中国
2015.02.25
中国がこの討論会を提案したのは、安倍首相が今年中、場合によっては来る4月末に開催される予定のバンドン会議(アジア・アフリカ会議)60周年記念式典で発表する可能性がある戦後70周年談話に関し、一種の牽制をする狙いと、第二次大戦の記念行事を通じて中国のグローバルな存在感を高めようとする積極的な外交目的の両面があると思われる。
安倍首相が70年談話について、「村山談話と小泉談話を全体として継承するが、キーワードについては引き継がない」との趣旨を述べていることに中国などが強く警戒していることは周知のことである。
国連での討論会で、中国の王毅外相は「過去の侵略の罪のごまかしを試みる者がいる」と演説した。これは特定の国を指すものでないと討論会後の記者会見で説明したそうだが、日本の安倍首相を指していることを疑う者はまず皆無であろう。
世界中が見ている国連は、中国が安倍首相の姿勢を懸念していることを各国にアピールする最適の場であったのだろう。安保理の常任理事国はすべて戦勝国であり、中国としては常任理事国はもちろん、その他の理事国からも理解が得られると踏んでいたものと思われる。日本の吉川大使は日本が戦後努めてきたことを説明し事実上の反論を行なった。一部の報道では、この討論会で日中両国が論争したと伝えられた。当然である。
王毅外相の発言、とくに「ごまかしを試みる者がいる」という表現はたがいに主権国として尊重しあう外交の常識に照らして問題である。ただし、表向きはどの国とも言っていないので、中国は逃げ道は残しつつ過激な表現を使ったのである。
中国は、昨年12月13日、それまで江蘇省や南京市が中心となって催してきた南京事件記念式典を、今年から「国家哀悼日」として政府による主催に格上げした(1月31日のHP)。さらに今回の国連での公開討論である。習近平政権の、とくに歴史問題をめぐる対日強硬姿勢はますます顕著である。
中国は第二次大戦の記念行事を通じてグローバルな存在感を高めようとする積極的な外交目的があるというのは、日本との戦争だけでなく、中国が関係しなかった欧州戦線での連合国の勝利をも利用しようとしていることである。ドイツとの戦勝記念を大々的に行いたいのはロシアであるが、百カ国以上の首脳に招待状を送っている。中国はそのなかに一国であるが、中国は日本との戦争とあわせて戦勝を祝おうと逆提案した。ロシアでの記念式典に出ないということではなく、従来通り参加するのであろう。それに加えて、中国は「第二次大戦」の勝利を中国の主催で、軍事パレードもして大々的に行いたいのである。具体的な方策はまだ不明であるが、来る5月のロシアでの式典ではそのような考えを強調するものと思われる。
国連での70年記念と中国の積極外交
国連安保理の議長を務める中国(2月の担当)の提案で2月23日、国連創設70年を記念して公開討論会が開かれた。中国がこの討論会を提案したのは、安倍首相が今年中、場合によっては来る4月末に開催される予定のバンドン会議(アジア・アフリカ会議)60周年記念式典で発表する可能性がある戦後70周年談話に関し、一種の牽制をする狙いと、第二次大戦の記念行事を通じて中国のグローバルな存在感を高めようとする積極的な外交目的の両面があると思われる。
安倍首相が70年談話について、「村山談話と小泉談話を全体として継承するが、キーワードについては引き継がない」との趣旨を述べていることに中国などが強く警戒していることは周知のことである。
国連での討論会で、中国の王毅外相は「過去の侵略の罪のごまかしを試みる者がいる」と演説した。これは特定の国を指すものでないと討論会後の記者会見で説明したそうだが、日本の安倍首相を指していることを疑う者はまず皆無であろう。
世界中が見ている国連は、中国が安倍首相の姿勢を懸念していることを各国にアピールする最適の場であったのだろう。安保理の常任理事国はすべて戦勝国であり、中国としては常任理事国はもちろん、その他の理事国からも理解が得られると踏んでいたものと思われる。日本の吉川大使は日本が戦後努めてきたことを説明し事実上の反論を行なった。一部の報道では、この討論会で日中両国が論争したと伝えられた。当然である。
王毅外相の発言、とくに「ごまかしを試みる者がいる」という表現はたがいに主権国として尊重しあう外交の常識に照らして問題である。ただし、表向きはどの国とも言っていないので、中国は逃げ道は残しつつ過激な表現を使ったのである。
中国は、昨年12月13日、それまで江蘇省や南京市が中心となって催してきた南京事件記念式典を、今年から「国家哀悼日」として政府による主催に格上げした(1月31日のHP)。さらに今回の国連での公開討論である。習近平政権の、とくに歴史問題をめぐる対日強硬姿勢はますます顕著である。
中国は第二次大戦の記念行事を通じてグローバルな存在感を高めようとする積極的な外交目的があるというのは、日本との戦争だけでなく、中国が関係しなかった欧州戦線での連合国の勝利をも利用しようとしていることである。ドイツとの戦勝記念を大々的に行いたいのはロシアであるが、百カ国以上の首脳に招待状を送っている。中国はそのなかに一国であるが、中国は日本との戦争とあわせて戦勝を祝おうと逆提案した。ロシアでの記念式典に出ないということではなく、従来通り参加するのであろう。それに加えて、中国は「第二次大戦」の勝利を中国の主催で、軍事パレードもして大々的に行いたいのである。具体的な方策はまだ不明であるが、来る5月のロシアでの式典ではそのような考えを強調するものと思われる。
2015.02.23
経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
中国の「海上シルクロード」続き3
中国とパキスタンは長らく友好関係にあり、とくに、政治・軍事面では1960年代から緊密であった。両国ともインドと対立していることが背景になっている。1998年、パキスタンがインドに続いて核実験を行えたのは中国からの協力があったからである。経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
2015.02.19
スリランカが1957年に中国を承認して以来両国は緊密な関係にあった。
中国は、インドとは歴史的、地理的に複雑な関係があり、また、ともに大国としてライバル関係にある。一方、スリランカは巨大な隣国であるインドの影響を強く受けやすいので、中国との関係強化は自主路線を貫くうえで重要である。このような事情から中国とスリランカはインドの存在を強く意識しながら友好関係を増進させてきた。
中国とスリランカの協力は経済および軍事の両面に及んでおり、経済面ではすでに高速道路、高層ビル、劇場兼国際会議場などの建設が行われている。
スリランカ南部のマタラでは、バンダラナイケ空港に次ぐスリランカ第2の国際空港マタラ・ラジャパクサ国際空港が2013年完成した。ラジャパクサは中国との協力関係に熱心であった前大統領の名前である。
コロンボ国際コンテナ・ターミナル(Colombo International Container Terminal CTCT)は必要資金5億ドルの大部分を中国が賄い、これも2013年に運用を開始した。
コロンボ港を埋立して建設するコロンボポートシティは、過去最大のプロジェクトであり、中国主導で進めることに合意している。2014年9月に習近平主席がスリランカを訪問した際定礎式に出席した。
スリランカ最南端に近いハンバントタ(Hambantota)開発区は国際コンテナ港、倉庫、製油所および国際空港を含める一大プロジェクトであり、将来国際貨物輸送のハブになることが期待されている。その総経費の85%以上を中国が出資する。3年計画の建設第1フェーズはすでに着工しており、全体は10年で完成の予定である。
軍事面での協力も進展している。中国はスリランカに対し、対戦車ミサイル、ロケット発射台、携行ミサイル、戦闘機、軍用船舶、レーダー、通信機器など各種の武器を提供し、スリランカ軍の近代化に貢献している。兵員の訓練にも協力している。航空機のメンテナンス・センターを建設する計画もあると言われている。
中国のこのようなスリランカへの進出にインドは懸念を強めていたところ、2014年9月と11月(10月31日に入港した可能性もある)、中国の潜水艦がコロンボ港に寄港したのでインドは強く刺激された。インドとスリランカの間には現状維持に関する合意があるそうで、スリランカはインドに通報することなく中国の潜水艦の寄港を認めたとして強く抗議した。
その数週間後に大統領選挙が行われ、野党統一候補のシリセナが予想に反して現職のラジャパクサを破ったのである。その背景には、ラジャパクサがあまりにも中国寄りであることに警戒したインドの影響があるとも言われている。その真偽はともかく、ラジャパクサの中国寄り姿勢は明らかであり、前述の新空港建設に関して不正があったとも噂されていた。シリセナは選挙キャンペーン中、中国との協力プロジェクトは債務トラップ(詭計)と批判したこともあった。その具体的な意味は必ずしも明らかでないが、シリセナ候補が中国との関係に一線を画そうとしていたことは疑いない。シリセナ大統領は当選後いち早くインドを訪問し、原子力協力協定を署名している。
しかしながら、スリランカとして中国との関係を軽んじることはできないのも明白である。シリセナ大統領は中国を訪問したいという表明も行なっている。
2月6日の新華社電は、次のように報道した。
「スリランカ新政権の報道官兼保健相は5日、「スリランカ新政権はコロンボ港湾都市の開発プロジェクトを承認した」と発表した。これまでにスリランカと中国の両国間の最大協力プロジェクトとなったコロンボ港湾都市開発プロジェクトは、環境影響の評価で再評価を要求された。
スリランカ保健相によると、スリランカ新政権はこのプロジェクトの環境影響評価報告書に満足で、プロジェクト建設の第2弾で再評価を要求する可能性があるが、これまでに港湾都市の開発は停止しないという。
コロンボ港湾都市の開発プロジェクトは中国交通建設集団とスリランカ港湾局が共同で開発する総合型投資プロジェクトで、商業、居住やレジャーを一体化するコロンボ港湾都市の形成を目指す。
このプロジェクトは第1期の投資が14億ドルで、今までスリランカ最大の外国直接投資プロジェクトとなった。昨年9月、中国の習近平国家主席は当時のスリランカのラジャパクサ大統領と一緒にコロンボ港湾都市開発プロジェクトの定礎式に出席した。」
これは、コロンボポートシティの建設に関する報道であり、南部のハンバントタ港のプロジェクトについて両国間でどのような話し合いが行われているか、今のところ不明である。中国系の新聞が、この問題について支障が生じているという内容の報道を行なったことは「海上シルクロード」に関する最初の報告で紹介したとおりである。
中国の「海上のシルクロード」 続き2
海上シルクロードの建設においてギリシャと並んで注目を集めたのが、スリランカであったが、1月8日にスリランカの大統領選挙が実施され、予想を覆して野党候補が当選したことから雲行きがおかしくなってきた。この2週間後にギリシャの総選挙があり、港湾施設の建設が予定通り進まなくなる恐れが生じたことは前回に報告した。中国にとっては相ついで2つの重要拠点に黄色信号が点いたのである。スリランカが1957年に中国を承認して以来両国は緊密な関係にあった。
中国は、インドとは歴史的、地理的に複雑な関係があり、また、ともに大国としてライバル関係にある。一方、スリランカは巨大な隣国であるインドの影響を強く受けやすいので、中国との関係強化は自主路線を貫くうえで重要である。このような事情から中国とスリランカはインドの存在を強く意識しながら友好関係を増進させてきた。
中国とスリランカの協力は経済および軍事の両面に及んでおり、経済面ではすでに高速道路、高層ビル、劇場兼国際会議場などの建設が行われている。
スリランカ南部のマタラでは、バンダラナイケ空港に次ぐスリランカ第2の国際空港マタラ・ラジャパクサ国際空港が2013年完成した。ラジャパクサは中国との協力関係に熱心であった前大統領の名前である。
コロンボ国際コンテナ・ターミナル(Colombo International Container Terminal CTCT)は必要資金5億ドルの大部分を中国が賄い、これも2013年に運用を開始した。
コロンボ港を埋立して建設するコロンボポートシティは、過去最大のプロジェクトであり、中国主導で進めることに合意している。2014年9月に習近平主席がスリランカを訪問した際定礎式に出席した。
スリランカ最南端に近いハンバントタ(Hambantota)開発区は国際コンテナ港、倉庫、製油所および国際空港を含める一大プロジェクトであり、将来国際貨物輸送のハブになることが期待されている。その総経費の85%以上を中国が出資する。3年計画の建設第1フェーズはすでに着工しており、全体は10年で完成の予定である。
軍事面での協力も進展している。中国はスリランカに対し、対戦車ミサイル、ロケット発射台、携行ミサイル、戦闘機、軍用船舶、レーダー、通信機器など各種の武器を提供し、スリランカ軍の近代化に貢献している。兵員の訓練にも協力している。航空機のメンテナンス・センターを建設する計画もあると言われている。
中国のこのようなスリランカへの進出にインドは懸念を強めていたところ、2014年9月と11月(10月31日に入港した可能性もある)、中国の潜水艦がコロンボ港に寄港したのでインドは強く刺激された。インドとスリランカの間には現状維持に関する合意があるそうで、スリランカはインドに通報することなく中国の潜水艦の寄港を認めたとして強く抗議した。
その数週間後に大統領選挙が行われ、野党統一候補のシリセナが予想に反して現職のラジャパクサを破ったのである。その背景には、ラジャパクサがあまりにも中国寄りであることに警戒したインドの影響があるとも言われている。その真偽はともかく、ラジャパクサの中国寄り姿勢は明らかであり、前述の新空港建設に関して不正があったとも噂されていた。シリセナは選挙キャンペーン中、中国との協力プロジェクトは債務トラップ(詭計)と批判したこともあった。その具体的な意味は必ずしも明らかでないが、シリセナ候補が中国との関係に一線を画そうとしていたことは疑いない。シリセナ大統領は当選後いち早くインドを訪問し、原子力協力協定を署名している。
しかしながら、スリランカとして中国との関係を軽んじることはできないのも明白である。シリセナ大統領は中国を訪問したいという表明も行なっている。
2月6日の新華社電は、次のように報道した。
「スリランカ新政権の報道官兼保健相は5日、「スリランカ新政権はコロンボ港湾都市の開発プロジェクトを承認した」と発表した。これまでにスリランカと中国の両国間の最大協力プロジェクトとなったコロンボ港湾都市開発プロジェクトは、環境影響の評価で再評価を要求された。
スリランカ保健相によると、スリランカ新政権はこのプロジェクトの環境影響評価報告書に満足で、プロジェクト建設の第2弾で再評価を要求する可能性があるが、これまでに港湾都市の開発は停止しないという。
コロンボ港湾都市の開発プロジェクトは中国交通建設集団とスリランカ港湾局が共同で開発する総合型投資プロジェクトで、商業、居住やレジャーを一体化するコロンボ港湾都市の形成を目指す。
このプロジェクトは第1期の投資が14億ドルで、今までスリランカ最大の外国直接投資プロジェクトとなった。昨年9月、中国の習近平国家主席は当時のスリランカのラジャパクサ大統領と一緒にコロンボ港湾都市開発プロジェクトの定礎式に出席した。」
これは、コロンボポートシティの建設に関する報道であり、南部のハンバントタ港のプロジェクトについて両国間でどのような話し合いが行われているか、今のところ不明である。中国系の新聞が、この問題について支障が生じているという内容の報道を行なったことは「海上シルクロード」に関する最初の報告で紹介したとおりである。
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