オピニオン
2016.03.14
実行すれば、北朝鮮は核兵器とミサイルを放棄するのか。それとも実験を止めるのか。
国連安保理の決議にはこれらすべてが記載されているが、実現するかどうかは別問題である。
制裁決議だけでは足りず、北朝鮮との平和条約交渉が必要ではないか。
この問題に関して日本が果たすべき役割がある。
3月13日、東洋経済オンラインに「北朝鮮制裁、米中の主張がかみ合わない理由
平和協定交渉は、必要なのか不要なのか」を寄稿した。
北朝鮮制裁決議の成立
北朝鮮に対する厳しい制裁決議が成立した。それを実行することが大事だと指摘されている。その通りだが、実行すれば何が達成できるかは、実は問題なのだ。実行すれば、北朝鮮は核兵器とミサイルを放棄するのか。それとも実験を止めるのか。
国連安保理の決議にはこれらすべてが記載されているが、実現するかどうかは別問題である。
制裁決議だけでは足りず、北朝鮮との平和条約交渉が必要ではないか。
この問題に関して日本が果たすべき役割がある。
3月13日、東洋経済オンラインに「北朝鮮制裁、米中の主張がかみ合わない理由
平和協定交渉は、必要なのか不要なのか」を寄稿した。
2016.03.09
政府と県が鋭く対立し、きわめて危険な状態が回避されたことは喜ばしい。政府は「辺野古への移転が唯一の選択肢である」という立場を変えたのではないと言っているが、いかなる解決が可能か、今後の話し合いに期待したい。
以前から言っていることだが、普天間飛行場の辺野古への移設問題については複雑な経緯があり、歴代の政府、防衛省や外務省、米軍が智慧を絞って出した結論について軽々に物を言うべきでないのはもちろんだが、辺野古への移設に関してすべてのことを知っていなければ発言できないということでもないはずだ。
あくまで辺野古での飛行場建設を強行するならば流血の事態が発生する恐れもある。政府として、時には強硬手段もやむをえない場合があることは承知しているが、日本人の大多数が基本的には豊かで安全な生活を送っている今日、米軍が使う飛行場を建設するために流血の犠牲を払ってでも強行しなければならないとはどうしても思えない。国際約束であっても、そんなことをすれば末代まで悔いが残るだろう
最善の策は、沖縄以外で米軍基地を受け入れることができる地方を探求することだ。政府と米国は辺野古移設しか解決の方法はないと言うが、他の場所を真剣に検討したのか、どうしても疑問が残る。全国どこにも米軍基地を受け入れるところがないとは思えない。
しかし、沖縄以外で引き受ける地方がどうしてもでてこない場合のことも考えておかなければならない。その場合は、辺野古に新しい飛行場を作るのではなく、普天間飛行場は残し、周囲の危険な場所に住んでいる人たちの移住により解決を図るほうがダメージは少ないと思う。
この住民移転案はすでに出ているようであるが、なぜかあまり広がっていない。辺野古案と住民移転案の費用比較、沖縄への政府からの補助への影響、運動を推進している政党の考えなどさまざまな事情が絡んでいるのだろうが、細かい損得勘定はともかくとして、飛行場移設より住民移転のほうが痛みは少ない。政治的立場の違いを超えて合意を形成できる案だと考える。
米国は日本政府と同様「辺野古しかない」という立場を表明しているが、普天間に残ることになる案は受け入れ可能だと思う。
(短評)辺野古の工事が中断された
3月4日、日本政府と沖縄県は、普天間基地の辺野古移設のための工事に関し福岡高裁沖縄支部が提示した和解案を受け入れ、工事はひとまず中断された。政府と県が鋭く対立し、きわめて危険な状態が回避されたことは喜ばしい。政府は「辺野古への移転が唯一の選択肢である」という立場を変えたのではないと言っているが、いかなる解決が可能か、今後の話し合いに期待したい。
以前から言っていることだが、普天間飛行場の辺野古への移設問題については複雑な経緯があり、歴代の政府、防衛省や外務省、米軍が智慧を絞って出した結論について軽々に物を言うべきでないのはもちろんだが、辺野古への移設に関してすべてのことを知っていなければ発言できないということでもないはずだ。
あくまで辺野古での飛行場建設を強行するならば流血の事態が発生する恐れもある。政府として、時には強硬手段もやむをえない場合があることは承知しているが、日本人の大多数が基本的には豊かで安全な生活を送っている今日、米軍が使う飛行場を建設するために流血の犠牲を払ってでも強行しなければならないとはどうしても思えない。国際約束であっても、そんなことをすれば末代まで悔いが残るだろう
最善の策は、沖縄以外で米軍基地を受け入れることができる地方を探求することだ。政府と米国は辺野古移設しか解決の方法はないと言うが、他の場所を真剣に検討したのか、どうしても疑問が残る。全国どこにも米軍基地を受け入れるところがないとは思えない。
しかし、沖縄以外で引き受ける地方がどうしてもでてこない場合のことも考えておかなければならない。その場合は、辺野古に新しい飛行場を作るのではなく、普天間飛行場は残し、周囲の危険な場所に住んでいる人たちの移住により解決を図るほうがダメージは少ないと思う。
この住民移転案はすでに出ているようであるが、なぜかあまり広がっていない。辺野古案と住民移転案の費用比較、沖縄への政府からの補助への影響、運動を推進している政党の考えなどさまざまな事情が絡んでいるのだろうが、細かい損得勘定はともかくとして、飛行場移設より住民移転のほうが痛みは少ない。政治的立場の違いを超えて合意を形成できる案だと考える。
米国は日本政府と同様「辺野古しかない」という立場を表明しているが、普天間に残ることになる案は受け入れ可能だと思う。
2016.03.08
慰安婦問題については、「未解決の多くの課題が残され、遺憾である」とした。先般の日韓合意については、「犠牲者(元慰安婦)中心の立場に立ったものでない」と批判して元慰安婦の側に立った履行を求め、国の指導者や官僚が、元慰安婦を再び傷つけるような発言を慎むよう促し、元慰安婦の女性たちに「補償、賠償、公式謝罪、名誉回復のための措置などを含む十分かつ有効な救済を実施」するよう勧告した。教科書についても、適切に記述して学生や社会に周知させるよう求めた。
岸田外相は8日午前の閣議後の記者会見で、この報告書について、「日本政府の説明内容を十分踏まえておらず、遺憾だ」と述べたと報道された。
もしこれが、2月16日の同委員会審議で、外務省の杉山外務審議官が慰安婦問題に関して軍や官憲によるいわゆる「強制連行」は確認できなかったなどと反論したことを指しているならば、岸田首相の発言こそ問題だ。
日本政府がこの委員会で説明した翌日、当研究所のHPに掲載した懸念は、今もそのまま当てはまる。
「2月16日、ジュネーブの女子差別撤廃委員会で日本政府の代表は、慰安婦問題に関し、いわゆる朝日新聞による「吉田清治証言」や「慰安婦20万人」の報道はいずれも誤りであったことを朝日新聞自身が認めたことを説明したと報道されている。
この説明自体は正しいが、懸念がある。
1つは、日本政府の代表は「吉田証言は国際社会に大きな影響を与えた」と述べたそうだが、何を根拠にそのようなことを言えるのか。慰安婦問題について国連の要請を受け人権委員会(現在の人権理事会)の特別報告者となっていたクマラスワミ氏は、「個別の点で不正確なところがあっても、全体の趣旨は変わらない。吉田証言があったから報告を作成したのではない」と言っていた。
当時、日本政府で慰安婦問題にかかわっていた者は、確かめたわけではないが、誰も吉田証言を重視していなかったと思う。
第2に、朝日新聞の誤報を説明するのは結構だが、全体の説明とのバランスが問題だ。もし、クマラスワミ報告の誤りをついてその信憑性に疑問を呈しようとしたのであれば、そのような方法は誤りだ。国連の人権関係委員会であれ女子差別撤廃委員会であれ、裁判の場ではない。重要なことは日本が慰安婦問題にどのように取り組んでいるかを客観的に説明し理解してもらうことだ。
ただし、日本政府代表による説明の全体が報道されているわけではないので、全体のバランスは分からない。
第3に、もし、日本政府が今後も朝日新聞の誤りを国際的な場で説明し続けるならば、各国は、日本が慰安婦問題に真摯に向き合っていないと誤解する恐れがある。今回、求められて説明したことに目くじら立てる必要はないが、慰安婦問題について国連の場で説明を求められることは今後何回もあるだろう。日本政府が重箱の隅をつつくような議論を繰り返すこと国益を損なう恐れがあり、重大な懸念がある。
第4に、先般の韓国政府との「今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」との合意とも関連がありうる。日本政府が正しいと思っていることを説明しても、韓国政府は違った認識を持っていることがありうる。今回の女子差別撤廃委員会での日本政府代表の説明はこの点で問題とならないか。また、逆に、韓国政府が、将来日本政府と考えの違うことを発言した場合、日本政府はどう対応するのか。日本政府は一貫した姿勢で臨めるか。」
国連で慰安婦問題が取り上げられる機会は人権理事会の構造上、1年に何回かありうる。日本政府は杉山審議官の説明を今後も繰り返すのだろうか。岸田外相の発言を聞くと、そうする考えのようにも思われる。
しかし、それは日本の立場をさらに悪化させる危険があることに早く気付くべきだ。日本側が力を入れていることは、「強制連行」など一部の記述に誤りがあるという指摘だが、「強制連行はなかった」ことを知れば、日本政府に対する批判はなくなると思うのはあまりにも幼稚な考えだ。それどころではない。そのような議論は国連と各国が嫌うことである。なぜなら彼らは、一部の記述には誤りはありうるという前提で、日本政府の慰安婦問題に取り組む姿勢を問題にしているからだ。
日本政府が直視しなければならないのは、世界は女性の権利を擁護したいと望んでいることとそれを実現するための運動が展開されていることであり、国連女子差別撤廃委員会はそのためのメカニズムである。日本の一部の人が主張している「強制連行はなかった」ということが事実であってもこの運動の正統性は変わらないというのが彼らの考えだ。
慰安婦問題について日本はなんら批判されるいわれはないというなら別だが、一部の事実関係にこだわるのは国益を害する。世界の常識を見誤ってはならない。
女性差別・慰安婦問題について日本は国際的な感覚を見誤ってはならない
日本における女性差別について審査してきた国連女子差別撤廃委員会は7日、「女性活躍推進法」など、前回2009年の勧告以降の取り組みを評価する一方、夫婦同姓、再婚禁止期間、雇用差別、セクハラなどについてはまだ問題があることを指摘し、日本にさらなる改善を求める報告書(同委員会での審議を総括した「最終見解」)を発表した。慰安婦問題については、「未解決の多くの課題が残され、遺憾である」とした。先般の日韓合意については、「犠牲者(元慰安婦)中心の立場に立ったものでない」と批判して元慰安婦の側に立った履行を求め、国の指導者や官僚が、元慰安婦を再び傷つけるような発言を慎むよう促し、元慰安婦の女性たちに「補償、賠償、公式謝罪、名誉回復のための措置などを含む十分かつ有効な救済を実施」するよう勧告した。教科書についても、適切に記述して学生や社会に周知させるよう求めた。
岸田外相は8日午前の閣議後の記者会見で、この報告書について、「日本政府の説明内容を十分踏まえておらず、遺憾だ」と述べたと報道された。
もしこれが、2月16日の同委員会審議で、外務省の杉山外務審議官が慰安婦問題に関して軍や官憲によるいわゆる「強制連行」は確認できなかったなどと反論したことを指しているならば、岸田首相の発言こそ問題だ。
日本政府がこの委員会で説明した翌日、当研究所のHPに掲載した懸念は、今もそのまま当てはまる。
「2月16日、ジュネーブの女子差別撤廃委員会で日本政府の代表は、慰安婦問題に関し、いわゆる朝日新聞による「吉田清治証言」や「慰安婦20万人」の報道はいずれも誤りであったことを朝日新聞自身が認めたことを説明したと報道されている。
この説明自体は正しいが、懸念がある。
1つは、日本政府の代表は「吉田証言は国際社会に大きな影響を与えた」と述べたそうだが、何を根拠にそのようなことを言えるのか。慰安婦問題について国連の要請を受け人権委員会(現在の人権理事会)の特別報告者となっていたクマラスワミ氏は、「個別の点で不正確なところがあっても、全体の趣旨は変わらない。吉田証言があったから報告を作成したのではない」と言っていた。
当時、日本政府で慰安婦問題にかかわっていた者は、確かめたわけではないが、誰も吉田証言を重視していなかったと思う。
第2に、朝日新聞の誤報を説明するのは結構だが、全体の説明とのバランスが問題だ。もし、クマラスワミ報告の誤りをついてその信憑性に疑問を呈しようとしたのであれば、そのような方法は誤りだ。国連の人権関係委員会であれ女子差別撤廃委員会であれ、裁判の場ではない。重要なことは日本が慰安婦問題にどのように取り組んでいるかを客観的に説明し理解してもらうことだ。
ただし、日本政府代表による説明の全体が報道されているわけではないので、全体のバランスは分からない。
第3に、もし、日本政府が今後も朝日新聞の誤りを国際的な場で説明し続けるならば、各国は、日本が慰安婦問題に真摯に向き合っていないと誤解する恐れがある。今回、求められて説明したことに目くじら立てる必要はないが、慰安婦問題について国連の場で説明を求められることは今後何回もあるだろう。日本政府が重箱の隅をつつくような議論を繰り返すこと国益を損なう恐れがあり、重大な懸念がある。
第4に、先般の韓国政府との「今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」との合意とも関連がありうる。日本政府が正しいと思っていることを説明しても、韓国政府は違った認識を持っていることがありうる。今回の女子差別撤廃委員会での日本政府代表の説明はこの点で問題とならないか。また、逆に、韓国政府が、将来日本政府と考えの違うことを発言した場合、日本政府はどう対応するのか。日本政府は一貫した姿勢で臨めるか。」
国連で慰安婦問題が取り上げられる機会は人権理事会の構造上、1年に何回かありうる。日本政府は杉山審議官の説明を今後も繰り返すのだろうか。岸田外相の発言を聞くと、そうする考えのようにも思われる。
しかし、それは日本の立場をさらに悪化させる危険があることに早く気付くべきだ。日本側が力を入れていることは、「強制連行」など一部の記述に誤りがあるという指摘だが、「強制連行はなかった」ことを知れば、日本政府に対する批判はなくなると思うのはあまりにも幼稚な考えだ。それどころではない。そのような議論は国連と各国が嫌うことである。なぜなら彼らは、一部の記述には誤りはありうるという前提で、日本政府の慰安婦問題に取り組む姿勢を問題にしているからだ。
日本政府が直視しなければならないのは、世界は女性の権利を擁護したいと望んでいることとそれを実現するための運動が展開されていることであり、国連女子差別撤廃委員会はそのためのメカニズムである。日本の一部の人が主張している「強制連行はなかった」ということが事実であってもこの運動の正統性は変わらないというのが彼らの考えだ。
慰安婦問題について日本はなんら批判されるいわれはないというなら別だが、一部の事実関係にこだわるのは国益を害する。世界の常識を見誤ってはならない。
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