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2017.01.27

(短文)核の先制使用禁止提案とトランプ大統領

 核の先制不使用宣言はオバマ前大統領が任期終了間近になって提案し、日本などが反対して取りやめになった構想である。
 しかるに、1月24日、「米議会の承認なしには核の先制使用を禁止する」法案が提出された。提案者は上院のEdward Markey議員と下院のTed Lieu議員である。

 これは興味深い提案だ。オバマ大統領が先制不使用宣言を提案した時、核軍縮を進めるために一つの有力な方策だとして賛成する人と、米国が先制不使用を宣言すると危険な行動を繰り返す北朝鮮などに対して核の抑止力に誤解を抱かせる恐れがあるとして反対する人に分かれ、結局オバマ大統領はその提案をあきらめた。現実的な判断だったのだろう。
 しかるに、トランプ新政権の下では同じ先制不使用でも意味合いが非常に違ってきている。トランプ氏は大統領に就任以前、ツイッターで「世界の核に関する良識が戻るまで、米国は核能力を大いに強化・拡大(strengthen and expand)する必要がある」とつぶやき、その後でMSNBCテレビのインタビューで「軍拡競争だっていいじゃないか。米国は(敵対する国より)どんな場面でも優位に立つ」と語った。ただし、MSNBCはこの発言を放映しなかったそうだ。
 トランプ氏の発言が人を驚かせることは多々あるが、この発言は核問題のデリケートさを理解している人たちでなくてもとんでもないことであり、トランプ氏は核軍縮競争だって辞さない考えだとみなされるだろう。ニューヨークタイムズ紙をはじめ多数の米メディアがいかに問題があるか、詳細に検討した結果を発表しているのは当然だ。

 米議会での先制使用禁止法案はメディアとは別だが、トランプ氏による核の管理に非常な危機感を抱いている点では共通していると思われる。米国の核研究者には、核ミサイルの発射ボタンがトランプ氏の身近にあることに心底から恐怖感を抱いている者もいる。米国の大統領にそのような心配をするのは異常であり、失礼千万なことだが、トランプ氏については心配ないと言い切れないのだろう。
 トランプ氏が恐れられているのは、何らかの間違いで発射ボタンを押すこと、つまり先制攻撃することであり、そこに制限をかけるのは検討に値することであり、make senseだと思う。この提案は、「核をサッカー場の外に出して蹴れないようにすることだ」とも言われている。


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