平和外交研究所

オピニオン

2019.04.16

日米首脳会談と中国

 安倍首相の訪米日程は4月26〜27日を軸に調整中という。トランプ大統領との会談が実現すれば、政治面では北朝鮮に対する対応が主要な議題となるだろうが、中国との関係も話し合うべきである。

 とくに重要なのは、国際法の順守を中国に求めること、またそのための方策いかんである。この観点で誰もが思い浮かべることは南シナ海での中国の行動と国際仲裁判決の無視であろうが、南シナ海の問題は台湾や尖閣諸島とも共通点がある。中国はいずれについても「古くから中国の領土である」と主張しているが、その主張に根拠がないことは、南シナ海については国際仲裁裁判が判断を下している。

 南シナ海と東シナ海はあい接して一つの海域を構成しており、台湾はその中間に位置している。南シナ海、東シナ海それに台湾の法的状況は基本的に同様である。中国は1992年、恣意的に「領海法」を制定してこれらを中国領であるとしたが、かりに国際裁判になれば、南シナ海と同様法的根拠はないという判断が下るだろう。

 日中関係は現在良好になっている。官民の交流も増えている。そのような状況で日中両国が話し合う場合、見解が対立していることはお互いに話題にしたくないだろうが、国際法の順守を中国に求めることは、世界のため、また、中国自身のためにも必要なことであり、日本として時々の状況に応じて持ち出したり、引っ込めたりしてはならないが、現実にどのように扱うかはデリケートな問題であり、慎重な扱いが必要である。

 日本としては中国の問題について米国と共通の立場を確認することが必要である。トランプ政権は何かにつけオバマ政権時代の方針を覆すが、南シナ海や台湾についてはオバマ時代よりもいっそう強く中国に国際法の順守を求めている。「自由の航行作戦」を継続しているのはそのためである。

 今月末から3か月間に安倍首相はトランプ大統領と3回も会談をする可能性があり、中国との関係について意見交換するよい機会となる。

 米国だけでない。EUも最近中国に対する警戒心を強めており、日本としてはEUとも米国と同様対中姿勢を確認し合うべきである。

 おりしも、フィリピンの領有するスプラトリー(南沙)諸島のパグアサ島周辺では多数の中国漁船がフィリピン漁船の操業を妨げている。2016年6月に就任したドゥテルテ・フィリピン大統領は、中国との友好関係を重視し、国際仲裁判決を事実上棚上げにすることに応じたが、3年もたたずして、中国の拡張的行動に悩まされる結果になったのである。

 台湾の関係では、これまで慣例的に守られてきた台湾と中国大陸との中間線を越えて中国の軍機が台湾側に侵入してきた。
 5月初めには、世界保健機関(WHO)の年次総会が開かれる。中国は台湾を完全に排除しようとするだろう。
 習近平政権は台湾の統一を実現するのに躍起となっており、これら以外にも様々な手を打ってくるだろう。

 日米欧がこれらの問題について連携を強めることは喫緊の課題である。

2019.04.11

EU・中国首脳会議

 4月9日、ブラッセルでEU-中国首脳会議が開催され、EUからユンカー欧州委員会委員長およびトゥスク欧州理事会議長、中国から李克強首相等が出席し、会議後に共同声明が発表された。

 EU・中国首脳会議は毎年開催されているが、今年は、中国の進出により欧州が分断されつつあるとEU側が神経をとがらせる中で行われただけに注目されていた。

EUと中国との間のイシューは日本と中国との間でもほぼ同じであり、今次首脳会議の結果は日本にとっても参考となる。日中間では政治状況によって首脳会議が開かれたり、取り消されたりするが、EUは28カ国からなるので中国との関係はさほど変動しない。日本はEUを通じて中国に働きかけることが可能であり、したがって、日本とEUの定期首脳会議は日中関係の観点からも有益である。

 なお、EUは今回の首脳会議に臨むにあたって3月12日付で、今後の対中政策の基本となる”EU-China – A strategic outlook”という戦略文書を採択しており、EUとしてはこの文書に基づいて今次首脳会議を行った。

 以下は同日付のEURACTIVの報道である。

〇EU側は首脳会議前日になっても共同声明案に合意していなかった。ほとんどすべてのEU加盟国が反対しており、EUとしては共同声明が出せなく打ても仕方がないと考えていた。
しかし、中国側は共同声明の発出にこだわり、その日の夕刻に修正案を提示してきたのでようやく合意が成立した。

〇2大イシューの一つである、中国が外資企業に対し技術移転を義務付けていることについては、中国側をはじめてそのようなことがあることを公式に認めた。合意された文言は、「技術移転を強制してはならないことに合意した“both sides agree that there should not be forced transfer of technology”」であった。中国側は一定程度譲歩したが、EU側には、合意だけでは不十分であり、担保するメカニズムがないという者もいる。

〇もう一つの大問題である市場アクセスについては、「中国市場における障壁を除去するため、2020年の首脳会議までに、より透明性のあるプロセスにすべきである」とされた。

〇投資についても来年の首脳会議までに包括的な投資協定を締結することが合意された。この問題は長年議論されてきたことであり、中国は今回の首脳会議に臨むにあたって期限を設定することに難色を示していた。

〇補助金については、李克強首相は「競争的分野(補助金のない分野?)では公正な競争を支持する。また、補助金が問題になる分野では、レイオフ状態の労働者および農業を含め、EUとWTOの枠内で協力する」と述べた。最後に、「産業補助金(industrial subsidies)についてはWTOの改革に関するEU・中国作業部会での検討を踏まえ国際的なルールを強化するために議論を加速する」ことが合意された。

〇ルールに従った国際的システム(rules-based international system 南シナ海での国際法順守問題など)については、中国側とEU側の立場の乖離は完全には解消されなかったが、「国連を中心に、国際関係に関する国際法と基本的な規範を尊重する」ことで合意が成立した。
(注 前述の戦略文書(EU-China – A strategic outlook)では、
China’s maritime claims in the South China Sea and the refusal to accept the binding arbitration rulings issued under the United Nations Convention on the Law of the Sea affect the international legal order and make it harder to resolve tensions affecting sea.
と直接的に中国の国際法違反、国際仲裁判決の無視を批判していた。)

〇5G、Huawei問題を含むサイバー犯罪については、首脳会議に先立ってEU各国が懸念を表明していたが、実際にはあまり議論されなかったようだ。ユンカー委員長はこの問題について、「詳しい議論は行われなかった」とコメントした。李克強首相は、「推定無罪の原則が守られるべきである。5Gに関係している中国企業でスパイ行為を問われているところはない」と述べた。

〇人権擁護については、普遍的、不可分で、相互依存的であることが確認され、今後、2国間あるいは国連において議論を継続していくという一般的な合意に終わった。

2019.04.09

中国の「一帯一路」による中南米への進出

 VOAの中国語版である「美国之音」は4月7日、中国の「一帯一路」による中南米への進出を米国が警戒しているとして次の諸点を報道している。

「中南米の諸国は相次いで中国からの投資を歓迎し、「一帯一路」への参加希望を表明している。

パナマのバレーラ大統領は先般香港訪問した際、パナマ運河によりアジアと米国を結びつける構想について発言した。中国は現在すでにパナマ運河の第2の利用国である。
パナマは昨年台湾と断交した。習近平主席が同国を訪問した際、「一帯一路」への支持を表明した。パナマは米国との摩擦は避けたいが、中国との投資・貿易関係の強化は進めたい考えである。
ポンペオ米国務長官は昨年10月、パナマを訪問し、バレーラ大統領にあって米国の考えを伝えた。

なお、メキシコも「一帯一路」への参加を検討中である。

トリニダードトバゴは昨年5月、「一帯一路」への参加を表明した。すでに中国企業が同国で港湾改修契約を結んでいる。

中国は1990年代から中南米諸国と石油など開発のための借款・投資について合意しており、「一帯一路」によりさらに拡大したい考えである。

ベネズエラに対しては620億ドル、ブラジルには420億ドル、アルゼンチンには180億ドル、エクアドルには170億ドルの借款供与に合意している。

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