平和外交研究所

2015年12月

2015.12.11

(短文)モランボン楽団の訪中

 北朝鮮のモランボン楽団が12月10日、訪中した。この楽団は、北朝鮮事情に明るい人ならだれでも知っているが、一般の日本人にはなじみがないので簡単に紹介すると、楽団員はすべて若い女性、軍装だがかわいい人ばかりだ。気楽に聞ける北朝鮮ポップスとでも言えようか。日本では、かなり前に活躍したグループなので恐縮だが、「ザ・ピーナツ」、スウェーデンではABBAの感じに似ていると思う。ABBAは男女2名ずつなのでちょっと違うが、それは気にしないでもらいたい。
 昨年10月訪朝した際、北京から飛んだ飛行機の中で、始めから終わりまでこの楽団の音楽を聞かされた。最初は心地よい音楽と衣装を大いに楽しんだが、さすがにピョンヤンに近づくころには食傷気味になったのを覚えている。
 ピョンヤン市内では、レストランが主だが、それ以外のところからもモランボン楽団の音楽が流れていた。北朝鮮の人気ナンバーワンのグループであり、同行した人がモランボン楽団のCDを買おうと試みたが、買えそうな場所はどこも売り切れであった。

 この楽団が訪中したのは、楽団としての決定ではなく、北朝鮮政府の、しかも金正恩第1書記の指示であることはだれにでもわかる。北朝鮮から人気楽団が訪中するのは久しぶりであり、中国系の新聞も関心をもっているようだ。
 金正恩第1書記がこの楽団を中国へ派遣したのは、中国との関係を改善しようとする姿勢の表れだと指摘されている。同感だ。同第1書記はさる10月の朝鮮労働党創立記念日で中国からの代表におおげさに友好のハグをするなど、就任直後からの中国とのぎくしゃくとした関係を改善しようと努めていた経緯がある。
 同第1書記自身はまだ中国を訪問していないが、まずはソフトタッチで中国との友好を重視する姿勢を見せようとしているのだろう。

 モランボン楽団の訪中にはもう一つ注目されたことがあった。この楽団の団長「玄松月」が同行していることで、北京空港で撮った写真付きで香港の『明報』紙が12月11日に報道している。団長が楽団に同行するのは何のニュースにもならないが、2013年、韓国から出た情報は、「同人が金正恩第1書記の以前の愛人であり、みだらな写真を撮ったとして銃殺された」としていた。このことを明報がコメントとして付言している。
 余計なことかもしれないが、北朝鮮に関する情報はまさに玉石混交だ。韓国から出る情報もしかりである。以前からそう思っていたが、今回はしなくもそのことを再確認することになった。

2015.12.10

(短評)韓国人の逮捕

 靖国神社のトイレで爆発物を仕掛けた容疑がかかっていた韓国人、全昶漢(チョンチャンハン)が逃れていた韓国から自発的に日本へ戻ってきて、即警視庁に逮捕された。
 誰が見ても不思議なことだが、日本と韓国の警察が協力した結果だと思う。日本と韓国の間には、捜査に関して協力し合う仕組み(捜査共助)があり、それに基づいて両国の警察が協力し合ったのだ。これはいわゆる「犯罪人引き渡し」とは異なる。「犯罪人」は、日本でも韓国でも、裁判により決定され、捜査の段階では、対象となっている人物が「犯罪人」かどうか、明確になっていない。要するに、容疑がかかっているだけだ。したがって、「犯罪人」の引き渡しには当たらないが、国境を越えた捜査についてはまた別に協力の仕組みが作られており、そのために条約が結ばれている。
 もっとも、韓国では靖国神社がらみの事件は「政治犯」として日本に協力しないことがありうるが、これは韓国にとっていわば最後の手段であり、いつもこれを持ち出すわけにはいかない。日本で事件を起こした容疑で捜査の対象となっている外国人で韓国へ逃れる者は1年間に50人くらいおり、両国の警察は頻繁に連絡を取り合っている。その中で両国の警察間には持ちつ持たれつの関係ができているはずだ。
 今回、韓国警察は、細かいことは分からない、一種の取引だったかもしれないが、日本の警察に協力するほうがよいと判断し、この韓国人を日本へ戻るよう説得したのだと思う。
 日韓関係がよくない今日、協力関係が機能していることに光が当たりにくいが、今回のケースは協力することがお互いに利益になることを示唆していると思う。

2015.12.09

(短文)核廃絶に関する日本提出決議の採択

 12月8日、国連総会において我が国が107カ国の共同提案国を代表して提出した核廃絶決議案が採択された。我が国は毎年この決議案を提出しているが、今年は一つの特徴があった。
 世界の指導者に被爆地訪問を促していることだ。目的は、被爆地を訪問することにより、核兵器がいかに恐ろしい、非人道的な兵器であるかを理解してもらうことにある。
 日本ではなかなかわかりにくいことだが、世界の人たちは、核兵器が非人道的だということを必ずしも理解していない。軍縮に携わっていても分かっていない人がいる。何回も繰り返して恐縮だが、わたくしは軍縮大使時代、核の非人道性を分かっていない欧州のある主要国の大使と激論を交わしたことがある。

 さる5月、NPT(核兵器不拡散条約)の、5年に1回の重要会議(「再検討会議」と言う)で、日本は同じ文言を会議の結論に入れようと努めたが、中国が猛反対したため成功しなかった。
 しかし、日本政府はそれであきらめることなく、今回の国連総会でふたたび試み、成功した。粘り強い努力のたまものだったと言えるだろう。

 この被爆地訪問と同じく核兵器の非人道性を確認・確立しようという動きが、この決議とは別に過去2年来続けられてきた。非人道性確認国を拡大する運動であり、こちらも賛同国が増加し、また核兵器国も米英仏などはNGOの強い後押しを受けて拒絶反応を示さなくなっていたが、
 他方、運動に参加する国が増加していくと核兵器の使用禁止に発展する恐れがあると警戒心を高めていた。
 国連総会で我が国が主導した決議案に、昨年まで米英仏などは賛成していたが、今回は「棄権」した。半歩後退である。そのように態度を変えたのは、やはり非人道性確立運動に警戒していたからである。
 

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