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2018.06.11
香港紙『明報』6月11日付が伝えるトラック運転手によるストライキは比較的珍しい。このような事件が珍しいのでなく、報道されることが少ないと見るべきだろう。
〇去る5月にクレーン車の運転手による大規模なストライキが起こったのに引き続き、トラックの運転手が全国規模で抗議する動きを見せている。
〇不満の原因は、燃料の高騰、運送費の低迷、交通を管理する当局が罰金を恣意的に課するなど搾取していることなどである。
〇山東、四川両省ではすでにストが始まった。
〇一部地域ではスト決行を予定日より早めている。また、全国3千万人のトラック運転手に参加を呼び掛けている。
〇各地でストライキしている運転手は、車を高速道路、国道、駐車場などに止めてストを行っている。料金所を占拠している者もいる。物流基地でデモを行っている例もある。
中国でのトラック運転手によるストライキ
現在、中国では1年間に万の台に上る数の集団抗議事件(「群体性事件」と呼ばれる)が起こっている。その中で比較的多いのが、土地の再開発・収用に関する事件であり、企業でもよくデモが起こっている。香港紙『明報』6月11日付が伝えるトラック運転手によるストライキは比較的珍しい。このような事件が珍しいのでなく、報道されることが少ないと見るべきだろう。
〇去る5月にクレーン車の運転手による大規模なストライキが起こったのに引き続き、トラックの運転手が全国規模で抗議する動きを見せている。
〇不満の原因は、燃料の高騰、運送費の低迷、交通を管理する当局が罰金を恣意的に課するなど搾取していることなどである。
〇山東、四川両省ではすでにストが始まった。
〇一部地域ではスト決行を予定日より早めている。また、全国3千万人のトラック運転手に参加を呼び掛けている。
〇各地でストライキしている運転手は、車を高速道路、国道、駐車場などに止めてストを行っている。料金所を占拠している者もいる。物流基地でデモを行っている例もある。
2018.06.08
そもそも、「両首脳は北朝鮮の完全な非核化について合意した」というような文書に署名することはあり得ない。それだけであれば具体性に欠けるからだ。
2005年9月の6者協議共同声明は、北朝鮮の非核化に関しこれまで関係諸国が到達した最も内容のある合意だが、「朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること」と述べていた。今から思えば、具体性のない合意であった。
トランプ・金会談(以下TKS)でこのような文言が繰り返されるのであれば、会談は成功したことにならない。「大山鳴動、鼠ゼロ匹」と批判されるだろう。
TKSが成功とみなされるには、非核化の内容、検証の在り方および休戦協定の平和条約への転換について、具体的で明確な合意に達することが必要である。
米国や日本はCVIDを求めるべきだというが、CVIDだけではやはり具体性に欠けるのである。
以下、TKSが成功するのに必要な具体的内容を列挙する。
非核化については、まず、北朝鮮が保有する「すべての核兵器」の廃棄・処分でなければならない。「すべての」という形容詞がなく、単に「北朝鮮が保有する核兵器を廃棄する」であれば不十分だ。
北朝鮮は、段階的な廃棄を主張する可能性があるが、北朝鮮が一歩踏み出せば、米国も一歩進むというような形の合意であってはならない。それは、今までの経験からしてうまくいかないことが明らかだからであり、かりにそのような合意しか達成できないのであれば、TKSは失敗となろう。
廃棄には一定の時間が必要だということは別の問題であり、この点は認められるべきだ。しかし、時間が長くなりすぎると期限がないのと同じことになる危険が大きい。
今回のTKSでは、段階的廃棄ではなく、合理的な範囲内で廃棄の期限を明確に設定する必要がある。これができるかに会談の成功がかかっている。
今回、具体的な期限が決定できなければ、会談を再開して決定することはありうる。トランプ氏はそのことを想定して発言しているようだ。
廃棄以外の方法で非核化することもありうる。たとえば、核兵器の国外への持ち出しである。さらにほかの方法があるかもしれない。それらをすべて含めて「処分」と呼んでいるが、廃棄と同様の期限設定が必要である。
「関連施設」は、冷却塔、ウラン濃縮施設、実験場などかなりの数にのぼる。これらを一つずつ明記して廃棄することは、TKSには細かすぎる。しかし、「核関連施設」とか「核計画」などと包括的な名称で対象を示しつつその廃棄、ないし放棄することを明記すべきだろう。
非核化の対象地域は「北朝鮮」に絞るべきだ。これまでよく使われてきたのは「朝鮮半島の非核化」だが、そうする必要はないし、また、そうすれば、交渉が複雑化し合意が妨げられる危険がある。
原発など原子力の平和利用は普遍的な権利であり、国際法でも認められている。北朝鮮による原子力の平和利用問題をTKSが取り上げなくても失敗とみなすべきでない。
なお、1994年の米朝間のいわゆる枠組み合意では北朝鮮の原子力平和利用を認めていた。
北朝鮮側は廃棄・処分に要する費用の支払いを米側に求めてくる可能性がある。この問題もTKSが取り上げるかわからない。いずれにしても会談成功/失敗には関係ないだろう。
生物・化学兵器の廃棄を求めるべきだとの意見があるが、TKSでそれらについて合意を試みることは、北朝鮮が応じてくれば別だが、そうでない限り、深入りすべきでない。これらをも対象にすると、交渉が複雑化し、TKSの成功がより困難になるからだ。
核計画に関与した科学者を北朝鮮から国外へ移すとの意見もあるが、これも同じ理由で深入りすべきでない。しかも、科学者は将来育ってくることもありうるので、科学者を国外に移すことは北朝鮮の核開発の再開を不可能にする方法でなく、遅らせるだけの効果しかない。そのようなことによって交渉を遅らせたり、失敗させたりしてはならない。
以上は、北朝鮮が実行すべきことであるが、米国が北朝鮮に与えるべきことは後述する。
徹底した検証についての合意はTKSの成功に不可欠であるが、具体的な内容を盛り込もうとすれば、きわめて技術的、専門的な問題が出てくるので非常に扱いにくい。原則としては、「いつでも、どこでも」査察ができることと、正常な査察が北朝鮮側の原因でできなくなった場合、すべての合意は破棄されることが明確にされる必要がある。このような検証メカニズムが合意されれば、かつてのように、北朝鮮が軍事施設を理由に査察を拒否できなくなる。拒否すれば、すべての合意は崩れる。
北朝鮮の核不拡散条約(NPT)への復帰も必要だ。これが実現すると、北朝鮮に対する査察について法的な根拠が明確になる。
一方で、原子力の平和利用は北朝鮮の権利であることが明確になる。
米国が北朝鮮に与えるのは「国家承認」である。朝鮮戦争の休戦協定を「平和条約」に転換することとか、「不可侵協定」、「攻撃しないとの保証」などで表現されることもある。
メディアの一部には、「体制保証」を使う傾向がみられるが、「保証」は与える側が責任を持つことであり、「北朝鮮の体制」については、金体制であれ、共産主義体制であれ、あるいはその他の体制であれ、米国が「保証」することはあり得ない。米国はこの問題について「体制保証」に相当する言葉を使っていない。1994年の枠組み合意や前述の2005年共同声明が用いているのは、「米国が北朝鮮を攻撃しない」ということである。これであれば、「保証」と違って、米国が決めればできることである。また、トランプ大統領は「安全protection」と表現している。
米国が北朝鮮を承認するのは核兵器の廃棄が完了した時点とすべきだ。米国による北朝鮮の承認と北朝鮮による核兵器の廃棄は最終的目標である。
この目標を達成するためには、トランプ氏と金氏が複数回会談を重ねることもありうる。問題の困難性にかんがみると、むしろそのほうが自然である。
さらに、仮に将来、合意されたことが順守されない場合には、承認の条件が失われたことになるので、取り消されるべきである。このこともTKSで明確に合意すべきである。
6月12日に、非核化交渉が開始し、最終目標が達成されるまでの間、北朝鮮は制裁の解除を求めてくる可能性がある。米朝交渉の初めと終わりが明確になっているのであれば、制裁の解除は交渉次第であり、交渉成立に寄与するのであれば、米国が応じることはありうる。
ただこの問題についても、2005年の共同声明のように、「約束対約束、行動対行動」の原則を謳うことは避けなければならない。この原則は役に立たなかったからである。
米朝首脳会談が成功する条件
米朝首脳会談に向けて詰めの協議が進んでいる。トランプ大統領の最近の発言は準備が順調でないことを示唆しているとの観測が流れているが、「会談は1回で終わらない」とか「文書に署名するつもりはない」などの発言は、合意内容の詰めが進んでいることの表れである。そもそも、「両首脳は北朝鮮の完全な非核化について合意した」というような文書に署名することはあり得ない。それだけであれば具体性に欠けるからだ。
2005年9月の6者協議共同声明は、北朝鮮の非核化に関しこれまで関係諸国が到達した最も内容のある合意だが、「朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること」と述べていた。今から思えば、具体性のない合意であった。
トランプ・金会談(以下TKS)でこのような文言が繰り返されるのであれば、会談は成功したことにならない。「大山鳴動、鼠ゼロ匹」と批判されるだろう。
TKSが成功とみなされるには、非核化の内容、検証の在り方および休戦協定の平和条約への転換について、具体的で明確な合意に達することが必要である。
米国や日本はCVIDを求めるべきだというが、CVIDだけではやはり具体性に欠けるのである。
以下、TKSが成功するのに必要な具体的内容を列挙する。
非核化については、まず、北朝鮮が保有する「すべての核兵器」の廃棄・処分でなければならない。「すべての」という形容詞がなく、単に「北朝鮮が保有する核兵器を廃棄する」であれば不十分だ。
北朝鮮は、段階的な廃棄を主張する可能性があるが、北朝鮮が一歩踏み出せば、米国も一歩進むというような形の合意であってはならない。それは、今までの経験からしてうまくいかないことが明らかだからであり、かりにそのような合意しか達成できないのであれば、TKSは失敗となろう。
廃棄には一定の時間が必要だということは別の問題であり、この点は認められるべきだ。しかし、時間が長くなりすぎると期限がないのと同じことになる危険が大きい。
今回のTKSでは、段階的廃棄ではなく、合理的な範囲内で廃棄の期限を明確に設定する必要がある。これができるかに会談の成功がかかっている。
今回、具体的な期限が決定できなければ、会談を再開して決定することはありうる。トランプ氏はそのことを想定して発言しているようだ。
廃棄以外の方法で非核化することもありうる。たとえば、核兵器の国外への持ち出しである。さらにほかの方法があるかもしれない。それらをすべて含めて「処分」と呼んでいるが、廃棄と同様の期限設定が必要である。
「関連施設」は、冷却塔、ウラン濃縮施設、実験場などかなりの数にのぼる。これらを一つずつ明記して廃棄することは、TKSには細かすぎる。しかし、「核関連施設」とか「核計画」などと包括的な名称で対象を示しつつその廃棄、ないし放棄することを明記すべきだろう。
非核化の対象地域は「北朝鮮」に絞るべきだ。これまでよく使われてきたのは「朝鮮半島の非核化」だが、そうする必要はないし、また、そうすれば、交渉が複雑化し合意が妨げられる危険がある。
原発など原子力の平和利用は普遍的な権利であり、国際法でも認められている。北朝鮮による原子力の平和利用問題をTKSが取り上げなくても失敗とみなすべきでない。
なお、1994年の米朝間のいわゆる枠組み合意では北朝鮮の原子力平和利用を認めていた。
北朝鮮側は廃棄・処分に要する費用の支払いを米側に求めてくる可能性がある。この問題もTKSが取り上げるかわからない。いずれにしても会談成功/失敗には関係ないだろう。
生物・化学兵器の廃棄を求めるべきだとの意見があるが、TKSでそれらについて合意を試みることは、北朝鮮が応じてくれば別だが、そうでない限り、深入りすべきでない。これらをも対象にすると、交渉が複雑化し、TKSの成功がより困難になるからだ。
核計画に関与した科学者を北朝鮮から国外へ移すとの意見もあるが、これも同じ理由で深入りすべきでない。しかも、科学者は将来育ってくることもありうるので、科学者を国外に移すことは北朝鮮の核開発の再開を不可能にする方法でなく、遅らせるだけの効果しかない。そのようなことによって交渉を遅らせたり、失敗させたりしてはならない。
以上は、北朝鮮が実行すべきことであるが、米国が北朝鮮に与えるべきことは後述する。
徹底した検証についての合意はTKSの成功に不可欠であるが、具体的な内容を盛り込もうとすれば、きわめて技術的、専門的な問題が出てくるので非常に扱いにくい。原則としては、「いつでも、どこでも」査察ができることと、正常な査察が北朝鮮側の原因でできなくなった場合、すべての合意は破棄されることが明確にされる必要がある。このような検証メカニズムが合意されれば、かつてのように、北朝鮮が軍事施設を理由に査察を拒否できなくなる。拒否すれば、すべての合意は崩れる。
北朝鮮の核不拡散条約(NPT)への復帰も必要だ。これが実現すると、北朝鮮に対する査察について法的な根拠が明確になる。
一方で、原子力の平和利用は北朝鮮の権利であることが明確になる。
米国が北朝鮮に与えるのは「国家承認」である。朝鮮戦争の休戦協定を「平和条約」に転換することとか、「不可侵協定」、「攻撃しないとの保証」などで表現されることもある。
メディアの一部には、「体制保証」を使う傾向がみられるが、「保証」は与える側が責任を持つことであり、「北朝鮮の体制」については、金体制であれ、共産主義体制であれ、あるいはその他の体制であれ、米国が「保証」することはあり得ない。米国はこの問題について「体制保証」に相当する言葉を使っていない。1994年の枠組み合意や前述の2005年共同声明が用いているのは、「米国が北朝鮮を攻撃しない」ということである。これであれば、「保証」と違って、米国が決めればできることである。また、トランプ大統領は「安全protection」と表現している。
米国が北朝鮮を承認するのは核兵器の廃棄が完了した時点とすべきだ。米国による北朝鮮の承認と北朝鮮による核兵器の廃棄は最終的目標である。
この目標を達成するためには、トランプ氏と金氏が複数回会談を重ねることもありうる。問題の困難性にかんがみると、むしろそのほうが自然である。
さらに、仮に将来、合意されたことが順守されない場合には、承認の条件が失われたことになるので、取り消されるべきである。このこともTKSで明確に合意すべきである。
6月12日に、非核化交渉が開始し、最終目標が達成されるまでの間、北朝鮮は制裁の解除を求めてくる可能性がある。米朝交渉の初めと終わりが明確になっているのであれば、制裁の解除は交渉次第であり、交渉成立に寄与するのであれば、米国が応じることはありうる。
ただこの問題についても、2005年の共同声明のように、「約束対約束、行動対行動」の原則を謳うことは避けなければならない。この原則は役に立たなかったからである。
2018.06.06
台湾の名称は複雑だ。各国での扱い、国際機関での扱い、民間での扱いの3つの次元を区別して見ていく必要がある。
国のレベルでは、まず、日本政府は「台湾」を使っている。日本と台湾の間には外交関係がないので、実務を処理する公益財団法人が設置されており、その名称は2017年1月1日から、「公益財団法人日本台湾交流協会」に変更されている。この名称はこの財団法人が独自で決めたのではなく、日本政府の事実上の承認を得ている。
米国は台湾との関係を法律、Taiwan Relations Actで定めており、‘Taiwan’と呼んでいる。後で述べる’Republic of China’は使用していない。
当事者である台湾では、「中華民国」が正式の呼称であり、通称は「台湾」であるが、むしろこの通称のほうが好まれる傾向がある。
中国は「中華民国」という名称を認めない。逆に、台湾も「中華人民共和国」という中国の正式名称を認めない。両者は、法的には、今でも内戦状態にあるからだ。
中国は、また、「台湾」については、中国の一部であることが表示されれば構わないという立場のようにも見受けられるが、実際には「中国台北」という名称を使っている。
なお、台湾では、この「中国台北」は受け入れないが、「中華台北」ならしぶしぶだが、受け入れている。どちらも奇妙な名称だが、何が違うのか。「中国台北」では中国が前面に出るので、中国政府は、それでよいとし、台湾は同じ理由で受け入れないのだ。しかし、「中華台北」であれば、「中華」は「中華民国」にも入っているので受け入れているのだろう。
いずれにしても、この違いは台湾や中国にとっては重要なのだろうが、漢字を使わない大多数の国にとっては、いずれの訳も’Chinese Taipei’となり、どちらでも構わないということになる。
国際機関においては、国連での扱いがモデルになる。1971年、中国を代表するのは「中華民国」でなく「中華人民共和国」となって以来、国連には台湾を表示する機会が原則的になくなった。
しかし、統計などではどうしても台湾に言及する必要があり、その場合には、長い注を付けて誤解のないようにしている。
たとえば、国連には「世界地理区分」という統計スキームがある。そのなかで、「アジア」とはどの国と表示されており、台湾を無視することはできない。そこで国連は、次の注を付けている。
Note on Taiwan
Several institutions and research papers using classification schemes based on the UN geoscheme include Taiwan separately in their divisions of Eastern Asia. (1) The Unicode CLDR’s “Territory Containment (UN M.49)” includes Taiwan in its presentation of the UN M.49. (2) The public domain map dataset Natural Earth has metadata in the fields named “region_un” and “subregion” for Taiwan. (3)The regional split recommended by Lloyd’s of London for Eastern Asia (UN statistical divisions of Eastern Asia) contains Taiwan. (4) Based on the United Nations statistical divisions, the APRICOT (conference) includes Taiwan in East Asia. (5) Studying Website Usability in Asia, Ather Nawaz and Torkil Clemmensen select Asian countries on the basis of United Nations statistical divisions, and Taiwan is also included. (6) Taiwan is also included in the UN Geoscheme of Eastern Asia in one systematic review on attention deficit hyperactivity disorder.
国際的には、国連など国際機関と並んで、国際スポーツ団体でも台湾を表示する必要があり、国際オリンピック連盟では’Chinese Taipei’名義を用いている。競技種目ごとに国際団体があるが、このオリンピック方式に倣っている。
民間での呼称は国際的に決まっているわけではない。個人、あるいは個々の企業が決めることだが、通常は所属国政府が用いている呼称、具体的には’Taiwan’を用いている。今回中国の民航当局から通告を受けた企業も、確かめたわけではないが、’Taiwan’としているのだろう。中国政府はこれを嫌い、今般の通告を発したのだ。
オーストラリアのカンタス航空はこの通告を受け入れる方針だと伝えられているが、米国企業がどう対応するかは不明だ。
かりに、航空会社が中国の通告に従わなければ、中国への飛行を、適当な理由で阻まれることになるのだろう。それは困るので、中国政府の言うなりに対応するということである。
米ホワイトハウスのサンダーズ報道官は5月5日、中国の通告を厳しく批判して、”We call on China to stop threatening and coercing American carriers and citizens.” “part of a growing trend by the Chinese Communist Party to impose its political views on American citizens and private companies.”と述べ、また、中国当局の要求は “Orwellian nonsense”だともこき下ろした。「ジョージ・オーウェルが書いた『ナンセンス詩』のようにわけのわからない話だ」という意味であろうか。
ナンセンスかどうかはともかく、サンダーズ報道官の言うとおりである。中国は最近台湾の孤立化を進めようと躍起になっている。世界保健機関(WHO)オブザーバー参加を阻んだのも中国の差し金だ。要するに、中国は台湾統一を実現するためにあらゆる可能な手段を用いているのである。
さらに注目すべきは、中国が、市場が巨大であることを利用して、強引に主張を通そうとしていることである。
日本の場合は、日本航空も全日本空輸も、日本政府と同様「台湾」と表示している。中国は日本の航空会社に対しても同様の要求をしてくるか、今のところ不明であるが、このような政治的な問題に日本の企業を巻き込まないよう願いたいものだ。
中国は外国航空会社に台湾の呼称を改めるよう要求
去る4月、中国の民航当局は外国の航空会社に対し、「台湾」の呼称を改めるよう要求した。対象となった会社は30以上。日本の会社は含まれていないようだ。‘Chinese Taipei’ならよいという。台湾の名称は複雑だ。各国での扱い、国際機関での扱い、民間での扱いの3つの次元を区別して見ていく必要がある。
国のレベルでは、まず、日本政府は「台湾」を使っている。日本と台湾の間には外交関係がないので、実務を処理する公益財団法人が設置されており、その名称は2017年1月1日から、「公益財団法人日本台湾交流協会」に変更されている。この名称はこの財団法人が独自で決めたのではなく、日本政府の事実上の承認を得ている。
米国は台湾との関係を法律、Taiwan Relations Actで定めており、‘Taiwan’と呼んでいる。後で述べる’Republic of China’は使用していない。
当事者である台湾では、「中華民国」が正式の呼称であり、通称は「台湾」であるが、むしろこの通称のほうが好まれる傾向がある。
中国は「中華民国」という名称を認めない。逆に、台湾も「中華人民共和国」という中国の正式名称を認めない。両者は、法的には、今でも内戦状態にあるからだ。
中国は、また、「台湾」については、中国の一部であることが表示されれば構わないという立場のようにも見受けられるが、実際には「中国台北」という名称を使っている。
なお、台湾では、この「中国台北」は受け入れないが、「中華台北」ならしぶしぶだが、受け入れている。どちらも奇妙な名称だが、何が違うのか。「中国台北」では中国が前面に出るので、中国政府は、それでよいとし、台湾は同じ理由で受け入れないのだ。しかし、「中華台北」であれば、「中華」は「中華民国」にも入っているので受け入れているのだろう。
いずれにしても、この違いは台湾や中国にとっては重要なのだろうが、漢字を使わない大多数の国にとっては、いずれの訳も’Chinese Taipei’となり、どちらでも構わないということになる。
国際機関においては、国連での扱いがモデルになる。1971年、中国を代表するのは「中華民国」でなく「中華人民共和国」となって以来、国連には台湾を表示する機会が原則的になくなった。
しかし、統計などではどうしても台湾に言及する必要があり、その場合には、長い注を付けて誤解のないようにしている。
たとえば、国連には「世界地理区分」という統計スキームがある。そのなかで、「アジア」とはどの国と表示されており、台湾を無視することはできない。そこで国連は、次の注を付けている。
Note on Taiwan
Several institutions and research papers using classification schemes based on the UN geoscheme include Taiwan separately in their divisions of Eastern Asia. (1) The Unicode CLDR’s “Territory Containment (UN M.49)” includes Taiwan in its presentation of the UN M.49. (2) The public domain map dataset Natural Earth has metadata in the fields named “region_un” and “subregion” for Taiwan. (3)The regional split recommended by Lloyd’s of London for Eastern Asia (UN statistical divisions of Eastern Asia) contains Taiwan. (4) Based on the United Nations statistical divisions, the APRICOT (conference) includes Taiwan in East Asia. (5) Studying Website Usability in Asia, Ather Nawaz and Torkil Clemmensen select Asian countries on the basis of United Nations statistical divisions, and Taiwan is also included. (6) Taiwan is also included in the UN Geoscheme of Eastern Asia in one systematic review on attention deficit hyperactivity disorder.
国際的には、国連など国際機関と並んで、国際スポーツ団体でも台湾を表示する必要があり、国際オリンピック連盟では’Chinese Taipei’名義を用いている。競技種目ごとに国際団体があるが、このオリンピック方式に倣っている。
民間での呼称は国際的に決まっているわけではない。個人、あるいは個々の企業が決めることだが、通常は所属国政府が用いている呼称、具体的には’Taiwan’を用いている。今回中国の民航当局から通告を受けた企業も、確かめたわけではないが、’Taiwan’としているのだろう。中国政府はこれを嫌い、今般の通告を発したのだ。
オーストラリアのカンタス航空はこの通告を受け入れる方針だと伝えられているが、米国企業がどう対応するかは不明だ。
かりに、航空会社が中国の通告に従わなければ、中国への飛行を、適当な理由で阻まれることになるのだろう。それは困るので、中国政府の言うなりに対応するということである。
米ホワイトハウスのサンダーズ報道官は5月5日、中国の通告を厳しく批判して、”We call on China to stop threatening and coercing American carriers and citizens.” “part of a growing trend by the Chinese Communist Party to impose its political views on American citizens and private companies.”と述べ、また、中国当局の要求は “Orwellian nonsense”だともこき下ろした。「ジョージ・オーウェルが書いた『ナンセンス詩』のようにわけのわからない話だ」という意味であろうか。
ナンセンスかどうかはともかく、サンダーズ報道官の言うとおりである。中国は最近台湾の孤立化を進めようと躍起になっている。世界保健機関(WHO)オブザーバー参加を阻んだのも中国の差し金だ。要するに、中国は台湾統一を実現するためにあらゆる可能な手段を用いているのである。
さらに注目すべきは、中国が、市場が巨大であることを利用して、強引に主張を通そうとしていることである。
日本の場合は、日本航空も全日本空輸も、日本政府と同様「台湾」と表示している。中国は日本の航空会社に対しても同様の要求をしてくるか、今のところ不明であるが、このような政治的な問題に日本の企業を巻き込まないよう願いたいものだ。
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