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2016.03.23

中国とガンビアの外交関係樹立

 ガンビアは英国から独立して3年後の1968年、中華民国と外交関係を樹立したが、1974年、中華人民共和国に乗り換えた。国連における中国代表権問題で中華人民共和国が中華民国に代わって中国の代表となったのは1971年であり、それまで中華民国を承認していた国は相次いで中華人民共和国を承認していた。ガンビアはそのうちの一つだった。
 1993年、ガンビアではヤヒヤ・ジャメがクーデタで政権を奪取し、外交方針を転換し始め、その一環で1995年、中華民国を再び承認した。中華民国にとっては中華人民共和国との外交戦争で失地を取り返した数少ない例の一つであった。
 ところが、18年後の2013年11月14日、ガンビアは中華人民共和国を再び承認し、4日後、中華民国は同国との外交関係を断絶した。中華民国はガンビアに援助を供与した直後のことであり、不愉快さは倍増していただろう。
 しかし、中華人民共和国は意外にもガンビアが手を差し出したのに応じなかった。通常承認すれば外交関係樹立に進むが、そうしなかったのだ。勝手に外交方針を変更するガンビアに不満であったかもしれないが、主たる理由は馬英九が率いる台湾の国民党政権へ配慮を示そうとしたのだ。若干前後するが、2013年6月、習近平主席は国民党の重鎮である吳伯雄との会談で、「我々は現在外交では休戦している」と語っていた。
 そして2016年3月17日、中華人民共和国とガンビアは外交関係を樹立した。中国が、今後台湾に対してどのような方針で臨むか、注目されているなかでの外交関係樹立である。台湾や香港の新聞がこの問題を比較的大きく取り上げたのはごく自然なことだが、実際に大きな影響が出るか。承認の問題は3年前に終わっていることなので、台湾にとって実害はないだろう。ちなみに、台湾を承認している国の数は22のままである。
 中国は厳しい姿勢を示すことにより、蔡英文総統に率いられる新政権が台湾独立に走らないようけん制したのだろうが、国民党をこれまでと同じ姿勢で支持することは台湾人にアピールできるか。台湾人としてのアイデンティティが顕著に強くなっている近年の状況にかんがみて疑問である。

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