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2013.06.18

慰安婦に関する橋本発言

橋本大阪市長の慰安婦に関する発言は現在も収束していない。国連の拷問禁止委員会はあらためて問題視する報告を行なった。橋本市長に限ったことでないが、日本の政治家のなかから時折出てくる発言は、慰安婦であった人たちを傷つけ、各国に不快感を抱かせ、日本の国益を損ねている。
とくに、「慰安婦を日本が国家の意思として拉致し、人身売買したのかどうか」という点に焦点を当て、それはなかったという主張を行なうことが問題である。橋本市長は、「日本政府が強制連行を認めた証拠となる閣議決定はないとの立場を譲らない」とも報道されている。
橋本市長とこの問題を懸念する人々との間には大きな認識の相違があり、国際社会の大多数が問題にしているのは、日本政府が慰安婦の置かれていた状況に同情し、その人権侵害についてしかるべき反省をすることである。日本政府を攻撃することが各国の目的ではない。多くの国で、歴史的に、さまざまな形で女性の人権が侵害されてきたからであり、そのような過去を清算することがいかに困難で、また、注意深く対処しなければならず、日本はそのような問題を適切に処理してほしいと願うからである。このことが分からないと、まったく見当はずれの反応をすることになる。
日本政府自身は強制的に拉致しなかったと言い張るのは、そのことに関して言えば、正しいかもしれないが、では、絶望的な状況に置かれていた慰安婦が帰国について自らの意思を自由に表明できるように日本政府は配慮したか、仲介業者が行ったことを調査して不適切な行動があった場合は慰安婦を本国へ送還したか、慰安所を運営管理するなかに、慰安婦に対する有形あるいは無形の人権侵害行為はなかったと言えるか。そこまで日本政府の潔白を証明できないであろう。このようなことをさておいて日本政府が拉致を認める閣議決定したことはないと言い張るのは、一連の人権侵害行為の中で一部のことについて日本政府の責任がないことに焦点を当てることによって、全体の問題性を隠そうとすることであると映る。だからこそ各国は不快視するのである。
さらに言えば、橋本発言は命がけの日々を送っている兵士の境遇には理解があるが、悲惨な状況にあった慰安婦に対する配慮は対照的に欠いている。発言が批判された後に、言葉で「慰安婦の方々には配慮しなければならない」と言っても、全体のトーン、その背後の姿勢はごまかせない。



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