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2020.03.20

新型コロナウイルス対策に関する武漢中心医院の内部資料

 3月10日付の財新網は、新型コロナウイルスの感染と戦った武漢中心医院の関係者が作成した「新型コロナウイルス症に対する処置状況」と題する資料を掲載した。その記事は他のメディアからも強く注目され、『南方人物週刊』『騰訊(テンセント)』『多維新聞』でも報道された。

 中国では、新型コロナウイルスによる感染問題に関し、「中国政府および医療関係者がよく戦い、成果を上げた」と喧伝する報道が盛んにおこなわれている(この状況を米国の主要メディアは強く批判している)。また、米国がこのウイルスを「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」と呼称していることに反発し、このウイルスは元来米軍により持ち込まれたものだなどという反撃も行われている。これはさすがに根拠のない中傷だろうが、「新型コロナウイルスが最初に流行したのは中国だが、真の発生源は未確定である」とする議論はいくつも出てきている。

 そんな中に報道された本資料は、中国の医療体制のみならず、現政治体制の欠陥をも具体的に示す内容であり、医療関係者の無念な思いが伝わってくる。

 本資料は、なぜ武漢中心医院の感染者数と死亡者数が抜群に多いか、という問題提起から説き起こし、同病院の職員は4千人強で、その中で230人の医療関係者が感染したことなどを指摘している。A4で9ページの本資料を要約するのは困難であるが、特に注目される点を抽出すると以下のとおりである。

 「武漢中心医院の救急科は12月29日、華南海鮮市場から来た4人の患者を診療した。検査したところ、CT でも血液検査でもウイルス性肺炎の疑いが濃厚だったので江漢区疾病コントロールセンター防疫課に報告した。これに対し、防疫課は最近ほかの病院からも類似の報告が寄せられており、武漢中心医院からの報告は上級機関に報告するという対応であった。

 その時から防疫課、武漢市健康衛生局、同市健康衛生委員会、湖北省健康衛生委員会とのやり取りが始まったが、武漢中心医院からの報告は上級の機関に伝えられず、たらいまわしの状況になった。

 1月13日、江漢区疾病コントロールセンター防疫課は病院に対し、報告中の原因不明の肺炎は、別の病名に変更するよう連絡してきた。当時、全人代の湖北省会議が開催中であり、会議の開催中上級機関は動こうとしなかったことも一つの原因であった。

 この間、武漢市中心医院は北京博奥医学検験所に採取した検体の検査を依頼した(注 このような検査依頼はよく行われているという)。その結果病原体は新型のコロナウイルスであることが判明した。その報告は医師の手で武漢市中心医院の救急科に送られ、そこから多数の医師に情報として送られた。李文亮医師らはその報告に「華南水果海鮮市場で7人がコロナウイルスへ感染した。我々の救急科で隔離されている」との警告をつけてさらに伝達した。

 しかし、その日から、李文亮に対する当局の調査が始まり、詰問が行われた。1月3日には李医師は訓戒処分を受けた。

 また、新型ウイルスについての取り扱いが目立って厳しくなり、検体を第三者機関に検査依頼することはできなくなった。

 新型のコロナウイルスの危険性を示唆する文言は診断書など関係文書から削除された。2019年末には数百だった感染数が1月20日頃には数千に跳ね上がったのは隠ぺいが原因であった。

 1月12日から、病院から関係機関への報告は厳しく制限されるに至り、湖北省の健康衛生委員会の同意がなければ何も上級機関に報告できなくなった。危険な出来事が伝えられなくなったのである。伝えようとした者は「何でもないことに空騒ぎするな」と批判された。

 新型コロナウイルスの危険性を隠蔽した結果は重大である。多くの患者が命を落とした。李文亮医師は2月7日未明に死亡した。武漢市中心医院の医師で最初の犠牲者であった。 3月1日には甲状腺乳腺外科主任、3日には眼科の副主任、9日には眼科の別の副主任が相次いで死亡した。」

 新華社は3月19日、「多数の人が関心を抱いている李文亮医師に関する調査報告」を発表した。同日、武漢市公安局は李文亮医師に対する訓戒処分を撤回した。調査報告は同医師らが危険な状況を発信しようとした理由に全く触れておらず、ただ事実関係のみを記す内容である。報道の自由がない中国では何ら驚くべきことでないが、新型コロナウイルスによる感染問題が現体制に与えた衝撃は大きく、習近平政権がどのように対応するのか。報道に対する管制をさらに強化するのか、それとも現体制に内在する根本的な問題に注意を向けざるを得なくなるか。経済面での深刻な影響とともに注目される。


2020.03.14

新型コロナウイルス 遅すぎた中国全土の入国制限

ザページに「新型コロナウイルス 遅すぎた中国全土の入国制限」を寄稿しました。
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2020.03.13

新型肺炎問題への中国の対応についての米メディアによる批判

 米国のメディアは、新型コロナウイルスによる感染問題への中国政府の対応に強く批判的な報道をしており、2月19日には、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者3人が国外退去処分を受けた。

 ワシントンポスト紙3月11日付は中国の宣伝工作について、要旨以下のような記事を掲載している。

 「中国の情報操作に関心が集まっている。中国政府は問題を克服できるというイメージを作り出し、世論の支持を集めようとしてきた。よいニュースは政府が適切に対応した結果であると印象付け、政府に対する非難をかわそうとした。

 中央テレビ(CCTV)や人民日報など政府系のメディアは、政府がウイルスとの「人民戦争」を戦っているという記事ばかりを報道し、新しい政策や規則の実施、資源の配分、状況の改善、危機に対応するのに中国の政治体制が有効であることばかりを強調している。

 中国の政府系メディアは新型コロナウイルスによる感染を自然災害のように報道するだけで、次のような重要問題を探求する姿勢に欠ける。
〇中国の権威主義的システムのために、社会秩序の維持が優先され、病気と闘うことよりも上司に気に入ろうとする風潮が生み出されているのではないか。
〇早期警戒システムが中央に届くのが遅れたのはなぜか。
〇初期対応においてトップの指導者はどのような役割を果たすべきであったか。
〇自由な情報が伝達されず、李文亮医師の警告が見殺しにされるなどしてウイルスの拡大につながったのではないか。

 また、中国の報道やインターネットは医師や看護師の英雄的な行動と犠牲、ボランティア活動など中国の団結を示すショーケースになっている。英雄的行動があったのは事実であるが、この種の報道ばかりをすると政府のアカウンタビリティについての疑問から目をそらすことになる。

 ある高校の教師は、生徒たちに「称賛ばかりではならない。疑問を忘れてはならない」「冬を春の始まりのように見なしてはならない」とスピーチをしたという。これはまさに中国の宣伝機関が行ったことに他ならない。彼らは失敗を反省するのでなく、災害を自画自賛の機会にしてしまった。

 一部のメディアは空虚な宣伝だけでなく、事実関係に基づいた報道をした。政府の権威主義的な宣伝でなくソフトな宣伝であり、ある程度説得力があった。多くの中国人はウイルスと闘った中央政府を誇りに思うようになった。怒りは武漢市と湖北省政府に向けられた。中国の人たちは、初期段階で感染をコントロールできなかったのはなぜかという問題に注意を向けなかった。

 中央の推奨を受けて2月26日に出版された『大国戦役』と題する本は、習近平主席がウイルスと戦うのにいかに情熱を注いだか、政府の戦いがいかに優れていたか、中国共産党のシステムがいかに優れていたかを誇示するだけの内容であった。しかし、この本は数日もたたないうちに引き上げられた。勝利を祝うのは早すぎる、また、あまりに厚顔無恥の自画自賛だとネットで批判されたためであった。

 ネットでは、武漢の新書記が、武漢市は「感謝の教育」をし、また共産党と習総書記に感謝しなければならないと発言したことに批判があふれた。多くのコメンテーターは、死亡者に対する弔意を表明し犠牲者の家族の忍耐に感謝するのが先だと論じた。武漢市書記の発言はその後記録から削除された。習近平主席は武漢を訪問した際、武漢の人びとに感謝すると述べた。ネットでの批判を意識した発言であった。政府が行う宣伝には限界がある。

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