平和外交研究所

2014 - 平和外交研究所 - Page 20

2014.09.27

金正恩に関する中国の見方

多維新聞(米国に拠点がある中国語の新聞。比較的中立だが、一般的には中国の内部によく通じている)は、金正恩第1書記の動静が9月3日以来北朝鮮で報道されていないことや、9月25日に開催された最高人民会議第2回会議に欠席したことなどに関し、9月26日と27日の両日、一部についてはかなり異なる内容の見方を2通り紹介している。
1つは、中共中央に近い人物が『多維新聞』に語ったところでは、金正恩政権は不安定であり、内部の状況はよくない、中国は昨年9月、金正恩からの訪中の打診を断った、今年の旧正月前にも、また最近も同様の打診があったが、断った、としている(26日)。
もう1つは、金正恩が依然トップとして確固たる地位にあるとするものである(27日)。この見解は、また、金正恩が最高指導者として最高人民会議を欠席するのはいつもあることではないが、だからと言って健康上大問題があるとは言えない、北朝鮮では人事がなお流動的である、とくに軍内の人事変化が激しいと指摘している。
なお、25日の北朝鮮中央テレビが放映した記録映画の中で、「金正恩は体が不自由にもかかわらず人民の指導を行っている」旨のナレーションがあったことが日本のラジオ・プレスによって確認されており、第2の見方はこのことを知らないで書かれた可能性がある。中国では、新華社などもラジオ・プレスを引用していたのでそのナレーションを知ったのがやや遅れたらしい。

2014.09.26

金正恩の動向と最高人民会議

北朝鮮は9月25日、第13期最高人民会議の第2回会議を開催した。最高人民会議代議員選挙(我が国の総選挙)は5年に1回行われることになっているが、金正日時代は遅れ気味であった。金正恩第1書記の下で初めての第13期選挙は前任の任期が終了後の今年3月に規則通り開かれ、4月に最高人民会議が開催された。この会議は通常1年に1回開催されるが、北朝鮮労働党の指導が優先するのでラバー・スタンプ会議とみなされていた。しかし、今回は第13期として2回目であり、異例のこととして注目されている。
香港の大公報と文匯報は、この問題に関して韓国聯合通信が、崔龍海人民軍総政治局局長が4月26日解任されて黄炳誓に代わり、崔龍海は最近国家体育指導委員会委員長という閑職に追いやられたので、金正恩体制の中でこれら両人の地位がどのように変化したのか、黄炳誓が今次最高人民会議で国防委員会副委員長に就任するか、朴奉珠首相は留任するかなどが注目されると報道したことを転載している。
崔龍海は、金正日の葬儀時の序列は第18位であったが、その後急上昇し、国防委員会副委員長兼人民軍総政治局局長となり、金正恩の側近として実質上ナンバー2になっていた。しかし、去る5月には序列が下がり、黄炳誓の下位になっていたことが北朝鮮側の発表により明らかになっていた。病気が理由で、権力の中枢から遠のいた可能性もある。しかし一般的に、玉石混交の北朝鮮関係報道を中国の新聞が転載する場合は比較的確度は高いので、今回大公報紙や文匯報紙が報道したことは注目される。
また、『多維新聞』は、金正恩はこの重要会議に出席しなかったのみならず、9月9日の朝鮮民主主義人民共和国成立66周年記念中央報告大会にも出席しなかった、金正恩は6月には17回、7月には24回、8月には16回視察が報道されたが、9月には3日に李雪主夫人とともに牡丹江楽団の公演に出席して以来20日間報道されていないとコメントしている。
これらは事実らしい。ただし、昨日の北朝鮮中央テレビが放映した記録映画では、金正恩が「体が不自由にもかかわらず人民の指導を行っている」旨のナレーションがあったことが確認されている。病気か怪我かであろう。
この確認をしたのは日本のラジオプレスであるが、新華社もラジオプレスを引用して報道した(26日)。

2014.09.25

ウクライナに対するロシアの軍事的脅威

東部ウクライナでの親ロシア派とウクライナ政府の対立は現在も続いている。ウクライナのValeriy Heletey国防相は最近(8月末か9月初め)、ロシアは非公式のチャネルを通じてウクライナに対し、親ロシア派に対する攻撃を続けるならロシアは戦術核を使う用意があると何回か脅してきたとフェースブックに書き込んだ。9月1日のニューズウィーク誌等の報道である。
9月5日に停戦が成立したが、ロシアの脅威はまだくすぶり続けており、停戦合意違反の攻撃も行なわれている。同国防相は9月14日の記者会見で、ロシアの脅威に再度言及し、ウクライナとしてはNATO、とくに米英の軍事支援を必要としていると訴えた。そのなかで、十分な支援が得られなければウクライナとしては核兵器の開発を考慮せざるをえないという趣旨の発言をしたと報道された。ただし、この報道は一部の通信社に限られており、大手の通信社は取り上げていないようである。同国防相としてはNATOなどの支援が必要であることを強調するのが趣旨であったことは明らかであり、核開発に関する発言は弾みで出たものと取られたのであろう。
ウクライナの核開発はともかくとして、ウクライナがロシアから引き続き軍事的脅威を受けていることは明らかであり、ロシアがウクライナに対し非公式チャネルで核兵器を使用する可能性を伝えている可能性は高い。そうであれば、ロシアはこれまでウクライナに軍事介入をしていないと言い張ってきたが、みずからそれを否定しているのと変わらないのではないかと思われる。

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