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2016.07.25

憲法改正の論点③-安全保障

自民党改正案第9条、第9条の2、第9条の3

疑問と問題点
 現在の憲法第9条は変更しないのがよい。それは日本国の歴史上最も重大な行為であった戦争の結果だからだ。戦争の結果とは敗戦だけでない。戦いに敗れたために現在の憲法が制定されたことも忘れてはならない結果である。その両方の結果を丸ごと尊重すべきであり、また将来にそのまま伝えるべきだからだ。
 いわゆる「平和主義」の立場から、あるいは「普通の国」であることを求める立場から、さらには右または左の思想からさまざまな議論が行われてきたが、9条の持つ歴史的意義に勝る意見はなかったと思う。

 以下は比較的細かいことだが、付言しておく。
 外国に言われて制定した憲法だから日本語らしく書き換えるべきだという議論もある。確かに、9条の第2項は、当時の占領軍が勝手に書いた「バタ臭い」文章であることは明らかだ。しかし、それは9条の意義に照らすと大した問題でない。また、その部分だけ書き換えるにしても9条全体を丸ごと尊重することに穴をあけることになる。9条2項だけを改正することによって得られる利益より、日本にとって最も重要な歴史事実を書き換えることにより失うものが多いと思う。
 文章として稚拙か否か、日本語らしいか否かなどは言い出せばいくらも出てくることであり、たとえば、自民党案第9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない」の「、、、の行使は、、、、用いない」は論理的におかしな文章だ。
 現憲法の「、、、行使は、、、放棄する」もよい文章か疑問だが、少なくても論理的には成り立つ表現だ。
 また、自民党案には「法律の定めるところにより」という表現が9条関係だけでも複数回出てくるが、しょせん細かいことだ。憲法に規定されていることについてはほとんどすべて法律で細則が定められる。皇室典範のような特殊なことは憲法に特記してもよいが、いちいち「法律で定める」と官僚的に言わないほうがよい。
 
一方、自民党案は「自衛権の発動を妨げるものではない」とのみ規定し、集団的自衛権の行使を認めるかは書いていない。自民党改正案第9条関係は重要なことは規定せず、官僚的、実務的なことを記載する結果に陥っているのではないか。
 なお、日本を自衛するために戦うこと、武器を使用することは9条の下で認められている。それは妥当な解釈だと思う。

2016.07.18

憲法改正の論点②

自民党改正案第3条(新設)
1 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。

疑問と問題点
 国旗と国歌を憲法で規定することに反対の意見もあるが、規定してもよいと考える。国民に広く受け入れられているからだ。
 しかし、第2項を設けるのは反対だ。尊重しない日本国民がいるかもしれないが、そのような人がいることを憲法が想定するのは憲法の格調を落とすことになるからだ。これはこの条文だけの問題でなく、他のことでも同じことが言える。憲法はいちいち「尊重しなければならない」とは言っていない。
 また、「尊重」とは何かも問題で、恣意的な判断が押し付けられる恐れがある。たとえば、公の場で国歌を歌うことを義務的にすべきでない。それは個人の自由にゆだねるべきだ。
2016.07.15

(短文)インドと中国のライバル関係―ミサイル取引コントロールシステム

 インドは中国が反対したために原子力供給国グループ(NSG)に参加できなかったが(当研究所HP7月12日「核不拡散をめぐるインド、中国および米国の関係」)、NSGの総会が終わってから1週間もたたない6月27日、インドはミサイル技術管理グループ(MTCR)への参加を認められた。
このグループの名称は技術的だが、実質的には射程300キロ以上、搭載弾頭500キロ以上の弾道・巡航ミサイル技術の輸出を規制することが目的であり、政治・安全保障的に重要だ。また、このメンバーであると高性能ミサイルに関する情報にアクセスできるというメリットもある。
 中国は2004年にMTCRへの参加申請を始めたが、メンバー国になかには中国の輸出管理体制が十分でないことを理由とする反対があり、まだ実現していない。つまり、原子力供給国グループ(NSG)では、中国がメンバーでインドはメンバーでなく、ミサイル技術管理グループ(MTCR)ではちょうどその逆の状態になっているのだ。
 この2つのグループをめぐって中印両国が対立する形になっていることは両国関係が進展する一方で見逃せないものだが、インドと中国の2カ国だけの観点で見ると全体像が分からなくなる。どちらにも米国が関係しており、インドのNSGとMTCRへの参加を推し進めたのは米国であり、中国がインドのNSG参加に反対したのは米国をけん制するためであった。

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