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2015.11.17
○これまで日本は、重い大八車=「日ロ号」を坂道を押し上げるように努力してきた。油断しているとすぐに転げ落ちる大八車だ。
○エリツイン大統領時代、「日ロ号」は最も高いところまで押し上げられた。
○プーチン大統領からは、「日ロ号」を下げようとしているかのような発言が、非公式には行われている。
○「日ロ号」がズルズルと落ちている状態で合意を急ぐのは禁物だ。ロシアが本当に日本との条約をまとめる熱意を持つようになり、かつ、強い政治力で交渉できるようになるまで、慎重に、粘り強く対応していく必要がある。
プーチン大統領との平和条約交渉
プーチン大統領の年内訪日が延期された。同大統領との平和条約交渉は今後どのように展望できるか。東洋経済オンラインに「「日ロ平和条約」は、長くて困難な道である 「プーチン訪日延期」の正しい読み方」を寄稿した。要点は次のとおりである。○これまで日本は、重い大八車=「日ロ号」を坂道を押し上げるように努力してきた。油断しているとすぐに転げ落ちる大八車だ。
○エリツイン大統領時代、「日ロ号」は最も高いところまで押し上げられた。
○プーチン大統領からは、「日ロ号」を下げようとしているかのような発言が、非公式には行われている。
○「日ロ号」がズルズルと落ちている状態で合意を急ぐのは禁物だ。ロシアが本当に日本との条約をまとめる熱意を持つようになり、かつ、強い政治力で交渉できるようになるまで、慎重に、粘り強く対応していく必要がある。
2015.11.16
従来インドネシアは南シナ海の問題について中立的な態度を維持していた。しかし、最近態度が変わった。なぜか。
さる10月に訪米したウイドド大統領とオバマ大統領との会談後の共同声明は、「両国は南シナ海における最近の事態について懸念を共有する」「すべての関係国は南シナ海の情勢を緊張させるいかなる行動も回避することが非常に重要である」など述べるとともに、インドネシアと米国が航行の自由を確保する重要性について共通の認識に到達したことを明らかにした。
11月11日、同国の政治・司法・安全相は、「インドネシア領であるNatuna諸島に関し、中国と話し合いで解決できなければ、国際司法裁判所に提訴する可能性がある。それが一番良い解決策だ」と語った。
中国は現在、同諸島の領有権を主張していない。11月12日、中国外交部のスポークスマン洪磊は、同諸島の主権はインドネシアに属することを明言している。インドネシアの大臣が述べたのは、排他的経済水域が中国と重複する問題である。
インドネシアの態度変化は6つの観点から見ることができる。
第1に、インドネシアは将来中国がNatuna諸島に対する領土主権を再び主張してくることを恐れ、インドネシアの主権を強化しておこうとしたのだろう。同諸島は宋代から中国の支配下にあり、同諸島を統治した最後の王国は中国人が創立したものであり、以前の九段線は同諸島を含んでいたので、この心配は理由がないわけでない。
第2に、インドネシアはASEANの重鎮として、米国と関係諸国との間の調停役を務めたい考えであり、また、そうすることが将来TPPへ加入する準備としても役立つと考えている。
第3に、インドネシアは将来AIIBから380億ドルを借り入れたいと表明したことがある。このためにNatura諸島に関する主張を強めておいて、後に妥協すれば取引材料として役立つと考えている。
第4に、インドネシアはEEZについて中国との交渉の準備を始めている。
第5に、マレイシアとの領海紛争とも関連がある。中国との話し合いが成功すれば、あたかも中国からインドネシアの同諸島に対する領有権について承認された形になるからだ。
第6に、南シナ海の開発の可能性が拡大するにつれ各国の軍事力も拡大する傾向にある中で、インドネシアも海軍力を充実させ、ベトナムなどの越境漁業の取り締まりを強化している。
(短文)インドネシアが南シナ海問題に積極的になってきた理由
南シナ海での中国の膨張的行動に関し、フィリピン、ベトナムに次いでインドネシアの対応が注目されている。多維新聞(米国に拠点がある中国語新聞)11月13日付はその理由を次のように分析している。従来インドネシアは南シナ海の問題について中立的な態度を維持していた。しかし、最近態度が変わった。なぜか。
さる10月に訪米したウイドド大統領とオバマ大統領との会談後の共同声明は、「両国は南シナ海における最近の事態について懸念を共有する」「すべての関係国は南シナ海の情勢を緊張させるいかなる行動も回避することが非常に重要である」など述べるとともに、インドネシアと米国が航行の自由を確保する重要性について共通の認識に到達したことを明らかにした。
11月11日、同国の政治・司法・安全相は、「インドネシア領であるNatuna諸島に関し、中国と話し合いで解決できなければ、国際司法裁判所に提訴する可能性がある。それが一番良い解決策だ」と語った。
中国は現在、同諸島の領有権を主張していない。11月12日、中国外交部のスポークスマン洪磊は、同諸島の主権はインドネシアに属することを明言している。インドネシアの大臣が述べたのは、排他的経済水域が中国と重複する問題である。
インドネシアの態度変化は6つの観点から見ることができる。
第1に、インドネシアは将来中国がNatuna諸島に対する領土主権を再び主張してくることを恐れ、インドネシアの主権を強化しておこうとしたのだろう。同諸島は宋代から中国の支配下にあり、同諸島を統治した最後の王国は中国人が創立したものであり、以前の九段線は同諸島を含んでいたので、この心配は理由がないわけでない。
第2に、インドネシアはASEANの重鎮として、米国と関係諸国との間の調停役を務めたい考えであり、また、そうすることが将来TPPへ加入する準備としても役立つと考えている。
第3に、インドネシアは将来AIIBから380億ドルを借り入れたいと表明したことがある。このためにNatura諸島に関する主張を強めておいて、後に妥協すれば取引材料として役立つと考えている。
第4に、インドネシアはEEZについて中国との交渉の準備を始めている。
第5に、マレイシアとの領海紛争とも関連がある。中国との話し合いが成功すれば、あたかも中国からインドネシアの同諸島に対する領有権について承認された形になるからだ。
第6に、南シナ海の開発の可能性が拡大するにつれ各国の軍事力も拡大する傾向にある中で、インドネシアも海軍力を充実させ、ベトナムなどの越境漁業の取り締まりを強化している。
2015.11.15
ハーグの国際仲裁裁判所は10月29日、南シナ海での中国との紛争に関するフィリピンによる提訴について管轄権を認める決定を行った。平たく言えば、同裁判所は、提訴された案件について門前払いしない、審理すると決定した。
これに関し、台湾外交部は31日と11月2日の2回にわたって、決定は台湾として承服できず、受け入れられないとの声明を発表した。これは、台湾がフィリピン側に立たなかったこと、したがって、少なくとも結果的に中国側に立ったことを意味している。
台湾は、中国による埋め立て工事で問題になっている南沙諸島において、「太平島」を実行支配している。フィリピンや中国は数カ所占拠しているが、台湾はこれだけである。南沙諸島では最大だが、他のところと同様元は岩礁であり、フィリピンの提訴が認められると「太平島」を領土とは言えなくなる恐れがあるので、台湾外交部は声明を出したのだ。
台湾の立場は微妙である。台湾は国民党政府として中国より早くから南シナ海全域を中華民国の領域だと主張していた。いわゆる「十一段線」の主張であり、中国はこれを継承して少し手を加え「九段線」として主張しているのだ。
しかし、台湾は米国の航行の自由を妨げるようなことは一切控えていた。南シナ海は台湾海峡、さらには東シナ海とつながっており、米国がこの海域で活動できなくなれば台湾の安全を確保することはできない。しかるに、南シナ海は台湾のものだという主張を貫徹すれば、現在の中国のように米国と衝突する恐れが大きい。安全保障を米国に強く依存している台湾としてそれはできないのでその主張を米国にぶつけることは控えていた。中国が南シナ海に対して権利を主張した場合にも台湾の外交部は意見を公表することはなかった。
ところがフィリピンの提訴をきっかけに、台湾外交部は矛盾に満ちた立場をさらけ出してしまった。フィリピンの主張が認められれば、「太平島」の支配に影響が出ると恐れたのだろうが、それは台湾の自殺行為になる可能性がある。米国が嫌うことを台湾海峡と続いている海域でしておきながら、台湾をあくまで守ってほしいと頼むことに等しいからだ。台湾は自らの安全保障を重視して、米艦が12カイリ内へ立ち入った際に支持声明を出すべきであった。
来年初頭の総統選挙で国民党は政権を失う公算が高い。いずれ民進党は南シナ海の問題についてどのような立場であるか問われることになろう。民進党には国民党のように中国大陸を奪回したいという気持ちはないが、領土問題については台湾人も感情的になる可能性がある。
台湾の世論(の一部?)はフィリピンの提訴に憤っている。人気サイトのWe talkではフィリピンの提訴に対し、台湾は抗議していく場所がない、つまり国連の一員でないのを嘆く声が上がっている。
国民党系の聯合報(11月2日づけ)は、政府はフィリピンの提訴に対してただ「認められない、受け入れられない」としか言い返せないでいると、その弱腰を批判している。
台湾における米国の代表事務所(AIT)が台湾の指導者にしきりに接触し、みだりに動くべきでないと話していると伝えられているが、実際にはそれ以上のこと、つまり、台湾が南シナ海に対する歴史的主張にこだわると、米国の台湾防衛に対するコミットメントにも悪影響が出ることなども指摘しているのではないかと推測される。
一方、中国では台湾の立場を歓迎する声が上がっている。ごく自然な成り行きだ。
以上のことにかんがみれば、国民党の歴史的「十一段線」主張は、同党の復活の可能性を摘み取ってしまう問題となりうると思われる。
(短評)台湾の南シナ海についての立場は台湾の安全を害する
ハーグの国際仲裁裁判所は10月29日、南シナ海での中国との紛争に関するフィリピンによる提訴について管轄権を認める決定を行った。平たく言えば、同裁判所は、提訴された案件について門前払いしない、審理すると決定した。
これに関し、台湾外交部は31日と11月2日の2回にわたって、決定は台湾として承服できず、受け入れられないとの声明を発表した。これは、台湾がフィリピン側に立たなかったこと、したがって、少なくとも結果的に中国側に立ったことを意味している。
台湾は、中国による埋め立て工事で問題になっている南沙諸島において、「太平島」を実行支配している。フィリピンや中国は数カ所占拠しているが、台湾はこれだけである。南沙諸島では最大だが、他のところと同様元は岩礁であり、フィリピンの提訴が認められると「太平島」を領土とは言えなくなる恐れがあるので、台湾外交部は声明を出したのだ。
台湾の立場は微妙である。台湾は国民党政府として中国より早くから南シナ海全域を中華民国の領域だと主張していた。いわゆる「十一段線」の主張であり、中国はこれを継承して少し手を加え「九段線」として主張しているのだ。
しかし、台湾は米国の航行の自由を妨げるようなことは一切控えていた。南シナ海は台湾海峡、さらには東シナ海とつながっており、米国がこの海域で活動できなくなれば台湾の安全を確保することはできない。しかるに、南シナ海は台湾のものだという主張を貫徹すれば、現在の中国のように米国と衝突する恐れが大きい。安全保障を米国に強く依存している台湾としてそれはできないのでその主張を米国にぶつけることは控えていた。中国が南シナ海に対して権利を主張した場合にも台湾の外交部は意見を公表することはなかった。
ところがフィリピンの提訴をきっかけに、台湾外交部は矛盾に満ちた立場をさらけ出してしまった。フィリピンの主張が認められれば、「太平島」の支配に影響が出ると恐れたのだろうが、それは台湾の自殺行為になる可能性がある。米国が嫌うことを台湾海峡と続いている海域でしておきながら、台湾をあくまで守ってほしいと頼むことに等しいからだ。台湾は自らの安全保障を重視して、米艦が12カイリ内へ立ち入った際に支持声明を出すべきであった。
来年初頭の総統選挙で国民党は政権を失う公算が高い。いずれ民進党は南シナ海の問題についてどのような立場であるか問われることになろう。民進党には国民党のように中国大陸を奪回したいという気持ちはないが、領土問題については台湾人も感情的になる可能性がある。
台湾の世論(の一部?)はフィリピンの提訴に憤っている。人気サイトのWe talkではフィリピンの提訴に対し、台湾は抗議していく場所がない、つまり国連の一員でないのを嘆く声が上がっている。
国民党系の聯合報(11月2日づけ)は、政府はフィリピンの提訴に対してただ「認められない、受け入れられない」としか言い返せないでいると、その弱腰を批判している。
台湾における米国の代表事務所(AIT)が台湾の指導者にしきりに接触し、みだりに動くべきでないと話していると伝えられているが、実際にはそれ以上のこと、つまり、台湾が南シナ海に対する歴史的主張にこだわると、米国の台湾防衛に対するコミットメントにも悪影響が出ることなども指摘しているのではないかと推測される。
一方、中国では台湾の立場を歓迎する声が上がっている。ごく自然な成り行きだ。
以上のことにかんがみれば、国民党の歴史的「十一段線」主張は、同党の復活の可能性を摘み取ってしまう問題となりうると思われる。
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