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朝鮮半島

2015.09.07

抗日戦争戦勝70年記念式典と韓国・北朝鮮

 9月3日、北京で行われた抗日戦勝70年記念式典に関する諸報道は軍事パレードに焦点を当てたが、その他にも注目すべきことがあった。
一つは、習近平主席が戦略的にこの式典を計画・実行したことで、これについては東洋経済ONLINEへの寄稿「抗日戦争記念式典にかける習近平の大国化戦略」を見ていただければと思う。

 もう一つの注目点は朴槿恵韓国大統領の出席だ。同大統領は、参加は好ましくないという米国の意向に逆らって参加を決断した。軍事パレードにも参列したが、他の参列者が立ってパレードを見ていたのと異なり、坐ったまま、サングラスをかけて見ていた。浮かぬ顔のようにも見受けられたので、朴槿恵大統領はどういう気持だったのか、いろいろと憶測を呼んだ。
 同大統領の心中など分かるはずはないのだが、あえて推測すると、もともと朴槿恵氏は文学少女的なところがあり、若い時には教師になりたいと思っていたくらいであり、恐ろしげな軍事パレードは体質的に合わなかったのかもしれない。また、以前であれば、強大な軍事力の中国は韓国にとって脅威となりえたことなどが胸中を去来していたのかもしれない。

 中国は朴槿恵大統領を厚遇し、約30人の元首級出席者のなかでプーチン大統領に次ぐ2番目の来賓として扱った。
 帰りのフライトのなかで、朴槿恵大統領は、習近平主席との会談で朝鮮半島および東北アジアの安定維持に両国が協力することなどを話し合ったと上機嫌で語ったそうだ。韓国内では、朴槿恵大統領の出席を成功と受け止め、支持率が上がった。

 一方、北朝鮮から出席した崔竜海人民軍総政治局長は端役として扱われ、出席者全体の写真撮影では2列目の端に立たされた。北朝鮮の代表なのに冷遇されたと話題になったが、崔竜海は他国の出席者より地位が低いので当然の扱いとも言える。
 金正恩第1書記自身が出席しなかったのは現在の中朝関係を象徴していたが、出席するなら朴槿恵大統領に劣らない、あるいはそれ以上の扱いを中国側に内々要求し、断られたという噂もある。真偽のほどは分からない。
 それはともかく、中朝関係の悪化は、習近平主席が朴槿恵大統領を厚遇したことと金正恩第1書記が欠席したことによりさらに進んだ感がある。
 金正恩はさる5月のモスクワでの対独戦勝記念式典の際には直前になって参加をキャンセルした。朴槿恵大統領はモスクワの式典に出席しなかったので理由でないはずだ。北朝鮮はロシアに対し、最重要の賓客にふさわしい待遇を求め、断られたのかもしれない。北朝鮮はドイツとの戦争に参加しなかったので、ロシアとしては特別扱いできないと対応しても不思議でない。

 金正恩第1書記は、来る10月10日の朝鮮労働党創立70年記念式典を北京の式典以上豪勢に開催することを考えていると伝えられている。式典に駆り出す人の数は3万人というので、北京の1・2万人の3倍近い。新型ミサイルなど北朝鮮自慢の兵器のパレードも予定されているそうだ。
2015.08.28

(短文)朝鮮通信使関連遺産を韓国とともに世界遺産登録!

 8月26日から瀬戸内海を旅している。鞆(広島県)で、江戸時代に行われた朝鮮通信使の遺産を世界遺産に登録する希望があることを知った。
 これは素晴らしいアイデアだ。韓国側にも関連の遺産があるので、日韓共同で登録を申請するのがよい。
 通信使の行列をえがいた絵は日本各地に残っている。通信使(正使)はじめ随員が日本人との交流で残した詩文は鞆など通信使が立ち寄った地に残っている。彼らの中には文化水準が非常に高かった人が含まれており、当時の日本の文化人は通信使一向との交流に熱心であった。
通信使一行が残した手記や旅行記が韓国に現存しているそうだ。彼らの目で見た日本人の生活は興味深い。
 朝鮮通信使を幕府がどのように扱ったについては、とくに政治的な面で議論があるらしいが、それはともかく、朝鮮通信使一行を一般の日本人は興味深く見守り、また、一行の文化水準に敬意を払っていた。いいことだけでなく、ケンカしたことなどもあったらしいが、それを含めて朝鮮通信使の受け入れ、接遇から日韓の文化交流の実態が浮かんでくる。世界中の人も興味を持つだろう。
2015.08.25

(短文)韓国と北朝鮮の関係緊張‐北京では

 韓国と北朝鮮の緊張が高まっていることに関し、『多維新聞(米国に本拠)』8月22日付は、北朝鮮は、韓国との関係もさることながら、中国との関係を強く考慮しながら行動していると指摘している。韓国と北朝鮮の緊張は中国との三者間の関係のなかで見ていく必要がありそうだ。

 非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発したのは8月4日、韓国国防部は10日に北朝鮮が仕掛けた地雷だと発表した。
 南北高官会談が22日から板門店で行なわれ、25日未明に合意に達した。北朝鮮は韓国が要求していた通り、地雷を仕掛けた件について謝罪(中国の新聞では「遺憾」)した。今回の事件において、韓国側は北朝鮮が仕掛けたことを示す明確な根拠を持っていたようで、かつて北朝鮮から砲撃を受けたり、艦艇が撃沈されたりした時と比べると強く出ていた。北朝鮮による謝罪の要求と並行して、大音声の宣伝放送を再開したのもその表れだった。

 以上は前置きで、『多維新聞』の指摘は以下のことについてである。
 21日、北朝鮮の池在龍在中国大使は緊急の記者会見を開き、韓国が48時間以内に宣伝放送をやめないと軍事行動を起こす、北朝鮮軍は準戦時状態に入ったと表明した。南北関係が緊張しているときに北京で記者会見を開き、そのように重大な発表をするのは異例である(注 北朝鮮は通常通り朝鮮中央通信を通して発表できた)。
 しかも、この記者会見は外国記者だけに案内されたので、中国の記者は誰も出席しなかった。
 中国記者だけでなく、北朝鮮は中国政府に対してもこの発表について事前に通報しなかったらしい。ロシアには明らかに事前通報していた。中国政府はつんぼ桟敷に置かれたのだ。当然中国政府は怒った。21日に中国政府が出したコメントの言葉の強さが中国の気持ちを表していた。
 今回の南北間の緊張に際して、北朝鮮は中国を強く意識して振る舞っていた。北京で韓国との関係に関する重要発表を行なう前日(20日)の午後、金正恩第1書記が政府の要人を集め協議(指示?)し、韓国に向け砲撃したのは、その日の午前中に、朴槿恵大統領が9月3日の抗日戦争勝利記念行事に参列することを韓国が発表したからである。金正恩は韓国と中国の関係進展を不快視して、中国には横を向きながら怒鳴ったのだ。
 北朝鮮は中国に対し、中国は北朝鮮を冷淡に扱おうとしても結局巻き込まれることになる、現在中国は北朝鮮を軽視しているが、北朝鮮だって中国を無視できると言いたかったのだろう。

 北朝鮮は地雷を仕掛けたこともそうだが、南北会談を持ちかけたり、「南韓」といつもの言い方と違って「大韓民国」と正式名で韓国を呼んだが、次の機会にはまた元の呼称に戻ったり、「異例の(奇妙な?)」記者会見をしたりしており、一貫した方針がうかがわれない。

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