中国
2016.07.28
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『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』紹介
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『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』は2005年より始まり、10年以上
続いている中国環境市場及び中国環境/化学物質法令レポートです。最近話
題となっている改正環境保護法の下位法令、大気汚染防止、土壌汚染対策、
CO2規制・排出権取引制度もフォローしており、貴社の中国環境/化学物質
コンプライアンスや中国環境ビジネスの強い味方となります(既購読の
方、重複ご了解願います)。
本サービス詳細・価格・申込方法は以下サイト参照
http://jcesc.com/enw.html
■中国環境コンプライアンスは大丈夫ですか
▲毎週10~30もの環境・化学物質分野の法令・通達・標準情報を網羅
▲2日に1回配信する中国環境・化学物質法令速報
▲環境規制で重要なのは下位法令・地方法令・標準類
ご存知でしょうか。中国ではなんと毎週10~30もの環境・CO2・省エネ・
化学物質分野の法令・通達・標準(環境製品規格、汚染排出基準、環境測定
方法等)が策定されています。しかもこの数は日系企業の生産・販売・輸出
入と密接な関連ある法令標準だけです。
例えば環境保護法改正、PM2.5や土壌汚染の報道を受けて、中央のみなら
ず地方の環境規制は大幅に強化されました。処罰された日系企業も増えて
います。日系工場でも、環境管理担当者のレベルを把握している工場は少
なく、何をどこまで対応すればよいのか、どんな環境規制・通達があるの
か現場側でも管理側でもよくわかっていないのが実情です。周辺住民、環
境NGOやメディアからの環境違法行為告発も増えており、もはや「知らな
かった」では済まされません。
中国では環境保護法や大気汚染防止法などの法律にばかり注目が集まって
いますが、これら法律は方針しか書かれておらず、実際には下位法令や地方
法令、標準類、通達類により規定しています。中国での環境管理実務では、
むしろこちらの情報を収集し対応する方が重要です。
しかしこれを各社が独自に収集・フォローするのは至難の業です。工業団
地管理委員会などが情報提供するケースもありますが、情報漏れ・解説不能
・地方保護主義政策リスクなどもあり、全面的に頼れるわけではありません。
本『レポート』ではこれらの情報をしっかりフォローしているほか、2日に
1度の「中国環境法令・化学物質法令速報サービス」で、策定機関・法令名
・原文URLを会員に送信しています。
なお環境保護省等が策定する国家環境標準(GBやHJ)だけで2011年~2015
年に約800件が制定・改定される計画です。このほか工業・情報化省、建設
省、国家エネルギー局が策定・改定する環境関連標準や、地方政府が定める
地方環境標準を入れるとその数倍の数になります。
※環境・化学物質関連標準には、環境製品規格、工場等の汚染排出基準、環
境測定方法のほか、環境ラベル製品基準、ISO14001国内基準、中国版RoHS基
準、危険化学品GHS・DSD基準などがあります。標準・規格の正規販売につい
ては、以下のウェブページをご参照下さい。
http://jcesc.com/standard.html
これら全ての環境法令・通達や環境関連標準の情報を網羅しているのは本
『レポート』のみです。社内共有も可能です。
※個別企業向けの環境法令・規制・標準の解説業務も承っております。個別
相談下さい。
▲策定前段階の情報もフォロー
中国の環境政策・法令・通達・標準で最も悩ましい問題は、「知らないう
ちに出来る」というものです。しかし完璧ではないものの事前に知る方法が
あります。計画段階、パブコメ段階で公開されるほか、行政事業方案でも方
針が盛り込まれ、関係者がメディア・シンポジウムで話すことがあります。
これらの事前情報をフォローしているのも本『レポート』のみです。
中国の環境規制と日本企業
日中環境協力支援センター有限会社(大野木昇司取締役は北京大野木環境コンサルティング有限公司の社長を兼任)の「中国環境・化学品・エネルギーレポート」は中国理解に大変参考になるので大野木氏のご了解のもとに転載します。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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法令、標準類、通達類により規定しています。中国での環境管理実務では、
むしろこちらの情報を収集し対応する方が重要です。
しかしこれを各社が独自に収集・フォローするのは至難の業です。工業団
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年に約800件が制定・改定される計画です。このほか工業・情報化省、建設
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地方環境標準を入れるとその数倍の数になります。
※環境・化学物質関連標準には、環境製品規格、工場等の汚染排出基準、環
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準、危険化学品GHS・DSD基準などがあります。標準・規格の正規販売につい
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ちに出来る」というものです。しかし完璧ではないものの事前に知る方法が
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針が盛り込まれ、関係者がメディア・シンポジウムで話すことがあります。
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2016.07.22
中国は、南シナ海のみならず台湾、尖閣諸島についても「昔から中国の領土であった」と主張している。いわゆる歴史的権利の主張だ。しかし、今回の仲裁裁判で南シナ海について中国の主張に根拠はないと判断されたことにかんがみれば、もし台湾や尖閣諸島について裁判が起こされるとやはり「根拠がない」と判断される可能性がある。
中国が根拠を示せれば話は違ってきて、中国の主張が認められるかもしれないが、中国は尖閣諸島については根拠を示せないでいる。
南シナ海について中国は中国人の旅行記に記載があることをいわゆる「南シナ海白書」で指摘したが、裁判は旅行記の記載で領有を主張することはできないとの判断を下した。領有の主張に必要な「実効支配」がないことが主たる理由である。
尖閣諸島についても基本的には同じことで、中国がその主張の根拠として挙げている、中国(明時代)の使節が沖縄に来た際の旅行記だけでは領有の根拠とならない。
領有の主張には「実効支配」が必要なことは国際法の普通の解釈だが、もし、その解釈に異論があるならば、裁判で主張すればよい。それをしないで、裁判批判をするのは公平でない。
台湾については、事情は一部違っているが、歴史的権利に主張があるとは言えないだろう。将来、仮に何らかの形で台湾の法的地位について裁判が行われると、裁判所は、南シナ海や尖閣諸島と全く同じでなく、一定程度の実効支配があったことは認めるだろうが、それは長い歴史の一部であり、また地理的にも一部の支配であった。
このことは基本に立ち返ってみていく必要がある。第二次世界大戦で日本が敗れるまで、台湾、尖閣諸島および南シナ海の島嶼はすべて日本の領土であった。今回の仲裁裁判で問題となったスプラトリー諸島(中国名「南沙諸島」)も日本領時代は「新南群島」と呼ばれ日本の領土だったのだ。
日本のこれら島嶼の領有については、帝国主義的な侵略によるもので無効だったという考えもある。歴史的にはそういう面はあったとしても法的にはどの国からも異論を唱えられていなかったので、日本の領土だったということに問題ないだろう。
サンフランシスコ平和条約も日本が領有していたことを前提として、戦争の結果日本は「台湾」、「新南群島」、「西沙群島」を「放棄する」と規定した。
その結果これらの島嶼は無主地となった。通常、戦争状態を終結させる平和条約において領土問題が処理される場合は、新しい帰属先が示される。しかし、第二次大戦の場合は、日本との戦争は終了したが、中国の内戦が継続し、また新しく冷戦が起こったため、日本が「放棄」した島嶼の帰属は示されなかったのだ。
そこで、中華民国政府も中華人民共和国政府も、またフィリピンやベトナムの政府も日本が「放棄」した南シナ海の島嶼に対して領有権、あるいは「管轄権」を主張し始めた。中華民国政府と中華人民共和国政府の主張はそれぞれ「十一段線」、「九段線」として知られている。
台湾については、第二次大戦中に行われたカイロ宣言で、米英中の3国は、台湾を「中華民国」に返還することが謳われた。この宣言はこの3国が行ったものであり日本は拘束されないが、後にポツダム宣言の中でカイロ宣言も受諾したので日本も拘束される。
したがって日本は台湾を「中華民国」に返還することになったのだが、世界大戦が終了しても中国では国民党軍と共産党軍の戦いが続き、また世界的な冷戦の影響を受けて、台湾を返還する「中華民国」とは国民党政府か、共産党政府か分からなくなってしまった。形式的には「中華民国」政府は台湾へのがれ現在もそのままであるが、カイロ宣言の当時、「中華人民共和国」はまだ存在していなかった。その後の政治状況を勘案するとカイロ宣言が言った「中華民国」とは台湾へのがれた国民党の「中華民国」のことか、それとも中国大陸を支配するに至った「中華人民共和国」のことか判断が困難になったのだ。この辺の法的解釈は複雑で、ここに述べたのは大筋に過ぎないが、台湾の地位をはっきりさせるには考慮に入れておく必要がある。
おそらく現在の中国政府は、ここに述べたような法的議論をしたくないのだろう。それより、中国としては、台湾は「中国の一部」だという主張を中心に考えているのだろう。
以上は、法的な解釈であるが、いったんそれを離れて、台湾に対する中国の歴史的権利を見ていくと、台湾が中国によって支配されるようになったのは、1683年以降である。当時の中国は清朝であり、その年より以前は鄭成功が統治していた。この人物は明時代の人物だが明の朝廷の命を受けて台湾をしたのではなく、個人としての行動であり、また、その期間は22年という短期間であった。さらにそれ以前、台湾はオランダの支配下にあったが、これも一部支配だった。
清朝の統治に戻ると、支配していたのは台湾の西半分であり、東半分は最北端の一地方だけを統治していた。そして清朝政府は統治外の地域、すなわち東半分の大部分を「番」と呼ぶ住民の居住地とみなして漢人がその地域へ入ることを厳禁するなど、統治下と統治外の地域を厳格に区別していた。
このような歴史的経緯は台湾の教科書が明記していることである(当研究所HP5月31日「台湾の歴史と新政権-教科書問題」)が、中国はそれに反論して昔から中国領であったことを証明できるか。おそらくそれは困難だろう。そうすると、中国の台湾に対する歴史的権利も、一時期、かつ一部(約半分といってもよいが)に限られていたわけである。かりに国際裁判が起こるとこのような判断が下される可能性があるのだ。
今回の仲裁裁判は南シナ海に関するものだが、すぐその隣には中国にとって危険な問題が存在しているのだ。
南シナ海の判決を中国が受け入れないもう一つの理由―台湾・尖閣諸島への影響
中国は、南シナ海に関する仲裁裁判結果は台湾や尖閣諸島に関する中国の主張にも影響が出ると考えている可能性がある。中国は、南シナ海のみならず台湾、尖閣諸島についても「昔から中国の領土であった」と主張している。いわゆる歴史的権利の主張だ。しかし、今回の仲裁裁判で南シナ海について中国の主張に根拠はないと判断されたことにかんがみれば、もし台湾や尖閣諸島について裁判が起こされるとやはり「根拠がない」と判断される可能性がある。
中国が根拠を示せれば話は違ってきて、中国の主張が認められるかもしれないが、中国は尖閣諸島については根拠を示せないでいる。
南シナ海について中国は中国人の旅行記に記載があることをいわゆる「南シナ海白書」で指摘したが、裁判は旅行記の記載で領有を主張することはできないとの判断を下した。領有の主張に必要な「実効支配」がないことが主たる理由である。
尖閣諸島についても基本的には同じことで、中国がその主張の根拠として挙げている、中国(明時代)の使節が沖縄に来た際の旅行記だけでは領有の根拠とならない。
領有の主張には「実効支配」が必要なことは国際法の普通の解釈だが、もし、その解釈に異論があるならば、裁判で主張すればよい。それをしないで、裁判批判をするのは公平でない。
台湾については、事情は一部違っているが、歴史的権利に主張があるとは言えないだろう。将来、仮に何らかの形で台湾の法的地位について裁判が行われると、裁判所は、南シナ海や尖閣諸島と全く同じでなく、一定程度の実効支配があったことは認めるだろうが、それは長い歴史の一部であり、また地理的にも一部の支配であった。
このことは基本に立ち返ってみていく必要がある。第二次世界大戦で日本が敗れるまで、台湾、尖閣諸島および南シナ海の島嶼はすべて日本の領土であった。今回の仲裁裁判で問題となったスプラトリー諸島(中国名「南沙諸島」)も日本領時代は「新南群島」と呼ばれ日本の領土だったのだ。
日本のこれら島嶼の領有については、帝国主義的な侵略によるもので無効だったという考えもある。歴史的にはそういう面はあったとしても法的にはどの国からも異論を唱えられていなかったので、日本の領土だったということに問題ないだろう。
サンフランシスコ平和条約も日本が領有していたことを前提として、戦争の結果日本は「台湾」、「新南群島」、「西沙群島」を「放棄する」と規定した。
その結果これらの島嶼は無主地となった。通常、戦争状態を終結させる平和条約において領土問題が処理される場合は、新しい帰属先が示される。しかし、第二次大戦の場合は、日本との戦争は終了したが、中国の内戦が継続し、また新しく冷戦が起こったため、日本が「放棄」した島嶼の帰属は示されなかったのだ。
そこで、中華民国政府も中華人民共和国政府も、またフィリピンやベトナムの政府も日本が「放棄」した南シナ海の島嶼に対して領有権、あるいは「管轄権」を主張し始めた。中華民国政府と中華人民共和国政府の主張はそれぞれ「十一段線」、「九段線」として知られている。
台湾については、第二次大戦中に行われたカイロ宣言で、米英中の3国は、台湾を「中華民国」に返還することが謳われた。この宣言はこの3国が行ったものであり日本は拘束されないが、後にポツダム宣言の中でカイロ宣言も受諾したので日本も拘束される。
したがって日本は台湾を「中華民国」に返還することになったのだが、世界大戦が終了しても中国では国民党軍と共産党軍の戦いが続き、また世界的な冷戦の影響を受けて、台湾を返還する「中華民国」とは国民党政府か、共産党政府か分からなくなってしまった。形式的には「中華民国」政府は台湾へのがれ現在もそのままであるが、カイロ宣言の当時、「中華人民共和国」はまだ存在していなかった。その後の政治状況を勘案するとカイロ宣言が言った「中華民国」とは台湾へのがれた国民党の「中華民国」のことか、それとも中国大陸を支配するに至った「中華人民共和国」のことか判断が困難になったのだ。この辺の法的解釈は複雑で、ここに述べたのは大筋に過ぎないが、台湾の地位をはっきりさせるには考慮に入れておく必要がある。
おそらく現在の中国政府は、ここに述べたような法的議論をしたくないのだろう。それより、中国としては、台湾は「中国の一部」だという主張を中心に考えているのだろう。
以上は、法的な解釈であるが、いったんそれを離れて、台湾に対する中国の歴史的権利を見ていくと、台湾が中国によって支配されるようになったのは、1683年以降である。当時の中国は清朝であり、その年より以前は鄭成功が統治していた。この人物は明時代の人物だが明の朝廷の命を受けて台湾をしたのではなく、個人としての行動であり、また、その期間は22年という短期間であった。さらにそれ以前、台湾はオランダの支配下にあったが、これも一部支配だった。
清朝の統治に戻ると、支配していたのは台湾の西半分であり、東半分は最北端の一地方だけを統治していた。そして清朝政府は統治外の地域、すなわち東半分の大部分を「番」と呼ぶ住民の居住地とみなして漢人がその地域へ入ることを厳禁するなど、統治下と統治外の地域を厳格に区別していた。
このような歴史的経緯は台湾の教科書が明記していることである(当研究所HP5月31日「台湾の歴史と新政権-教科書問題」)が、中国はそれに反論して昔から中国領であったことを証明できるか。おそらくそれは困難だろう。そうすると、中国の台湾に対する歴史的権利も、一時期、かつ一部(約半分といってもよいが)に限られていたわけである。かりに国際裁判が起こるとこのような判断が下される可能性があるのだ。
今回の仲裁裁判は南シナ海に関するものだが、すぐその隣には中国にとって危険な問題が存在しているのだ。
2016.07.20
「7月12日、国際仲裁裁判所は、フィリピンが申し立てていたスカーボロー礁(中国名「黄岩岛」以下同)やスプラトリー諸島(南沙諸島)などにおける中国との紛争について裁判結果を公表しました。スカーボロー礁では1990年代の終わりころから両国間で紛争があり、2012年には双方が艦船を派遣してにらみ合う状況に陥り、後にフィリピン側は引き上げましたが、中国船は居残ったままの状態になっています。
また、スプラトリー諸島では、やはり1990年代から紛争があり、2015年に入ると中国は埋め立てや建設工事を急ピッチで進めました。中国は1990年代から海洋大国になることを国家目標とし、領海法の制定、巨額の予算措置など積極的に手を打ってきました。その中には台湾の中国への統合を実現することも含まれます。
しかし、中国の行動は現状を一方的に変更するものであり、周辺の各国は危機意識を高めました。米国は艦艇をその付近の海域に航行させ、自由航行の重要性をアピールしました。
フィリピンは中国との話し合いで紛争を解決しようと試みましたが、結果が得られなかったので2013年、国際仲裁裁判所に提訴し、中国はこれも拒否したので海洋法条約の規定に従って強制裁判の手続きを進め、2015年末から実質的審議が行われてきました。
今般下された判決は、ほぼ全面的に中国の主張を退けました。
中国の主張の中で根幹となっているのは、「九段線」で囲まれた海域(これは南シナ海のほぼ全域です)について中国は歴史的権利があるということです。「管轄権」を持つという場合もあります。
この主張について裁判所は「国際法上根拠がない」と断定しました。この判断によれば、「九段線」の主張は成り立たなくなり、また、この海域での行動の多くは国際法上違法になる可能性があります。そうなると海洋大国化計画を見直さなければならなくなるでしょう。
さらに判決は、スカーボロー礁やスプラトリー諸島について次の趣旨の判断を下しました。
○これらの岩礁はいずれも海洋法上の「低潮高地(注 低潮時にだけ海面に姿を現す岩礁)」や「岩」である。
○これらの岩礁を基点として排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の主張はできない。
○一部の岩礁はフィリピンのEEZの範囲内にある。
○中国による人工島の建設は、軍事活動ではないが違法である。
○中国がフィリピンの漁船などの活動を妨害したのも違法である。
○スカーボロー礁で、中国の艦船は違法な行動によりフィリピンの艦船を危険にさらした。
中国はこの判決に対し12日、あらためて「仲裁裁判の結果は無効で拘束力はなく、受け入れず認めない」との声明を出しました。これは従来からの姿勢を繰り返したものですが、実際には強い衝撃を受けたと思われます。
南シナ海、東シナ海さらには台湾に対して最も強い態度を取っているのは中国の軍でしょう。習近平政権としては、中国を世界の大国にまで押し上げ、米国との関係強化も必要なので軍の積極すぎる行動は抑えたいはずですが、軍は中国国内の安定を維持するためのかなめであり、抑制するのは極めて困難です。
裁判結果は、この困難な状況にさらに強烈な楔を撃ち込んだと思います。もちろん中国として、今般の裁判結果を、中国が国際化し、合理的な対応をできるように変化する契機にするならば、この楔は建設的な刺激となるでしょうが、早速19日から南シナ海で軍事演習を行うことを発表するなど、果たしてそうなれるか、疑問をぬぐえません。
今回の判決は南シナ海に関するものですが、中国は東シナ海、さらに台湾に対しても大した根拠を示さないまま歴史的権利を主張しています。かりにこれらについても裁判が行われれば、今次裁判結果に見習って、中国の主張はやはり根拠がないと判断される可能性が出てきたと思います。実際にそうなると中国の行動は制約され、従来のようにふるまうことは困難になるでしょう。
一方、今回の判決はフィリピンのこれらの岩礁に対する領有権を認めたのではありませんが、フィリピンの排他的経済水域を認めつつ、中国の主張と行動が海洋法条約など国際法に違反していると判断したのです。
これらの岩礁の法的地位は複雑です。日本が先の大戦で敗れた結果、スプラトリー諸島に対する権利を放棄したことも絡んでおり、南シナ海のかなりの部分の法的地位は確定していません。
中国とフィリピンは判決で終わりにするのでなく、今後話し合いを続ける意向を示しています。どういう形式で、どの範囲の国を含めるかなどについては問題が残っていますが、基本的に話し合いは歓迎すべきでしょう。
今次判決は、南シナ海の現状を一方的に変えるべきでない、国際法に従って行動すべきだという米国や日本の主張が正当であったことを確認し、さらにその理由を具体的に示すもので、我々の立場が一段と強化されたのは間違いありません。中国は裁判結果を認めないの一点張りですが、今般の裁判結果を建設的に受け止め、話し合いによる解決の糸口にする余地が残されています。中国政府の賢明な対応を期待したいと思います。」
南シナ海に関する仲裁裁判
7月20日、THE PAGEに次の一文を投稿した。「7月12日、国際仲裁裁判所は、フィリピンが申し立てていたスカーボロー礁(中国名「黄岩岛」以下同)やスプラトリー諸島(南沙諸島)などにおける中国との紛争について裁判結果を公表しました。スカーボロー礁では1990年代の終わりころから両国間で紛争があり、2012年には双方が艦船を派遣してにらみ合う状況に陥り、後にフィリピン側は引き上げましたが、中国船は居残ったままの状態になっています。
また、スプラトリー諸島では、やはり1990年代から紛争があり、2015年に入ると中国は埋め立てや建設工事を急ピッチで進めました。中国は1990年代から海洋大国になることを国家目標とし、領海法の制定、巨額の予算措置など積極的に手を打ってきました。その中には台湾の中国への統合を実現することも含まれます。
しかし、中国の行動は現状を一方的に変更するものであり、周辺の各国は危機意識を高めました。米国は艦艇をその付近の海域に航行させ、自由航行の重要性をアピールしました。
フィリピンは中国との話し合いで紛争を解決しようと試みましたが、結果が得られなかったので2013年、国際仲裁裁判所に提訴し、中国はこれも拒否したので海洋法条約の規定に従って強制裁判の手続きを進め、2015年末から実質的審議が行われてきました。
今般下された判決は、ほぼ全面的に中国の主張を退けました。
中国の主張の中で根幹となっているのは、「九段線」で囲まれた海域(これは南シナ海のほぼ全域です)について中国は歴史的権利があるということです。「管轄権」を持つという場合もあります。
この主張について裁判所は「国際法上根拠がない」と断定しました。この判断によれば、「九段線」の主張は成り立たなくなり、また、この海域での行動の多くは国際法上違法になる可能性があります。そうなると海洋大国化計画を見直さなければならなくなるでしょう。
さらに判決は、スカーボロー礁やスプラトリー諸島について次の趣旨の判断を下しました。
○これらの岩礁はいずれも海洋法上の「低潮高地(注 低潮時にだけ海面に姿を現す岩礁)」や「岩」である。
○これらの岩礁を基点として排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の主張はできない。
○一部の岩礁はフィリピンのEEZの範囲内にある。
○中国による人工島の建設は、軍事活動ではないが違法である。
○中国がフィリピンの漁船などの活動を妨害したのも違法である。
○スカーボロー礁で、中国の艦船は違法な行動によりフィリピンの艦船を危険にさらした。
中国はこの判決に対し12日、あらためて「仲裁裁判の結果は無効で拘束力はなく、受け入れず認めない」との声明を出しました。これは従来からの姿勢を繰り返したものですが、実際には強い衝撃を受けたと思われます。
南シナ海、東シナ海さらには台湾に対して最も強い態度を取っているのは中国の軍でしょう。習近平政権としては、中国を世界の大国にまで押し上げ、米国との関係強化も必要なので軍の積極すぎる行動は抑えたいはずですが、軍は中国国内の安定を維持するためのかなめであり、抑制するのは極めて困難です。
裁判結果は、この困難な状況にさらに強烈な楔を撃ち込んだと思います。もちろん中国として、今般の裁判結果を、中国が国際化し、合理的な対応をできるように変化する契機にするならば、この楔は建設的な刺激となるでしょうが、早速19日から南シナ海で軍事演習を行うことを発表するなど、果たしてそうなれるか、疑問をぬぐえません。
今回の判決は南シナ海に関するものですが、中国は東シナ海、さらに台湾に対しても大した根拠を示さないまま歴史的権利を主張しています。かりにこれらについても裁判が行われれば、今次裁判結果に見習って、中国の主張はやはり根拠がないと判断される可能性が出てきたと思います。実際にそうなると中国の行動は制約され、従来のようにふるまうことは困難になるでしょう。
一方、今回の判決はフィリピンのこれらの岩礁に対する領有権を認めたのではありませんが、フィリピンの排他的経済水域を認めつつ、中国の主張と行動が海洋法条約など国際法に違反していると判断したのです。
これらの岩礁の法的地位は複雑です。日本が先の大戦で敗れた結果、スプラトリー諸島に対する権利を放棄したことも絡んでおり、南シナ海のかなりの部分の法的地位は確定していません。
中国とフィリピンは判決で終わりにするのでなく、今後話し合いを続ける意向を示しています。どういう形式で、どの範囲の国を含めるかなどについては問題が残っていますが、基本的に話し合いは歓迎すべきでしょう。
今次判決は、南シナ海の現状を一方的に変えるべきでない、国際法に従って行動すべきだという米国や日本の主張が正当であったことを確認し、さらにその理由を具体的に示すもので、我々の立場が一段と強化されたのは間違いありません。中国は裁判結果を認めないの一点張りですが、今般の裁判結果を建設的に受け止め、話し合いによる解決の糸口にする余地が残されています。中国政府の賢明な対応を期待したいと思います。」
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