを例として挙げた。生産力の向上を重視する江沢民としては何ら問題なかったとしても、資本家の最たるものである企業家を、無産階級の利益を擁護する共産党に入党させることはもってのほか、ということであり、共産党理論の原則に立ち返ればもっともな批判であった。
鄧力群は名うての理論家であり、党内左派の代表的人物であった。このような人物が江沢民を批判することは、今から思えばやはりそうだったか、という気がするが、透明性のない中共中央のことであり、当時はそんなことはわからなかった。
現在江沢民は引退して長くなるが、あらためて攻撃の的になるかもしれない状況にある。共産党内の左派から当時そのように見られていたことは現在の党内情勢にも微妙に影響してくるかもしれない。
(短文)江沢民元中共総書記の政治姿勢
江沢民元総書記は、我が国では保守派であり、対日関係で強面の人物として知られている。しかし、これは必ずしも正しくない。とくに保守派として片づけられない面があった。江沢民は、鄧小平に認められ、上海市長から共産党のトップに抜擢された人物であり有能であったのはもちろんである。この経歴にも暗示されていたのであるが、実際的な人物であり、その点では鄧小平と似ていたのであろう。鄧小平の晩年、天安門事件のトラウマから脱して大胆に改革開放を進めなければならない状況の中で、鄧小平の後を継ぐ最適の人物だった。
江沢民の政治傾向を示すものが「三つの代表」、すなわち、生産力の向上、文化の高揚、広範な人民の利益を重視するという理論である。優先順位に従って並べられているわけではないが、「生産力の向上」をトップにしていたことは意味があったらしい。
江沢民はまさに経済発展を重視していたからこそ共産党の総書記になれたのであるが、それを苦々しく思っている人たちもあった。
2001年7月、江沢民が「七一講話」で「三つの代表」を発表してまもなく、鄧力群ら17人が「江沢民の七一講話はきわめて重大な誤りである」と題する建白書を党中央に提出していたことが最近判明した。同書は「三つの代表」というが、だれを代表しているのか問題だ、「三つの代表」は共産党規約に違反していると批判し、私営企業家の入党を認めたことを例として挙げた。生産力の向上を重視する江沢民としては何ら問題なかったとしても、資本家の最たるものである企業家を、無産階級の利益を擁護する共産党に入党させることはもってのほか、ということであり、共産党理論の原則に立ち返ればもっともな批判であった。
鄧力群は名うての理論家であり、党内左派の代表的人物であった。このような人物が江沢民を批判することは、今から思えばやはりそうだったか、という気がするが、透明性のない中共中央のことであり、当時はそんなことはわからなかった。
現在江沢民は引退して長くなるが、あらためて攻撃の的になるかもしれない状況にある。共産党内の左派から当時そのように見られていたことは現在の党内情勢にも微妙に影響してくるかもしれない。
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