平和外交研究所

2017年10月

2017.10.28

中国共産党第19回大会

 東洋経済オンラインに、中国共産党の第19回大会に関する一文を寄稿しました。
「東洋経済オンライン」「習近平「一強」の独走体制ににじむ中国の焦り 7人の新最高指導部が選別された舞台裏」でアクセスできます。
 要点は次の通りです。

〇今回の党大会は「習近平思想」を党規約に書き込むなど、習近平体制は盤石のごとく固められたかに見える。しかし、一歩踏み込んでみてみると、そうでもなさそうだ。

〇習近平総書記の統治システムは、国政の全般にわたって非官僚機構的方法で改革を進めることと、反腐敗と言論統制の、いわば2本の鞭を用いて改革の実効性を高めることであった。

〇しかし、既存の政府、官僚機構がすべてダメなわけではない。また、習氏が設置した「小組」からの支持が常に正しいという保証はない。党の権威を背景に、2本の鞭が振るわれれば従うほかないが、既存の官僚機構にとって習氏の非官僚的方法による改革は、しょせん人為的に作り上げられたものに過ぎない。改革は今後も積極的に進められるであろうが、行き過ぎると反発を惹起する危険がある。

〇人事においてもいくつか特徴がある。
 国務院の各部長(我が国では各省庁の大臣)が党の序列では格下げになった。官僚機構に対する党の優位性がさらに進められたのだ。

〇新たに中国のトップ7(政治局常務委員)入りした5名はかつての部下など習近平と特に近い関係にあった者ばかりである。中国広しと言えども習近平が本当に信頼できる人物はあまりいないのだろう。

〇陳敏爾や胡春華など、習近平の後継者候補は常務委員にならなかった。習近平の意見に反対する勢力があるようだ。

〇鄧小平は、かつて、「才能を隠して、内に力を蓄える(韜光養晦)」ことを強調したが、それから約30年後の今日、習近平はそのような深慮遠謀策は捨て去り、大国化路線に転じた。それには、中華思想的体質を帯びている国民の心をくすぐる狙いもあったのだろう。

〇共産党の一党独裁については本来的に不安定な面がある。鄧小平が1989年の天安門事件後、西側諸国は「和平演変(平和的な方法で転覆させる)」を狙っていると言ったのは有名な逸話であるが、それ以来、歴代の指導者はだれもこの危機意識を払しょくできていない。習近平も例外でない。

〇中国共産党の独裁体制は今後5年間、習近平総書記の下で最も安定し、「中国の夢」実現に近づくかもしれないが、その後は、指導者、諸改革、経済成長いずれをとっても問題が増大する危険があるのではないか。


2017.10.24

《安倍政権5年》NSC設置に秘密保護法、共謀罪……防衛体制を整備

 安倍政権5年における防衛体制の整備について、次の一文をザページに寄稿しました。

「日本政府は、自衛隊の行動に関する権限の強化と並行して、防衛体制整備としていくつかの措置を講じました。

 まず、2013年に、国家安全保障会議(NSC)を設置しました。安全保障は外務省および防衛省を中心に複数の省庁にまたがるので、政府として一体性のある、機動的な対応が必要であり、この会議はそのための司令塔の役割を果たします。

 防衛予算は安倍第2次内閣成立までの数年間減少してきましたが、この減少傾向をストップさせて5年連続増額し、2017年度防衛予算は前年度当初比1.4%増の5兆1251億円となり、過去最高を更新しました。

 この中には、尖閣諸島など島嶼部防衛対策費、さらには、いわゆる「イージス・アショア」、つまり、イージス艦に搭載している迎撃ミサイルシステムを陸上に配備するための費用が含まれています。

 秘密保護法は、公務員らの情報漏えいに関する脅威が高まっている中で、外国の情報機関などとの情報共有を円滑に行うために必要な法整備として、2013年、制定されました。これは「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関する情報の管理を厳格化しようとする法律で、これらの情報を扱う公務員の身辺調査なども含まれており、それではプライバシーの侵害が起こるという理由で反対する声が上がっています。また、テロ対策として原子力発電や放射線被害に関する情報の伝達が阻害される危険があるとも言われています。
 さらに、この法律はメディアへの悪影響が大きく、自由な取材が損なわれるという懸念も上がっています。

 武器は、これまで日本から外国への輸出を認めていませんでしたが、2014年、「紛争地などへは武器を輸出しない」という原則は維持しつつ、日本の安全保障に資するなど一定の条件を満たせば輸出を認めることにしました。武器輸出や技術移転を通じ、相手国と安全保障関係を強化することが狙いだと説明されていますが、日本製の武器は高価格なため輸出の大幅な増加は見込めないとも言われています。

 「組織的犯罪処罰法」の改正は「テロ等準備罪」(「共謀罪」とも呼ばれる)を処罰するもので、範囲が広すぎるという理由で強い反対がありましたが、日本政府は、テロ対策のために、また、「国際組織犯罪防止条約」の批准(署名はすでに行った)のために必要との認識の下に2017年、成立させました。
 しかし、この法律が適用される範囲は非常に広く、しかも明確になっていないとの批判があり、たとえば、国会では、数人で花見に行っただけでも共謀罪に問われることもありうるのではないかという質問が提出されました。政府側はそのようなことはないと答弁しましたが、納得はなかなかえられませんでした。

 全体的に、安保関連法案についての審議は十分でなかったという印象を国民は抱いたと思います。「権限篇」の「存立危機事態」に関して、法律案に明記されていることと異なる内容の答弁が行われたのは問題答弁の最たる例でした。また、審議が途中で打ち切られ、「強行採決」と言われる事態に陥ったこともありました。

 安全保障については今後もさまざまな場面で政府の説明が求められるでしょう。政府には、審議の時間の長さや形式だけでなく、内容について十分な説明が求められます。」

2017.10.22

安倍政権5年の安保関連体制強化ーその1

 安倍政権下での安保関連体制整備について、2回に分けて寄稿しました。以下は、「自衛」の強化などに関するものです。

「《安倍政権5年》安保関連法で自衛と国際貢献強化 憲法解釈変更に批判も

安倍首相は2012年の第2次内閣発足以来、安全保障体制の強化に積極的に取り組み、2015年に安全保障関連法を改正したほか、いくつかの措置を講じました。その内容は、大きく2つに分けることができます。
 
 第1に、「自衛」を強化しました。具体的には、日本に対する脅威が増大し、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)において、自衛隊の行動範囲にかかっていた地理的限定などを取り払い、世界中のどこでも行動できるようにしました。ただし、行動は米軍の後方支援、捜索・救難などに限られています。

 この法改正に基づき、2016年3月の施行以来、海上自衛隊の補給艦は日本海などで北朝鮮の弾道ミサイル発射を警戒する米イージス艦に燃料を補給しています。
 
 また、平時においても 警護や武力行使に至らないグレーゾーン事態での対応、例えば、弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視について米軍などとの協力が強化されました。この関係でも自衛隊は2017年5月、実際に房総半島沖で任務を開始しました。
 これらの行動について、政府は秘密を要するという理由で公表する場合を非常に限定していますが、それでは政府・自衛隊の裁量範囲が広がりすぎるとして批判する声が上がっています。

 さらに、「自衛」として武力行使(通常「武器使用」と言っています)できるのは、日本が武力攻撃を受けた場合に限られていましたが、法改正により「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(存立危機事態)」にも行動が可能にしました。これが集団的自衛権の行使になる場合であり、憲法違反の疑いが起こりました。
 しかも、「存立危機事態」であれば、自衛隊は他国に対する武力攻撃を排除するために、その国の領域へ行く可能性が出てきました。しかし、安倍首相はじめ政府関係者は自衛隊が他国の領域に出ていくことはないと答弁しましたので、改正法の記載と国会説明は整合性がとれているか疑問が生まれました。

 第2に、国際貢献の場合です。いわゆる「平和維持活動(PKO)」に参加している自衛隊の行動範囲は厳しく限定されており、同じ場所で活動する他国の部隊や、また日本人であっても自衛隊員でないNGOの人たちが危険な状況に陥った場合でも救助できませんでしたが、この制限を取り除きました。いわゆる「駆けつけ警護」を認めたのです。
 法律の改正後、日本政府は南スーダンに派遣していた自衛隊に「駆けつけ警護」の権限を付与しましたが、実際にそのような活動を行うに至らないまま、部隊は撤収されました。

 もう一つの国際貢献は、いわゆる「多国籍軍」に参加する場合です。PKOとちがって、和平や停戦が前提となっていない場合です。以前は必要に応じて特別法(たとえば「イラク特措法」)を制定して対応していましたが、あらためて恒久法である「国際平和支援法」を制定しました。

 以上のように安保関連法が整備されたのは、東シナ海や南シナ海で国際法に違反して現状を変更しようとする中国や、核兵器やミサイルの開発を進める北朝鮮の脅威が背景になっていました。

 中国は過去20年以上国防費を毎年二けたで増加させ、軍の近代化を進めてきました。また、2013年秋には防空識別圏を尖閣諸島の上空を含める形で一方的に設置しました。2014年の春には中国軍の戦闘機が自衛隊機に異常接近する事態が続発しました。
 中国は第二次大戦後何段階にもわたって南シナ海への進出を強めてきており、そのため周辺の東南アジア職と紛争を起こしました。2016年には国際仲裁裁判所の判決で中国の一方的な行動が否定されましたが、中国政府はそれを無視しました。

 北朝鮮では金正恩委員長の「経済建設と核開発の並進路線」の下、2013年に第3回目の核実験を行い、特に2016年からは核実験(しかも水爆実験とされる大型のものを含む)を3回、ミサイルについては中長距離弾道ミサイルを含め実験を頻繁に繰り返しています。すべてが成功したわけではなさそうですが、その性能は着実に向上していると見られます。金正恩委員長は米国のトランプ大統領と激しく口合戦を行っており、偶発的に衝突が起こる危険があります。

 このように緊迫する東アジアの情勢下で、自衛隊が必要に応じて行動できる範囲を拡大し、国際貢献も各国並みに行えるようにするなど日本の安全保障体制を強化したのは必要であり、また、適切であったと思われます。

 しかしながら、各種法案について十分な審議が行われなかったという批判もありました。前述した「存立危機事態」に関して、法律案に明記されていることと異なる内容の答弁が行われたのもその一例でした。また、審議が途中で打ち切られ、「強行採決」と言われる事態に陥ったこともありました。

 特に憲法との関係では慎重な対応が必要です。日本政府が長らく維持してきた、日本は集団的自衛権は行使できないという解釈を変えたことは多数の憲法学者や行政官(退職者を含む)から批判されました。集団的自衛権の行使は法改正後、現実に起こりえる問題になっています。「存立危機事態」の要件は厳格ですが、朝鮮半島有事の場合要件を満たすことがありえるからです。そうすると、自衛隊は、たとえば米国から要請され出動することとなるでしょう。

 また、安倍首相は憲法改正論議を主導していますが、自衛隊は現憲法で認められていると解釈されているのに、なぜ憲法を改正して自衛隊を明記する必要があるのか国民の多くは理解できていないのではないでしょうか。
 自衛隊を憲法に明記することにより、自衛隊員は立派で崇高な任務についていることを国家として明確に示すことがメリットとして言われているようです。
一方、それは憲法を改正しなくても可能である、「自衛隊」は法律で「防衛軍」と名称を変更することは可能だとも言われています。また、憲法改正の第1号として第9条を取り上げるのは不適切だという意見もあります。環境対策など憲法を改正するなら真っ先に取り上げるべきことがあるからです。

 さらに、南スーダンへの自衛隊の派遣に関し、いわゆる「文民統制」は適切に行われていたか、憲法の「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」(第66条2項)という規定で足りるか、疑問が生じました。これも今後検討されるべきことと思います。
 安倍首相は7日、ネット討論会で、「シビリアンコントロール(文民統制)をしっかり明記する」と述べました。今後その内容が明確化されることが期待されます。」

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