平和外交研究所

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朝鮮半島

2015.01.04

金正恩第1書記の新年の辞

金正恩第1書記は元旦にテレビカメラの前で「新年の辞」を述べ、南北関係について「雰囲気と環境が整えば、最高位級会談もできない理由はない」と、朴槿恵大統領との首脳会談を行なう用意があることを示した。このことは注目されたが、金正恩は、その実現のために韓国が米国と毎年行なっている軍事演習を取りやめることを要求し、また、やめない限り北朝鮮は核開発と経済建設の2本柱路線を継続するとも述べた。これに韓国が応じることは困難であろう。韓国側は金正恩の呼びかけを歓迎しつつも慎重な対応をしており、実務者の会談は開かれるかもしれないが、首脳会談が実現する見込みはあまりなさそうである。
金正恩がこのような発言をしたのは、北朝鮮が内外ともに困っているからだとする見方があるが、その当否はともかくとして、このような形でメッセージを発したのは金正恩の個人的好みだからでもあるように思われる。北朝鮮の新指導者となって以来、金正恩は青年らしい振る舞いや率直さを示している。

一方、北朝鮮の中央通信社は、新年を迎えるに際して世界各国の指導者が金正恩(この場合の肩書は「国防委員会第1委員長」か)に対して送った祝電を紹介するなかで、「中国共産党中央委員会総書記、中華人民共和国主席」とだけ言及し、習近平の名前は出さなかった。多維新聞(米国を拠点とする中国系の新聞 1月3日付)はこのことを指摘するとともに、「これはめずらしいことであり、北朝鮮が不満であることを示しているようである」とコメントしている。

2014.12.29

中国における中朝関係論

中国と北朝鮮との関係が悪化している。理由は、従来から中国との関係を取り仕切り、金正日が死去した後北朝鮮の実質的な指導者になると見られていた張成沢が処刑され、また、金正恩第1書記は中国への依存関係を少なくしようとしているためである。中国との関係は歴史的、地理的関係から、今でもどの国よりも広範囲にわたり、かつ、深いが、傾向としては今後ロシアとの関係が深まっていくであろう。
一方、中国側では、習近平中国主席が北朝鮮よりも韓国訪問を優先させるなどの動きがあった。かつて「血で固めた友諠」と言われた中朝の関係は冷えきっており、伝統的記念日、たとえば、中朝同盟条約締結記念日(7月11日)に従来は盛大に祝賀していたが、今年はそれもやめてしまった。
このような変化を背景に、中国では感情的な反発が生じ、北朝鮮との関係のあり方が議論される機会が増えている。二、三の例を紹介する。

○12月8日付の香港の『大公報』紙は次のように評論している。
「環球時報(人民日報傘下の通俗紙)は最近、中国は北朝鮮を放棄すべきではないかというテーマで、連日にわたって激しい議論を掲載した。とくに、前南京軍区の王洪光副司令員が「もし朝鮮半島で再度戦争が起きても、中国としては他国のために戦争する必要はない」と直言したことなどが注目され、米国メディアも強い関心を見せた。
中国の学界で「北朝鮮切り捨て論」が唱えられるようになってすでに久しいが、この種の議論を公にすること、「北朝鮮切り捨て」の意見を公然と政府系の新聞が報道することは、多くの人に、中国政府は「北朝鮮切り捨て」について世論工作をしようとしているのではないか、という疑問を抱かせる。」

○「九个头条网(www.topnews9.com)」は、そのURLが示す通りトップニュースを流すサイトであるが、国連での決議に関連して、北朝鮮での人権状況を解説している。
国連では、「北朝鮮における人権に関する調査委員会(COI)」が2014年2月に報告書を発表して以来、国連人権理事会や国連総会で審議が続けられ、12月18日、国連総会は、北朝鮮の人権問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託することや制裁の強化を安保理に要請する決議を賛成多数で採択した。両方とも安保理の決定が必要だからである。
安保理は、22日、総会が決定したことを安保理の議題とすること、つまり北朝鮮の人権問題をICCに付託し、北朝鮮に対する制裁を強化することを審議することを決定した。中国とロシアが反対したが、議題の決定に拒否権はないので、賛成多数で決定が採択されたのである。
国連総会での北朝鮮に対する決議は、過去10年連続で今回が10回目であった。その意味ではこれまで繰り返されてきた決議であるが、外務省は「北朝鮮人権状況決議の内容を踏まえた、これまで国連総会本会議において採択された北朝鮮人権状況決議よりも強い内容となっています」と解説している。
新しい点はここまでであろう。安保理は審議を開始したが、ICCへの付託も制裁の強化も決定されることはないと思われる。中国とロシアはこの種の問題についてはつねに反対するからである。中国の反対は北朝鮮を擁護することが目的とは限らない。西側の基準で人権状況を判断され、国連として決定されると中国自身が困るからでもある。

一方、中国のインターネット・サイトには中国政府とは異なる姿勢が見られる。「九个头条网」の報道がその例である、
このサイトが問題として取り上げたことは、食べ物を与えないこと、残酷刑、恣意的な拘留、弱者の軽視、言論の自由の侵犯、生存権に対する侵犯、移動の自由制限、強制連行である。
この解説は、北朝鮮が問題ある振る舞いを行ない中朝関係を悪化させていることを間接的に批判しているのであろう。しかしそれは表面のことである。むしろ、北朝鮮問題にかこつけて、中国自身の人権状況に対する国民の意識を高揚させることが狙いではないかと思われる。

○中国には、金正恩が訪中することを期待する声もある。
12月29日付の『大公報』紙は、中国の学界には異なる意見があり、中国人民大学が2013年7月に開催したシンポジウムで訪中の可能性を指摘した意見があったことや、2014年9月に中国の在韓国大使もその趣旨のことを発言したなどと報道している。

2014.12.24

北朝鮮のサイバー攻撃に関する米中の協力?

ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが作成した映画「ザ・インタビュー」の上映にする北朝鮮からのサイバー攻撃と米国の反発、それに21日から22日にかけて発生した、北朝鮮のインターネットが接続不能になっていることなど、IT関係の問題は素人には分からないことばかりである。
私は去る10月、平壌を訪問した際インターネットを使いたいと申し出た。答えはノーであり、訪問の前からその希望を伝えておけば、使用できるように準備しておくことは可能であるという説明であった。
今回の一連の報道から、ロシアの企業や、某国の在ピョンヤン大使館などがインターネットを使用していることが分かってきた。また、北朝鮮には4本の基幹ネットワーク回線があり、4本すべてが中国を経由していることも分かったが、北朝鮮のインターネット事情についてはまだまだ分からないことが多い。北朝鮮は対外的に開放姿勢を取ろうとしているが、外国人がインターネットを利用する環境を整備することが必要になってくるであろう。

今回のサイバー攻撃の関連で、米国は中国に対し協力を要請し、その後両国の外相が電話で話し合っている。この分野での協力が進むことは日本としても歓迎できるが、素人として素朴な疑問がある。米国は被害の実情を中国によく説明しなければならないのではないか。どんな問題でも被害を受けた側が、将来のさらなる被害を防ぐため、あるいは攻撃に対する反撃を行なうためには、協力を要請する側と協力する側が被害の状況を共有することが必要であろう。サイバー攻撃という特殊技術的なことについても同じことが言えるのではないか。
米国と中国との間でもサイバー攻撃問題があり、中国政府は中国も被害者だと主張しており、両国の主張はかみ合っていない。それでは実情はどうなっているのか、両国が協力しあって調査すればよいだろうが、そう簡単にはいかない。我々から見ると真相はやぶの中である。そのような状況があるなかで、北朝鮮について米中がサイバー攻撃問題で協力するかどうかという問題が出てきた。2次元の方程式が3次元の難問になった感がある。今後の推移を見守ることが必要であるが、この方面に明るい人に指南してもらいたい。

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