2014 - 平和外交研究所 - Page 32
2014.08.09
○中国は2013年から米国に対して、コンゴ民主共和国で120億ドルのInga-3ダム建設に協力しようと持ちかけていた。前代未聞の話であり、中国はアフリカへの進出について各国の非難をかわすための戦略の一環として米国と協力しようと言い始めた可能性がある。さる7月の戦略経済対話ではその話に勢いがついてきた(gathered momentum)。
このダムについては何年も前から話があり、決着がついていなかったが、建設されれば世界最大の水力発電ダムになる可能性がある。世界銀行は最近、プロジェクトの評価を始めた。ワシントンで最近開催された米・アフリカ首脳会議では、アフリカにおける発電力の強化が主要議題の一つであり、コンゴのダム建設は同会議のフォローアプとして検討される。(Financial Times 8月5日By Geoff Dyer )
中国雑記(コンゴでのダム建設に関する米中協力など)
○中国の在韓国大使館の高官と武官がそれぞれ外交通商部と国防部を訪れ、韓国がフィリピンに対する武器の供与を中止するよう要求した。かれらは強硬で、もし韓国がどうしても予定通り供与するなら中韓の首脳会談に影響すると言った(8月4日付の韓国の『週刊東亜』の記事を6日付『多維新聞』が報道)○中国は2013年から米国に対して、コンゴ民主共和国で120億ドルのInga-3ダム建設に協力しようと持ちかけていた。前代未聞の話であり、中国はアフリカへの進出について各国の非難をかわすための戦略の一環として米国と協力しようと言い始めた可能性がある。さる7月の戦略経済対話ではその話に勢いがついてきた(gathered momentum)。
このダムについては何年も前から話があり、決着がついていなかったが、建設されれば世界最大の水力発電ダムになる可能性がある。世界銀行は最近、プロジェクトの評価を始めた。ワシントンで最近開催された米・アフリカ首脳会議では、アフリカにおける発電力の強化が主要議題の一つであり、コンゴのダム建設は同会議のフォローアプとして検討される。(Financial Times 8月5日By Geoff Dyer )
2014.08.08
国連人権問題高等弁務官Navanethem Pillayは8月末任期を終えるそうだが、8月6日、日本の慰安婦問題に対する取り組みを批判する声明を発表した。高等弁務官は国連総長の次の地位であり、自らが日本政府を批判するのは異例であり、その批判は厳しいものである。この声明は注意が必要である。次に転載する声明は国連人権問題高等弁務官(UNHCHR)のプレスリリースである。
GENEVA (6 August 2014) – UN High Commissioner for Human Rights Navi Pillay on Wednesday expressed profound regret that Japan has failed to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the issue of wartime sexual slavery, warning that the human rights of the victims, known as “comfort women”, continue to be violated decades after the end of the Second World War.
“During my visit to Japan in 2010, I appealed to the Government to provide effective redress to the victims of wartime sexual slavery,” the High Commissioner said. “Now, as my tenure in office comes to an end, it pains me to see that these courageous women, who have been fighting for their rights, are passing away one by one, without their rights restored and without receiving the reparation to which they are entitled.”
“This is not an issue relegated to history. It is a current issue, as human rights violations against these women continue to occur as long as their rights to justice and reparation are not realised,” she stressed.
Instead of justice, the High Commissioner said, the women are facing increasing denials and degrading remarks by public figures in Japan. A report issued by a Government-appointed study team on 20 June 2014, stated that “it was not possible to confirm that women were forcefully recruited.” Following the release of this report, a group in Tokyo publicly declared that “comfort women were not sex slaves but wartime prostitutes.”
“Such statements must cause tremendous agony to the women, but we have not seen any public rebuttal by the Government,” Pillay said.
Over the years, Japan has received recommendations from a number of UN independent experts, human rights treaty bodies and from the Human Rights Council under its Universal Periodic Review for it to take concrete measures to tackle the issue. Most recently, the UN Human Rights Committee, which oversees implementation of the International Covenant on Civil and Political Rights, called on Japan to take “immediate and effective legislative and administrative measures” to ensure that all allegations of sexual slavery are investigated and perpetrators prosecuted. It also called for access to justice and reparations for victims and their families, the disclosure of all evidence available, and education in the country surrounding the issue.
Pillay noted that Japan had signed the UN Declaration on the Prevention of Sexual Violence in Conflict last year and that it had offered strong support to the UK summit on sexual violence in conflict earlier this year
“I encourage Japan to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the wartime sexual slavery issue with the same vigour,” she added, noting the Office’s readiness to offer any necessary assistance.
国連人権問題高等弁務官の日本批判
慰安婦問題について国際社会の状況がかなり悪化しているようだ。国連人権問題高等弁務官Navanethem Pillayは8月末任期を終えるそうだが、8月6日、日本の慰安婦問題に対する取り組みを批判する声明を発表した。高等弁務官は国連総長の次の地位であり、自らが日本政府を批判するのは異例であり、その批判は厳しいものである。この声明は注意が必要である。次に転載する声明は国連人権問題高等弁務官(UNHCHR)のプレスリリースである。
GENEVA (6 August 2014) – UN High Commissioner for Human Rights Navi Pillay on Wednesday expressed profound regret that Japan has failed to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the issue of wartime sexual slavery, warning that the human rights of the victims, known as “comfort women”, continue to be violated decades after the end of the Second World War.
“During my visit to Japan in 2010, I appealed to the Government to provide effective redress to the victims of wartime sexual slavery,” the High Commissioner said. “Now, as my tenure in office comes to an end, it pains me to see that these courageous women, who have been fighting for their rights, are passing away one by one, without their rights restored and without receiving the reparation to which they are entitled.”
“This is not an issue relegated to history. It is a current issue, as human rights violations against these women continue to occur as long as their rights to justice and reparation are not realised,” she stressed.
Instead of justice, the High Commissioner said, the women are facing increasing denials and degrading remarks by public figures in Japan. A report issued by a Government-appointed study team on 20 June 2014, stated that “it was not possible to confirm that women were forcefully recruited.” Following the release of this report, a group in Tokyo publicly declared that “comfort women were not sex slaves but wartime prostitutes.”
“Such statements must cause tremendous agony to the women, but we have not seen any public rebuttal by the Government,” Pillay said.
Over the years, Japan has received recommendations from a number of UN independent experts, human rights treaty bodies and from the Human Rights Council under its Universal Periodic Review for it to take concrete measures to tackle the issue. Most recently, the UN Human Rights Committee, which oversees implementation of the International Covenant on Civil and Political Rights, called on Japan to take “immediate and effective legislative and administrative measures” to ensure that all allegations of sexual slavery are investigated and perpetrators prosecuted. It also called for access to justice and reparations for victims and their families, the disclosure of all evidence available, and education in the country surrounding the issue.
Pillay noted that Japan had signed the UN Declaration on the Prevention of Sexual Violence in Conflict last year and that it had offered strong support to the UK summit on sexual violence in conflict earlier this year
“I encourage Japan to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the wartime sexual slavery issue with the same vigour,” she added, noting the Office’s readiness to offer any necessary assistance.
2014.08.07
予想されていたことであるが、ロシアは米欧諸国および日本に対して一連の対抗措置を実施している。日本との関係では、官房長官の発表の翌日、日本が発表した追加制裁を「非友好的で近視眼的な措置」と批判する声明を発表した。
また、ロシアは8月末に予定されていた日ロ次官級協議を日本の対ロ制裁を理由に一方的に延期した。官房長官が6日の記者会見で説明している。この協議はプーチン大統領の訪日問題などについて準備を行なう重要な機会になるはずであった。しかし、日本としては過度に反応することなく、情勢の推移を見守りつつ、日ロ関係の進展を図っていくのであろう。
一方、ロシアは欧米からの食料品輸入について検査を強化しており、禁止される食品も出てきている。ロシア国内で営業しているファストフード店なども影響を受けているらしい。これもおそらく対抗措置の一環であろうが、マクドナルド、ケンタッキー・フライドチキン、コーラ、果物、野菜、豚肉などロシア人の生活に関わることはどこまで締めあげられるか。衛生状態を保つことなど当然であるが、下手をすれば自分たちにその影響が及んでくる。また、ロシア自身がクリーンでおいしい食料を十分供給できるかという問題もあろう。
ロシアの対抗措置は1987年に米国と合意した中距離核戦力廃棄条約(INF)を無視するのではないが、一定程度サボることにも及んでいる可能性がある。この条約によって米ロは射程310マイル(500キロ)~3400マイル(5500キロ)の地上発射核戦力の保持・実験・開発を禁止されている(船舶・航空機から発射されるものは除かれる)がこれに違反してミサイルの発射実験をしたことである。米国務省が議会に提出した各国の軍備管理条約の遵守状況に関する報告書に記載されている。
しかし、実験の事実を米欧の制裁と短絡的に結びつけることは危険である。米国もかつて違反したことがあったらしい。ロシアの違反は今回始まったことでなく、2008年以来続いており、米側からこの問題をロシア側に何回も提起したとホワイトハウスの報道官が述べている(Josh Earnest報道官 7月29日)。
米国では、ロシアの条約違反を問題視するあまり、条約を廃棄してしまえと主張する者もいるが、研究者のなかには、大事なことはロシアを条約順守に戻すことであり、以前にもそういうことはあったと指摘する意見がある。いずれにしてもINFは冷戦の末期に結ばれた画期的な意義のある条約であり、締結以来の歴史を踏まえて見ていく必要がある。
ロシアの対抗措置
ウクライナ情勢との関係で米欧が7月、対ロシア追加制裁措置を取り、日本も8月5日、追加措置を閣議で決定した(閣議了解)。内容は7月28日に菅官房長官が発表していた通りである(当ブログ8月4日「日本の対ロシア追加制裁措置」)。クリミアとの貿易制限は双方にとってほとんど影響はないだろう。資産凍結は、日本はプーチンの側近等は外した。かりに米欧のように含めていても、日本には彼らの資産はあまりないだろうから実質的意味は小さい。ただ、資本取引の制限は、欧州と共同歩調を取るなかで、一定の影響はあるかもしれない。予想されていたことであるが、ロシアは米欧諸国および日本に対して一連の対抗措置を実施している。日本との関係では、官房長官の発表の翌日、日本が発表した追加制裁を「非友好的で近視眼的な措置」と批判する声明を発表した。
また、ロシアは8月末に予定されていた日ロ次官級協議を日本の対ロ制裁を理由に一方的に延期した。官房長官が6日の記者会見で説明している。この協議はプーチン大統領の訪日問題などについて準備を行なう重要な機会になるはずであった。しかし、日本としては過度に反応することなく、情勢の推移を見守りつつ、日ロ関係の進展を図っていくのであろう。
一方、ロシアは欧米からの食料品輸入について検査を強化しており、禁止される食品も出てきている。ロシア国内で営業しているファストフード店なども影響を受けているらしい。これもおそらく対抗措置の一環であろうが、マクドナルド、ケンタッキー・フライドチキン、コーラ、果物、野菜、豚肉などロシア人の生活に関わることはどこまで締めあげられるか。衛生状態を保つことなど当然であるが、下手をすれば自分たちにその影響が及んでくる。また、ロシア自身がクリーンでおいしい食料を十分供給できるかという問題もあろう。
ロシアの対抗措置は1987年に米国と合意した中距離核戦力廃棄条約(INF)を無視するのではないが、一定程度サボることにも及んでいる可能性がある。この条約によって米ロは射程310マイル(500キロ)~3400マイル(5500キロ)の地上発射核戦力の保持・実験・開発を禁止されている(船舶・航空機から発射されるものは除かれる)がこれに違反してミサイルの発射実験をしたことである。米国務省が議会に提出した各国の軍備管理条約の遵守状況に関する報告書に記載されている。
しかし、実験の事実を米欧の制裁と短絡的に結びつけることは危険である。米国もかつて違反したことがあったらしい。ロシアの違反は今回始まったことでなく、2008年以来続いており、米側からこの問題をロシア側に何回も提起したとホワイトハウスの報道官が述べている(Josh Earnest報道官 7月29日)。
米国では、ロシアの条約違反を問題視するあまり、条約を廃棄してしまえと主張する者もいるが、研究者のなかには、大事なことはロシアを条約順守に戻すことであり、以前にもそういうことはあったと指摘する意見がある。いずれにしてもINFは冷戦の末期に結ばれた画期的な意義のある条約であり、締結以来の歴史を踏まえて見ていく必要がある。
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