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2020.06.07

経産省の外部委託問題と財務省の役割

新型コロナウイルスによる感染問題で経営危機に陥った中小企業などに最大200万円を配る「持続化給付金」事業の実施に関し、深刻な疑念をもたれる事態が生じている。

持続化給付金は150万社へ支払うとの想定で、4月の第1次補正予算において2兆3176億円が計上された。問題になっているのは、この事業の実施のためコールセンターや全国約400カ所に開く申請サポート会場の運営などのための769億円である。

担当官庁である経産省は手続き業務全体を「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に一括委託したが、同協議会は業務の大半を広告大手の電通に749億円で再委託した。電通はさらに、多くの業務を子会社5社にまかせ、自らは「管理・運営費」として約104億円を手にした。

つまり、手続き業務自体は5つの会社が行うのだが、そのためにあてられるはずの経費から協議会が20億円、電通が約104億円取っており、実際の業務に使われるのは約645億円となっているのだ。なぜそういうことをするのか。経産省が業務を外部に委託するのは分かるが、直接委託すれば約124億円は払わなくてもすむのではないか、と国民が思うのは当然である。

 もちろん、経産省によるこのような業務委託と資金使用の監督が誤っていたと決めつけることはできない。協議会についても電通についても必要性があるかもしれない。しかし、経産省、協議会および電通はその必要性を説明する義務がある。ところが、いずれも説明しておらず、国会で厳しく求められても応じないのである。
 
 経産省の民間委託についてはこのほか、キャッシュレス決済のポイント還元事業で事務局を担当する「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」が、受託費の93%にあたる約316億円で大半の業務を同じ電通などに再委託していたことがわかっている。

 さらに、新型コロナウイルス問題への対策として第1次補正予算に盛り込まれた消費喚起策「Go To キャンペーン事業」について、政府は6月5日、事務局を委託する事業者の公募を中止し、やり直すと発表した。委託費の上限が総事業費の約2割にあたる3095億円と巨額だったことや、手続きをまとめて民間委託することに批判が高まり、見直しを迫られたという。
 
これらの問題については国会などでの審議を通じて真実が解明されることが期待されるが、実は、政府のなかに不適切な予算要求を除去する強力なメカニズムがある。財務省の主計局であり、各省庁から「○○の業務が必要なので○○の予算が必要だ」と要求してくると、そもそも要求された事業が必要か否かの判断はもちろん、単価に至るまで適正か厳密にチェックする。これは外部(国会やメディア)からの真実解明努力とはまるで違う、政府内部における審査であり、ごまかしはきかない。主計局があやしいと思えば要求は退けられる。

 現在問題になっている経産省による事業の外部委託を見ると、財務省による精査が機能しているとは到底思えない。これは深刻な問題である。こんなことが続けば日本国は正しく機能しなくなる。一刻も早く正常な軌道に戻す必要がある。
 

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