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2020.04.20

韓国の総選挙と日韓関係

ザページに「コロナ禍の中、韓国総選挙で与党圧勝 対日政策は強硬になる?」を寄稿しました。
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2020.04.15

医療崩壊の恐れ

 「医療崩壊」の恐れがある、あるいはすでに始まっているということを耳にすることが多くなっているが、その実態は素人には分かりにくい。特に、日本全体の状況が分かりにくい。専門家は個別のケース、たとえば個別の病院の状況などを自己の体験を交え説明する。それを聞くと、各地でそういうことが起こっていることは察しが付くが、日本全体、あるいはそこまで広げなくても東京のような地域全体の状況を理解するには至らない。

 日本や地域の全体的医療事情を、量的分析を含めて説明できそうなところは厚労省だろうが、同省の説明は一部のことに限られている。

 日本や地域の医療事情の全体的説明はこれまでもある程度行われてきた。たとえば、「過去一定期間の間に感染者数が2倍になった」とか、「患者の受け入れを拒否する病院が増えている」とか、「PCR検査を受けて陽性だった人の割合は3月末は5%前後であったが、いまは約20%に上昇している」などという説明である。「病床が東京でいくつ足りない」などという説明も分かりやすい。

 もう一つ、「院内感染」が発生している病院の数が説明されれば分かりやすいと思う。この言葉は医療機関に責任を負わせるので適当でないという考えがあるそうだが、本稿では便宜上この言葉を使わせてもらいたい。

 厚労省は3月31日に「同一の場所で5人以上の感染者が発生したクラスター(感染者の集団)の約3割を医療機関が占め、感染者のうち1割前後が院内感染である可能性がある。これまで、全国14都道府県に26カ所のクラスターが発生し、このうち医療機関は10か所だった」との発表を行ったが、それ以降の発表はない。

 そこで、報道に出ている院内感染した病院を拾ってみると、すでに厚労省発表の2倍以上の22に上っている。報道には具体名が出ているのだが、本稿では控えるとして、東京では6か所、神戸市、富山市、金沢市、福井市でそれぞれ2か所、そのほか、京都市、福岡県春日市、北九州市、名古屋市、兵庫県小野市、同県加東市、和歌山県湯浅町、大分市でそれぞれ1か所となっている。気が付いたところだけでもこれだけになるのであり、実際にはもっと多いのではないか。

 いわゆる医療崩壊と院内感染は同義でないが、院内感染が発生すれば臨時休業する病院が多い。その影響は甚大であり、近在の病院に影響が及ぶ。そうすると全体の状況はますます状況は悪くなる。そう考えれば、院内感染は医療崩壊につながることが多いのではないか。

 今回の感染について医師や看護師は献身的に治療にあたっている。そのことについても全体的、数量的な分析があると分かりやすくなるだろう。医療は商品の売買のように数量的にとらえられない面があることは分かるが、何とか工夫していただけないかと考えてしまう。

 日本政府には危機的状況を正確に示し、感染の拡大防止、収束に役立ててほしい。そのためにも、医療体制のひっ迫状況についての具体的、かつ、全体的な説明は役立つだろう。
2020.04.12

経済対策は緊急事態への対処か

4月7日、緊急事態宣言とともに発表された事業規模108・2兆円の緊急経済対策(以下「経済対策」)は、国民の間では緊急事態に対処するために策定されたものだという印象が強かった。状況からしてそのように受け止められたのは当然であった。発表後、エコノミストの間でも緊急事態への対処としてどの程度効果的であるかという観点からのコメントが多かった。

しかし、新型コロナウイルスによる感染問題への対処は経済対策の一側面に過ぎず、それには異なる目的の対策が盛り込まれていた。

感染拡大が収まるまでの対策(第1段階)だけでなく、その後に経済回復をめざすための対策(第2段階)が盛り込まれていたことである。後者は緊急事態への対処が目的でない経費である。

安倍首相が強調した総額6兆円超の現金給付についてもその対象は明確でなかった。安倍首相は「生活や事業を支援する策として、収入が減った低所得世帯などに5月にも現金30万円を給付する」と説明したが、その中には新型コロナウイルス問題により収入が減った世帯とそうでない理由で収入が減った世帯と両方が含まれているのではないか。少なくとも説明からはそう解さざるを得なかった。

給付の対象は「収入が減った低所得世帯」(30万円を1300万世帯に)と「中小・小規模事業者」(減収分として最大200万円、フリーランスを含めた個人事業者に最大100万円)という説明にも同じ問題があった。その中にはコロナ関連経費と非コロナ関連が含まれるからである。

非コロナ関連に何もしなくてよいといっているのではない。今回の宣言に際しては、前者が優先されるべきだといっているのである。

つまり、今回の経済対策は緊急事態に絞られていなかったので性格が不明確で、分かりにくかった。国民に大規模な対策を打ち出すことへの理解を求めるには緊急事態に絞った対策にしたほうがよかったと思う。

政府の緊急事態への認識はやはり甘いと思う。一方、経済困難な人たちを救おうという意識は強かった。極端かもしれないが、今回の経済対策は、一見緊急事態に対応して打ち出されたように見えたが、実はそうでなく、経済的に困難な人たちへの対策だったのである。

第2段階のことについては、今回の経済対策でおしまいということにならない。未曽有の困難が発生したのであり、今後も緊急経済対策が必要になるのは目に見えている。第2段階はその中で検討していくのが望ましい。

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