平和外交研究所

中国

2013.10.28

383改革法案

11月に開催される三中全会は、改革開放の大方針を決めた1978年末の三中全会(第11期。今回のは第18期)にも比肩しうる重要な中共中央委員会全体会議であると期待感を込めて語る人もいるようである。
それはともかくとして、同会議で取り上げられるべき重要な問題について、国務院のシンクタンク、「発展研究中心」は以下のような意見書「383改革法案」を発表した。項目だけであるが、参考になる。
○三つの改革を打ち出すことが鍵となる。意見書は「三位一体改革」と呼んでいるが、その言葉を使うことには異論があるかもしれないので、書き換えた。「市場経済の改善(原文は「市場体系の完善」)」「政府機能の改革」「新しい企業体制の創設」である。中国の経済は今なお計画経済と諸々の規制が残っており、市場の機能が著しく制約されていること、政府の権限があまりにも大きすぎるのを改革する必要があること、国有企業の優遇をあらため、民営企業中心にする必要があることなどを指摘しているのである。
○そのために次の8つの改革を行なわなければならない。
‐法律に依拠した行政、政府の許可権限の大幅縮小
‐独占の排除、競争の促進
‐権利の平等などを尊重した土地制度改革
‐金融業への参入条件を低くし、利子率と為替を市場に委ねるなどの金融改革
‐財政制度改革
‐国有資産の資本化など国有資産管理体制の改革
‐環境にやさしい発展
‐対外経済体制の改革
○以上に関連する3つの改革
‐参入規制の緩和、外国資本の導入、競争の強化
‐社会保障制度の改革
‐土地制度、取引の改革

2013.10.25

三中全会の見どころ

「360図書館(個人図書館と称するサイト)」の「18期3中全会に関し知っておかなければならない10の事項」と題する論文。
著者の王志浩(チャーター銀行中国部の首席エコノミスト)は、今次会議の焦点として、
政府機構の簡素化、政府の経済への関与(承認など)権限の縮小、地方財政に持続可能な収入を与えること、予算制度改革による資金支出の効率化、地方政府の現在および将来の債務処理など地方の財政再建の必要性を指摘している。
一方、国有企業については、「国有企業改革が今次会議で大いに議論されることを望む」「しかし、この問題はあまりにもデリケートである」「国有企業改革は「優勝劣汰」の過程にあり、会議の結論文書には盛り込めないかもしれない」「公共サービスの価格引き上げ、企業利潤の調整、利率改定、鉄道・医療などの民営化などにより現在の国有企業優越の経営環境は大きく変化するだろう」「地方政府の融資限度の引き下げにより国有資産を売却することが必要になる。レストラン、商業施設、ビジネス用ビルについてはすでに始まっている。さらに次の段階へ進んで工業資産にも及ぶことが期待される」など述べ、最後に、国有企業改革は別の名目の下に間接的に進められる可能性がある、ただし漸進的に改革されるのはよいが、時間がかかりすぎるのは問題だと指摘している。

2013.10.23

中国の言論統制強化

中国の国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は最近、全国の新聞やテレビ、通信社、雑誌などの記者25万人にマルクス主義などを学ぶ研修を義務付け、来年1月から2月にかけて、統一の免許更新試験を実施すると発表した。研修テーマは「マルクス主義報道観」「中国の特色ある社会主義」「虚偽報道の防止」など6項目。このことが報道されたのは10月12日である。免許更新試験に合格しなければ記者活動はできなくなる。言論に対する革命路線に従った厳しい締め付けであり、習近平が8月の講話において強調した思想性重視の一環である。
中国において、言論の自由がほとんど認められていないのは誰でも知っていることである。その厳しい状況にあっても、中国の言論人は客観的な報道に少しでも近づこうと努めている。温州付近で起こった高速鉄道事故の際には比較的自由な報道が増え、内外から注目を浴びていた。
しかし、習近平政権は言論を厳しく統制する姿勢を見せている。その一つの表れが、インターネットにおける意見表明を厳しく取り締まることであり、中国当局は無責任、あるいは事実でないと当局が判断する投稿を許さず、それに背いた者数名~数十名を逮捕している。
さらに、中国では比較的自由な報道で知られる羊城晩報グループの『新快報』は、次のような記事を掲げた(中国のインターネットや海外の報道機関が転載し始めたのは10月23日)。
「読者の皆様。我々の新聞記者、陳永洲が中聯重科(正式名は「長沙中聯重工科技発展股分有限公司」)の財務問題について報道したことに関し、長沙警察に連行されました。被疑事実とされたのは「商業上の名誉信用を損なったこと」とされています。これに対し我々は、「釈放を求める。我々はちっぽけな報道機関であり、お金もないが、気骨と誇りは持っている」と大声で叫びます。」
中聯重科は中国の代表的な建設機械・重機械大手メーカーであり、2008年イタリアのCIFA社の株式買収後、世界最大のコンクリート機械メーカーになった。本社は湖南省の長沙。企業の財務状況に関して報道したことを理由に逮捕されるのではたまらない。この事件に象徴されている中国の言論統制は危険性をはらんでおり、対外関係の報道にも影響は不可避であろう。

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