平和外交研究所

6月, 2015 - 平和外交研究所

2015.06.30

(短文)台湾企業は大陸から撤退傾向にある

 台湾から中国大陸への投資は両者の経済関係が急速に緊密化する象徴であり、その急増により台湾の中国への依存度が高まった。そのことが2008年の総統選挙に強い影響を与えたことは周知である。
 しかし、2011年にピークに達した投資は、それ以降減少傾向となり、最近は投資を引き上げる傾向が目立っている。
 台湾では2016年に総統選挙が行われ、民進党の蔡英文が当然する可能性が非常に高くなっているところ、このような中国への投資急減は台湾の政治状況に再び影響し、国民党の立場はますます苦しくなるであろう。
 
 台湾の『経済日報』6月24日付は要旨次のように報道している。
○広東省東莞市(注 台湾から進出している企業が多いことで有名)の台湾企業会の張漢文会長によると、「以前工場が東莞にあると言うと、だれもが親指を立てて誉めてくれた。しかし、今や、まったく違っており、まだやってるの(原文は「你還沒有死啊」)と言われる」そうだ。
○台湾経済省の統計では、台湾から大陸への投資がピークであった2011年と2014年を比較すると、投資件数では575件から388件に、金額ベースでは131億ドルから98億ドルに減少した。
○2013,14の両年、大中の台湾企業で利益がゼロ以下に落ちているところは60%以上に達しており、小企業をくわえると8割近い台湾企業が赤字経営になっている。
○中国の輸出が減少しているからである最近5カ月の中国の輸出のうち4カ月はマイナス成長であった。
○以前、東莞で1千人を雇用している企業は小企業とみなされていたが、今や1千人以上は大企業である。どの企業も社会保障の負担金にあえいでいる。ストライキも多い。
○環境対策、安全対策にかかる費用が急増している。とくに新しく制定された環境保護法は台湾企業を撤退に追い込む主要な原因となっており、同法により処罰される工場が急増している。
2015.06.29

(短文)米中戦略経済対話

 6月23~24日、ワシントンで開かれた米中戦略経済対話で、南シナ海での中国の行動やサイバー攻撃問題については意見が対立したが、それは今回の対話以前から分かっていたことであり、両国の溝が埋まらなかったと言っても深刻な問題ではなかった。
 対話は全体を見ていく必要がある。両国が協力することに合意した分野は9つの領域で100以上の案件に上ると中国側は説明している。具体的には金融、投資、地球温暖化対策、オイルシェール、クリーンエネルギー、航空、鉄鋼、ハイテク、海洋生物保護など多岐にわたる。
 出席者の数は中国側だけで約400人、関与した両政府の機関は数十に上るというジャンボ対話であった。
 これを通じて、中国は、両国が協力していくことの重要性、したがってまた中国の重要性をあらためて米国にアピールした。
 一方、南シナ海やサイバー攻撃の問題が解決したのでないことはもちろんである。中国はこれらの問題を現状以上に悪化させなければ満足であったはずであり、その目的は対話全体が醸し出す強い協力志向の雰囲気の中で容易に達成できたのであろう。
 范長龍中央軍事委員会副主席が今次対話の2週間前に訪米した際には、南シナ海での中国の行動を問題視していた米国は、中国軍のトップクラスであっても以前のような熱烈歓迎はしないという姿勢をはっきりと見せていたので、9月に予定されている習近平主席の訪米に悪影響が及ぶことが懸念されていた。中国は、今次対話において習近平主席訪米の地ならしにも成功したと思われる。
2015.06.26

(短文)「孔子学院」の閉鎖

 中国が2004年以来設立してきた「孔子学院」は126ヵ国、475に上っている。
 日本には、立命館、桜美林、北陸、愛知、札幌、早稲田など13の大学内に設置されている。米国には108ある。
 「孔子学院」は、中国語の普及、中国文化に対する理解増進および文化交流の促進などを目的としており、中国教育部の傘下にある「国家漢辦」が実施している。
 日本も日本語と日本文化の普及のため努めてきたが、これまでに実現したことで満足できる人は少ないだろう。多数の「孔子学院」を短期間の間に作った中国と比べると、日本は数十年前から走り始めていたが十年前から走りだした中国にあっという間に追い抜かれ、しかも、すでに1周遅れになってしまったと言って過言でない。
 しかし最近、閉鎖される「孔子学院」が出てきた。ストックホルム大学、マックマスター大学(カナダ)、シカゴ大学、ペンシルバニア大学およびリヨン大学などである。設立が中止されたところと授業が停止されたところを含む。閉鎖ないし停止された数はまだ5か所とわずかであるが、その理由は学問の自由が担保されないということである。
 このような閉鎖傾向が今後続くか、単純に占うことはできないが、共産党の独裁下にある中国が開設・運用する学校で学問の自由が守られるか、もともと疑問視する人も居た。まだ数は少ないとしても、どうなるか注目される。
(以上は台湾の中国時報6月24日付の記事によった。「孔子学院」の数などはそのHPに記載されているものと同じである。)

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.