平和外交研究所

2019 - 平和外交研究所 - Page 32

2019.01.28

習近平の独裁的権力はほんものか その1

 今年は「中華人民共和国」建国から70周年にあたる。しかし、中国、とくに権力の中枢は祝賀ムードにないようだ。

 日本のメディアは慎重に見守っているが、『多維新聞』(在米の中国語新聞)、BBC、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(rfi)などは中国政治の異常な状況を概略以下のように伝えている。

 1月21日から各省(地方の各省・自治区)、各部(国務院の各省庁)のトップを集めて「研討会(研究と検討の会)」が、続いて25日には党中央政治局会議が開催されたが、異例である。
 政治局会議は昨年末に開催されたばかりであった。これは中国共産党の最重要会議の一つであり、毎月開催されるものではない。また、「研討会」が4日間にわたって開催されたのは、事の重大さを示しており、「重大危機处理研討班」と報道したものもあった。

 24日、「研討会」を締めくくるにあたり、王 滬寧(ワン フーニン)政治局常務委員(トップ7の一人)は「最悪の事態に備えよ」と発言した。中国では、そんな言葉はめったに聞かれない。王滬寧は何を言おうとしていたのか憶測を呼んだ。

 25日の政治局会議では「党の政治建設を強化することに関する中共中央の意見」や「中国共産党重大事項請示(指示を仰ぐこと)報告条例」などを審議したが、これも異例なことだった。党の強化については、習近平政権が成立して以来何回も呼びかけてきたにもかかわらず、また党建設を強化するというのは奇妙なことである。

 「重大事項に関し指示を求め、報告する条例」は、「指示を求めるべきであれば実際に求めなけらればならない」と言っている。習近平は各機関、各地方のすることに安心していない、草木皆兵(相手の勢いなどに恐れおののくあまり、何でもないものに対しても、自分の敵であるかのように錯覚しておびえること)のような状態にある。

 これらの会議で一貫して強調されたのは「安定」と「政治的安全」であった。習近平自身も「七つの安全」を唱えたが、その中で一番重要なのは「政治的安全」であった。

 若干さかのぼって、1月17日の全国公安庁局長会議で、趙克志公安部長はさらに直接的に、「政権の安全、制度の安全が国家政治の安全の核心である。中国共産党の指導と我が国の社会主義制度を敢然と防衛しなければならない」と述べていた。

 中国の内部事情は外から見たのとかなり違っており、共産党の独裁体制についての不安定感はかつてないほど深刻だ。

 このような政治の不安定感は最近急速に高まった。数年前、中国は米国とともに世界を管理しようとした。数カ月前にも「目には目を、歯には歯を」などと強がりを言っていたが今はまるで違ってきている 1949年に中国共産党が初めて政権を奪取した時のように、薄氷を踏むように危うく、敵に取り囲まれているという評論もある。

 安全が脅かされている原因は、対外面では米国との貿易戦争である。

 対内面ではMinsky Momentが来ているとも言われている。資産価格が大幅に下落する危機であり、所有権、株券、不動産、ファンド、銀行、証券会社、などについて信用がなくなれば問題が爆発し、だれも逃げられなくなる。

 習近平自身、意外な事態が起こりうることに警鐘を鳴らしているが、ではどうするかについては、あくまで党中央の監督を強化し、さまざまな規則を制定するなど専制的な方法で対処しようとしている。しかし、本当に恐ろしい事態が起これば、絶望的な「自力更生」しかなくなるのではないかという者もいる。共産党にも、独裁体制にも頼れなくなることである。

 以上のような見方は、一部、思い込みや誇張があるかもしれないが、我々が見逃すことができない事実も伝えている。習近平以下の指導者が共産党独裁体制の維持可能性について懸念を抱いていることは今年になってから現れ始めた現象でなく、かねてからの問題であるが、以上が伝える中国の状況は想像以上に深刻である。

 中国という巨大な国の政治状況を安易に単純化できないのはもちろんである。習近平政権は第1期(2012~17年)において、汚職の摘発や国家制度の改革などおいては顕著な実績を上げたかに見えたが、政権の基盤を強化できたかといえば、疑問がある。習近平氏はそのような状況の中で、あくまで共産党による指導を強化して乗り切ろうとしているようだが、はたして正解か、今年1年だけでもさまざまなことがありそうだ。
2019.01.24

日ロ平和条約・北方領土問題

平和条約・北方領土問題交渉は日ロ両国とも抜本的に見直さなければならないと思います。米国の関与が必要です。

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2019.01.23

政府の信用失墜

 1月13日付の共同通信は、12~13日に実施した全国電話世論調査によると、厚生労働省の「毎月勤労統計」の不適切調査問題を受け、政府統計を「信用できない」との回答は78.8%に上ったと報道した。
 2日前の11日、厚労省において不適切な統計が作られていたことを根本匠厚労相が認めた問題である。「毎月勤労統計」とは、賃金や労働時間の動向を把握するために行われている調査の結果をまとめたものであるが、調査は法令で定められている方法では行われず、手抜きで数字が集められていたという。厚労省はそのような不適切な調査が行われていたことを平成8年には把握しており、実情を調べていたというから驚きだ。

 共同通信の世論調査に現れた政府の統計に対する厳しい意見は、「毎月勤労統計」の不適切調査問題だけが原因でない。省庁による事実関係の隠ぺいや汚職が最近一層ひどくなっている。

 昨年の9月には、各省庁が障害者雇用の数を水増ししていたことが発覚した。法定雇用率を達成するためそういうことをしたのだと言われている。問題を起こしたのは33行政機関で、その中には、内閣官房、内閣府(宮内庁、公正取引委員会、消費者庁を含む)、総務省、法務省(公安調査庁を含む)、外務省、財務省(国税庁を含む)、厚生労働省、農林水産省(水産庁を含む)、経済産業省(特許庁を含む)、国土交通省(海上保安庁、観光庁、気象庁、運輸安全委員会を含む)、環境省、防衛省(防衛装備庁を含む)、人事院、会計検査院などが含まれていた。要するにほとんどすべての中央省庁がやっていたのである。

 問題を起こしたのは中央省庁に限らない。府県も37、また、政令指定都市は2都市同じことをしていた。「政令指定都市」とは日本全国で一番大きい都市から20番目までの大都市である。

 これでは国家機能はゆがめられる。まことに嘆かわしい事態である。各省庁は所管の問題について最もよく状況を把握しており、国民に対し提供する情報は正確でなければならない。役所は堅いとか、気が利かないとか言われるが、そんなことより各省庁がだれに対しても責任をもって、公平に接することが重要である。自己の利益のために数字をごまかしたり、改ざんすることなどもってのほかである。

 今回の統計調査に関して、厚労省では「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」と説明しているそうだが、そんな説明はナンセンスだ。「淡々と間違った方法で調査している」とか、「統計を改ざんする意図はなかった」など、よく言えたものだ。

 しかし、担当者や現場だけの責任でない。これだけの数の政府機関が同じような問題を起こしたのは偶然の結果ではありえない。文書では証拠が残っていないかもしれないが、手抜きで調査しても構わないということが政府機関内で共有されていたことは明らかであり、各省庁が責任を問われるべき問題である。

 政府や国会はこのようなことを防止しなければならないのに、みずから悪い手本を示したのではないか。実情をもっともよく知っている係官を在外勤務にして手が届かない状態にしたり、国会に改ざん文書を提出した高官を厳しく処罰していない。一時的には積極的に評価したことさえあった。政府はよく、「丁寧に説明する」というが、実際には事実関係の究明を妨害しているのではないか。「丁寧に対応している」と言い張るなら、その担当官を直ちに帰国させるべきだ。念のために記しておくが、その担当官を在外発令したのは、その人物の証言が必要とされているさなかであった。

 沖縄では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の賛否を問う県民投票(2月24日投開票)をめぐり、県内の一部自治体(宮古島、宜野湾、沖縄、石垣)の首長は「不参加」を表明したそうだ。この関連で自治体に投票を忌避するよう求めた文書があるという。そして、この文書には、自民党本部や官邸の意向が反映されているともいわれているそうだ。

 そんな噂を立てられては清廉潔白な自民党も迷惑であろう。早速徹底した調査を行うべきである。自民党を不利に陥れるフェイクニュースとは断固戦うべきであるが、ただ否定するだけではとても信じてもらえない。

 ともかく、政府も国会も各省庁も、与党も野党も、「全国民の8割近くが信用できないと回答している」ことの重みをよくかみしめるべきだ。抽象論、一般論、単純な否定でなんとか乗り切れると考えるのは大間違いだ。日本の将来を危うするその場しのぎの対応は即刻辞めてほしい。

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