その他
2018.03.05
この合意については元から賛否両論があり、米国内では特に共和党系は概して批判的なのでトランプ氏の姿勢はそれほど驚くべきことでない。
米国とイランとの間には過去40年間さまざまな確執があったうえ、イランがシリアのアサド政権を助けているので米国との関係はいっそう悪くなっているという問題もある。さらに、トランプ氏のイスラエル寄りの姿勢がイランとの関係にも影響を及ぼしているのだろう。トランプ氏はイランを「ならず者」と呼んでいる。
トランプ氏は、2015年合意を白紙に戻してイランと再交渉したい考えであるが、米国以外の国は、イランの核開発は兵器製造にははるかに届かない程度であり、イランに原子力の平和利用の権利を一切認めないのは理屈が立たない、合意は維持すべきだとの姿勢である。
トランプ政権にとってはまずこれらの国をいかに説得するかが問題であり、英国、フランスとは協議済みであり、さらにドイツとも3月中に協議する予定である。
サウジの核開発計画が問題をいっそう複雑化している。2月26日付のAPの論評は参考になる。要点は次の通りである。
「イランとの合意を白紙に戻すと、米国企業も巨額の損失を被る。また、米国は、友好国であれ、敵対国であれ、核の不拡散について公平な姿勢で臨めるかという試練にもなっている。
イランとの2015年合意は、米国が各国と結んでいる2国間原子力協力協定(「123協定」と略称)で原則禁止しているウラン濃縮と再処理を認めている。合意を承認した時、米国の担当者は核不拡散の政策に反しないと述べていたが、皮肉にもトランプ政権は各国からその矛盾を突かれている。
サウジも、米国との原子力協力協定の交渉でウラン濃縮と核燃料の再処理を米国に認めてもらいたい考えである。韓国やアラブ首長国連邦などもそのような立場である。しかし、米国としては不拡散政策の観点から各国との原子力協力協定の例外を作りたくない。
サウジは、米国がイランとの別協定で、あらためてウラン濃縮と再処理を禁止するのであれば、サウジとしてもそのような制限を受け入れてよいという立場であり、アデル・アル・ジュベール外相はミュンヘン安全保障フォーラムで、サウジは他の国と同じ権利を求めているだけだと発言している。
しかし、サウジには、最大のライバルであるイランが2015年合意によって制限されている間にできるだけ核開発を進め、核兵器の製造に近づきたいという気持ちがあるとも言われている。
米国との交渉が失敗に終われば、サウジはロシアや中国に協力を求めていく可能性がある。中国の国営企業はすでにサウジと原発輸出の話を進めている。」
サウジの核開発と米国の悩み
トランプ大統領は、イランの核開発について米欧など6カ国とイランが2015年に結んだ合意を認めず、「米国史上最悪の一方的な取引である」とこき下ろしている。この合意については元から賛否両論があり、米国内では特に共和党系は概して批判的なのでトランプ氏の姿勢はそれほど驚くべきことでない。
米国とイランとの間には過去40年間さまざまな確執があったうえ、イランがシリアのアサド政権を助けているので米国との関係はいっそう悪くなっているという問題もある。さらに、トランプ氏のイスラエル寄りの姿勢がイランとの関係にも影響を及ぼしているのだろう。トランプ氏はイランを「ならず者」と呼んでいる。
トランプ氏は、2015年合意を白紙に戻してイランと再交渉したい考えであるが、米国以外の国は、イランの核開発は兵器製造にははるかに届かない程度であり、イランに原子力の平和利用の権利を一切認めないのは理屈が立たない、合意は維持すべきだとの姿勢である。
トランプ政権にとってはまずこれらの国をいかに説得するかが問題であり、英国、フランスとは協議済みであり、さらにドイツとも3月中に協議する予定である。
サウジの核開発計画が問題をいっそう複雑化している。2月26日付のAPの論評は参考になる。要点は次の通りである。
「イランとの合意を白紙に戻すと、米国企業も巨額の損失を被る。また、米国は、友好国であれ、敵対国であれ、核の不拡散について公平な姿勢で臨めるかという試練にもなっている。
イランとの2015年合意は、米国が各国と結んでいる2国間原子力協力協定(「123協定」と略称)で原則禁止しているウラン濃縮と再処理を認めている。合意を承認した時、米国の担当者は核不拡散の政策に反しないと述べていたが、皮肉にもトランプ政権は各国からその矛盾を突かれている。
サウジも、米国との原子力協力協定の交渉でウラン濃縮と核燃料の再処理を米国に認めてもらいたい考えである。韓国やアラブ首長国連邦などもそのような立場である。しかし、米国としては不拡散政策の観点から各国との原子力協力協定の例外を作りたくない。
サウジは、米国がイランとの別協定で、あらためてウラン濃縮と再処理を禁止するのであれば、サウジとしてもそのような制限を受け入れてよいという立場であり、アデル・アル・ジュベール外相はミュンヘン安全保障フォーラムで、サウジは他の国と同じ権利を求めているだけだと発言している。
しかし、サウジには、最大のライバルであるイランが2015年合意によって制限されている間にできるだけ核開発を進め、核兵器の製造に近づきたいという気持ちがあるとも言われている。
米国との交渉が失敗に終われば、サウジはロシアや中国に協力を求めていく可能性がある。中国の国営企業はすでにサウジと原発輸出の話を進めている。」
2018.02.13
〇ホワイトハウスと韓国大統領の間で新しい了解(understanding)が作られた。
〇米国と韓国は、北朝鮮問題について、今後、まず韓国が行動し、そして米国が、すぐに参加する可能性があることで合意した。The United States and South Korea agreed on terms for further engagement with North Korea — first by the South Koreans and potentially with the United States soon thereafter.
〇米国と同盟国は北朝鮮が非核化のために明確な措置(clear steps toward denuclearization)を講じない限り、制裁措置を強化し続ける。しかし、北朝鮮がそのような措置をとることは、予備会談(preliminary talks)の条件でない。もし北朝鮮が対話したいのであれば、我々も対話に応じる。
〇北朝鮮は対話に応じる代わりに米韓合同演習の延期を求めてくるかもしれないが、それはありえない。また、米国が近く発表する追加的制裁はかつてない強いものであり、北朝鮮は核・ミサイルの実験を再開するかもしれない。そうなると、外交的話し合いは停止するだろう。
〇文大統領はそういう事態にならないよう努力している。文氏は北朝鮮の招待に応じて、ピョンヤンを訪問することを検討している。文氏は、また、北朝鮮に対して米国とできるだけ早期に対話するよう勧めている。
〇ペンス副大統領は今回アジアを訪問中、毎日トランプ大統領と相談した。
2.トランプ政権は圧力を強化する点では日本政府と同じ考えだが、北朝鮮との対話について前向きである。少なくとも、その可能性を考慮しているのは明らかであり、日本政府の発表とは異なっている。
米国にとって日本は重要な同盟国であり、日本政府に真意を隠すことは考えられず、安倍首相には説明しているはずであるが、なぜそれは日本国内に伝わらないのか。日本政府の北朝鮮問題の扱いには問題がある。
なお、ペンス副大統領の説明では、文在寅大統領がピョンヤンを訪問することに米国は必ずしも反対でないことがうかがわれる。
北朝鮮との対話に関するペンス副大統領と文大統領との会談
1.ペンス副大統領はトランプ政権の中で、北朝鮮に対して圧力を強化することのみを重視する人物の一人だとみられていたが、今回平昌オリンピックに出席した際に文在寅大統領と会談した内容は、そのような先入観を打ち破るものであった。2月11日の『ワシントンポスト』紙が掲載した、Josh Rogin記者のペンス副大統領とのインタビュー記事であり、次の諸点が注目された。〇ホワイトハウスと韓国大統領の間で新しい了解(understanding)が作られた。
〇米国と韓国は、北朝鮮問題について、今後、まず韓国が行動し、そして米国が、すぐに参加する可能性があることで合意した。The United States and South Korea agreed on terms for further engagement with North Korea — first by the South Koreans and potentially with the United States soon thereafter.
〇米国と同盟国は北朝鮮が非核化のために明確な措置(clear steps toward denuclearization)を講じない限り、制裁措置を強化し続ける。しかし、北朝鮮がそのような措置をとることは、予備会談(preliminary talks)の条件でない。もし北朝鮮が対話したいのであれば、我々も対話に応じる。
〇北朝鮮は対話に応じる代わりに米韓合同演習の延期を求めてくるかもしれないが、それはありえない。また、米国が近く発表する追加的制裁はかつてない強いものであり、北朝鮮は核・ミサイルの実験を再開するかもしれない。そうなると、外交的話し合いは停止するだろう。
〇文大統領はそういう事態にならないよう努力している。文氏は北朝鮮の招待に応じて、ピョンヤンを訪問することを検討している。文氏は、また、北朝鮮に対して米国とできるだけ早期に対話するよう勧めている。
〇ペンス副大統領は今回アジアを訪問中、毎日トランプ大統領と相談した。
2.トランプ政権は圧力を強化する点では日本政府と同じ考えだが、北朝鮮との対話について前向きである。少なくとも、その可能性を考慮しているのは明らかであり、日本政府の発表とは異なっている。
米国にとって日本は重要な同盟国であり、日本政府に真意を隠すことは考えられず、安倍首相には説明しているはずであるが、なぜそれは日本国内に伝わらないのか。日本政府の北朝鮮問題の扱いには問題がある。
なお、ペンス副大統領の説明では、文在寅大統領がピョンヤンを訪問することに米国は必ずしも反対でないことがうかがわれる。
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