平和外交研究所

11月, 2014 - 平和外交研究所 - Page 2

2014.11.25

「海上のシルクロード」とフィリピン、ベトナムへの影響

11月23日付の旺報(旺旺グループの台湾紙 大陸関係の報道が比較的多い)は、「先のAPEC会議の際、中国は南シナ海で反中的姿勢を見せているフィリピンを「海上のシルクロード(海上絲綢之路)」構想から外す噂を流し、フィリピンを緊張させた。そのためフィリピンは南シナ海での反中的傾向を緩和するのではないかと見られている。また、フィリピンと同じく反中的傾向が強いベトナムも同様の圧力を受けている」と報道した。
「海上のシルクロード」構想は2013年10月、習近平主席がASEANを訪問した際建設を提案したものであり、これとこのルートにつながる経済地域は「一帯一路」と呼ばれている。この建設により中国は海運面でのヨーロッパ依存を軽減し、中国の貨物が米国海軍の支配するルートにさらされるのを少なくする目的もあると見られている(例、BBC中国語サイト)。
中国は「海上シルクロード銀行」を設立し、400億ドル出資する考えであり、現在、この設立準備が中国政府の関係部局で進められている。この銀行は政府出資だけでなく、民間の資本も受け入れ公的色彩を薄めることが予定されている。

2014.11.24

北朝鮮の核施設の再稼働

ジョンズ・ホプキンス大学のSAIS(高等国際関係大学院)の北朝鮮関係サイト「38 NORTH」は11月19日、北朝鮮のヨンビョン(寧辺)黒鉛炉は停止しているが、再処理施設は稼働していることに関する分析を発表して注目されている。
同施設は核燃料(ウラン燃料)を製造する施設で、年間約100トンのウラン燃料製造能力がある。核兵器製造に使われる可能性があるため、6者協議と米国との交渉により、2007年に運転が中止されたが、その後北朝鮮は再稼働していたと見られていた。今回の「38 NORTH」の発表は次のような内容であるが、北朝鮮による再稼働を確認する意味もある。

ヨンビョンの黒鉛炉の運転は10週間停止しているが、再処理施設は稼働し続けている。黒鉛炉の運転停止は通常の点検としては長すぎる。冷却塔から蒸気が上がっていること、トラックの動きが激しいこと、灰色の物質が積み上げられていることなどから、可能性としては、冷却システムに問題が発生した、あるいは燃料棒を何らかの理由で一部取り出した、あるいは炉心を入れ替えたことなどが考えられる。
また、原子炉の冷却塔から川に続いていたパイプラインに替わって他の場所に続くパイプラインが建設されており、今までのように温排水をモニターして操業状況を察知するのがむずかしくなるかもしれない。

2014.11.22

北朝鮮とロシアの関係が活発化

金正恩第1書記の腹心の部下の一人であるチェ・リョンヘ(崔竜海 労働党中央書記)が金正恩の特使としてロシアを訪問した。そのことを朝鮮中央通信が報道したが、訪問の日時は発表されなかった。

かねてから北朝鮮関係の問題をよく扱っている香港の『大公報』紙(11月14日付)は、次の諸点を報じている。
○金正恩はロシアとの関係改善に意欲的であり、部分的にはすでに金日成や金正日時代よりも進んでいる。
○朝露間でハイレベルの相互訪問が進んでいる。中国との間ではまさにそのことが欠けている。
○ロシアの副首相兼在極東連邦管区大統領代表のトルトネフが4月に訪朝し、以前はチャン・ソンテク(張成沢)派と目されていた対外貿易担当の副首相と会談した。これに先立つ2013年9月、ロシアの鉄道部門の責任者が訪朝し、ロシアの国境都市ハサンから北朝鮮側の羅津にいたる54キロの路線開通のテープカットをした(注 この路線は2011年秋にはほぼ完成していた)。
○2014年9月にはリ・スヨン(李洙墉)外相が訪ロ。11日間もかけてロシア各地を視察した。
○チェ・リョンヘ特使は金正恩第1書記の親書あるいは口頭のメッセージをロシア側に伝えた。2013年、北朝鮮が中国の漁船を拿捕し、中国が不満を唱えた際もチェ・リョンヘは特使として中国へ赴き、習近平に会って金正恩が中朝関係を進展させることを希望していると伝え、中朝関係はいったん緩和した経緯がある。
○北朝鮮が受けている援助の大部分は中国からであり、最近のロシアへの接近は援助の多角化を図るものであろう。

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