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2018.04.19
トランプ政権が成立してから1年余り、日米両国は北朝鮮問題に関して歩調をそろえるため何回も連絡を取り合い、協議してきた。特に問題となったのは、北朝鮮との「対話」についてどのような姿勢で臨むかであった。
安倍首相は、北朝鮮との「対話」には常に消極的であり、「圧力」一辺倒の姿勢をとってきた。米朝首脳会談が行われることになって以降、多少表現を微調整しているようにも見受けられるが、基本は変わっていない。
トランプ大統領もこの安倍首相の考えをよく承知しており、日本がいないところではあくまで自分の考えを貫きつつ、つまり「圧力と対話」で臨みつつ、安倍首相に対しては、日本を支持していると述べてきた。その意味では安倍首相が言う、「日米は一致している」ということに同調したのである。
トランプ氏は、会談の相手によって話す内容を変えただけでなく、金委員長と会談してもよいというメッセージを数回発していた。このようなトランプ氏の姿勢については、『世界』2018年1月号掲載の「トランプ大統領のアジア歴訪と安倍外交」で詳細に説明したのでご覧願いたい。
そして、トランプ氏は金氏と会談することに合意した。その時期は5月末あるいは6月初めだという。さらに、国務長官に指名しているポンペオCIA長官に、3月末から4月初めの復活祭休日を利用して北朝鮮を訪問させた。ポンペオ氏は金正恩委員長と会談した。トランプ氏は本気である。
一方、安倍首相はあいかわらず、「圧力」に偏した発言を続けている。今次首脳会談後の記者会見でも「トランプ大統領が金委員長と会談して圧力をかけ続ける」べきだとの趣旨を述べていたが、この言葉にもその姿勢がよく表れていた。
しかし、安倍首相の立場が米国と違ってきていることは覆いがたい事実であり、また、日本の外交としても安倍首相の「圧力」一辺倒は即刻修正すべきである。日本政府は日本が各国から支持されているというが、「対話」に消極的なことを明示的に支持する国はない。
日本は、北朝鮮との間で解決しなければならないことがある。そんな中にあって自ら外交の幅を狭めるのは賢明でないし、国益にも反する。
拉致問題の解決をトランプ大統領に依頼したのは評価できるが、日本自身の努力があってこそ米国に助力を頼めるのであろう。この点でも日本政府になすべきことがある。(本研究所HP「拉致問題を日本として解決する必要がある」4月12日付)を参照願いたい。
安倍トランプ会談
訪米した安倍首相は4月17~18日、トランプ大統領と会談した。通商・貿易問題も主要な議題であったが、それはともかく、北朝鮮問題について、安倍首相は記者会見で「完全に一致した」と、再び日米の足並みがそろっていることを印象づけようとしたが、両者の考え、方針が大きく違っていることは覆うべくもなかった。トランプ政権が成立してから1年余り、日米両国は北朝鮮問題に関して歩調をそろえるため何回も連絡を取り合い、協議してきた。特に問題となったのは、北朝鮮との「対話」についてどのような姿勢で臨むかであった。
安倍首相は、北朝鮮との「対話」には常に消極的であり、「圧力」一辺倒の姿勢をとってきた。米朝首脳会談が行われることになって以降、多少表現を微調整しているようにも見受けられるが、基本は変わっていない。
トランプ大統領もこの安倍首相の考えをよく承知しており、日本がいないところではあくまで自分の考えを貫きつつ、つまり「圧力と対話」で臨みつつ、安倍首相に対しては、日本を支持していると述べてきた。その意味では安倍首相が言う、「日米は一致している」ということに同調したのである。
トランプ氏は、会談の相手によって話す内容を変えただけでなく、金委員長と会談してもよいというメッセージを数回発していた。このようなトランプ氏の姿勢については、『世界』2018年1月号掲載の「トランプ大統領のアジア歴訪と安倍外交」で詳細に説明したのでご覧願いたい。
そして、トランプ氏は金氏と会談することに合意した。その時期は5月末あるいは6月初めだという。さらに、国務長官に指名しているポンペオCIA長官に、3月末から4月初めの復活祭休日を利用して北朝鮮を訪問させた。ポンペオ氏は金正恩委員長と会談した。トランプ氏は本気である。
一方、安倍首相はあいかわらず、「圧力」に偏した発言を続けている。今次首脳会談後の記者会見でも「トランプ大統領が金委員長と会談して圧力をかけ続ける」べきだとの趣旨を述べていたが、この言葉にもその姿勢がよく表れていた。
しかし、安倍首相の立場が米国と違ってきていることは覆いがたい事実であり、また、日本の外交としても安倍首相の「圧力」一辺倒は即刻修正すべきである。日本政府は日本が各国から支持されているというが、「対話」に消極的なことを明示的に支持する国はない。
日本は、北朝鮮との間で解決しなければならないことがある。そんな中にあって自ら外交の幅を狭めるのは賢明でないし、国益にも反する。
拉致問題の解決をトランプ大統領に依頼したのは評価できるが、日本自身の努力があってこそ米国に助力を頼めるのであろう。この点でも日本政府になすべきことがある。(本研究所HP「拉致問題を日本として解決する必要がある」4月12日付)を参照願いたい。
2018.04.16
今回の攻撃を認めた国連安保理決議はない。シリア軍による化学兵器使用の疑惑については2013年以来複雑な経緯があり、国連安保理はこの間何回も開催されてきたが、シリア政府に対する攻撃を承認した決議は採択されていないのである。そうなったのは、シリア政府を擁護するロシアが拒否権を発動したからであり、米国の国連大使によれば、その回数は通算11回にのぼっているそうだ。
今回の攻撃後、ロシアは安保理の開催を求め、逆に攻撃を非難する決議案を提出して反撃しようとした。しかし、これは、もちろん否決された。
国連決議のない実力行使は問題だが、なくても認められる場合がある。「ある」と断定するのはまだ早すぎ、「そういう場合が出てきている」というべきかもしれない。ともかく、「人道上の理由」で認められる可能性が出てきているのである。その場合でも、他に方法がないことや過度の攻撃にならないことなどの要件を満たすことが必要だ。安保理で英国は、今回の行動はこれらの諸点を満たしていると強調し、国際法的に合法であると主張した。いかにも英国らしい。
決議がなくても「人道上の理由」で攻撃が認められたのが、2014年9月の、米国をはじめとする有志国連合による過激派組織ISへの空爆であった。
今回の攻撃について、日本では、安保理決議がないことを問題視する意見があるが、国際法はいつまでも同じ内容でなく、発展する。それに、もし、決議がないからといって行動をとらないと、アサド政権を助けることになる。これは悩ましい問題である。
ともかく、シリア軍による化学兵器使用疑惑については真相解明が必要である。アサド大統領は前述の化学兵器使用疑惑が出た後の2013年9月、化学兵器禁止機関(OPCW)に加盟し、保有化学兵器約1300トンを全量引き渡した。この時にはロシアも協力的であったのでアサドも折れたのだろう。引き渡された化学兵器はすでに廃棄済みである。
ところが、その後も化学兵器による被害はやまなかった。サリンや塩素ガスなどは、簡単に作れるらしく、化学兵器の廃棄後に製造された可能性があるといわれている。
OPCWはもちろん調査を続け、2015年には国連と共同でOPCW-UN Joint Investigative Mechanism (JIMと略称。安保理決議2235号)を設置した。ここまではロシアも協力的だったのだ。
ところが、JIMは2017年12月に期限切れで終了してしまった。ロシアが継続に反対したためである。当然ロシアは厳しく非難されたが、ロシアの大使は、手続きが強引であったため反対したのであり、いつまでも反対する予定ではなかったと弁明していたともいう。
しかし、そのままに放置しておくわけにはいかない。真相の調査は絶対的に必要であり、今回の攻撃に先立つ4月9日、米国は真相解明に取り組むあらたな調査チームを設立する決議案に取り掛かった。しかし、事前の折衝で成立の見込みがないことが判明した。新決議案は、攻撃があった4月7日の軍の飛行記録やヘリコプター部隊の指揮官の名前の提出などをシリア政府に義務づける内容だったのに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は「受け入れられない要素がある」として反対したのだ。ネベンジャ氏は、あったとされる化学兵器の攻撃の軌道や時期に不自然な点があると指摘したそうだ。シリアに駐在しているロシア軍の行動との関連があったのかもしれない。
一方、OPCWは別途4月14日から、被害が出た東グータ地区で現地調査を始める予定であったが、これは延期されたと思われる。ミサイルが飛んでくる状況ではそれは無理である。今後OPCWではどのように調査を再開するのか、一つの重要なカギとなっている。なお、OPCWでは実質事項(matters of substance)は3分の2、査察に反対する場合は4分の3の特別多数決で決定される。拒否権は認められていないので一カ国だけの反対で前に進めなくなることはないはずである。
今後、冷え込んでいるロシアと米欧諸国との関係が改善されるにはかなりの時間が必要となるかもしれない。また、トランプ政権のロシア疑惑も微妙に関係しているかもしれない。そのような事情はあるが、調査の早期開始は絶対的に必要であり、そのためには、ロシア批判をしばし抑制しても調査開始の決定を急ぐ必要がある。
日本は、かねてからOPCWを重視している。中東問題、特に政治問題には直接の関係は少ないが、それだけに中立的に動けるはずだ。日本としても調査開始の決定に努めるべきだ。
化学兵器使用問題と米英仏のシリア攻撃
4月13日、米国は英仏両国と共同でシリアの化学兵器関連施設をミサイル攻撃した。使用されたミサイルの数は昨年4月の際の約2倍、105発であったという。今回の攻撃を認めた国連安保理決議はない。シリア軍による化学兵器使用の疑惑については2013年以来複雑な経緯があり、国連安保理はこの間何回も開催されてきたが、シリア政府に対する攻撃を承認した決議は採択されていないのである。そうなったのは、シリア政府を擁護するロシアが拒否権を発動したからであり、米国の国連大使によれば、その回数は通算11回にのぼっているそうだ。
今回の攻撃後、ロシアは安保理の開催を求め、逆に攻撃を非難する決議案を提出して反撃しようとした。しかし、これは、もちろん否決された。
国連決議のない実力行使は問題だが、なくても認められる場合がある。「ある」と断定するのはまだ早すぎ、「そういう場合が出てきている」というべきかもしれない。ともかく、「人道上の理由」で認められる可能性が出てきているのである。その場合でも、他に方法がないことや過度の攻撃にならないことなどの要件を満たすことが必要だ。安保理で英国は、今回の行動はこれらの諸点を満たしていると強調し、国際法的に合法であると主張した。いかにも英国らしい。
決議がなくても「人道上の理由」で攻撃が認められたのが、2014年9月の、米国をはじめとする有志国連合による過激派組織ISへの空爆であった。
今回の攻撃について、日本では、安保理決議がないことを問題視する意見があるが、国際法はいつまでも同じ内容でなく、発展する。それに、もし、決議がないからといって行動をとらないと、アサド政権を助けることになる。これは悩ましい問題である。
ともかく、シリア軍による化学兵器使用疑惑については真相解明が必要である。アサド大統領は前述の化学兵器使用疑惑が出た後の2013年9月、化学兵器禁止機関(OPCW)に加盟し、保有化学兵器約1300トンを全量引き渡した。この時にはロシアも協力的であったのでアサドも折れたのだろう。引き渡された化学兵器はすでに廃棄済みである。
ところが、その後も化学兵器による被害はやまなかった。サリンや塩素ガスなどは、簡単に作れるらしく、化学兵器の廃棄後に製造された可能性があるといわれている。
OPCWはもちろん調査を続け、2015年には国連と共同でOPCW-UN Joint Investigative Mechanism (JIMと略称。安保理決議2235号)を設置した。ここまではロシアも協力的だったのだ。
ところが、JIMは2017年12月に期限切れで終了してしまった。ロシアが継続に反対したためである。当然ロシアは厳しく非難されたが、ロシアの大使は、手続きが強引であったため反対したのであり、いつまでも反対する予定ではなかったと弁明していたともいう。
しかし、そのままに放置しておくわけにはいかない。真相の調査は絶対的に必要であり、今回の攻撃に先立つ4月9日、米国は真相解明に取り組むあらたな調査チームを設立する決議案に取り掛かった。しかし、事前の折衝で成立の見込みがないことが判明した。新決議案は、攻撃があった4月7日の軍の飛行記録やヘリコプター部隊の指揮官の名前の提出などをシリア政府に義務づける内容だったのに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は「受け入れられない要素がある」として反対したのだ。ネベンジャ氏は、あったとされる化学兵器の攻撃の軌道や時期に不自然な点があると指摘したそうだ。シリアに駐在しているロシア軍の行動との関連があったのかもしれない。
一方、OPCWは別途4月14日から、被害が出た東グータ地区で現地調査を始める予定であったが、これは延期されたと思われる。ミサイルが飛んでくる状況ではそれは無理である。今後OPCWではどのように調査を再開するのか、一つの重要なカギとなっている。なお、OPCWでは実質事項(matters of substance)は3分の2、査察に反対する場合は4分の3の特別多数決で決定される。拒否権は認められていないので一カ国だけの反対で前に進めなくなることはないはずである。
今後、冷え込んでいるロシアと米欧諸国との関係が改善されるにはかなりの時間が必要となるかもしれない。また、トランプ政権のロシア疑惑も微妙に関係しているかもしれない。そのような事情はあるが、調査の早期開始は絶対的に必要であり、そのためには、ロシア批判をしばし抑制しても調査開始の決定を急ぐ必要がある。
日本は、かねてからOPCWを重視している。中東問題、特に政治問題には直接の関係は少ないが、それだけに中立的に動けるはずだ。日本としても調査開始の決定に努めるべきだ。
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