平和外交研究所

中国

2013.06.28

サイバー攻撃と核

サイバー攻撃の脅威はかつての化学兵器や生物兵器の脅威に代わって、あるいはそれ以上の恐れられている感がある。安全保障に関する国際会議では、話題にならないことはない。先の米中首脳会談でも、シンガポールでのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)でもホットなトピックであった。米国内では、国防総省はもちろん、一般の世論においてもほぼ日常的に議論が戦わされていると言って過言でないだろう。
この中で、核兵器の抑止力に議論が及んでいることが懸念される。サイバー攻撃を防ぐために核の抑止力を維持すべきであるという考えであり、当然場合によっては核が使用されることが前提となる。これは健全な考えだろうか。場合によってはサイバー攻撃の発生源を核攻撃するということであろうが、そもそも発生源は明確に特定しえないのではないか。だからこそ、広範囲に敵を無能化する核が必要だというのは危険極まりない発想である。サイバー攻撃の発生源以外の人も何十万、あるいは何百万の単位で殺害されるであろう。そんなことは絶対に許されない。どんなにサイバー攻撃が恐ろしくても。
ワシントン・ポスト紙(2013年6月14日ネット版)に掲載されたRichard A. Clarke and Steven Andreasenの「サイバー攻撃は新しい核抑止政策を正当化しない」は専門的観点から問題点を指摘しているよい論文である。

2013.06.26

中国の武力行使

中国新疆ウイグル自治区北西部の町で「暴動」が起き、ナイフなどを持った武装グループが地元の警察署や政府機関を襲って、警察官や市民ら17人を殺害し、武装グループのうち10人が警察官に銃殺されたそうである(新華社が伝えたのは6月26日)。
中国は、「過去30年間、対外的に武力を行使したことはない」と言っている(たとえば、先のシンガポールでのシャングリラ対話でも)が、このウイグル自治区やチベットでは武力を使っている。国内と国外は違うと主張するかもしれないが、チベットも台湾も尖閣諸島も南沙諸島も中国領だと主張している。そうであれば、中国は、たとえば、日本の九州に対しては武力を使わないとしても、尖閣諸島には使う可能性があるということか。
チベットやウイグルにおいて武力を使ったことをただちに非難するのではないが、中国の姿勢には疑問がある。

2013.06.14

オバマ・習近平会談(続)

オバマ大統領は13日、安倍首相に習近平主席との会談について電話で説明し、中国の海洋進出について「周辺国が懸念を持っている。戦略的な自制が必要だ」と求めたことを明らかにしたそうである。オバマ大統領がこの点に焦点を当て習近平主席と会談したのはきわめて適切であった。日中間のみならず、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどと中国との間でもっとも危険な対立が生じる恐れは中国の海洋大国化戦略にあるからである。
尖閣諸島や南沙諸島など他国領を中国領と規定する領海法を突如制定し(1992年)、さらにこれらは中国の「核心的利益」であるとしてチベットや新疆と同等に扱う「中国の一方的な主張は国際法に照らして問題であり、わが国を含め関係各国がそれを認めることはありえない。中国があくまでそのような主張を貫こうとすれば国際的な摩擦・紛争が惹起されるのは避けがたくなる」(茅原郁生・美根慶樹『21世紀の中国 軍事外交篇』朝日新聞出版 2012年)。手前味噌であるが、あえて引用した。

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