朝鮮半島
2019.12.24
この法案にはいくつか注目してよい内容が含まれている。
〇「記憶・和解・未来財団」により慰謝料に充てられる資金は、日韓両国の企業や個人による寄付および韓国政府の拠出などが想定されているが、企業や個人には拠金を強要しない方針が盛り込まれた。
〇原案段階では、元従軍慰安婦を支援する財団に日本政府が拠出した10億円の残金約6億円相当を移管する案が検討されたが、元慰安婦関連団体が強く反発したため見送られた。
〇基金や支給対象の規模は明示されなかった。
〇慰謝料を受給した者は裁判による企業への請求権を放棄したとみなされ、係争中の訴訟は取り下げとなる。
〇財団の運営は韓国の政府と国会で構成する理事会が担う。
2018年10月の韓国大法院判決以来、日本が主張してきた国際法違反の是正について韓国側が打開を模索する初めての動きであり、肯定的に評価できる面があるが、この財団が成立する可能性は高くないと言わざるを得ない。
原告を支援する団体はこの財団構想に反対を表明している。また、韓国大統領府高官は20日、「被告の日本企業が出資しなかった場合、問題解決につながらない可能性がある」と述べ、否定的な見解を示した。「政府が最も重視してきたのは、(日本企業に賠償を命じた)最高裁判決を尊重することだ」とも述べたという。
韓国政府としての立場を明確に表明しないまま、大法院判決の尊重を日本政府に求める姿勢は何ら変わっていないのである。これでは徴用工問題解決の展望は開けてこない。韓国政府は問題の解決に責任を負っていることを明確に表明すべきである。
日本側としては、今後も、韓国側が国際法違反の状態を是正するよう求め続けるほかないが、同時に、力づくで韓国政府を屈服させようとすべきでない。今後は、徴用工問題を他の問題と関連付けることなく粘り強く解決を目指すべきである。
こうした中、日韓両国の有志の法律家らが12月23日、東京都内と韓国・ソウル市内でそれぞれ記者会見し、日韓請求権協定の尊重を求める共同声明を発表した。日韓の法律家が徴用工判決で一致した見解を示すのは異例である。
声明は、両国民の請求権について「(協定が)『完全かつ最終的に解決された』ことを明示的に確認している」と強調した。「不法で反人道的な植民地支配」の被害に基づく慰謝料請求権を認めた韓国最高裁判決に対しては「特定の歴史解釈を下すことは、法解釈の側面においても学問研究の側面においても、決して望ましいものではない」と批判した。
また、判決について「日韓関係に大きな亀裂を生じさせ、戦後最悪と評される日韓関係の悪化をもたらす重大な要因となった」と非難し、「協定の趣旨を尊重することが、将来にわたって、両国の友好関係と発展を保証する唯一の道」と訴えた。
原告側が韓国内にある日本企業の資産売却手続きを進めていることには「原告らが主張する請求権は韓国の国内問題」とし、韓国政府と司法当局が資産売却をめぐる強制執行を停止するなど、適切な対応をとるよう求めた。
韓国政府が自ら国際法違反の状態を正すことができるか。文在寅政権においては困難だと推測するのが合理的であろう。しかし、同政権の姿勢では、慰安婦や徴用工のみならず、植民地統治下で損害を被ったすべての韓国人からも賠償を求めることを促すという大問題があり、そうなると日韓関係は完全に崩壊する。
韓国側においても、日韓関係を破壊してはならないという考えが、一部かもしれないが、強くなってきたことは注目に値する。
徴用工問題
韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長は12月18日、徴用工問題の解決をめざす「記憶・和解・未来財団法案」など2つの関連法案を提出した。裁判所が認めた元徴用工のみならず、韓国政府が認めた元軍人ら「強制動員被害者」にも慰謝料を支給する内容である。この法案にはいくつか注目してよい内容が含まれている。
〇「記憶・和解・未来財団」により慰謝料に充てられる資金は、日韓両国の企業や個人による寄付および韓国政府の拠出などが想定されているが、企業や個人には拠金を強要しない方針が盛り込まれた。
〇原案段階では、元従軍慰安婦を支援する財団に日本政府が拠出した10億円の残金約6億円相当を移管する案が検討されたが、元慰安婦関連団体が強く反発したため見送られた。
〇基金や支給対象の規模は明示されなかった。
〇慰謝料を受給した者は裁判による企業への請求権を放棄したとみなされ、係争中の訴訟は取り下げとなる。
〇財団の運営は韓国の政府と国会で構成する理事会が担う。
2018年10月の韓国大法院判決以来、日本が主張してきた国際法違反の是正について韓国側が打開を模索する初めての動きであり、肯定的に評価できる面があるが、この財団が成立する可能性は高くないと言わざるを得ない。
原告を支援する団体はこの財団構想に反対を表明している。また、韓国大統領府高官は20日、「被告の日本企業が出資しなかった場合、問題解決につながらない可能性がある」と述べ、否定的な見解を示した。「政府が最も重視してきたのは、(日本企業に賠償を命じた)最高裁判決を尊重することだ」とも述べたという。
韓国政府としての立場を明確に表明しないまま、大法院判決の尊重を日本政府に求める姿勢は何ら変わっていないのである。これでは徴用工問題解決の展望は開けてこない。韓国政府は問題の解決に責任を負っていることを明確に表明すべきである。
日本側としては、今後も、韓国側が国際法違反の状態を是正するよう求め続けるほかないが、同時に、力づくで韓国政府を屈服させようとすべきでない。今後は、徴用工問題を他の問題と関連付けることなく粘り強く解決を目指すべきである。
こうした中、日韓両国の有志の法律家らが12月23日、東京都内と韓国・ソウル市内でそれぞれ記者会見し、日韓請求権協定の尊重を求める共同声明を発表した。日韓の法律家が徴用工判決で一致した見解を示すのは異例である。
声明は、両国民の請求権について「(協定が)『完全かつ最終的に解決された』ことを明示的に確認している」と強調した。「不法で反人道的な植民地支配」の被害に基づく慰謝料請求権を認めた韓国最高裁判決に対しては「特定の歴史解釈を下すことは、法解釈の側面においても学問研究の側面においても、決して望ましいものではない」と批判した。
また、判決について「日韓関係に大きな亀裂を生じさせ、戦後最悪と評される日韓関係の悪化をもたらす重大な要因となった」と非難し、「協定の趣旨を尊重することが、将来にわたって、両国の友好関係と発展を保証する唯一の道」と訴えた。
原告側が韓国内にある日本企業の資産売却手続きを進めていることには「原告らが主張する請求権は韓国の国内問題」とし、韓国政府と司法当局が資産売却をめぐる強制執行を停止するなど、適切な対応をとるよう求めた。
韓国政府が自ら国際法違反の状態を正すことができるか。文在寅政権においては困難だと推測するのが合理的であろう。しかし、同政権の姿勢では、慰安婦や徴用工のみならず、植民地統治下で損害を被ったすべての韓国人からも賠償を求めることを促すという大問題があり、そうなると日韓関係は完全に崩壊する。
韓国側においても、日韓関係を破壊してはならないという考えが、一部かもしれないが、強くなってきたことは注目に値する。
2019.12.11
これらの発信には、旭日旗に対する攻撃と日本国内での嫌韓デモへの批判が含まれているが、両者は明確に区別したうえで対応する必要がある。
前者の旭日旗への攻撃は不当なものである。旭日旗自体に何ら問題はないどころか、日本として、官民を問わず、誇りに思っているものであり、それを韓国政府が攻撃するのであれば、反論はもちろん、場合によっては対抗措置も必要となろう。
約1年前、わが海上自衛隊の護衛艦が旭日旗を掲げて韓国の港に入港することについて韓国政府は異議を唱えたが、日本側はそのような不当な要求には応じられないとして護衛艦の韓国派遣を見送った。これは正しい対応であった。
来年の五輪でも旭日旗が使われるか、韓国政府は懸念だけでとどまらず、不当な要求までしている。国際オリンピック委員会(IOC)に対しても、東京五輪・パラリンピックの競技会場への旭日旗の持ち込みなどを禁じるよう要請しているが、この小稿で指摘するまでもなく、日本政府はそのように不当なことは受け入れないだろう。
一方、日本において嫌韓デモなどで旭日旗が悪用されていることは、日本政府と無関係であり、また、日本の対韓方針とも相いれない行為であるが、これを韓国政府が問題視していることについて日本政府がどうのように対応すべきか。
茂木敏充外相は10日の閣議後会見で、「我が国の立場や、これまでの取り組みと相いれないもので、極めて残念」と述べ、9日に韓国に同様の内容を申し入れたと説明した。これは正しい対応だが、十分ではない。
日本政府は「嫌韓デモにおいて旭日旗を悪用すべきでない」ことを、万人に分かる言葉で表明すべきである。
また、このような表明は国際的な理解を得るためにも必要である。韓国政府は、旭日旗が嫌韓デモで掲げられている写真とともに「#Ban The Flag」のハッシュタグ(検索ワード)をつけて拡散を呼びかけており、国際的な支持を広げようとしている。日本政府としても国際的な理解を得る、あるいは確実にする努力が必要である。
韓国などの不当な行為に対して日本政府は毅然とした態度で臨むべきだ
韓国政府は今月上旬から、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどSNS上の韓国政府アカウントで、「旭日旗は憎悪の旗」「日本国内の嫌韓デモなどヘイトスピーチの現場で使われている」「五輪で応援旗として使われてはならない」などとするメッセージを掲載し始めた。これらの発信には、旭日旗に対する攻撃と日本国内での嫌韓デモへの批判が含まれているが、両者は明確に区別したうえで対応する必要がある。
前者の旭日旗への攻撃は不当なものである。旭日旗自体に何ら問題はないどころか、日本として、官民を問わず、誇りに思っているものであり、それを韓国政府が攻撃するのであれば、反論はもちろん、場合によっては対抗措置も必要となろう。
約1年前、わが海上自衛隊の護衛艦が旭日旗を掲げて韓国の港に入港することについて韓国政府は異議を唱えたが、日本側はそのような不当な要求には応じられないとして護衛艦の韓国派遣を見送った。これは正しい対応であった。
来年の五輪でも旭日旗が使われるか、韓国政府は懸念だけでとどまらず、不当な要求までしている。国際オリンピック委員会(IOC)に対しても、東京五輪・パラリンピックの競技会場への旭日旗の持ち込みなどを禁じるよう要請しているが、この小稿で指摘するまでもなく、日本政府はそのように不当なことは受け入れないだろう。
一方、日本において嫌韓デモなどで旭日旗が悪用されていることは、日本政府と無関係であり、また、日本の対韓方針とも相いれない行為であるが、これを韓国政府が問題視していることについて日本政府がどうのように対応すべきか。
茂木敏充外相は10日の閣議後会見で、「我が国の立場や、これまでの取り組みと相いれないもので、極めて残念」と述べ、9日に韓国に同様の内容を申し入れたと説明した。これは正しい対応だが、十分ではない。
日本政府は「嫌韓デモにおいて旭日旗を悪用すべきでない」ことを、万人に分かる言葉で表明すべきである。
また、このような表明は国際的な理解を得るためにも必要である。韓国政府は、旭日旗が嫌韓デモで掲げられている写真とともに「#Ban The Flag」のハッシュタグ(検索ワード)をつけて拡散を呼びかけており、国際的な支持を広げようとしている。日本政府としても国際的な理解を得る、あるいは確実にする努力が必要である。
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