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2015.12.07

(短文)南シナ海に対する台湾の古い政策は見直すべきだ

 以下に紹介するのは台湾の聯合報(12月6日付)の記事であり、台湾の政府は、南シナ海全域に領有権を主張する昔からの「十一段線」政策を見直すべきではないかと示唆している。同新聞は保守系とみられることが多いが、国民党にも民進党にも批判的な記事を掲載することがある。これもその一つだ。
 なお、台湾の南シナ海に対する政策については東洋経済オンラインに寄稿した(12月1日)「南沙を巡る争いは、台湾存続の命取りになる」を参照願いたい。

 「台湾初の南シナ海の詳細な地図が完成した。内政部によれば、海図の電子版作製を目指してさらに作業を継続するそうだ。
 馬英九総統は12月12日に太平島を訪問する。新地図の公表とあいまって中華民国の南シナ海に対する主権を誇示する狙いがあるのだろう。
 今年「南疆史料展(南方地方史料展)」が開催され、中華民國政府が1947年に発表した地図も展示された。この地図では150あまりの島と岩礁が中華民国の領域と示されていたが、現在実効支配しているのは2つの島と1つの岩礁だけだ。
 2000年に政権が民進党に交代する前から、国民党政府は南シナ海に対する政策の調整を開始し、守備軍であった海軍陸戦隊を海洋警備や生態研究に切り替えてきた。
 陳水扁政権は太平島に滑走路と桟橋を建設する一方、南シナ海の調査を開始した。
 
 台湾がこれまで一貫して主張してきたのは「南シナ海の諸島は中国固有の領域であり、その主権が及ぶ」であり、いわゆる「十一段線」で囲まれる海域を台湾の領域としてきた。
 しかし、そのような対外姿勢は次第に意義を失いつつある。現在進めている調査が完成すれば、これまで主張してきた大陸棚に基づく権利は止揚(揚棄)すべきであり、そうすることによってはじめて形式に実質が伴うことになる。
 中国が南シナ海に対する主権を主張したのを機会に、台湾が同じく南シナ海への主権を主張すれば近隣諸国との間で緊張関係を生み、はなはだしい場合、台湾が中国と結託して南シナ海を掌握しようとしていると疑われかねない。」

(注)「大陸棚に基づく権利」とは南シナ海全域に対する権利のことであり、「形式に実質が伴う」とは「2島と1岩礁しか実行支配していないという現実にあった主張をすべきだ」ということであろう。

2015.12.06

(短評)テロ事件と無人飛行機

 パリにおける同時テロ事件が引き起こした波紋の一つだが、フランス政府は原発の警備を最大限にまで強化することにしたそうだ。フランスの治安機関には1万名のテロ容疑者のリスト(S-ファイル)があるが、EDF(フランス電力)はその最新版を持っていないので、人物確認には限界があると言う。

 本研究所HPはかねてから原発に対するテロ攻撃の危険性、とくに無人飛行機を使った攻撃などに警鐘を鳴らしてきた(2015年10月6日の「(短文)ドローンの危険性」など)こともあり、フランスでのこのような動きにはとくに関心を覚える。

 おりしも、日本ではドローンの競技会が開催されている。米国では、ドローンを使って注文された品物を短時間で配達するネット販売が盛んになっている。どうしてもこのようなことが報道されがちだが、ドローンを悪用した犯罪の危険性について全国民が警戒心を高めるべきだと思う。
2015.12.03

(短評)アジアインフラ投資銀行の開設準備

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の開設準備は、12月末の発足に向けて予定通り進んでいるようだ。
 中国は11月にAIIBの設立協定を批准した。それより前に3カ国がすでに批准している。払い込み資本の合計が授権資本の50%以上になり、かつ10カ国以上が批准すれば正式に成立する。
 総裁候補の金立群は北京商報(12月2日付)のインタビューに答え次のように述べている。

「1年間の貸与額は100~150億ドルにするのが目標だが、来年は初年度で、しかも最初のプロジェクトは第2期に始まるので、15~20億ドルとなるだろう。
 通貨はやはりドルが主だが、人民元がSDR資格を得たので将来はその使用が徐々に増加していくだろう。
 アジア開発銀行(ADB)および世界銀行(WB)とは相互補完的に協力を行う。競争するのではない。中央アジア、南アジアおよび「一帯一路」の地域などがAIIBの融資先になるだろう。当面の融資分野は、エネルギー、交通など従来型の案件が多くなると思う。
 ADBなどとの協調融資については話し合いが続行中だ。アジアの投資需要は非常に大きく、共同で応えていきたい。」

 北京商報は金立群の談話を補足する形で、次の趣旨を述べている。
「資本金だけで見れば、AIIBはADBと大差ない。しかし、その審査基準はより緩やかで、融資要請に対しより柔軟に対応できる。
 楼継偉財政部長はAIIBの審査規則はWBなどとは違ったものになるだろうと発言したことがある。
 ADB側には必ずしもAIIBとの協力に積極的でないところもある。日本は、貸与限度額を50%増加し、また、2017年から年間の貸与額を現在の1・5倍にしようとしている。
 「一帯一路」とAIIBは双子の兄弟だが、中国がAIIBの貸与対象になることはない。
 今年の5月、地震に見舞われたネパールはAIIBに資金援助が可能か打診してきた。
 中国独自の「シルクロード基金」の最初のプロジェクトは中国パキスタン間の水力発電であった。」
 
この記事は参考になるが、AIIBが「一帯一路」と双子だと言う一方で、中国を融資対象としないと断る感覚は理解困難だ。「一帯一路」は中国が独自で決めたことであり、場所は中国の外にあるとしても中国のプロジェクトではないか。

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