2014 - 平和外交研究所 - Page 57
2014.05.01
これらの事件は中国政府にとって頭の痛い問題であり、対策を強化しようとするのは当然であるが、習近平政権の対応にはいくつかの特徴がある。
第1に、中国政府は、これらの事件を「テロ」として発表し、「少数民族問題」という側面は目立たないように努めている。実際には少数民族の間に不満が鬱積しており、時には政府に対して反抗することがあるのは常識であるが、中国政府は、そのような問題は深刻でないというふりをしようとしているのではないか。また、無差別攻撃事件を起こすテロは不幸なことに世界のいたるところで問題となっており、中国で起こっている事件はそのような世界的な現象と同じであり、中国だけが特別なのではないと強調しようとしているのではないか。
第2に、少数民族居住地域で不満が爆発する事件が起こると、政府は再発を防止するためと称して、監視とコントロールを強化し、はなはだしい場合には(これが少なくないようだが)正当な手続きを経ないで、したがってまた人権侵害を冒してまで関係者を拘束し、あるいは反抗の拠点となりそうな施設を封鎖したり、破壊したりしている。
第3に、宗教が絡むことが多い。新疆ウイグル自治区の場合はイスラム教のモスクが当局による弾圧の対象となっている。また、政府の意のままにならないキリスト教徒に圧力を加え、完成直前まで建築が進んでいる教会を取り壊すことも辞さない。中国には政府に協力的、すなわち政府の意のままになるキリスト教徒もいるが、政府に反抗しがちなキリスト教徒は少数民族と類似の立場にある。
第4に、習近平政権は、言論の自由を認めず強い統制を加えている。民主化要求などが暴発しないよう、早い段階から芽を摘んでおくためであり、一種の早期対応体制を敷いているのである。少数民族に対しても同様の発想で、つまり、早い段階から強い措置で対応する方針のようである。今回の事件においても、爆発現場の状況を伝えるインターネットは次々に消されている。
第5に、習近平政権の対応には一種の危うさを感じる。取り締まりと弾圧を強化するだけで、国民の不満を吸収・コントロールできるか。ウルムチで爆発事件が起こったのは、習近平が同地の視察を行なっていた間に発生した。習近平はかねてから新疆自治区の状況と指導者に不満であり(3月9日のブログ参照)、今回周到な準備をし、また民族問題担当の政治局常務委員俞正声と軍人のトップである范長龍中央軍事員会副主席を帯同し、前線を視察などしたのは新疆ウイグル自治区での統治を抜本的に改善しようとしたためであろう。
このような姿勢はいかにも習近平らしい対処ぶりである。
第6に、習近平はウルムチの視察中、「赤い遺伝子を官僚と兵士の血管に埋め込み、代々受け継がれていくようにしなければならない」と語っている(『多維新聞』4月29日付)。この言葉は、共産党の支配を強めなければならないことを強調しようとしているのであろうが、現在の官僚や兵士にはそれが足りないことを暗示しているようにも聞こえる。
習近平の少数民族対策
4月30日、新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅で爆発事件が発生し、数十名の死傷者が出た。無差別に人を攻撃するテロは世界のどこで起きようと憎むべきことであるが、この事件には少数民族問題が絡んでいる。同自治区ではウイグル族と漢族の対立が過去何回も起こっていたところ、2009年からまた対立が激化し、死傷者を出す衝突事件が続いてきた。2013年10月には、中国共産党の重要会議(第18期3中全会)の開催を間近にして天安門前広場で車両が突っ込むという一大事件が起こり、今年の3月には雲南省昆明で無差別殺傷事件が発生した。これらの事件は中国政府にとって頭の痛い問題であり、対策を強化しようとするのは当然であるが、習近平政権の対応にはいくつかの特徴がある。
第1に、中国政府は、これらの事件を「テロ」として発表し、「少数民族問題」という側面は目立たないように努めている。実際には少数民族の間に不満が鬱積しており、時には政府に対して反抗することがあるのは常識であるが、中国政府は、そのような問題は深刻でないというふりをしようとしているのではないか。また、無差別攻撃事件を起こすテロは不幸なことに世界のいたるところで問題となっており、中国で起こっている事件はそのような世界的な現象と同じであり、中国だけが特別なのではないと強調しようとしているのではないか。
第2に、少数民族居住地域で不満が爆発する事件が起こると、政府は再発を防止するためと称して、監視とコントロールを強化し、はなはだしい場合には(これが少なくないようだが)正当な手続きを経ないで、したがってまた人権侵害を冒してまで関係者を拘束し、あるいは反抗の拠点となりそうな施設を封鎖したり、破壊したりしている。
第3に、宗教が絡むことが多い。新疆ウイグル自治区の場合はイスラム教のモスクが当局による弾圧の対象となっている。また、政府の意のままにならないキリスト教徒に圧力を加え、完成直前まで建築が進んでいる教会を取り壊すことも辞さない。中国には政府に協力的、すなわち政府の意のままになるキリスト教徒もいるが、政府に反抗しがちなキリスト教徒は少数民族と類似の立場にある。
第4に、習近平政権は、言論の自由を認めず強い統制を加えている。民主化要求などが暴発しないよう、早い段階から芽を摘んでおくためであり、一種の早期対応体制を敷いているのである。少数民族に対しても同様の発想で、つまり、早い段階から強い措置で対応する方針のようである。今回の事件においても、爆発現場の状況を伝えるインターネットは次々に消されている。
第5に、習近平政権の対応には一種の危うさを感じる。取り締まりと弾圧を強化するだけで、国民の不満を吸収・コントロールできるか。ウルムチで爆発事件が起こったのは、習近平が同地の視察を行なっていた間に発生した。習近平はかねてから新疆自治区の状況と指導者に不満であり(3月9日のブログ参照)、今回周到な準備をし、また民族問題担当の政治局常務委員俞正声と軍人のトップである范長龍中央軍事員会副主席を帯同し、前線を視察などしたのは新疆ウイグル自治区での統治を抜本的に改善しようとしたためであろう。
このような姿勢はいかにも習近平らしい対処ぶりである。
第6に、習近平はウルムチの視察中、「赤い遺伝子を官僚と兵士の血管に埋め込み、代々受け継がれていくようにしなければならない」と語っている(『多維新聞』4月29日付)。この言葉は、共産党の支配を強めなければならないことを強調しようとしているのであろうが、現在の官僚や兵士にはそれが足りないことを暗示しているようにも聞こえる。
2014.04.30
両国の海軍は、合同演習地域で偵察を行ない、共同行動計画を明確化し、防空、対潜水艦、封鎖、航渡(中国語)、補給などの訓練を行なう。体育・文化活動などもある。
ロシアからの参加者は海軍作戦訓練局長、海軍司令部の職員、太平洋艦隊の代表などが、中国からは解放軍総参謀部の代表および東海艦隊の専門家が参加する。
双方は20艘あまりの海上艦艇、潜水艦および補助艦を派遣する。ロシア側は、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、補助艦、遠洋タグボート各1艘が含まれている。ロシア海軍の編隊は対馬海峡を南下して上海に来航する予定である。
中ロ両国のこのような合同軍事演習は日本にとって不愉快なものである。
中ロ両国にはそれぞれ狙いがあるのであろう。中国としては、尖閣諸島に関し従来から続けている、嫌がらせを含む示威行動の一環であるが、オバマ米大統領の訪日に際して日米が安全保障面での同盟関係を強化し、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを大統領自らが確認したことを強く意識し、反発しているものと思われる。
ロシアが尖閣諸島付近での中国との合同演習に参加することとしたのは、中国からの働きかけに応じたものと推測されるが、ロシア海軍と日本の海上自衛隊はこれまでに防衛交流を積み重ね、また、捜索・救難の共同訓練なども行なってきており、さらにごく最近、外務・防衛閣僚級協議(いわゆる2+2)を立ち上げることに合意するなど友好協力関係を進めていただけに、今回の中国との合同演習は残念な出来事である。
ロシアは、ただ中国からの要望に応じただけではないのであろう。今回の決定の背景として、ウクライナ問題で惹起された米欧との緊張関係があり、日本もロシア非難に加わり、ビザの発給を制限し、また、岸田外相の訪ロを取りやめたことなどをロシア側は不快視している可能性がある。そのような問題が起こったのはロシアに原因があるが、それはロシアとして認めたくないのも不思議でない。今回の中ロ合同軍事演習は表面上日ロ関係とは結びつかないが、当然強く影響しているものと思われる。
4月30日の国防部網によれば、今回の合同演習は3回目であり、第1回は2012年4月末山東省青海卑近で、第2回目はウラジオストック付近で行われた由。
尖閣付近での中露合同軍事演習
中国とロシアの海軍は5月末から6月初めにかけ、尖閣諸島の西北の海域で初の合同軍事演習を行なうそうである。4月29日に「ロシアの声」が報道したのを30日の『環球時報』(人民日報傘下の大衆紙)が引用している。4月30日現在、最後の協議のためにロシア海軍の代表団が上海を訪問中である。両国の海軍は、合同演習地域で偵察を行ない、共同行動計画を明確化し、防空、対潜水艦、封鎖、航渡(中国語)、補給などの訓練を行なう。体育・文化活動などもある。
ロシアからの参加者は海軍作戦訓練局長、海軍司令部の職員、太平洋艦隊の代表などが、中国からは解放軍総参謀部の代表および東海艦隊の専門家が参加する。
双方は20艘あまりの海上艦艇、潜水艦および補助艦を派遣する。ロシア側は、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、補助艦、遠洋タグボート各1艘が含まれている。ロシア海軍の編隊は対馬海峡を南下して上海に来航する予定である。
中ロ両国のこのような合同軍事演習は日本にとって不愉快なものである。
中ロ両国にはそれぞれ狙いがあるのであろう。中国としては、尖閣諸島に関し従来から続けている、嫌がらせを含む示威行動の一環であるが、オバマ米大統領の訪日に際して日米が安全保障面での同盟関係を強化し、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを大統領自らが確認したことを強く意識し、反発しているものと思われる。
ロシアが尖閣諸島付近での中国との合同演習に参加することとしたのは、中国からの働きかけに応じたものと推測されるが、ロシア海軍と日本の海上自衛隊はこれまでに防衛交流を積み重ね、また、捜索・救難の共同訓練なども行なってきており、さらにごく最近、外務・防衛閣僚級協議(いわゆる2+2)を立ち上げることに合意するなど友好協力関係を進めていただけに、今回の中国との合同演習は残念な出来事である。
ロシアは、ただ中国からの要望に応じただけではないのであろう。今回の決定の背景として、ウクライナ問題で惹起された米欧との緊張関係があり、日本もロシア非難に加わり、ビザの発給を制限し、また、岸田外相の訪ロを取りやめたことなどをロシア側は不快視している可能性がある。そのような問題が起こったのはロシアに原因があるが、それはロシアとして認めたくないのも不思議でない。今回の中ロ合同軍事演習は表面上日ロ関係とは結びつかないが、当然強く影響しているものと思われる。
4月30日の国防部網によれば、今回の合同演習は3回目であり、第1回は2012年4月末山東省青海卑近で、第2回目はウラジオストック付近で行われた由。
2014.04.28
しかし、手放しで喜べるわけではない。オバマ大統領は尖閣諸島に関しこれ以外にも発言している。一つは、「尖閣諸島の最終的な主権の帰属について米国としての見解を表明するのでないが」と付言していることであり、もう一つは、オバマ大統領が日本側に対応を促していることである。この2点とも日本では十分伝えられていない。
順序は逆になるが、第2の点を先に見ていこう。オバマ大統領は、”As I’ve said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China. ”と言っていた。これは非常に強いメッセージであるが、報道ではあまり注目されなかった。まったく報道していない新聞もあるようだ。
通訳に問題があったためかもしれない。共同記者会見の通訳はa profound mistakeを「正しくない」と訳したと言われている。4月27日付の『琉球新報』はこのことを指摘している。もっとも、通訳による実際の訳は「正しくない」ではなく、「非常に好ましくない過ち」であった可能性もある(官邸のホームページで録音が聞けるが、私にはそう聞こえる)が、いずれにしても、オバマ大統領が安倍総理に対応を強く促したことは伝わってこない。
『琉球新報』は、a profound mistakeを「重大な誤り」と正しく訳し、オバマ大統領は「同時に私(オバマ大統領)は安倍首相に直接言った。日中間で対話や信頼関係を築くような方法ではなく、事態がエスカレーションしていくのを看過し続けるのは重大な誤りだと」と述べたと報道した上、オバマ大統領は「首相に平和的解決を強く求めた」と解説している。細かい点については訳に異論があるかもしれないが、基本的にはこの説明が正しい。
オバマ大統領が安倍総理に促した対話と信頼醸成については、日本側に悩ましい事情がある。日本政府は、尖閣諸島について領土問題は存在しないという立場であり、したがって対話の必要もないという態度である。しかし、米国は、事態がエスカレートするのは何としても避けたいという気持ちであり、そのため、日本に対しても対話などの平和的方法で解決するよう求めている。日本側の、対話をする必要はない、しない、ということだけではそのような米側の期待にこたえることができない。
ではどうするかであるが、私は、日本が国際司法裁判所で解決を図る用意があることを米国はじめ関心を持つ諸国に対して説明し、中国もそうするよう説得を依頼するのがよいと考える。それも首脳レベルで直接話し合うのがよい。日本と中国の立場は違っており、国際司法裁判所には中国から提訴のための行動を起こす必要があるそうであるが、細かいこと、あまりに法技術的なことはあえて言わないこととする。日本はこれまで、中国が提訴するなら受けて立つとまでは言ってきたが、そのことは残念ながら知られていない。日本が積極的に国際司法裁判所での解決を求めていることを首脳レベルでも分かるくらい明確に態度表明したことはないのである。
オバマ大統領は日本の対応を強く促した後、We’re going to do everything we can to encourage that diplomatically、つまり、平和的解決のためには何でも協力すると言っている。米国は一般的に国際司法裁判所での解決を重視しており、あるとき中国の高官が不用意にハワイの法的地位を問題視するような発言をした際、ヒラリー・クリントン国務長官は「やれるものならやってみればよいでしょう。国際仲裁で決着をつけよう」と反撃したことがあった。国際仲裁と国際司法裁判は厳密には異なる手続きであるが、国際的に公平な解決を求めるという意味では同じことである。
日本として中国と直接対話する必要も意図もないという姿勢を貫くのは非生産的な非難合戦を避けるためにやむをえないかもしれないが、第三国が分かる形で日本として平和的方法で解決する用意があり、また、そのために積極的に行動しようとしていることを示すことが今後ますます必要とされる。
第1の点である、米国は第三国間の領土紛争に介入しないという基本方針については、米国は従来から一貫してそのことを主張しており、今回のオバマ大統領の発言も新しいものではない。
しかし、尖閣諸島に関する限り米国は特殊な立場にあり、通常の意味での第三国でない。尖閣諸島がサンフランシスコ平和条約の「琉球諸島」に含まれることを確立したのは、日本でなく米国と同条約の他の締約国であり、その際主導的役割を果たしたのは米国であった。これは1953年のことであるが、現在もその状態が継続している(キヤノングローバル戦略研究所ホームページのコラム「尖閣諸島の法的地位」参照)。このことを米国にリマインドし、米国がその立場にふさわしい行動をとるよう求めるべきである。
オバマ大統領の尖閣諸島に関する発言
オバマ大統領は訪日中(4月23日から25日まで)、尖閣諸島についてどのような態度表明を行なうか注目されていたところ、24日の安倍総理との会談後の共同記者会見で、「日米安保条約第5条は尖閣諸島を含め、日本の施政下にあるすべての領域に適用される」と明言した。これは米国の高官がこれまで何回も繰り返してきたことであったが、大統領として明言した意義は大きい。しかし、手放しで喜べるわけではない。オバマ大統領は尖閣諸島に関しこれ以外にも発言している。一つは、「尖閣諸島の最終的な主権の帰属について米国としての見解を表明するのでないが」と付言していることであり、もう一つは、オバマ大統領が日本側に対応を促していることである。この2点とも日本では十分伝えられていない。
順序は逆になるが、第2の点を先に見ていこう。オバマ大統領は、”As I’ve said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China. ”と言っていた。これは非常に強いメッセージであるが、報道ではあまり注目されなかった。まったく報道していない新聞もあるようだ。
通訳に問題があったためかもしれない。共同記者会見の通訳はa profound mistakeを「正しくない」と訳したと言われている。4月27日付の『琉球新報』はこのことを指摘している。もっとも、通訳による実際の訳は「正しくない」ではなく、「非常に好ましくない過ち」であった可能性もある(官邸のホームページで録音が聞けるが、私にはそう聞こえる)が、いずれにしても、オバマ大統領が安倍総理に対応を強く促したことは伝わってこない。
『琉球新報』は、a profound mistakeを「重大な誤り」と正しく訳し、オバマ大統領は「同時に私(オバマ大統領)は安倍首相に直接言った。日中間で対話や信頼関係を築くような方法ではなく、事態がエスカレーションしていくのを看過し続けるのは重大な誤りだと」と述べたと報道した上、オバマ大統領は「首相に平和的解決を強く求めた」と解説している。細かい点については訳に異論があるかもしれないが、基本的にはこの説明が正しい。
オバマ大統領が安倍総理に促した対話と信頼醸成については、日本側に悩ましい事情がある。日本政府は、尖閣諸島について領土問題は存在しないという立場であり、したがって対話の必要もないという態度である。しかし、米国は、事態がエスカレートするのは何としても避けたいという気持ちであり、そのため、日本に対しても対話などの平和的方法で解決するよう求めている。日本側の、対話をする必要はない、しない、ということだけではそのような米側の期待にこたえることができない。
ではどうするかであるが、私は、日本が国際司法裁判所で解決を図る用意があることを米国はじめ関心を持つ諸国に対して説明し、中国もそうするよう説得を依頼するのがよいと考える。それも首脳レベルで直接話し合うのがよい。日本と中国の立場は違っており、国際司法裁判所には中国から提訴のための行動を起こす必要があるそうであるが、細かいこと、あまりに法技術的なことはあえて言わないこととする。日本はこれまで、中国が提訴するなら受けて立つとまでは言ってきたが、そのことは残念ながら知られていない。日本が積極的に国際司法裁判所での解決を求めていることを首脳レベルでも分かるくらい明確に態度表明したことはないのである。
オバマ大統領は日本の対応を強く促した後、We’re going to do everything we can to encourage that diplomatically、つまり、平和的解決のためには何でも協力すると言っている。米国は一般的に国際司法裁判所での解決を重視しており、あるとき中国の高官が不用意にハワイの法的地位を問題視するような発言をした際、ヒラリー・クリントン国務長官は「やれるものならやってみればよいでしょう。国際仲裁で決着をつけよう」と反撃したことがあった。国際仲裁と国際司法裁判は厳密には異なる手続きであるが、国際的に公平な解決を求めるという意味では同じことである。
日本として中国と直接対話する必要も意図もないという姿勢を貫くのは非生産的な非難合戦を避けるためにやむをえないかもしれないが、第三国が分かる形で日本として平和的方法で解決する用意があり、また、そのために積極的に行動しようとしていることを示すことが今後ますます必要とされる。
第1の点である、米国は第三国間の領土紛争に介入しないという基本方針については、米国は従来から一貫してそのことを主張しており、今回のオバマ大統領の発言も新しいものではない。
しかし、尖閣諸島に関する限り米国は特殊な立場にあり、通常の意味での第三国でない。尖閣諸島がサンフランシスコ平和条約の「琉球諸島」に含まれることを確立したのは、日本でなく米国と同条約の他の締約国であり、その際主導的役割を果たしたのは米国であった。これは1953年のことであるが、現在もその状態が継続している(キヤノングローバル戦略研究所ホームページのコラム「尖閣諸島の法的地位」参照)。このことを米国にリマインドし、米国がその立場にふさわしい行動をとるよう求めるべきである。
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