平和外交研究所

中国

2013.07.02

中韓両国の軍隊に関する悩み

朝日新聞の報道によれば、中国の軍隊にも韓国の軍隊にも共通する厄介な問題があり、またそれはさらに深刻化する傾向にあるそうである。一つは、軍が手薄になることである。韓国の場合は、現在も義務的な兵役制であるが、韓国社会も少子化が進行しており、そのため兵役に就く若者は絶対的に少なくなっている。しかも、親は子供を兵隊に送りたくないので種々画策して兵役を逃れようとする。朴槿恵新大統領によって首相に擬せられた金容俊元憲法裁判所長が指名を辞退したのも2人の息子の兵役逃れ疑惑が原因であった。裕福な有力政治家や資産家の子供、有名俳優、スポーツ選手などが偽の診断書などで兵役逃れを図ったという疑惑はしばしば発生している。
韓国社会に広がりつつあるこのような兵役回避傾向に対処するため、韓国政府は兵役期間を現在の約2年(軍種によって異なる)から数年短縮する方針を打ち出しているが、北朝鮮の挑発に対応しなければならないなどの事情から兵役期間短縮を実行するのは容易でない。
兵力が全体として薄くなる結果はいろいろな面に現れており、北朝鮮との兵力分離地帯に置かれている哨戒所も無人のところが増えている。昨年、北朝鮮の兵士が厳しいはずの警戒を潜り抜けて突然韓国側の哨戒所に現れ、一大問題となったこともある。
中国の場合は、徴兵制と志願制が併用されており、かつては志願兵だけで十分まかなえたが、「一人っ子政策」の影響は確実に及んでおり、志願兵は激減する傾向にあるのは韓国とよく似ている。
もう一つの問題は、韓国でも中国でも士気の高くない兵士が増えていることである。その原因は、豊かな生活を謳歌するようになった若者は苦しい訓練を嫌がり、本来ストイックな生活を要求される軍隊内でも何とか楽をしようとすることにある。演習の訓練中に携帯音楽プレーヤーを聞いている若者もいるそうである。このような不心得者は一部であり、あまり過大に見るべきでないだろうが、傾向としてははっきりあるらしい。
ベトナム戦争に参加した各国軍のなかで、ベトコンや北ベトナム軍に最も恐れられたのは韓国軍であったが、そのような強い韓国兵はもはや昔話になっているようである。
どちらの国でも、軍隊としては深刻な問題であろうが、顕著な経済成長を遂げ、豊かな社会になった結果であり、その意味では自然な現象なのであろう。
現在の時点であまり一般化することはできないが、いずれは、国家への忠誠もさることながら、個人の幸福により関心が向くようになっていくのではないかと期待される。

2013.06.28

サイバー攻撃と核

サイバー攻撃の脅威はかつての化学兵器や生物兵器の脅威に代わって、あるいはそれ以上の恐れられている感がある。安全保障に関する国際会議では、話題にならないことはない。先の米中首脳会談でも、シンガポールでのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)でもホットなトピックであった。米国内では、国防総省はもちろん、一般の世論においてもほぼ日常的に議論が戦わされていると言って過言でないだろう。
この中で、核兵器の抑止力に議論が及んでいることが懸念される。サイバー攻撃を防ぐために核の抑止力を維持すべきであるという考えであり、当然場合によっては核が使用されることが前提となる。これは健全な考えだろうか。場合によってはサイバー攻撃の発生源を核攻撃するということであろうが、そもそも発生源は明確に特定しえないのではないか。だからこそ、広範囲に敵を無能化する核が必要だというのは危険極まりない発想である。サイバー攻撃の発生源以外の人も何十万、あるいは何百万の単位で殺害されるであろう。そんなことは絶対に許されない。どんなにサイバー攻撃が恐ろしくても。
ワシントン・ポスト紙(2013年6月14日ネット版)に掲載されたRichard A. Clarke and Steven Andreasenの「サイバー攻撃は新しい核抑止政策を正当化しない」は専門的観点から問題点を指摘しているよい論文である。

2013.06.26

中国の武力行使

中国新疆ウイグル自治区北西部の町で「暴動」が起き、ナイフなどを持った武装グループが地元の警察署や政府機関を襲って、警察官や市民ら17人を殺害し、武装グループのうち10人が警察官に銃殺されたそうである(新華社が伝えたのは6月26日)。
中国は、「過去30年間、対外的に武力を行使したことはない」と言っている(たとえば、先のシンガポールでのシャングリラ対話でも)が、このウイグル自治区やチベットでは武力を使っている。国内と国外は違うと主張するかもしれないが、チベットも台湾も尖閣諸島も南沙諸島も中国領だと主張している。そうであれば、中国は、たとえば、日本の九州に対しては武力を使わないとしても、尖閣諸島には使う可能性があるということか。
チベットやウイグルにおいて武力を使ったことをただちに非難するのではないが、中国の姿勢には疑問がある。

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