平和外交研究所

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2014.02.11

田母神候補に対する若者の支持

都知事選で田母神候補は予想をはるかに越える61万票強を獲得し、同候補の陣営は勇気づけられている。同候補が訴えたことは、景気対策、防災、福祉政策などもさることながら、「侵略戦争、南京事件、慰安婦など全部嘘だ」に象徴される保守色が強い主張であり、演説会では強気のタカ派的発言に聴衆の拍手が多かったそうである。
2月11日付の朝日新聞によれば、「田母神氏は20代と30代の若年層に浸透していた」「20代では、田母神氏に投票したのは24%に上り、舛添氏の36%に次いで2位だった。30代でも田母神氏は17%で、細川護熙氏の15%を上回った」「男女別では、田母神氏に投票した割合は、男性が女性の1.7倍に上った」。
また、田母神候補はネット上で人気が高かったそうであるが、ネットには若者の考えや嗜好が強く表れるのでこの朝日新聞社の出口調査と大筋は同じ傾向になるのであろう。
若者の強い支持を得たことをどのように解釈すべきか。若者は保守的な考えに共鳴しているのか、それとも他の理由によるのか。
田母神候補に対する若者の支持が強かったことは、安倍首相の靖国神社参拝に対して若者の間に肯定する傾向が強かったことと平仄があっているように思われる。これについては1月17日と19日のブログに書いたが、若者は知識がまだ不十分である一方、比較的簡単に割り切って対応する傾向があり、また、中国や韓国から執拗に批判されるのでうんざりしており、したがって、中韓両国の主張と反対のことを好む傾向がある。
つまり、若者は保守的なのではなく、中韓両国の批判にうんざりしているのである。若者が中国や韓国を嫌いになっているか、これも注目点であるが、必ずしもそうではないと思う。しかし、中国や韓国に対して、批判はいい加減にしてほしいという気持ちが強くなっていることは明らかである。
このような問題点についてはさらに探求していきたいものである。

2014.02.10

岸田外相とケリー国務長官との会談2014年2月

岸田外相が国会審議の合間を縫って訪米し、2月7日、ケリー国務長官と会談した。中国および韓国はいわゆる歴史問題や領土問題を理由に日本との関係を改善・強化・進展させることに消極的な態度を取る一方、米国との関係を重視し、米国が彼らの外交姿勢を理解・支持するよう求めている。中国の報道には、米国を日本からできるだけ引き離し、彼ら寄りに引きよせることを戦略的目標とすべきであると言わんばかりの論調もある。
岸田外相が置かれている立場はきわめて困難であると思う。ケリー長官とこの時点で直接話し合うことが必要なのは、米中韓3国の間に日本の姿勢を問題視する共通の基盤が醸成されていく危険があるからであり、今回の訪米はそのような危険性に対処しようとしている点で評価できる。
先の大戦が終了して以来、そのような危険性を考慮する必要はなかった。日本は政治、経済、安全保障の面で、つまり事実上すべての面で米国との協力関係を重視してきたからであり、日本は米国に依存し過ぎると批判されることはあっても、日米間にそのような危険が生じる心配はなかったのである。
しかし、先の戦争においては、日米は敵対し、おたがいに相手を軍事力で打倒することに努め、その結果双方とも何百万人もの犠牲者を出した。戦争は終わり、平和条約が結ばれ、日米両国は世界の歴史でもまれに見る友好協力の実績をあげてきたが、戦争の歴史的事実が消えたわけではない。日米両国とも将来そのような状況に再び陥ることなどありえないと考える人が大多数であるとしても、歴史が無意味になるほど両国が変身したとも言えない。
先の戦争に関する米国の考えは、中韓両国と完全に一致しているのでもないだろうが、日本から極東軍事裁判など戦争処理のあり方を問題視し、適切でなかったと主張することは、そのことを議論する場を作ろうとするものであり、ひいては日米両国は、少なくとも心理的には戦争時に引き戻される恐れがある。米国には、日本がいつか核武装するかもしれないという悪夢を完全に忘れ去ることができない人が指導者層にもいる。日本側で戦争のことを議論している人にはそのような深刻な認識はないとすれば、あまりにおめでたいと言わざるをえない。
首相の靖国神社参拝もおなじ意味合いを持つ。戦争指導者を尊敬して何が悪いと開き直るのは、戦争行為自体は悪くなかったと主張することに他ならない。また、戦争指導者を祭ってある神社を参拝しておきながら彼らを尊崇しているのではないということは、天照大神を祭っている神社に参拝しておいて尊崇しているのではないというのと同じくらいナンセンスである。
今日のブログでは、戦争を悪くなかったと論じることの是非はさておいて、米中韓の3国の間では、日本からこのような主張が出れば出るほど共通の基盤が醸成されていくであろう。一国の指導者にはそのことに早く気付いてほしい。
私は、国家の安全は自国で確保するのが基本であり、必要であると思っており、そのために必要な国家制度は整えるべきであるという考えを抱いており、憲法改正は必要に応じ行なうべきであると思っており、その点で模範となるスイスの憲法について本を書いたこともある。いわゆる平和主義者からは容易に攻撃されそうな思想を持っていることは自覚している。しかし、自国の偏狭な感情をぶつけておいて、米国に理解を求めるとか、米国が親日であれば分かってくれるはずだというような独りよがりの主張には身震いがする。
今次岸田外相の訪米において、ケリー長官は、中国による防空識別圏(ADIZ)設置については明確に反対することを表明した。岸田‐ケリー会談に先立って(5日)、ラッセル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は下院外交委員会アジア・太平洋小委員会の公聴会で、東シナ海や南シナ海で中国の挑発行動が増えていると批判して自制を促し、中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏も容認しない考えを改めて強調した。この姿勢は従来より強硬である。
しかし、韓国との関係についてケリー長官は、日本も関係改善の努力するよう促したそうである。これも戦争の問題と絡んでおり、日本の指導者が歴史に対して正しい姿勢を取ることが先決であるという韓国側の主張に米国は一定の理解がある。
尖閣諸島については、ケリー長官は「米国は引き続き同盟国に対する条約義務を果たす。東シナ海でもそうだ」と述べたそうである(日経新聞2月8日付)。この発言はこれまでに米国の指導者が述べたコミットメントの発言より一般的であり、それだけに不明確さが残る。ケリー長官がここまでしか言わなかったのは、米国が安倍総理の靖国神社参拝に失望したからではないか。ケリー長官からすれば、昨秋ヘーゲル国防長官とともに千鳥が淵墓苑へ参拝することにより、靖国神社参拝に関する米国の立場を明確に示しておいたにもかかわらず、安倍総理はそのメッセージを無視して靖国神社へ参拝を強行したという思いがあるであろう。
念のため、付言しておくと、日米両国がありとあらゆる問題について意見を一致させることは現実的にありえないし、意見が違っていてもなんら不思議でない。捕鯨やイルカ処分の問題、同性愛などについての考えは異なっているが、そんなことは個別に解決を図っていけばよい。しかし、日本が行なった戦争は悪くなかったとか、日米両国とも問題があったとか、戦争指導者を祭ることは止めよう。止めなければ、国際的にも日本の立場は危うくなる。
オバマ大統領がこの春訪日するか否かが話題になっている。岸田・ケリー会談でこのことがどのように扱われたのか。「岸田外相は「国賓として迎えたい。成功に向け協力したい」と伝えた。日程発表には至らなかった。」と日経新聞は伝えている。オバマ大統領にとって、日本との同盟関係が重要であるのはもちろんであるが、中国との間でも争いの種は少なくし、協力を進展させなければならない。その関係で日本にも期待しているであろう。日本はそのような期待にこたえていると言えるか。岸田外相は尖閣諸島の問題に関し、どのような展望を述べたのであろうか。国際司法裁判所での解決など、米国も納得できる具体的方策を説明したのであろうか。それとも、従来からの立場である、国際法に従って解決するという当たり前のことを繰り返したに過ぎないのか。

2014.02.06

台湾人意識

昨年(2013年)末台湾を訪問し、友人に助けてもらって何人かの要人との面会が実現した。非常に限られた範囲の会話であり、安易に一般化すべきでないが、台湾では「中国人」と区別して「台湾人」でありたいと考える人が増えていることが強く印象に残った。
昨年8月初旬に実施された(発表は8月12日)台湾の世論調査によると、「台湾人と呼ばれたいか、それとも中国人と呼ばれたいか」という質問に対して、82.3%が「台湾人」と答え、「中国人」と回答したのはわずかに6.5%であった。
この調査は、2012年4月に設立された「台灣指標調查研究股份有限公司」、略して「台灣指標民調」、英文の略語はTISRによって行なわれたものである。この会社が設立される以前は、テレビ局や雑誌(「遠見雑誌」)などによって2003年から調査が行なわれており、TISRの調査は会社設立以前(2003年以降)のデータと比較が可能となっている。ただし、質問の仕方がまったく同じかなど、確かめる必要はある。
TISRによる世論調査はかなり客観性を追求しようとしていることが窺われる。台湾人の帰属意識については、同じ調査で、「台湾人96.5%」「中華民国人85.3%」「中華民族74.1%」「アジア人72.3%」「華人69.8%」「中国人43.5%」「中華人民共和国人7.5%」という結果になっている。全部足すと100%をはるかに超えるのは、複数の回答をしてもよいことになっていたからであるが、台湾人は複数の帰属意識を持っているので、このように質問するのは事実をそのまま反映させるのに有効である。この複数回答は政治的にも興味深い内容を含んでおり、本格的な研究に値するが、今日はこの問題に入らない。
この調査にはもう一つ、「台湾人とよばれたいか、中国人と呼ばれたいか」という質問があり、複数の回答は認めず、二者択一的に回答するよう求めていた。これはよく考えた結果であると思う。「台湾人」であり、また同時に「中国人」であるという認識を持つ人は多数いるので、前段のようにそれを調査結果に反映させることができ、客観的である。しかし、その帰属意識は「一つの中国」論や、共産党や国民党の主張など政治の影響を受けている。他方、後者の質問のように複数の帰属意識を持つ者に対しても選択を強要してどちらがよいかを選ばせるのは、政治や経済の影響はともかく、心理的、文化的にはどちらがよいか態度表明を求めるものであり、まさにこの点は台湾問題のカギであり、台湾人のほんとうの感情を反映させるには有効な方法であると思われる。
ちなみに、この質問の直訳は「台湾人、中国人の呼称のうちより感情があるのはどちらかを問われると(当詢及民衆対台湾人、中国人哪種称呼比較有感情時、、、」であった。
さらに、この世論調査は、この質問に対して「台湾人」と答えた者が2003年には61.5%であったのが、2013年は上記のように82.3%に増加していることを指摘している。これまた興味深い事実であり、なぜ増加したのかが問われる。
中台関係を大きく変化させたのは中台経済関係の進展であるが、この関係で2003年から2013年の間にはさほど変わったことはなさそうである。
一方、政治的には、2003年は第1期陳水扁政権の後半で、スキャンダルなどが噴出したことが台湾人の意識に影響し、台湾人であることを表に出すのに抵抗が生まれていた可能性がある。
他方、2013年は国民党が民進党から政権を奪い返して間がない時点であり、その意味ではむしろ「中国人」意識が強まっても不思議でないと考えると、上記に紹介した世論調査の結果は逆になっている。もしそうだとすれば、それはいかなる理由によるのか。このようなことも含め、台湾人の意識変化には今後一層の注意を払う必要性がありそうである。今回あった台湾の人たちも、この調査結果に強い関心を示しつつ、その背景理由については格別の説明はなかった。

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