平和外交研究所

ブログ

ブログ記事一覧

2014.06.23

ウイグル族が関与する事件が増えている

新疆ウイグル自治区で事件が続発している。4月末、習近平主席がウルムチを視察した直後、公然と挑戦するかのようにウルムチ南駅で爆発事件が起き、82人が死傷した。
5月下旬には同市の朝市に車が突入・爆発し、133人が殺傷された。死者は約40人に上ったとも言われた。
中国当局はその直後から、1年間の「暴力テロ活動取り締まり特別行動」を全国で展開。自治区でも厳しい警戒態勢を敷いていた
6月には、トゥルファンなどの裁判所が、昨年6月、同自治区ルクチュンで24人が死亡した襲撃事件などに関わった13人の死刑を執行した。警察署などが襲われ、警察官や市民47人が死傷した事件など7件の事件の関係である。
また、同自治区ウルムチ市中級人民法院は、昨年10月、北京・天安門前に車両が突入・炎上した事件で、死亡した実行犯の共犯として起訴した3人にテロ組織を指導した罪などで死刑判決を下した。
今度は同自治区カシュガル地区カルギリク県で21日朝、県公安局のビルに車両が突っ込み、乗っていたグループが爆発物を起爆させた。自治区政府系ニュースサイト「天山網」が伝えている。警察は容疑者グループの13人を射殺したほか、警官3人が負傷したそうである。
 
テロリストによる攻撃はまことに憎むべきであり、犠牲者や家族には同情を禁じえないが、この問題には少数民族が絡んでいる。習近平政権は言論の統制を強化し、政府にとって問題なことは早期に芽を摘んでしまう方針で臨んでいる。テロに対する対応も同様であるが、強い措置がかえって反発を生み、過激化させる危険もある。

(さらに…)
2014.06.22

河野談話の検討結果

従軍慰安婦問題。河野談話の作成過程に関する検討結果が、20日、衆議院予算委員会理事会に報告され、21日にはメディアで広く報道された。河野談話は、慰安婦となった人々に対しお詫びと反省を表明したものであったが、それは同時に日本が国際社会に対して日本の姿勢を説明し、理解を求めるものであり、重要な役割を果たした。私は、この問題に関する「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」の設立にも、国連人権委員会での各国との交渉にも直接かかわった一人として、河野談話がなかったならば日本は窮地に陥っていただろうと証言できる。
慰安婦問題について韓国の対日批判を不当とし、とくに河野談話をやり玉に挙げる一部の傾向を背景に、安倍政権の下で河野談話の作成過程が検討されることとなった。細かい点に関する表現の誤りを指摘するくらいのことはありえても、河野談話によって示された日本としての姿勢を誤りと批判できるはずはなく、また、日本がもし河野談話と違う考えを各国に示したならば、日本の立場は悪くなり、慰安婦以外の問題にも悪影響が及んだであろう。河野談話の作成過程を検討することは何の役に立ちうるのか、懸念していた。
しかし、発表された検討結果をみて安心した。この調査は、非常に客観的に、丹念に関連資料を検討している。日本がこれまで示してきたお詫びと反省の姿勢を変更する必要はないことを再確認している。
これまでいろんな議論が戦わされるなかで、この問題について公に語ることは少なかった河野洋平氏自身も「軍の施設に慰安所があったのは疑う余地がない。大勢の女性がいたのも否定できない」と指摘し、慰安婦の募集については「自分からやってきた人もいるかもしれない。連れてこられた、だまされ、甘言で来たかもしれない。色んな集まり方があった」と語った。その上で談話で認めた強制性について「施設に入れば、軍の命令で働かされた。『帰る』といっても帰れない。そういうことになれば、強制的なものとみるのは当然じゃないでしょうか」と述べたそうである。
一方日本政府は、今後も河野談話を継承していく考えを明らかにした。
今回の検討の一つの焦点は河野談話の作成に際して韓国政府との「すりあわせ」であったところ、今回の検討結果において両国政府は一種の協議をしたことが示された。韓国政府にはそのことについて不満があるようだ。しかし、このように外交的に機微な問題について日本政府が一定の行動を取る前に韓国政府と話し合うことは当然である。それを「すりあわせ」と呼ぶか否か、韓国政府の言うように、「意見を求められたので答えた」だけか、問題ではない。外交的に当然で、かつ必要なことが行われたのである。
ともかく、今回の検討結果は全体として韓国政府としても積極的に評価できるはずであり、日韓関係の改善に支障とならないことを期待したい。
米国政府も今回の検討結果を積極的に評価している。それも重要なことである。

(さらに…)
2014.06.21

集団安全保障へ参加する?

政府・自民党は、集団的自衛の場合でなくいわゆる集団安全保障の場合でも、機雷の除去など限られた一定の範囲内では自衛隊が行なうことを認めることを閣議決定に盛り込みたい考えであり、公明党にその考えを示したそうである。集団的自衛権に関し報道されている政府・与党の検討状況は日替わりメニューのように激しく変化している。報道が過剰に行われている可能性は排除できないが、政府・自民党の考えが流動的であるのは間違いなさそうだ。そのことは前提にしつつ、集団的自衛と集団安全保障の違いを確認しておこう。

とくに武力行使が焦点となる。集団的自衛の場合、国連の大原則である武力行使禁止の例外として認められることが国連憲章第51条で示されている。詳しく言えば、その条文には百パーセントその通り表現されてはいないが、確立された解釈であると言ってよい。
国連憲章ではもう一つ武力行使が認められる例外として、いわゆる「国連軍」の設置が想定されていた。「国際の平和および安全の維持や回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動を取る」と定めた第42条が中心的規定である。しかし、これは国際社会の厳しい意見対立のため国連が成立して以来一度も実現したことがなく、今後も成立しそうにない。
一方、国連安全保障理事会は、「平和に対する脅威、平和の破壊、侵略」などが生じた場合に、当事国に自制を求め、和解を促し、停戦を求めつつ、国連加盟国がそのために行動することを認め、また、その場合に、武力の行使を認めることがある。国連自身が認めたことなのでこの場合も国連憲章違反にはならない。通常このような行動は複数の国が参加するので「多籍軍」と呼ばれている。その例はかなりあり、アフガニスタンで活動している部隊もこれである。国連憲章の本来の考えでは「国連軍」を派遣して停戦あるいは和平を実現するのであるが、これが実現していないため国連の全加盟国でなく有志国の行動であるが、安保理としてそれが必要と認定する場合に取られる措置である。
この「多国籍軍」といわゆる「平和維持活動(PKO)」は明確に区別される。PKOも複数の国の部隊から構成されているので外見上多国籍軍と見分けがつかないが、PKOは、すでに停戦あるいは和平がすでに実現している場合に「平和の維持」のため国連から派遣される。多国籍軍の場合は停戦も和平も実現しておらず、争いがまだ残っている。この点でPKOと決定的に異なっている。また、多国籍軍の司令官はいずれかの国の司令官が務めることになるが、PKOの最高指揮権は国連事務総長にある。PKOの場合と違って多国籍軍の場合は状況で行動する。
国連軍と多国籍軍の違いも大きい。国連軍は国連憲章が定めている、全加盟国が責任を負う軍隊である一方、多国籍軍は憲章に明示の規定は定めがなく解釈で認められる。多国籍軍は一部の国が参加するものであり、参加するか否かは各国が決定する。つまり、国連軍と多国籍軍は、国連全体と一部の国との区別、義務的と任意的との区別がある。
日本がもし集団安全保障に加盟するなら、ここで述べたことは明確に認識していなければならない。とくに問題になるのは「争いが残っている」ことであり、このため多国籍軍では日本国憲法が明確に禁じている「国際紛争を解決するために武力を行使する」ことになる。集団的自衛に参加するか否かは憲法の解釈いかんで認められる可能性があるが、集団安全保障への参加は明確な憲法の禁止規定への違反問題を惹起する。
ちなみに、仮定の話であるが、国連軍が成立した場合、それに参加するのは全加盟国の義務となるが、その場合でも、「国際紛争を解決するために武力を行使する」ことが憲法で明確に禁止されている日本として参加できるか問題になりうる。つまり、多国籍軍が認められるのは「国際紛争を解決するため」であり、これは憲法が明確に禁止してことだという問題があるのである。
蛇足であるが、PKOの場合、「国際紛争」はすでに収束しているので、憲法の規定上は武力を行使する余地がある。もちろんその場合の武力行使とは、争いがある場合の武力行使とは比較にならないくらい小規模であり、日本では「武器使用」と呼ばれる。ともかく、そのような小規模の武力行使/武器使用に歯止めをかける必要はないどころか、PKOの根拠となっている安保理決議により与えられた任務を実行するのに必要な武力行使/武器使用に制限をかけるべきでないと考える。
最後に、機雷除去に限り集団安全保障に参加すべきであるという意見について。ひとたびこの憲法規定に関わらず集団安全保障に参加すれば、以後、機雷除去に限るのが日本の方針だ、他のことには参加できない、それは国の方針だと説明しても説得力を持ちえなくなるであろう。国際社会に対しては国際的にも理屈にかなったことしか主張できない。国際社会においては、憲法の禁止規定は乗り越えたが、政府方針はあくまで変えられないなどと言えないはずである。

(さらに…)

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.