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2016.06.02

(短評)フィリピンのドゥテルテ新政権にとっての南シナ海問題

 フィリピンではドゥテルテ新政権が6月30日に発足するのを控えて、南シナ海問題をめぐり中国や米国との関係がどうなるか、関心が集まっている。
 5月31日、ドゥテルテが「長年の同盟国である米国に依存することはない」と述べると、「中国や南シナ海をめぐる問題への対応で米国からの自立を一段と図る姿勢を示した」と報道された(同日、ロイター電)。
 ドゥテルテが対米依存に批判的なことはかねてから知られており、今回の発言も特に目新しいものではないが、新政権の対外姿勢全般にかかわることであり、このように報道されるのは自然なことだ。

 一方、中国はドゥテルテに期待感を抱いている。ドゥテルテの祖先に中国人がいることも一つの要因かもしれない。
 ともかく、習近平主席が5月30日に送った祝電には次の言葉が含まれていた。
 「中国とフィリピンは友好交流の歴史が長く、両国民は伝統的な厚い友情を築いてきた。友好、安定、健全に発展する中比関係は両国と両国民の根本的利益に合致する。中比の近隣友好関係と互恵協力を維持・深化することが両国指導者の共同の責任だ。両国が共に努力し、中比関係を健全な発展の軌道に戻したい。」

 しかし、フィリピンの米国からの自立は進むか。ことは簡単でない。ドゥテルテは国内向けには威勢のよい発言をしているが、中国に対しては、国際法の下で沿岸国に認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)を尊重するよう求めている。
 また、南シナ海問題の解決のため、領有権を主張する国々だけでなく、米国や日本、オーストラリアを含めた多国間協議を支持しており、これは中国が嫌うことだ。
 今回の記者説明の際に、中国との二国間協議を求めるのかと質問されたのに対し、「われわれが独自の進路を決めるということを皆に知ってもらいたい。米国に依存することはない。フィリピン人以外の人々を満足させようとはしない」などと述べている。これは微妙な発言であり、とりあえず一般論で交わしたとも解される。
 アキノ大統領はスカーボロー礁での紛争をめぐって、米国に依存しつつ中国に対抗してきた。フィリピンの艦艇はそこから引き揚げ、中国船は居座ったままであるが、フィリピン領だと主張している。
 ドゥテルテはアキノ大統領に批判的で、同礁は「中国にとられた」と批判してきた。
 スカーボロー礁はマニラから300キロもない距離にあり、中国がここで南沙諸島でのように埋め立て工事などを始めるとフィリピンにとっては大問題になる。そうなるとドゥテルテとしても対米依存から脱却という感情論だけでは済まない現実に直面することになる。
 また、国際仲裁裁判の結論はドゥテルテ政権が成立した後に公表される公算が大きいが、それが同政権の本当の姿勢を問う最初の試金石になりそうだ。

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